3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 7学年生

友人との語らい

 お義母様にフェアールカク領での出来事を話し、夜にローレンス様にも、少し話した。

 お義母様はソフィア・フェアールカク様の事を知っていた。あくまで噂話として教えてくれたのは、私がマッケンステイン様に書いて送った内容、ほぼそのままだった。

「この噂、キャシーちゃんが知らせたのでしょう?フェアールカク辺境伯夫人とご令嬢の姿が見えないと思っていたのよね。こんな時だし、って思ってたけど、なるほどねぇ。キャシーちゃんを攻撃するなんて許せないわね。大丈夫よ、キャシーちゃん。王都では私が話した内容が広まっているわ。この噂を広げた人の手腕は称賛に値するわね」

 ニコニコ顔のお義母様が怖かったです。

 ローレンスは、もっと直接的だった。ソフィア様を阿婆擦れだと言い切ったんだもの。

 サミュエル先生が言っていた「婚約者気取り」は緩いゆるい表現だったようで、ローレンス様に言わせると、妻として振る舞っているのかという程鬱陶しかったらしい。フェアールカク辺境伯にも何度も抗議したんだって。

「それでも言葉は曲解するし、無視をしたら『照れてらっしゃるのね』になるし、『婚約する気はない』と言ったら『じゃあ、結婚する気はあるのよね?』とか、気がおかしくなりそうだった」

「強烈ですわね」

「長期休暇でキャシーの顔を見て話をして癒されなければ、学院登校拒否を起こすところだったよ」

 私の横にピッタリ座って言う。さすがにお膝だっこは遠慮してくれた。

 どうやらソフィア様のおかげ所為で、ローレンス様の『氷の貴公子フロストエィル』化が進んだようだ。

 フェアールカク領の話には少し険しい顔をされたけど、「よく頑張ったね」とお褒めの言葉をいただいた。


 翌日、ガブリエラ様が訪ねてきてくれた。

「なんだか久しぶりな気がいたしますわ」

「ガブリエラ様、長期休暇にお戻りになっておられましたのね」

「えぇ。それがゲイツ様と交流を続ける条件でございますから」

 しばらく話をして、本題に入った。

「グクラン辺境領の、魔晶の森の異変についてなのですけれど」

わたくしはそこまで詳しくございませんの。次兄が一番詳しいと思いますわ」

「ご連絡は取っていただけまして?」

「お話をいただいて、すぐに予定の見直しをしておりました。今日は無理ですけど、明日以降ならいつでも良いそうですわ」

 どうしよう。ララ様に連絡出来ていない。

「キャスリーン様?」

わたくしはお話のような生物にそこまで詳しくないのです。どちらかと言うと、ララ・ノックス様の方が詳しいと思いましたので、お話をうかがおうと思っていたのですが」

「あら、それなら次兄に救民院に向かうように、話をいたしますわ」

「辺境領の皆様は、不安に思われたりしていないのでしょうか?」

「不安でしょうけど、元々魔晶の森はおかしな生態系でしたし、対処は出来ているようですわ」

「原因は分かっていないのですわよね?」

「えぇ。ただ異変が起きる前に森の奥に行ったパック爺によると、不思議な黒い渦を見付けたそうですわ。すぐに離れたそうですけれど。その後すぐに森の異変に気付いたそうです」

「異変とは、異形の動物ですか?」

「いいえ。動く植物ですわ」

「はい?」

「ですから、植物が勝手に動いていたそうです。動いていたというか、移動していたというか。それで、動物の死骸を飲み込んだのですって」

「植物が?」

「植物というか、樹木ですわね。オークブナの木に、顔のような物が現れて、ウサギの死骸を飲み込んだのですって。怖くなって急いで逃げたと、パック爺が言っていたようです」

 顔のような物が現れた樹木。それってトレントとか言うんじゃなかったっけ?動物を食べるかどうかは不明だけど。

「ガブリエラ様、先程黒い渦を見たと仰いましたけど、魔晶の森に黒と紫のマーブル状のモヤが漂ってたとか、聞いておりませんか?」

「黒と紫のマーブル状のモヤ?ですの?わたくしは聞いておりませんけれど。何かございますの?」

「はっきりとは分からないのですけれど、フェアールカク領で聞いたのです。ロマンサ北方国ではそんなモヤを見たのですって」

「不気味なお話ですのね」

 ガブリエラ様が怖そうに自分の身を抱いた。


 翌日、教会のララ様を訪ねる。

「キャシーちゃん、おかえりなさい。大丈夫?疲れてない?」

「無事に戻りました、ララ様。昨日ゆっくりさせていただいて、疲れは取れましたから大丈夫ですわ」

「キャシーちゃんは大丈夫って言いながら、無理しちゃうから心配なのよ」

「ララ様ったら……。そうですわ、ララ様。ララ様って、ファンタジー物にお詳しかったですか?」

「ファンタジー物……。転生なんてしてるこの状況が、十分ファンタジーだけどね。うーん。好きで読んではいたわよ?」

「お聞きしたい事があるのですが」

「なぁに?珍しいわね」

「顔のような模様の動物を食べちゃう樹木って、何か知りませんか?」

「トレントかしら?ファンタジーでは割合ポピュラーなモンスターね」

「後はスライムとか。多脚の動物とか、多頭の蛇とか犬とか狼とか」

「えっ?何、それ。まんまファンタジーに出てくるモンスターよ。ワームとかも定番ね。でも、この世界には居ないらしいじゃない?」

「近い内にグクラン辺境伯家の次男様が、お話をしに来られるそうです。同席していただけますか?」

「良いの?私は平民よ?」

わたくしの友人ですもの。同席をお願いしているのはこちらです。文句は言わせませんわ」

「キャシーちゃん、強い。頼もしいわ。じゃあ、出来るだけお嬢様ぶりっ子してみるわ」

「頑張ってくださいませ」

 笑って言うと、ララ様が豊かな胸を張った。

「えぇ。記憶の奥底に眠る淑女らしさを叩き起こして、キャシーちゃんの友人に相応しくあれるように……振る舞えるかしら?」

「『振る舞うわ』とかでは無いのですか?」

「だってぇ」

わたくしにそうやって上目遣いをされましても、効果はございませんわよ?」

 そういえばララ様は学院に居る時、これを多用してたんだっけ?ローレンス様が言っていたっけ。似合わないってローレンス様が眉を寄せてたっけ。

「ララ様、ソフィア様をご存じですか?」

「ソフィアって、ソフィア・フェアールカク?」

「はい」

「知ってるわ。っていうか、散々イジメられたわね」

「イジメられた?」

「幼稚な嫌がらせよ。私だけ重要な事を知らされなかったりとか、仲間はずれとかね。後はローレンス様に近付くなって警告されたわね。数人に取り囲まれて」

「大丈夫だったのですか?」

「あの頃は自分を悲劇のヒロインだって、思い込んでいたしね。これ位で挫けてなんかやらないって、自分で自分を鼓舞してたわ。キャシーちゃんが入学してきてからそれも落ち着いたっていうか、あれはキャシーちゃんに危害を加えようかどうか、迷っていたのね、きっと。でもねぇ、キャシーちゃんに危害を加えたら、ローレンス様が『氷の貴公子フロストエィル』どころか、恐怖の大魔王化しちゃってたと思うわよ。貴族だしその辺りは上手くやってたんじゃない?」

わたくし、何も気が付かなくて」

「当然よ。ローレンス様がガッチリ守ってたのよ?いくら前世の記憶持ちだからって、10歳前後の子供がそこまで気付くって、無いんじゃない?気にしなくていいわよ」

 カラカラとララ様が笑う。私ってみんなに守られてるんだなと、不意に実感した。

「それで、辺境伯様のご子息様だっけ?いつになるかわからないのよね?」

「はい。彼の方もお仕事をしていらっしゃいますし、いつになるという確約は出来ておりません」

「ふふっ。良いわよ、気にしなくて。どうせ私はここに居るし。基本的に動かないからね。それよりキャシーちゃんこそ大丈夫?忙しいんじゃないの?」




















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