3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 6学年生

フェルナー領へ

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 翌日、母親に連れられて、子供がタウンハウス王都のフェルナー侯爵邸に来てくれた。

「お姉ちゃん」

「ごめんね。側に行けなくて」

「いいの。お母様に聞いたの。ばしゃからおりちゃいけない人もいるんだって。お姉ちゃんはおりちゃいけない人なんだよね?」

「本当は降りたかったの。ごめんなさい」

「あのね、お姉ちゃん、ピカピカのキラキラなの。だからいいの」

 ピカピカのキラキラ?

「この子はたまに言うんです。暖炉みたいとか、お水みたいとか。フェルナー様はピカピカのキラキラに見えたようですね」

 戸惑っていると、お母様が解説してくれた。それって、魔法属性が見えてる?

 少しおもてなしをした後、子供とお母様は帰っていった。


 その翌日、フェルナー領へ出発する。今回はフェルナー領の中でも保養地と呼ばれる別荘地に滞在するらしい。滞在期間は10日間。

 フェルナー領都では私の希望も入れて、教会と救民院への訪問と、病院の視察も組まれている。そしてローレンス様は同行していない。お仕事だから仕方がないよね。一緒に馬車に乗ってくれているのはお義母様。まず最初に向かうのは別荘地のザウスコンウェル。ここはフェルナー領でも標高が高い場所で、王都より5度は気温が低い。もしかしたら10度近く違うかも?とは事前にローレンス様が教えてくれた。

「お義母様、キラキラしておりますけれど、あれは?」

「湖よ。あの湖からティズラ河が始まるの」

 ティズラ河は王都を経てキプァ国まで、国を跨いで流れる大河だ。

「あそこから……」

フェルナー侯爵ウチの別荘は、1番良い場所に建っているのよ。王家に文句を言われちゃったらしいわ」

「よろしかったのですか?」

「ここはフェルナー侯爵領だもの。文句を言われる筋合いはありませんって、言い返したそうよ。あ、この話は今代王家じゃないから。3代前の話よ」

 そういえば別邸と別荘の違いってなんだろう?

「お義母様、フェルナー侯爵家にはいくつかの別邸がございますわよね?あちらの別荘も別邸となるのでは?」

「別荘は余暇を楽しむ為の建物よ。あの別荘は夏にしか使わないの。冬は寒いから。湖も凍っちゃうしね。別邸は季節関係なく滞在する建物ね」

 湖の名前はペアルル湖。大粒の淡水真珠が採れるらしく、名産とまでいかないけれど真珠加工業に携わる人が多いらしい。そういえばデザインを見せられたけど、私の婚姻式で使う予定のパリュールも真珠を用いた物だった。真珠とダイヤモンドね。

 パリュールはアクセサリーのセットだ。だいたい4から5点のセットで、私の婚姻式のパリュールはネックレス、ブローチ、イヤリング、ティアラ、ブレスレットのセットらしい。ローレンス様とお義母様が盛り上がっているのよね。

 ちなみにランベルトお義兄様とアンバー様の婚姻式に用いられるパリュールはイエローダイヤとブルートルマリンが使われている。こちらはすでに製作に入っていて、ランベルトお義兄様がウンウン言いながら色とデザインを決めていた。

 私のパリュールが、なぜこんなにも早くから準備されているのかというと、ティアラやネックレスに使われる、質の良い淡水真珠の数を揃える為だそう。養殖技術はまだ知られていないのか、はたまた発表されていないだけか。そこは分からないけれど、とにかく時間がかかるらしい。

 別荘に着くと、お義母様が別荘の中を案内してくれた。カントリーハウス領城タウンハウス王都のフェルナー邸と比べると確かに狭いけど、それでも十分に広いお部屋で室内には木がふんだんに使われていた。

 その他にも湖を見て楽しむ為の、広いテラスのある食事室や趣味の為の部屋など、そこそこの広さはあると思う。

「ピアノもあるんですか?」

「えぇ。キャシーちゃん、弾くでしょう?」

「ずいぶん触れておりませんから、少し不安ですが」

「ここにはね、ジルベール様がよく滞在されていたのよ」

「だからピアノが?」

「今回も来られると連絡があったわ」

 私の水魔法の先生であるジルベール様にお会いするのは、学院入学以降だ。10年は経っていないけど、6年位?攻撃魔法は一切教えてくれなかったけれど、水魔法の基礎はみっちり教えられた。サミュエル先生とジルベール先生の2人によって、光と水の同時行使という無茶振りをされたのもあの頃だった。今は同時行使で作っているブレシングアクア聖恵水も最初は水球に治癒を掛けて作っていた。

 そのジルベール様がフラリと別荘に現れたのは、私とお義母様が到着した翌々日だった。ヒゲと髪が伸び放題で、服装も泥だらけ。貧民とまでいかなくても、ボロボロのヨレヨレを身に纏って、別荘に現れた。

「久しぶりだな、キャスリーン」

 そう声をかけられてもしばらく動けなかった私は、悪くないと思う。側に控えてくれていたマリアさんに庇われ、ダニエル様がジルベール様にナイフを突きつけるまでは動けなかった。

「叔父様?」

「そうそう。キャスリーンの水魔法の先生だった叔父様だ」

「ダニエル様、離してくださいませ。わたくしの叔父様、ジルベール様ですわ」

 ものすごく警戒しながらも突きつけていたナイフを、ジルベール様から離したダニエル様は、かなりの距離をあっという間に戻ってきた。

 その頃にフェルナー家の護衛が駆けつけ、なんとジルベール様を湖に蹴り飛ばした。ジルベール様は笑いながら落ちていって、その上で髪を整えて上がってきた。

「ヒドイなぁ」

「そうせよと仰ったのは、貴方様にございますが?」

「本気で蹴ったでしょ?とっさに飛んだからダメージは無いけれど」

「失礼いたしました。お嬢様に近付く不審者かと」

「えぇぇ。ヒドイなぁ」

「とにかく身だしなみを整えてきてください。お嬢様が居られるのですよ」

「はいはい」

 今回護衛をまとめてくれているゴルド(ジルベール様を蹴り飛ばした護衛)によると、よくああして領城にも現れるらしい。その度に「本当に不審者だったらどうするつもりだ」と言われ、最終的にあの扱いになったんだとか。

 湯浴みを終えて、髭を剃り、髪も整えたジルベール様は私の先生をしてくれていた頃と変わらなかった。服も着替えて貴族らしく見える。

「本当に貴族だったんだ」

 ダニエル様が呟いた。

「本当に貴族だったんだんだよ。君はキャスリーンの護衛かな?キャスリーンも今や光の聖女様だもんね。専属で護衛が付いておかしくないよね。それにしても良い反応速度だったね。楽しみだなぁ」

「ジルベール様、彼らをお試しになるのはお止めになった方がいいかと」

「どうして?」

「ブランジット公爵家の者ですので」

「ふぅん。ますます興味深いね」

「叔父様は、武術を嗜まれておられるのですか?」

「旅暮らしだからね。野盗に襲われたりもするし、狼とか熊とかね。辺境の方には魔獣と呼ばれる変異種も多いし」

「変異種?」

「野生の動物より大きかったり、行動パターンが違ったりね。そういうのを魔獣って呼ぶんだよ」

「そうなのですね」

 今日はお義母様は別荘に居ない。ご用事で別荘を開けられている。だからここにいるのは私と護衛達、それから使用人だけだ。

 今日はのんびりしていて良いと言われたから、薬草研究会で取り組んでいる香りと薬効についての考えを纏めていたんだけど。ほら、私の植物魔法ってどの魔法を使っても花が咲いちゃうから。

「それで?この状況は?」

わたくしの植物魔法です」

「は?キャスリーンは光と水だったよね?」

「後発現いたしました。転生者に多いそうです」

「他に咲かせられるのかな?」













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