3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 4学年生

新学期に向けて

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 ララ様が戻ってきて、その場はいったん収まった。

「レオナルドさんって普段は猟師なんですよね?」

「そうだが?」

「銃とか使うの?長いヤツ」

「長いヤツ?」

 ララ様が言っているのは猟銃だろうな。魔道銃はあるけれどライフルみたいなのはあるのかな?

「猟に使うのは主に罠、トドメは剣を主に使っている。後は弓とか」

「えー、スッゴォい」

 ララ様がはしゃいだ声をあげている。髭を剃ったレオナルド様は整った顔立ちのワイルド系イケメンだと思う。背も高いしモテる気がする。声は好みなんだけど、私はローレンス様の方が好きだな。安心できる気がする。

 この日はそれで終わったんだけど、レオナルド様は私の冬季休暇が終わるまでずっと、教会に滞在していた。ララ様をめんどくさそうに揶揄からかいながら。ララ様もまんざらではなさそうで、文句を言いながらも楽しそうにしていた。

 お祖父様とお祖母様はあの日の翌々日に帰っていった。また来るからと言い残して。

「キャシー、あの男とはどういう関係だい?」

 明日には学院に戻るという日、ローレンス様に聞かれた。

「転生者ですわ。それ以上でもそれ以下でもございません」

「やけにキャシーに話しかけていたけど?」

「適切な距離を保ってくださるようにお願いしたのですけどね。ローレンス様に何か言ってきたのですか?」

「言ってはきたが、キャシーとのなれそめを聞きたいと言ってきた位だな。元貴族らしいな」

「そういえば男爵家の三男だと言っていたような?家名もお聞きした気がするのですが、忘れてしまいました」

「ん?今は偽名だと?」

「前世を思い出したら今の名前に違和感があって、名乗るのが嫌になったと。あのお名前は前世の有名人の名前ですわね。色々な分野の天才だった人物です」

「色々な分野?」

「覚えているものだけでも、数学、解剖学、動植物学、地質学、地理学、物理学、建築。たしか画家で発明家でもあったと」

「は?冗談だろう?」

「冗談ではなさそうなのですよね。お会いした事はございませんけど、レオナルド・ダ・ヴィンチ作の絵画や建造物や飛行装置のスケッチも残っていましたし」

 ローレンス様はしばらく呆けていた。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画はモナリザと最後の晩餐とウィトルウィウス的人体図が有名だ。他にもたくさんあるけれど。ウィトルウィウス的人体図は、2人の肉体が重なっていて、その手足が円と正方形に接している図で、実はレオナルド・ダ・ヴィンチが考案した物ではない。考案したのは古代ローマ帝国の建築家、ウィトルウィウス。レオナルド・ダ・ヴィンチはウィトルウィウスが考案した計測比を視覚化した絵を描いた。それだけとか言ってはいけない。いろんな意味があるらしいから。私は医学のシンボル的な図としか分からないけどね。

 ちなみに今は夕食後の寛ぎの時間。フェルナー家はみんな仲が良いけれど、ベッタリくっついている訳じゃなくそれぞれに適切な距離を保っていると思う。ローレンス様は別にして。さっきまでお膝だっこの攻防戦をやっていた我が身としては、私に対するローレンス様の距離感は、適切と思えない。でも婚約者ならこんなものなのかな?よく分からない。

「キャシーのゼンセの話は驚きの連続だ」

「でも、そんなものじゃありませんか?わたくしもこちらの歴史はとても興味深く読ませていただきましたわよ?似て非なる進化を辿ってきているのですから、まったく同じ歴史だなんてあり得ませんし」

「似て非なる進化、か」

「前世には魔法はありませんでしたから。水魔法や土魔法が欲しいと思った事は、1度や2度ではないです」

「魔道具も無かったんだっけ?」

「魔道具と呼ばれる物はございませんでしたわね。違う動力源で動く、同じような道具はございましたけど」

「同じような道具?例えば?」

「灯りはスイッチひとつで点きますし、調理道具もそうです。遠く離れた人と話が出来る機械は手のひらサイズでしたし、その機械では調べ物が出来たり、アナパレイカメラの機能も付いておりました」

 他にも出来たんだろうけど、私には分からない。そもそもスマホを使いこなせていなかったし。写真撮って通話して音楽や動画を視聴する位?後は検索を少しだけ。

「なるほど。違う動力源って?」

「電気と呼ばれるものです。後は化石燃料や……」

 核の事は言いたくないなぁ。説明が難しすぎる。

「キャシー、カセキネンリョウって?」

「大昔の動植物の死骸が、熱と圧力を受けて変化した物ですわ」

 大雑把にいうとそういう事だよね。

「それがカセキネンリョウ?」

「はい。化石燃料を燃やして電気を作って、その電気で動いていました」

「……よく分からないね」

「ご安心ください。わたくしも分かっておりません」

 火力発電の仕組みは少しなら分かるけど、何がどうなってとかは分からない。それを説明する自信も無い。

「まぁいいや」

「そういえば魔道銃って、弾の出る仕組みはどうなっていますの?」

「風魔法を使ってるって聞いたよ。私兵の魔道銃部隊に聞いてこようか?」

「そこまでしなくとも。少し気になっただけですから。わたくしは使う気はありませんしね」

「キャシーが使う場面が想像出来ないね」

 ナイフは何とか使えるようになったけど、実践的ではないから逃げる為の手段とするようにと、アンバー様からはしつこい位に言われている。それに関してはダニエル様もシェーン様も同意していた。戦うのは護衛の自分達の役目だから、逃げる事だけを考えてください、だって。

 自分だけ逃げるのは嫌だけど、それが「侯爵家の転生者の娘」を守る為だとも理解してる。

 守られる立場の人間が一番やってはいけない事。それは足手まといになる事だ。自分も戦えるなんて思わずに自分の身の安全を確保しろと、ランベルトお義兄様にも言われた。これは戦うだけの技量を持った人もそうなんだって。自分自身が戦うのは最終手段らしい。

「何を考えているんだい?」

 少しぼんやりしてたら、髪を撫でていたローレンス様に聞かれてしまった。

「守られる立場も難しいな、と」

「たしかにね。キャシーは特にでしょ?私は多少剣が使えるし魔道銃も携帯している。だから……」

「魔道銃、持っていますの?」

「一応はね。射撃精度はまだまだだけど、一応訓練もしているよ」

 この世界の魔道銃は、形としてはオートマチック銃といわれる物だと思う。詳しくはないけれど、銃弾を入れるレンコンみたいな筒がないから、リボルバーではない。

「ローレンス様、魔道銃ってどういう仕組みですの?」

「興味があるのかい?」

「知りたいだけです。使ってみたいとかはありません」

 今はね。

「銃身に地魔法と風魔法の術式が刻んであるんだ。地魔法で弾丸を作って風魔法で飛ばす感じかな?」

「そういう感じですのね」

 イメージは出来る。今は使いたいとは思わないけど。

「魔道銃の所持許可は16歳からだからね。講義と訓練を受けて、テストをして所持許可が出されるんだ。持っている学院生は学院の許可も要るね」

「ローレンス様はいつ所持許可を取られましたの?」

「卒業してからだよ。2ヶ月かかった」

「そんなに?」

「その位かかるらしいよ。キャシーも使わなくても持っておいた方が良いかもね」

「使いこなせる自信がありませんし、今は使いたいと思いません」

「だろうね。16歳までにはまだあるから、考えておいた方が良いかもね」

 最後は銃の話になっちゃった。元日本人には馴染みがないけれど、そういう事も考えないとダメみたい。憂鬱だなぁ。







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