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学院初等部 4学年生
チェルシー様の指輪
午後の奉仕を終えて、フェルナー邸に帰ると、お義母様に呼ばれた。
「大変よ、キャシーちゃん。あの宝石、貴重な物だったわ」
「宝石商さんから連絡があったんですか?」
「えぇ。興奮していたわ」
「どういう宝石だったんですか?」
「ルベライトだそうよ。トルマリンの中では希少な色ね。プレシャスペブルが興奮していたわ。こんなに美しい発色は初めて見たって」
「そんなに貴重な物だったのですか」
「貴重といえば貴重ね。トルマリンの中でも赤、青、緑は高く評価されるのよ。それにこの指輪の石はインクルージョンがほとんど見られなかったらしいのよ。カットがもう少し正確に出来ていれば、最高級品となっただろうって言っていたわ」
「そんな物がその辺に転がっているのですか。ハートラー領では」
「そう言っていたわね」
「明日、チェルシー様に返却します」
「そうしてもらえるかしら。今日もお会いしたの?」
「はい。お元気そうで安心いたしました。最初のご様子は本当に酷いものでしたから」
「この後はハートラー領に帰られるのかしら?」
「聞いておりませんが、もしかしたらノボリッチ領に向かわれるかもそれません」
「あら、どうして?」
「今日、教会にノボリッチ伯爵様がお見えになられて、お話しされていました。お気が合ったようで、熱心に語り合っておられたとお聞きしましたから」
「そう。ノボリッチ伯爵様もそろそろご結婚なさってもいいお年ですものね。ご結婚となると、少し不安だけれど」
「ノボリッチ伯爵様って、ご結婚された事はございませんでしたわよね?」
「えぇ。ノボリッチ領は経営に不安はないのだけど、発展もしないのよ。牧羊や綿花畑が広がる牧歌的な良い場所なのだけど、代々の領主がのんびり屋というか、野心がなくてね。旦那様ももっとうまくやればって思われていて、他の宰相達と進言した事もあったそうなのだけど」
「今のノボリッチ伯爵様とは印象が異なるのですが」
「少し前に代替わりされたのよ。今代の伯爵は派手好きで、少しお好みが、なのよねぇ」
そう言って私を見ないでください、お義母様。ノボリッチ伯爵のロリコン疑惑はどうやら核心を突いた物だったようだ。本人は否定しそうだけど。
夕食後にローレンス様にチェルシー様の指輪の話をしたら、見せてほしいと言われた。
「プレシャスペブルからは戻ってきているんだろう?」
「はい。少しお待ちくださいね」
私が動くより前に、フランが出ていった。指輪を持ってきてくれるんだと思う。部屋にはローレンス様の侍女もいるし、2人きりになる事はない。婚前交渉も以前ほどうるさく言われてはいないけど、私の年齢も年齢だし、やっぱりはしたないと思われている。高位貴族ほどその考えは顕著で、王家だとハグも良い顔をされないと聞いた。ローレンス様はスキンシップがお好きだからよくハグしてくださるけど、良いのかな?
「キャシー、何を考えているの?」
「ローレンス様は私をよく抱き締めてくださいますけれど、何も言われておられませんか?」
「何もって、何を?」
「はしたないとか……」
「眉をひそめる人はいるね。でも私の同年代の友人知人は私とキャシーの事を知っているからね。むしろハグだけでいいのかって焚き付けられたりする。私も今はキャシーを傷付けたくないからね。キャシーは大人っぽいけどまぎれもなく子供なんだから」
「返答に困りますわね」
ハグ以上に進みたい気持ちはあるけれど、私の身体を考えると進めないって事よね。
「キス位は考えるけどそれ以上は婚姻してからだよ?」
「分かっております」
ローレンス様の年齢って、色々興味を持つと思うんだけど、その辺りはどうしているのかしら?
「キャシー?」
「ローレンス様の年齢位って、その、色々とご興味を持たれるのではございませんか?」
「興味……。変な事を考えないように。男には色々あるからね。キャシーはそんな事は考えなくて良いんだよ」
フランが指輪を持ってきてくれた。プレシャスペブルのご厚意でクッションを敷いた指輪ケースに納められている。ケースとクッションは紺色のベルベット。
「このケースは?」
「プレシャスペブルのご厚意です。指輪をむき出しでというのは宝石商として許せなかったらしくて」
「プレシャスペブルらしい考え方だね。これがその指輪か。良い色味だね。ルビー程深い色ではないけれど、澄んでいて輝きも悪くはない。トルマリンは様々な色があるからね」
「多くの色を持つっていう意味だと聞きました」
「キャシーの瞳の色のトルマリンはあるけれど、私の色味のトルマリンは無いと言われてしまったけどね」
「そうですの?でも、宝石ってトルマリンだけではございませんし、ローレンス様の瞳の色の宝石は他にもございますもの。唯一無二の物が。ローレンス様がくださったこのサファイアは私のお気に入りですのよ?」
「そうかい?気に入ってくれたなら嬉しい」
満面の笑みのローレンス様は軽く私を引き寄せて、頬にキスを落とした。
翌日、教会でチェルシー様に指輪を返却する。
「るべ……?」
「ルベライトですわ。レッドトルマリンという種類だそうです。宝石として扱う際にはルベライトという名で売り出すのだそうです。この石は価値がないどころか希少な宝石らしいですわ」
「あんなその辺に転がっている石が?」
「ハートラー様に連絡なさった方がいいかもしれません。ケネス様の方が良いと思われますが」
「そ……う、ですよね。あの男には会いたくないですし」
チェルシー様が嫌悪感を顕にして言う。
「でも、お兄ちゃんに迷惑かかんないかな?」
「ブレンダ様、お言葉遣いが崩れておりますわよ?」
ブレンダ様は頑張っていた淑女教育が、ここ数ヵ月ですっかり消え失せてしまったので、言葉遣いから直している。無理はしなくて良いと思うんだけど、言葉遣いだけでもと頼まれてしまった。ケネス様の妹として恥ずかしくなくなりたいんだって。
「というか、お言葉遣いなどお気になさらなくとも」
「でもさ、キャスリーン様だって養女なんでしょ?なのにそんなに綺麗な言葉遣いなんだもの」
「私は3歳からですからね。それに素のブレンダ様の方が素朴な感じで、私は好きですけれど?」
「お兄……様がどう思うか分からないし……」
「ブレンダ様、もしかして……?」
「うわぁぁぁ、言わないでぇぇぇ」
チェルシー様、「あらあら」なんて微笑ましく眺めないでください。ブレンダ様は私と同年代。年齢は12歳だとチェルシー様から伺っていた。ハートラー家に引き取られたのも婚約が出来る年齢になったからだと言う。
「でも、ケネス様ですか。少し難しいかもしれませんわ」
「難しい?どうして?」
「チェルシー様、ブレンダ様の父親はハートラー男爵様ですわよね?」
「えぇ。思い出すのも嫌ですけど」
「申し訳ございません。となると異母兄妹ですわよね」
確か異母兄妹は婚姻が禁じられていたはず。
「異母兄妹の婚姻は、貴族法で禁じられております」
「こっ、こんいんっ!!違う違うっ。結婚なんて考えてないっ」
「そうですの?(そうなの?)」
チェルシー様と声が重なった。
「なんで母さんまで首を傾げちゃってんのよ」
「あなた位の年って、憧れの男性と結婚したいってならない?」
「知らないよ。キャスリーン様はどうなの?」
「私は婚約者が居りますわよ?」
「「え、えぇぇぇぇ!!」」
「そこまで驚かれなくても。早いのは重々承知しております」
「相手は?その、近い年なのかしら?」
「8歳程離れておりますわね」
「8歳……」
「素敵な方ですわよ?」
「大変よ、キャシーちゃん。あの宝石、貴重な物だったわ」
「宝石商さんから連絡があったんですか?」
「えぇ。興奮していたわ」
「どういう宝石だったんですか?」
「ルベライトだそうよ。トルマリンの中では希少な色ね。プレシャスペブルが興奮していたわ。こんなに美しい発色は初めて見たって」
「そんなに貴重な物だったのですか」
「貴重といえば貴重ね。トルマリンの中でも赤、青、緑は高く評価されるのよ。それにこの指輪の石はインクルージョンがほとんど見られなかったらしいのよ。カットがもう少し正確に出来ていれば、最高級品となっただろうって言っていたわ」
「そんな物がその辺に転がっているのですか。ハートラー領では」
「そう言っていたわね」
「明日、チェルシー様に返却します」
「そうしてもらえるかしら。今日もお会いしたの?」
「はい。お元気そうで安心いたしました。最初のご様子は本当に酷いものでしたから」
「この後はハートラー領に帰られるのかしら?」
「聞いておりませんが、もしかしたらノボリッチ領に向かわれるかもそれません」
「あら、どうして?」
「今日、教会にノボリッチ伯爵様がお見えになられて、お話しされていました。お気が合ったようで、熱心に語り合っておられたとお聞きしましたから」
「そう。ノボリッチ伯爵様もそろそろご結婚なさってもいいお年ですものね。ご結婚となると、少し不安だけれど」
「ノボリッチ伯爵様って、ご結婚された事はございませんでしたわよね?」
「えぇ。ノボリッチ領は経営に不安はないのだけど、発展もしないのよ。牧羊や綿花畑が広がる牧歌的な良い場所なのだけど、代々の領主がのんびり屋というか、野心がなくてね。旦那様ももっとうまくやればって思われていて、他の宰相達と進言した事もあったそうなのだけど」
「今のノボリッチ伯爵様とは印象が異なるのですが」
「少し前に代替わりされたのよ。今代の伯爵は派手好きで、少しお好みが、なのよねぇ」
そう言って私を見ないでください、お義母様。ノボリッチ伯爵のロリコン疑惑はどうやら核心を突いた物だったようだ。本人は否定しそうだけど。
夕食後にローレンス様にチェルシー様の指輪の話をしたら、見せてほしいと言われた。
「プレシャスペブルからは戻ってきているんだろう?」
「はい。少しお待ちくださいね」
私が動くより前に、フランが出ていった。指輪を持ってきてくれるんだと思う。部屋にはローレンス様の侍女もいるし、2人きりになる事はない。婚前交渉も以前ほどうるさく言われてはいないけど、私の年齢も年齢だし、やっぱりはしたないと思われている。高位貴族ほどその考えは顕著で、王家だとハグも良い顔をされないと聞いた。ローレンス様はスキンシップがお好きだからよくハグしてくださるけど、良いのかな?
「キャシー、何を考えているの?」
「ローレンス様は私をよく抱き締めてくださいますけれど、何も言われておられませんか?」
「何もって、何を?」
「はしたないとか……」
「眉をひそめる人はいるね。でも私の同年代の友人知人は私とキャシーの事を知っているからね。むしろハグだけでいいのかって焚き付けられたりする。私も今はキャシーを傷付けたくないからね。キャシーは大人っぽいけどまぎれもなく子供なんだから」
「返答に困りますわね」
ハグ以上に進みたい気持ちはあるけれど、私の身体を考えると進めないって事よね。
「キス位は考えるけどそれ以上は婚姻してからだよ?」
「分かっております」
ローレンス様の年齢って、色々興味を持つと思うんだけど、その辺りはどうしているのかしら?
「キャシー?」
「ローレンス様の年齢位って、その、色々とご興味を持たれるのではございませんか?」
「興味……。変な事を考えないように。男には色々あるからね。キャシーはそんな事は考えなくて良いんだよ」
フランが指輪を持ってきてくれた。プレシャスペブルのご厚意でクッションを敷いた指輪ケースに納められている。ケースとクッションは紺色のベルベット。
「このケースは?」
「プレシャスペブルのご厚意です。指輪をむき出しでというのは宝石商として許せなかったらしくて」
「プレシャスペブルらしい考え方だね。これがその指輪か。良い色味だね。ルビー程深い色ではないけれど、澄んでいて輝きも悪くはない。トルマリンは様々な色があるからね」
「多くの色を持つっていう意味だと聞きました」
「キャシーの瞳の色のトルマリンはあるけれど、私の色味のトルマリンは無いと言われてしまったけどね」
「そうですの?でも、宝石ってトルマリンだけではございませんし、ローレンス様の瞳の色の宝石は他にもございますもの。唯一無二の物が。ローレンス様がくださったこのサファイアは私のお気に入りですのよ?」
「そうかい?気に入ってくれたなら嬉しい」
満面の笑みのローレンス様は軽く私を引き寄せて、頬にキスを落とした。
翌日、教会でチェルシー様に指輪を返却する。
「るべ……?」
「ルベライトですわ。レッドトルマリンという種類だそうです。宝石として扱う際にはルベライトという名で売り出すのだそうです。この石は価値がないどころか希少な宝石らしいですわ」
「あんなその辺に転がっている石が?」
「ハートラー様に連絡なさった方がいいかもしれません。ケネス様の方が良いと思われますが」
「そ……う、ですよね。あの男には会いたくないですし」
チェルシー様が嫌悪感を顕にして言う。
「でも、お兄ちゃんに迷惑かかんないかな?」
「ブレンダ様、お言葉遣いが崩れておりますわよ?」
ブレンダ様は頑張っていた淑女教育が、ここ数ヵ月ですっかり消え失せてしまったので、言葉遣いから直している。無理はしなくて良いと思うんだけど、言葉遣いだけでもと頼まれてしまった。ケネス様の妹として恥ずかしくなくなりたいんだって。
「というか、お言葉遣いなどお気になさらなくとも」
「でもさ、キャスリーン様だって養女なんでしょ?なのにそんなに綺麗な言葉遣いなんだもの」
「私は3歳からですからね。それに素のブレンダ様の方が素朴な感じで、私は好きですけれど?」
「お兄……様がどう思うか分からないし……」
「ブレンダ様、もしかして……?」
「うわぁぁぁ、言わないでぇぇぇ」
チェルシー様、「あらあら」なんて微笑ましく眺めないでください。ブレンダ様は私と同年代。年齢は12歳だとチェルシー様から伺っていた。ハートラー家に引き取られたのも婚約が出来る年齢になったからだと言う。
「でも、ケネス様ですか。少し難しいかもしれませんわ」
「難しい?どうして?」
「チェルシー様、ブレンダ様の父親はハートラー男爵様ですわよね?」
「えぇ。思い出すのも嫌ですけど」
「申し訳ございません。となると異母兄妹ですわよね」
確か異母兄妹は婚姻が禁じられていたはず。
「異母兄妹の婚姻は、貴族法で禁じられております」
「こっ、こんいんっ!!違う違うっ。結婚なんて考えてないっ」
「そうですの?(そうなの?)」
チェルシー様と声が重なった。
「なんで母さんまで首を傾げちゃってんのよ」
「あなた位の年って、憧れの男性と結婚したいってならない?」
「知らないよ。キャスリーン様はどうなの?」
「私は婚約者が居りますわよ?」
「「え、えぇぇぇぇ!!」」
「そこまで驚かれなくても。早いのは重々承知しております」
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