3歳で捨てられた件

玲羅

文字の大きさ
559 / 734
学院高等部 最終学年生

モンタピュア国

 モンタピュア国はなんとか他国と繋がりを作ろうと必死のようだ。モンタピュア国の主要産業は観光だったんだけれど、今は見る影もないそうだ。

「自然豊かな国だったんだけどね。モンターニュダイヤの鉱脈が発見されてさ」

 ラッセル様が会話に乱入してきた。モンターニュダイヤってカラーチェンジダイヤモンドよね?カットによっても色が変わってくるから難しいってプレシャスペブル宝石商が言っていた気がする。偏光ダイヤとも呼ぶって聞いたけれど。

「そのモンターニュダイヤの鉱脈を巡って、内戦に突入したんだよ。人の欲は怖いよね」

「モンターニュダイヤかぁ。お目にかかったことはないけど、ものすごく希少な宝石だって王妃陛下が仰っていたらしいよ」

 あら、おねだりしたのかしら。それならモンタピュア国がこの場にいるのは、ご招待かも?

「その内戦でもしや自然は壊されてしまったのでしょうか?」

「うーん、それは僕にも分からないんだよね」

「聞いてみれば?キャシーちゃん。光の聖女候補が話をしたいと言えば、拒む国は無いと思うよ」

 光の聖女候補だからかぁ。光の聖女候補と呼ばれる事にも慣れたし、光の聖女という称号を背負う覚悟は出来ていると思う。でも、光の聖女候補だからって会話を拒む事は無いと言われるとなんだか複雑だ。私自身ではなく称号と話したいんだろうな、という邪推が……。あぁ、ダメダメ。そんな事は考えちゃダメ。私だって最初から印象を固定されて、嫌な思いをした事があるのに、自分がそうなっちゃダメよね。

「キャシーちゃん?」

「後程ご紹介いただけますか?」

「喜んで。何を葛藤してたんだい?」

 サミュエル先生はお見通しらしい。

わたくし自身ではなく、光の聖女候補と話をしたいのだろうなと考えてしまって。先入観は捨てないとと反省しておりました」

「真面目だねぇ」

 ラッセル様が笑う。ついでに頭を撫でられそうになった。付いてきていたリーサさんに阻止されていたけれど。

「あ、そうだ。マルムグヴィスト嬢、お父上にお会いしたよ」

「父さんに?」

「魔道具の相談をしたら、あっという間に最適解を導きだしたよ。さすがだねぇ」

「何の魔道具なんですか?」

「真贋判定機」

「え?」

「正確に言うと嘘発見器だね。人の手の水分量と魔力の揺らぎで嘘を見破るんだ。実用化はまだまだだけど、これに心理学を組み合わせれば良いところまで行くと思うんだよね」

「それって……。それよりも真贋判定機の方が先に必要では?」

「そちらも同時進行で進んでいるはずだよ。僕は嘘発見器の方に興味がいっちゃったから、そっちをメインにしているけど」

「他にも製作チームが?」

「うん。おっ、フェルナー嬢、陛下達が呼んでるよ」

「陛下達がって……」

 さっきまで貴族達の挨拶を受けていたわよね?私達はまだ学生だからと免除されていたはずだけれど、挨拶が必要なのかしら?

「仕方がないね。行こうか」

「ご挨拶ですか?」

「令嬢達を集めて親密さをアピールしたいんだろうね。ほら、グクラン嬢やウォーリィ嬢も集まってきている」

 他にも見知った顔が移動を始めている。私も両陛下達の元に歩を進めた。

 陛下達が居られる玉座近くに、私の友人達が集まった。

「これは華やかな。これほど見事な花が一堂に会すとは眼福ですな」

 ウィンスタミア公爵が大袈裟に言葉を紡ぐ。

「よく来てくれましたね。次代の花達。さぁ、こちらにいらっしゃい」

 王妃陛下に導かれて、さらに一歩玉座に近づく。これ以上は近付けないのよ。階段状になっていて、上がれるのは王族以上だから。

 お義父様とお義母様が、ニコニコと私達を見ているのが見えた。

「ご挨拶を」

 サミュエル先生に促されて、一斉にカーツィーを行う。

「「「「「輝ける国の太陽と月の両陛下に、ご挨拶を申し上げます」」」」」

「場が華やいだな。見事な礼だった」

 陛下の言葉に周囲から惜しみ無い拍手が贈られた。

「他の国の方々もいらっしゃっているのよ。お話ししてみてはどうかしら」

 なるほど。こうやって賓客との会談の時間を取ってくれるのね。

「ありがとう存じます」

 お義父様や宰相方の案内で、賓客の方々の方に赴く。私が最初に連れていかれたのは、ゴーヴィリス国の方々のテーブル。

「キャスリーン、久しぶりね」

「お久しぶりでございます。フロレシア様」

「今日はアーチャーは来ていないから安心してね?」

 安心してって、まぁ、安心ですけれどね。はっきり仰いますね、フロレシア様。

 エドガーさんは真面目くさって座っていて、こちらを見もしない。そんなエドガーさんに一生懸命ちょっかいを出して、笑わそうとしているラッセル様、やめて差し上げてください。エドガーさんより周りの方が大変そうです。私とオルレーニュ大公ご夫妻フロレシア様とスティーヴン第3王子殿下が話している横で、必死に笑いをこらえているんだもの。エドガーさんは必死に視界に入れないようにしてるし。

 キプァ国、アウレリア国、アサナド公国と挨拶に回って、最後にシャスマネー国とモンタピュア国のテーブルに近付いた。特使としてスタヴィリス国を訪問しているのは、わずか3名。シャスマネー国の特使の方々と同じテーブルで、シャスマネー国がモンタピュア国を庇護している立場だそうだ。属国ではないけれど、限りなく近いらしい。シャスマネー国は徐々に手を引くと言っていたけれど、それを信用して良いのかは分からない。不利な通商条約を結ばされる事も珍しくはないから。

「モンタピュア国特使のベルンハルト・ブッシュバウムと申します」

「同じく特使のカールハインツ・オイケンです」

「同じく特使として同行していますゾフィー・フリーデです。光の聖女様にお目にかかれて光栄です」

「キャスリーン・フェルナーと申します。光の聖女候補です」

 ベルンハルト・ブッシュバウム様は流暢なヴィリス語を話しているけれど、カールハインツ・オイケン様とゾフィー・フリーデ様のヴィリス語は少し辿々しい。

「モンタピュア国の公用語はシャーマニー語だよ」

 こっそりサミュエル先生が囁いてくれた。

【シャーマニー語でお話出来ます。あまり上手くは話せませんが】

【おや、話せるのですか?】

【医師資格を有していますので】

【ほぅ。喜ばしい事です。まさか光の聖女様がシャーマニー語をお話になられるとは】

【勉強しましたから】

 シャーマニー語の敬語って難しくて時々乱れちゃうけれど、シャスマネー国の方々もモンタピュア国の方々も許してくれた。

わたくしは不勉強で、モンタピュア国を存じ上げておりませんでしたけれど、ラッセル様から素晴らしい景観だったと聞き及んでおります】

【おぉ、それは嬉しいですね。内戦で破壊されてしまった場所もありますが、モンタピュアのゲットリッシャー・ザントカステン神の林泉は荒らされずにすみました】

【ゲットリッシャー……?】

ゲットリッシャー・ザントカステン神の山泉です。神々が自らの手で景観を作り上げたと伝えられる場所です。花々が咲き誇り、樹木のみどりが湖のあおに映え、神々のお手作りだと納得の景観なのですよ】

【聞いているだけで行ってみたいと思いました】

【是非お越しください。光の聖女様がお出でになるまでに、少しでも元の美しいモンタピュア国を取り戻しておきます】

【その際はシャスマネー国にもお立ち寄りくださいね】

【はい。機会があれば。それでは失礼いたします】



感想 103

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

契約結婚から始まる公爵家改造計画 ~魔力ゴミ令嬢は最強魔術師の胃袋をつかみました~

夢喰るか
恋愛
貧乏男爵令嬢エマは、破格の報酬に惹かれて「人食い公爵」と恐れられるヴォルガード公爵邸の乳母に応募する。そこで出会ったのは、魔力過多症で衰弱する三歳のレオと、冷酷な氷の魔術師ジークフリート。前世の保育士経験を持つエマは、自身の「浄化魔力」で作った料理でレオを救い、契約結婚を結ぶことに。エマの温かさに触れ、ジークフリートの凍りついた心は次第に溶けていく。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。