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学院中等部 5学年生
王宮でのお茶会 ~未遂~
ゾロゾロと全員で移動する。もちろんシェーン様も一緒だ。シェーン様はレオナルド様と私の後ろを歩いている。
「こちらでございます」
「そこは倉庫だよね?以前王宮内を案内してもらったけど、いまだに覚えてるよ」
ラッセル様がのんびりと言った。シェーン様が指笛を吹いた。ピィィっという音が響いて、私達を守るように7人が姿を現した。内3人が倉庫のドアを慎重に開ける。
「キャスリーン様を」
短くシェーン様が言い置いて、偽侍従の男に蹴りを入れた。偽侍従の男が吹っ飛んで、壁に背中を打ち付けた。ズルズルと崩れ落ちる偽侍従の男。いったいいつの間に移動したのか、まったく分からなかったけれど、シェーン様が私をレオナルド様に託したのは分かった。
倉庫の中には3人が居たらしい。あっという間に制圧されていた。
その時になって、本来の警護であろう騎士が駆け付けてきた。
「何があった!!」
「フェルナー侯爵令嬢様の誘拐未遂だ。私達も狙われていたらしい」
「ゴーヴィリス国のジョーダン・モンターギュ・エドガー殿?失礼いたしました」
ジョーダンさんが顔を見せて事実を言う。ジョーダンさんは王宮内でも知られているのか、騎士が姿勢を正した。
「それとブランジット侯爵令息様がどこにおられるか知らないかな?」
「なんだ?このじじぃ」という胡散臭い人物を見る目が、ラッセル様に突き刺さる。
「この方は私の元上司であるカミーユ・ラッセル様だ」
「大変申し訳ございませんっ」
「いいよ、いいよ。胡散臭いじじぃだもんね」
「そっ、そんな事はっ」
「いいからさ。さっさと案内してくれない?」
「はっ、申し訳ございません」
サミュエル先生は王宮の一室にいた。豪華だけどスッキリと趣味の良い部屋だ。
「やぁ、みんなお揃いで」
「失礼いたします。先生、先程連れ去られそうになりましたわ」
「王宮内で?」
「騎士に引き渡したよ。何ともなくて良かったけどね」
「ラッセル殿、申し訳ありません」
「あの連中は何をしたいんだろうね?」
「おそらくキャシーちゃんを傀儡にしたいんだよ。光の聖女様を自分達が有利なように動かしたいんだろうね」
「え?光の聖女様って、今空席ですよね?」
セシルさんが声をあげた。さっきまでジョーダンさんに室内のアレコレを聞いていたけど、会話は聞こえていたらしい。ちなみにレオナルド様は私の後ろで護衛のように立っている。
「そうですよ、ロシュフォール嬢。キャシーちゃんはスタヴィリス国で光の聖女様と呼ばれているんだ。聖国から調査員も来ている。任命は卒業後になるだろうけどね」
「だから『重要だと思われる転生者の顔合わせ』なの?」
「ロシュフォール嬢はアウラリア国の海運業を一手に引き受けている、ロシュフォール家の令嬢でしょう?そういう事に関係なくキャシーちゃんの友人になってほしいという思惑もあると思う」
「そもそもこの人選は誰がしたんだい?」
「聖国ですよ、ラッセル殿。王家を通じて正式に要請されました。ロシュフォール嬢やマルムグヴィスト嬢が、ゴーヴィリス国に視察に訪れていたのも聖国の思惑でしょう」
「そういえばマルムグヴィスト嬢は?ここには居ないね」
「信頼出来る侍女を付けて隣室に寝かせています。キャシーちゃんの解毒が上手くいったから症状も軽く済んで良かったですよ」
「それで?マルムグヴィスト嬢は何の役割なんだい?」
ラッセル様の追求に、サミュエル先生がタジタジとなっている。
「ラッセル殿ならご存じでは?彼女はシャスマネー国の権威の娘ですよ」
「権威ね。マルムグヴィスト博士の娘なんだね?」
「えぇ」
「この集まりにこのじじぃが入った訳は分からないけどね」
「ご冗談を。ゴーヴィリス国王宮の知恵袋殿」
「あはははは。過大評価だね」
マルムグヴィスト博士。私でも聞いた事がある魔法神秘学の権威だ。魔法を使えなくなる人が増える中、魔法の系統を分け、分類により使いやすい魔法を構築し、現代に合うように分かりやすく解説した魔法神秘学者。「魔法は神から授けられし力」と説く聖国もその系統分けやマルムグィスト博士の功績は否定していない。学院での魔法の教本は、マルムグヴィスト博士の物だ。
そういえばお義父様が言っていたっけ。「5歳にならないと魔法を使えても上手く制御出来ないから危険。だから魔法を授けられると言う」って。私は日常的に光魔法を使っている。使わないという生活は考えた事がない。
「フェルナー嬢?どうかしたのか?」
「少し考えておりました。マルムグヴィスト博士も仰っておられましたけど、属性魔法の中で光魔法だけが、なぜ治癒や解毒など人体修復に関する魔法なのかと」
「そういうもんじゃねぇの?」
「そういうもので片付けられない気がします」
「フェルナー嬢は真面目だな。しかも頭の回転が速い。さっきの指示出しも的確だったし」
「前世が前世ですので」
「看護師だったか。俺はしがないインピエガートだったからな」
「インピエ?」
「ニホンゴでなんと言うんだったか?あ、そうそうサラリーマンだ」
「会社員ですね。どんなお仕事を?」
「バイクの設計。空気抵抗とか考えて設計してさ。実際に形になった時のあの感動。今思い出しても痺れるぜ」
「死因はバイク事故とか言いませんよね?」
「どうして知ってんだ?」
合ってたの?バイク設計者がバイク事故で亡くなるって……。あり得なくはないけど、出来すぎている気がする。
「では私は?」
「ジョーダン殿はラッセル殿の後継及び、魔道具技師としてですよ」
「ただの趣味ですよ」
「先生、どうして転生者ばかりなのでしょう?他にも優秀な方はいらっしゃいますわよね?」
「その辺りは分からないよ。王家には書状で光の聖女様にこの人物との交流を深めてもらうようにと書いてあっただけらしいから」
「ん?じゃあ俺は?」
「カイル・レヴィ氏に関しては、こちらの思惑も入っている。キャシーちゃんを気に入っているっぽいからね」
「あんた、腹黒って言われねぇか?」
「食えない奴とか鬼畜とは罵られたねぇ。貴族相手ならこんなものでしょ?」
「俺は貴族じゃねぇ」
「残念だね。キャシーちゃんの護衛を任せても良いと思ったのに」
「本当か?」
「ま、使い物になるまで後5年かな?」
「今すぐじゃねぇのかよ」
「今のままじゃとても使えないよ。対人は長くやってないでしょ?」
「あんた、何を知ってる?」
「さぁね」
ノックの音がして、侍女が入ってきた。
「キャシーちゃん。ちょっとおいで」
「はい。どうかされましたか?」
「マルムグヴィスト嬢が目覚めた。チェックするから付いてきて」
「はい」
サミュエル先生の後に付いて隣室に行く。
「先生、ここって?」
「王宮の私の部屋。さっきの部屋もね。一応は続き部屋だけど今回はこちらから鍵をかけさせた」
王宮に自分の部屋があるのね。さすが公爵令息。
「マルムグヴィスト嬢、いいかな?」
「はい、誰?」
リーサさんの弱い声が聞こえた。押し出されて私が答える。
「リーサさん、キャスリーンです。辛い所は無いですか?」
「え、えぇ。私、どうしちゃったの?」
「ちょっといいかな?健康状態をチェックするよ。キャシーちゃん、やってくれるかな?」
「はい」
やり方は分かってる。何度もやってるもの。
リーサさんの手を取って光魔法を浸透させていく。皮膚、血管、筋肉、臓器。手から始めて頭のてっぺんから爪先まで。光の輪がリーサさんの全身を通り過ぎていく。CTスキャンみたいだね。毒素残渣はない。特に傷付いた場所もない。
「大丈夫です。すべて正常です」
ほぅっとリーサさんが息を吐いた。
「キャスリーンさんの全身チェックって、気持ちが良いわ。なんだかフワフワの毛布でくるまれているみたい」
「そうですか?」
「こちらでございます」
「そこは倉庫だよね?以前王宮内を案内してもらったけど、いまだに覚えてるよ」
ラッセル様がのんびりと言った。シェーン様が指笛を吹いた。ピィィっという音が響いて、私達を守るように7人が姿を現した。内3人が倉庫のドアを慎重に開ける。
「キャスリーン様を」
短くシェーン様が言い置いて、偽侍従の男に蹴りを入れた。偽侍従の男が吹っ飛んで、壁に背中を打ち付けた。ズルズルと崩れ落ちる偽侍従の男。いったいいつの間に移動したのか、まったく分からなかったけれど、シェーン様が私をレオナルド様に託したのは分かった。
倉庫の中には3人が居たらしい。あっという間に制圧されていた。
その時になって、本来の警護であろう騎士が駆け付けてきた。
「何があった!!」
「フェルナー侯爵令嬢様の誘拐未遂だ。私達も狙われていたらしい」
「ゴーヴィリス国のジョーダン・モンターギュ・エドガー殿?失礼いたしました」
ジョーダンさんが顔を見せて事実を言う。ジョーダンさんは王宮内でも知られているのか、騎士が姿勢を正した。
「それとブランジット侯爵令息様がどこにおられるか知らないかな?」
「なんだ?このじじぃ」という胡散臭い人物を見る目が、ラッセル様に突き刺さる。
「この方は私の元上司であるカミーユ・ラッセル様だ」
「大変申し訳ございませんっ」
「いいよ、いいよ。胡散臭いじじぃだもんね」
「そっ、そんな事はっ」
「いいからさ。さっさと案内してくれない?」
「はっ、申し訳ございません」
サミュエル先生は王宮の一室にいた。豪華だけどスッキリと趣味の良い部屋だ。
「やぁ、みんなお揃いで」
「失礼いたします。先生、先程連れ去られそうになりましたわ」
「王宮内で?」
「騎士に引き渡したよ。何ともなくて良かったけどね」
「ラッセル殿、申し訳ありません」
「あの連中は何をしたいんだろうね?」
「おそらくキャシーちゃんを傀儡にしたいんだよ。光の聖女様を自分達が有利なように動かしたいんだろうね」
「え?光の聖女様って、今空席ですよね?」
セシルさんが声をあげた。さっきまでジョーダンさんに室内のアレコレを聞いていたけど、会話は聞こえていたらしい。ちなみにレオナルド様は私の後ろで護衛のように立っている。
「そうですよ、ロシュフォール嬢。キャシーちゃんはスタヴィリス国で光の聖女様と呼ばれているんだ。聖国から調査員も来ている。任命は卒業後になるだろうけどね」
「だから『重要だと思われる転生者の顔合わせ』なの?」
「ロシュフォール嬢はアウラリア国の海運業を一手に引き受けている、ロシュフォール家の令嬢でしょう?そういう事に関係なくキャシーちゃんの友人になってほしいという思惑もあると思う」
「そもそもこの人選は誰がしたんだい?」
「聖国ですよ、ラッセル殿。王家を通じて正式に要請されました。ロシュフォール嬢やマルムグヴィスト嬢が、ゴーヴィリス国に視察に訪れていたのも聖国の思惑でしょう」
「そういえばマルムグヴィスト嬢は?ここには居ないね」
「信頼出来る侍女を付けて隣室に寝かせています。キャシーちゃんの解毒が上手くいったから症状も軽く済んで良かったですよ」
「それで?マルムグヴィスト嬢は何の役割なんだい?」
ラッセル様の追求に、サミュエル先生がタジタジとなっている。
「ラッセル殿ならご存じでは?彼女はシャスマネー国の権威の娘ですよ」
「権威ね。マルムグヴィスト博士の娘なんだね?」
「えぇ」
「この集まりにこのじじぃが入った訳は分からないけどね」
「ご冗談を。ゴーヴィリス国王宮の知恵袋殿」
「あはははは。過大評価だね」
マルムグヴィスト博士。私でも聞いた事がある魔法神秘学の権威だ。魔法を使えなくなる人が増える中、魔法の系統を分け、分類により使いやすい魔法を構築し、現代に合うように分かりやすく解説した魔法神秘学者。「魔法は神から授けられし力」と説く聖国もその系統分けやマルムグィスト博士の功績は否定していない。学院での魔法の教本は、マルムグヴィスト博士の物だ。
そういえばお義父様が言っていたっけ。「5歳にならないと魔法を使えても上手く制御出来ないから危険。だから魔法を授けられると言う」って。私は日常的に光魔法を使っている。使わないという生活は考えた事がない。
「フェルナー嬢?どうかしたのか?」
「少し考えておりました。マルムグヴィスト博士も仰っておられましたけど、属性魔法の中で光魔法だけが、なぜ治癒や解毒など人体修復に関する魔法なのかと」
「そういうもんじゃねぇの?」
「そういうもので片付けられない気がします」
「フェルナー嬢は真面目だな。しかも頭の回転が速い。さっきの指示出しも的確だったし」
「前世が前世ですので」
「看護師だったか。俺はしがないインピエガートだったからな」
「インピエ?」
「ニホンゴでなんと言うんだったか?あ、そうそうサラリーマンだ」
「会社員ですね。どんなお仕事を?」
「バイクの設計。空気抵抗とか考えて設計してさ。実際に形になった時のあの感動。今思い出しても痺れるぜ」
「死因はバイク事故とか言いませんよね?」
「どうして知ってんだ?」
合ってたの?バイク設計者がバイク事故で亡くなるって……。あり得なくはないけど、出来すぎている気がする。
「では私は?」
「ジョーダン殿はラッセル殿の後継及び、魔道具技師としてですよ」
「ただの趣味ですよ」
「先生、どうして転生者ばかりなのでしょう?他にも優秀な方はいらっしゃいますわよね?」
「その辺りは分からないよ。王家には書状で光の聖女様にこの人物との交流を深めてもらうようにと書いてあっただけらしいから」
「ん?じゃあ俺は?」
「カイル・レヴィ氏に関しては、こちらの思惑も入っている。キャシーちゃんを気に入っているっぽいからね」
「あんた、腹黒って言われねぇか?」
「食えない奴とか鬼畜とは罵られたねぇ。貴族相手ならこんなものでしょ?」
「俺は貴族じゃねぇ」
「残念だね。キャシーちゃんの護衛を任せても良いと思ったのに」
「本当か?」
「ま、使い物になるまで後5年かな?」
「今すぐじゃねぇのかよ」
「今のままじゃとても使えないよ。対人は長くやってないでしょ?」
「あんた、何を知ってる?」
「さぁね」
ノックの音がして、侍女が入ってきた。
「キャシーちゃん。ちょっとおいで」
「はい。どうかされましたか?」
「マルムグヴィスト嬢が目覚めた。チェックするから付いてきて」
「はい」
サミュエル先生の後に付いて隣室に行く。
「先生、ここって?」
「王宮の私の部屋。さっきの部屋もね。一応は続き部屋だけど今回はこちらから鍵をかけさせた」
王宮に自分の部屋があるのね。さすが公爵令息。
「マルムグヴィスト嬢、いいかな?」
「はい、誰?」
リーサさんの弱い声が聞こえた。押し出されて私が答える。
「リーサさん、キャスリーンです。辛い所は無いですか?」
「え、えぇ。私、どうしちゃったの?」
「ちょっといいかな?健康状態をチェックするよ。キャシーちゃん、やってくれるかな?」
「はい」
やり方は分かってる。何度もやってるもの。
リーサさんの手を取って光魔法を浸透させていく。皮膚、血管、筋肉、臓器。手から始めて頭のてっぺんから爪先まで。光の輪がリーサさんの全身を通り過ぎていく。CTスキャンみたいだね。毒素残渣はない。特に傷付いた場所もない。
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