3歳で捨てられた件

玲羅

文字の大きさ
172 / 733
学院中等部 5学年生

王宮でのお茶会 ~未遂~

 ゾロゾロと全員で移動する。もちろんシェーン様も一緒だ。シェーン様はレオナルド様と私の後ろを歩いている。

「こちらでございます」

「そこは倉庫だよね?以前王宮内を案内してもらったけど、いまだに覚えてるよ」

 ラッセル様がのんびりと言った。シェーン様が指笛を吹いた。ピィィっという音が響いて、私達を守るように7人が姿を現した。内3人が倉庫のドアを慎重に開ける。

「キャスリーン様を」

 短くシェーン様が言い置いて、偽侍従の男に蹴りを入れた。偽侍従の男が吹っ飛んで、壁に背中を打ち付けた。ズルズルと崩れ落ちる偽侍従の男。いったいいつの間に移動したのか、まったく分からなかったけれど、シェーン様が私をレオナルド様に託したのは分かった。

 倉庫の中には3人が居たらしい。あっという間に制圧されていた。

 その時になって、本来の警護であろう騎士が駆け付けてきた。

「何があった!!」

「フェルナー侯爵令嬢様の誘拐未遂だ。私達も狙われていたらしい」

「ゴーヴィリス国のジョーダン・モンターギュ・エドガー殿?失礼いたしました」

 ジョーダンさんが顔を見せて事実を言う。ジョーダンさんは王宮内でも知られているのか、騎士が姿勢を正した。

「それとブランジット侯爵令息様がどこにおられるか知らないかな?」

 「なんだ?このじじぃ」という胡散臭い人物を見る目が、ラッセル様に突き刺さる。

「この方は私の元上司であるカミーユ・ラッセル様だ」

「大変申し訳ございませんっ」

「いいよ、いいよ。胡散臭いじじぃだもんね」

「そっ、そんな事はっ」

「いいからさ。さっさと案内してくれない?」

「はっ、申し訳ございません」

 サミュエル先生は王宮の一室にいた。豪華だけどスッキリと趣味の良い部屋だ。

「やぁ、みんなお揃いで」

「失礼いたします。先生、先程連れ去られそうになりましたわ」

「王宮内で?」

「騎士に引き渡したよ。何ともなくて良かったけどね」

「ラッセル殿、申し訳ありません」

「あの連中は何をしたいんだろうね?」

「おそらくキャシーちゃんを傀儡にしたいんだよ。光の聖女様を自分達が有利なように動かしたいんだろうね」

「え?光の聖女様って、今空席ですよね?」

 セシルさんが声をあげた。さっきまでジョーダンさんに室内のアレコレを聞いていたけど、会話は聞こえていたらしい。ちなみにレオナルド様は私の後ろで護衛のように立っている。

「そうですよ、ロシュフォール嬢。キャシーちゃんはスタヴィリス国で光の聖女様と呼ばれているんだ。聖国から調査員も来ている。任命は卒業後になるだろうけどね」

「だから『重要だと思われる転生者の顔合わせ』なの?」

「ロシュフォール嬢はアウラリア国の海運業を一手に引き受けている、ロシュフォール家の令嬢でしょう?そういう事に関係なくキャシーちゃんの友人になってほしいという思惑もあると思う」

「そもそもこの人選は誰がしたんだい?」

「聖国ですよ、ラッセル殿。王家を通じて正式に要請されました。ロシュフォール嬢やマルムグヴィスト嬢が、ゴーヴィリス国に視察に訪れていたのも聖国の思惑でしょう」

「そういえばマルムグヴィスト嬢は?ここには居ないね」

「信頼出来る侍女を付けて隣室に寝かせています。キャシーちゃんの解毒が上手くいったから症状も軽く済んで良かったですよ」

「それで?マルムグヴィスト嬢は何の役割なんだい?」

 ラッセル様の追求に、サミュエル先生がタジタジとなっている。

「ラッセル殿ならご存じでは?彼女はシャスマネー国の権威の娘ですよ」

「権威ね。マルムグヴィスト博士の娘なんだね?」

「えぇ」

「この集まりにこのじじぃが入った訳は分からないけどね」

「ご冗談を。ゴーヴィリス国王宮の知恵袋殿」

「あはははは。過大評価だね」

 マルムグヴィスト博士。私でも聞いた事がある魔法神秘学の権威だ。魔法を使えなくなる人が増える中、魔法の系統を分け、分類により使いやすい魔法を構築し、現代に合うように分かりやすく解説した魔法神秘学者。「魔法は神から授けられし力」と説く聖国もその系統分けやマルムグィスト博士の功績は否定していない。学院での魔法の教本は、マルムグヴィスト博士の物だ。

 そういえばお義父様が言っていたっけ。「5歳にならないと魔法を使えても上手く制御出来ないから危険。だから魔法を授けられると言う」って。私は日常的に光魔法を使っている。使わないという生活は考えた事がない。

「フェルナー嬢?どうかしたのか?」

「少し考えておりました。マルムグヴィスト博士も仰っておられましたけど、属性魔法の中で光魔法だけが、なぜ治癒や解毒など人体修復に関する魔法なのかと」

「そういうもんじゃねぇの?」

「そういうもので片付けられない気がします」

「フェルナー嬢は真面目だな。しかも頭の回転が速い。さっきの指示出しも的確だったし」

「前世が前世ですので」

「看護師だったか。俺はしがないインピエガートだったからな」

「インピエ?」

「ニホンゴでなんと言うんだったか?あ、そうそうサラリーマンだ」

「会社員ですね。どんなお仕事を?」

「バイクの設計。空気抵抗とか考えて設計してさ。実際に形になった時のあの感動。今思い出しても痺れるぜ」

「死因はバイク事故とか言いませんよね?」

「どうして知ってんだ?」

 合ってたの?バイク設計者がバイク事故で亡くなるって……。あり得なくはないけど、出来すぎている気がする。

「では私は?」

「ジョーダン殿はラッセル殿の後継及び、魔道具技師としてですよ」

「ただの趣味ですよ」

「先生、どうして転生者ばかりなのでしょう?他にも優秀な方はいらっしゃいますわよね?」

「その辺りは分からないよ。王家には書状で光の聖女様にこの人物との交流を深めてもらうようにと書いてあっただけらしいから」

「ん?じゃあ俺は?」

「カイル・レヴィ氏に関しては、こちらの思惑も入っている。キャシーちゃんを気に入っているっぽいからね」

「あんた、腹黒って言われねぇか?」

「食えない奴とか鬼畜とは罵られたねぇ。貴族相手ならこんなものでしょ?」

「俺は貴族じゃねぇ」

「残念だね。キャシーちゃんの護衛を任せても良いと思ったのに」

本当マジか?」

「ま、使い物になるまで後5年かな?」

「今すぐじゃねぇのかよ」

「今のままじゃとても使えないよ。対人は長くやってないでしょ?」

「あんた、何を知ってる?」

「さぁね」

 ノックの音がして、侍女が入ってきた。

「キャシーちゃん。ちょっとおいで」

「はい。どうかされましたか?」

「マルムグヴィスト嬢が目覚めた。チェックするから付いてきて」

「はい」

 サミュエル先生の後に付いて隣室に行く。

「先生、ここって?」

「王宮の私の部屋。さっきの部屋もね。一応は続き部屋だけど今回はこちらから鍵をかけさせた」

 王宮に自分の部屋があるのね。さすが公爵令息。

「マルムグヴィスト嬢、いいかな?」

「はい、誰?」

 リーサさんの弱い声が聞こえた。押し出されて私が答える。

「リーサさん、キャスリーンです。つらい所は無いですか?」

「え、えぇ。私、どうしちゃったの?」

「ちょっといいかな?健康状態をチェックするよ。キャシーちゃん、やってくれるかな?」

「はい」

 やり方は分かってる。何度もやってるもの。

 リーサさんの手を取って光魔法を浸透させていく。皮膚、血管、筋肉、臓器。手から始めて頭のてっぺんから爪先まで。光の輪がリーサさんの全身を通り過ぎていく。CTスキャンみたいだね。毒素残渣はない。特に傷付いた場所もない。

「大丈夫です。すべて正常です」

 ほぅっとリーサさんが息を吐いた。

「キャスリーンさんの全身チェックって、気持ちが良いわ。なんだかフワフワの毛布でくるまれているみたい」

「そうですか?」

















    
感想 103

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」