3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 5学年生

王宮でのお茶会 ~事件勃発~

「家業が嫌で逃げたんだよ。7年程追い回されたけどな。跡目を継ぐ気は無いって言っても聞いちゃくれねぇし、家をおん出てやりゃ諦めるかと思ったんだが。で、途中で思い出した。そうしたら名前がしっくり来なくてな。誰も知らないからいいやってレオナルド・ダ・ヴィンチって名乗った」

 あれ?レオナルド様って3男だったわよね?跡目を継ぐ?どうして?

「ふぅん。キャスリーンちゃんと仲が良いけれど?」

「キャスリーンって小さいだろ?でもちゃんと自分の運命に立ち向かってるんだ。そうしたら守ってあげたいって思った」

「ロリコンなの?」

「違げーよ。こんな小さいんだぜ?なのに逃げてない。俺は逃げたのに、って思ってさ。情けないよな、守ってやりてぇなって考えてな」

「分かる気がするわ。キャスリーンちゃんって守りたくなっちゃうわよね」

「婚約者がいるけどね」

「え?えぇぇぇぇ!!婚約者?早くない?貴族ならそんなもの?」

「貴族でも早いです。一応法律的には問題ございません」

「相手は?」

「引き取られたフェルナー家の長男様です」

「フェルナー嬢は3歳で引き取られたんだけどさ、その頃から可愛くて、痩せてたから余計に守ってやりたいって思ったんだって」

「お知り合い?」

「相手と?まぁね。話が合うんだよ。領地経営について語り合ったら、1晩じゃ足りないね」

「ヘンタイ?」

「領地経営は楽しいよ。戦略ゲームにも似てるね。実際はゲームじゃないから慎重に進めていくけどさ」

「ラッセル室長は領地経営学が専門だったからな。おかげで仕事が捗った」

「でもブラック企業でしょ?」

「まぁ、そうだな」

 企業ではないけどね。私はラッセル様から直接聞いたけど、それを言うつもりはない

「ところで、今日の集まりの趣旨って、誰か聞いてるかしら?」

 セシルさんが聞いたけど、誰も答えない。

「あの、わたくしは重要だと思われる転生者の顔合わせとお聞きしました」

「重要だと思われる転生者の顔合わせ?」

「キャスリーンは重要人物だな」

「レオナルド様。名前呼びはお控えください」

「良いじゃねぇか」

「良くはございません」

「迷惑してるんじゃない?やめてあげたら?好きな子をいじめるお子ちゃまじゃないでしょ?」

「そうですね。そのような……ゴフッ」

「リーサ?やだ、ちょっとっ」

 リーサさんの口から溢れる血液。リーサさんがグラリと傾く。隣のジョーダンさんがリーサさんを支えた。それを見ながら無意識に身体が動く。

「ジョーダンさん、リーサさんを寝かせて。横向きに。セシルさん、リーサさんの服を緩めて。ラッセル様、現場保持。レオナルド様、どなたか信頼出来る方を呼んでください」

「キャスリーン……いったい何を?」

「お早く!!」

 リーサさんの状態を見ながら言う。レオナルド様が駆け出していった。

 その頃になって王宮の職員たちが騒ぎだした。

「セシルさん、リーサさんは何か持病はありますか?」

「無いと思うわ」

「分かりました」

 光魔法を使う。リーサさんの健康を害する物が消えるように。あの夢の通りになったけれど、これが服毒かどうかは分からない。それでも毒による物だとしたら許せない。

 解毒をかけ続けていると、リーサさんの手から力が抜けた。呼吸が浅い。口の中の血液と残渣物を掻き出す。

「キャスリーンちゃんっ」

 リーサさんの手を握っていたセシルさんの悲鳴のような声が聞こえた。脈が止まっている。

 急いでCPR心肺蘇生法を行う。

「リーサさん、リーサさん」

 反応がない。胸骨圧迫は体重が軽すぎて難しいけれど、それでも行わなければならない。

「フェルナー嬢、代わるよ」

「おねっがいしま、す」

「タイミングを合わせるよ。1、2、3」

 ラッセル様が代わってくれた。

 引き続き解毒を行う。緊迫した空気。セシルさんの泣き声が小さく聞こえる。

「キャシーちゃん、何がっ」

 レオナルド様がサミュエル先生を連れてきてくれた。

「サミュエル先生、解毒がっ」

「大丈夫。出来てるよ」

「本当に?」

「よくやったね。後は……」

 気を抜いている場合じゃない。脈拍を確かめる。周りの王宮侍女や警護らしき人達が遠巻きにしているのが見えた。

「心拍、再開。ラッセル様、ありがとうございました」

「いやぁ、疲れたよ。でも無事に蘇生出来たかな?」

 王宮の人がリーサさんを連れていく。

「後はこちらで引き受けるよ。ラッセル殿、お疲れさまでした」

「ブラっ……お役に立てたようで」

 安心したのか力が抜けたように座り込むセシルさんを、ジョーダンさんが支える。私も力が抜けてしまった。私の背を誰かが支えた。

「キャスリーン様、大丈夫ですか?」

 聞き覚えのある声がした。

「シェーン様?どうして……」

「サミュエル様にお頼みしました」

 私を抱き上げて歩き出そうとするシェーン様を、急いで止める。

「シェーン様、大丈夫ですわ。降ろしてくださいませ」

「しかし……」

「お願いします。降ろしてくださいませ」

「ご無理はなさいませんように」

 しぶしぶ降ろしてくれたシェーン様の手を、レオナルド様が掴む。

「てめぇ、何者なにもんだ?」

「家業から逃げた腑抜けに名乗る名など無い」

「てめぇっ!!」

 激昂したレオナルド様が、シェーン様に掴みかかった。

「危ないよ。下がっていなさい」

 私の腕を掴んで、ラッセル様が後ろに下がらせてくれた。

「ほら、手を洗って」

 ラッセル様が水を出してくれた。御言葉に甘えて手を洗う。

「驚いたね」

「はい」

 レオナルド様が王宮警護に羽交い締めにされた。シェーン様は涼しい顔をしている。

「おっさん!!身分を証明してくれっ」

「あははは。フェルナー嬢に馴れ馴れしくしすぎるからだよ。その男は今回の茶会の参加者だよ。離してやってもらえるかい?」

「はっ、失礼いたしました」

 レオナルド様が離された。シェーン様をギッと睨んでから、歩いてくる。

「アイツはキャスリーンの何だ?」

「学院内でわたくしの護衛をしてくださってます。それよりもレオナルド様、名を呼ばないで欲しいとお願い致しましたわよね?」

「クセになっちまってんだよ。キャスリーンが可愛いのが悪い」

わたくし所為せいにしないでくださいませ」

「しかし、護衛か」

「学院に入り込むのは無理ですからね?」

「無理って言うなよ。愛しいキャスリーンの側に居たいんだ」

「それ、わたくしに対する恋情ではありませんよね?愛しいなんてでまかせですわよね?」

「でまかせじゃない。確かに恋情ではない。それは認める。だけどキャスリーンの側に居たいのは嘘じゃない」

「まずは名前で呼ぶのをお止めくださいませ。すべてはそこからでございます」

「呼んじゃ駄目なのかよ」

「何度も申し上げました。名を呼び捨てにするほど親しい間柄と取られてしまうと。それは醜聞になると。わたくしには婚約者が居ります。醜聞は貴族女性にとって命取りとなります。お控えくださいませ」

「……アイツはキャスリーン様と呼んでいたじゃないか」

「シェーン様は許可を取ってくださいましたから」

「俺にも許可をくれ」

「ローレンス様にお聞きください」

「ローレンス様?婚約者か?」

「はい」

「貴族じゃねぇか。どうやって会ったら良いんだよ」

「ラッセル様とはよく会われておられますわよ?」

「よし、ラッセルのおっさんに頼もう」

 表情がクルクル変わるなぁ。ちょっと面白い。

「なぁ、様って付ければ良いのか?」

「敬称の有無を仰っておられますか?」

「そうだけどよ」

「敬称関係なく、ですわ。そもそも……」

「失礼いたします。フェルナー侯爵令嬢様、ブランジット侯爵令息様がお呼びでございます」

 王宮の侍従が呼びに来た。あれ?この人、周りの侍従と侍従服が違う。困って思わずシェーン様を見る。

「キャスリーン様、どうかなさいましたか?」

「先生が呼んでおられるようです」

「お伴いたします」

「あ、他の人達も一緒に良いですか?先生がお呼びだとすると、先程の女性に関する事だと思うので」

「それは……」

「何か不都合でも?」

 ラッセル様が少し意地悪く聞いた。

「……いいえ。ご案内いたします」












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