3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 3学年生

進級

 3学年生に無事に進級した。ほぼ同時に医師資格取得の為の特別講座に所属させられた。良いけどね。医師資格は取れって言われてたし、資格って無いより有った方が良いって思ってるし。

 でも時間が足りなくなって、ピアノ倶楽部は退部した。

「残念ですわ。でも、フェルナー様ですものね」

わたくしだからって何でしょう?」

「薬草研究会でもお忙しくされておられましたでしょう?お身体を心配しておりましたのよ」

「それでなくとも色々ございましたし。心配しておりましたの」

「ありがとうございます」

「医師資格ですか。頑張ってくださいませね」

「はい」

 ピアノ倶楽部の先輩方に激励の言葉をいただいて、部室を後にする。

「フェルナー嬢、用事は終わりましたか?」

「はい、シェーン様。あいさつ回りは終わりました。お付き合いいただきありがとうございました」

「これも仕事ですから」

「ふふっ。シェーン様、ダニエル様はどうなさっておいでか分かりますか?」

「気になられますか?」

「はい」

「ダニエルですか。鍛え直し中です。どうやらフェルナー嬢の元に戻りたいらしく、かつてないほど真剣だと聞いています」

「そうですか。お元気なんですね?」

「はい。いつになるかは分かりませんが、戻ってくると思いますよ。簡単には渡しませんが」

「え?」

「さ、薬草研究会に戻りましょう」

「はい」

 シェーン様はダニエル様と違って、余計なおしゃべりをしない。最近は打ち解けてきてくれたのか、こういった話もしてくれるけど。それでもダニエル様のようには話せない。

「フェルナー嬢はダニエルの方が良いですか?」

「もう少しシェーン様が打ち解けてくださらないかな?とは思っていますが、ダニエル様と比べて、なんて失礼な事は考えていません。守っていただいている身ですし」

「ダニエルと私を比べていないと?」

「性格的な事とか、外見とか、そういった事では比べているかもしれません。でも、能力的には比べられません。ダニエル様もシェーン様も、サミュエル先生が私の護衛にと選んでくださったのでしょう?能力的に同等だと思われなかったら、選ばれないのではないのでしょうか」

「ちなみに、外見はどちらが好みですか?」

「外見ですか?」

 珍しいなぁ。こんなに話してくれるなんて。ダニエル様は陽キャで、犬でいったらゴールデンレトリバータイプ。シェーン様は質実剛健、犬でいったらドーベルマンタイプ。どっちも選べない。だってどっちも可愛いし。

 思考がずれた。犬に例えちゃ駄目だよね。

「……お答えできません」

「少しは自惚うぬぼれても良いのでしょうか?フェルナー嬢に認められていると」

「外見を?」

 そう言ったら、シェーン様が目を丸くしたあと、破顔一笑した。あ、笑うと可愛い。

「フェルナー嬢は人を笑顔にさせる才能をお持ちだ」

「申し訳ございません。何か間違った事を言ってしまったでしょうか」

「いいえ。さぁ、まいりましょう」

 まるで貴族のようにエスコートしてくれる。シェーン様って元は貴族だった?深入りするつもりはないけど。

 薬草研究会に着くと、シェーン様はいつも通り姿を消した。薬草研究会は安全地帯という認識らしい。これはダニエル様も同じだった。ダニエル様は設立当初は部内に入っていたけどその内入らなくなった。

「フェルナー嬢、用事は済んだ?」

「はい。遅刻をさせていただき、申し訳ございませんでした」

「今日は1年間の活動計画を決める日だからね。多少の遅れは問題ないし、そもそも出てきていない部員も多いんだよね」

 確かに薬草研究会にいるのはフランシス・エンヴィーオ、アッシュ・グレイブン、ポインター先輩、バージェフ先輩、ガビーちゃん、ヴィクトリア・バーミリオン先輩の6人しか居ない。私を加えて7人かぁ。

「遅れましたっ!!」

 元気よく入ってきたのは2学年生に進級したアントニオ・ストレイエスとモートン・ハンフリー。その後ろに2人居るけど、誰?

「構わないよ。ところで後ろの2人は誰だい?」

「入部希望の1学年生です」

「スペンサー・フィッツシモンズです」

「トバイア・ポールソンです」

「えっ?フィッツシモンズ?って隣国の?」

「はい。スタヴィリス国には一昨年、お世話になりました。おかげさまで酷い事になりませんでしたし、治療法も浸透しました。スタヴィリス国には医学と薬草学を学びに来ました」

「フィッツシモンズ家はハンフリーと繋がりがあるんです。学院に薬草研究会があると言ったら、入部したいと」

 モートン・ハンフリーが言う。数代前に婚姻を結んで以来、何かと行き来をして、親交があるんだって。隣国の麻疹はしかの時もハンフリーからの情報でいち早く対策をして、被害は最小に抑えたのだとか。

「良いんじゃないかな?部の規則が守れるなら」

「しばらくは雑用もやってもらうし、地味な仕事も多いけど、大丈夫なのかな?」

「大丈夫です」

「雑用ですか。お任せください」

 2人の入部は認められた。

 翌日からスペンサー・フィッツシモンズとトバイア・ポールソンは薬草研究会に通い始めた。最初に言ったように雑用も嫌がらずにやっているし、薬草についての勉強もかかさない。

 1ヶ月程様子を見ていたけど、これならやっていけると全員の考えが一致した。

ポーション水剤の作成ですか?」

「基本のポーション水剤だよ。もう少し経ったら剣術、体術倶楽部の連中が来るだろうし」

「剣術、体術倶楽部の連中?」

「疲れを取りたいって来るんだよ。創部当初からなんだよね」

「あはは。その前からだよ。ボクが味の改良に協力してもらってたんだ」

 バージェフ先輩が訂正した。

「味の改良?」

「最初は苦味と酸味があったんだよ。今も酸味はあるけど飲みやすくなっている。光魔法使いがいないとただの飲料水だけどね」

「あはははは……」

 乾いた笑いが返ってきた。トバイア・ポールソンはかつて、基本のポーション水剤の本を参照に、ポーション水剤を作ろうとしたらしい。光魔法使いが居なくて断念したあげく、飲料水にもならなかったんだって。味も最悪でポーション水剤の作成禁止を言い渡されたそうだ。

「基本の本を見てって、あれは肝心な事が書いてないんだよね」

「何故でしょう?」

「権利を守る為とか?『テンセイシャ』が広めたらしくてね。なんだったかな?知的財産の?」

「知的財産の保護ですわ。本来ポーション水剤は錬金薬師が作っていたそうです。その頃は錬金薬師の扱いが奴隷並みだったようで、アスクレピオスという『テンセイシャ』が錬金薬師を保護して、その全てのレシピを販売制にしたんだそうです」

「アスクレピオス……」

 ずいぶん壮大な名を名乗ったなぁ。

 アスクレピオスはギリシャ神話の医療の守護神だ。アポロンの子で、死者の蘇生を行った為にゼウスの怒りを買い、雷に打たれたといわれている。そのアスクレピオスが持っていたとされる蛇が巻き付いた杖が、現在医療のシンボルマークとなっている『アスクレピオスの杖』だ。

 アスクレピオスも神としている書物と、名医だったと書いている書物もあるけれど。

 でも、ヒュギエイアじゃないんだ。ヒュギエイアはアスクレピオスの娘だとされている。薬学のマークが『ヒュギエイアの杯』で、杯に蛇が巻き付いている。

 蛇は脱皮を繰り返すことから不死と再生のシンボルとされ、転じて健康のシンボルとされたようだ。アスクレピオスが蛇使い座の守護神とされているのも関係しているのかもしれない。

 私が遠い目をしているのに気が付いたらしいガビーちゃんが、寮に帰ってから私に訳を聞いてきた。









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