3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 9学年生

公爵位

「今は春期休暇か。じゃあ、無理だね」

「申し訳ございません」

「最終学年になったら、プロトコール国際儀礼の授業で、王城に通う事になるからね。楽しみにしてるよ」

「その際はよろしくお願い致します」

 学院生活も、後2年かぁ。振る舞えるタイムリミットだ。平民の子供は、12~13歳程度から1人前として働いていると聞く。私達貴族が18歳までのんびりと学院で過ごしているのとは大違いだ。

「そろそろ行こう。王城からの使いが到着した」

 正式な叙爵じょしゃくはこの後、王城で開かれるパーティーでなされるという。そのパーティーをもって、エドワード様は王籍を離れ、ピュエンルーデ公爵としてスタヴィリス国の教会の事務方トップになる。今も枢密院の院長だけれど、これ以降は王族でありながら王族としては振る舞えない。地位としては別組織になるからだ。

 とか言っておいて、お義父様と同等の地位のようなんだけれど。お義父様も教会の管理の長っぽい仕事だし。

 まぁ、仕事内容は違うけれど。

 聖堂に戻ると、王城からの使いとして、お義父様が居た。

「お義父様?」

「お役目はしっかり果たせたようだな」

「お使者様はお義父様でしたの?」

「都合がいいだろう?教会関係の担当だし」

「よろしいのですか?宰相閣下がここに居られても」

「陛下の親心よ。様子を見てきてくれと。第2王子殿下も居られるというのに」

 エドワード様とミリアディス様が聖堂に到着されたらしい。

「それではお義父様、わたくしはあちらで居ります」

「そうだな。フェルナー家の娘としての務めを果たしてきなさい」

 フェルナー家の娘としての務めって、特に無いんだけれど。人に見られても恥ずかしくないように、って事だと思う。

 聖堂内は、椅子が並び替えられていた。さっきまではまっすぐに置かれていた椅子が、今は少し角度が付けられている。一点集中とでも言えばいいのか。聖壇をみんなが体を傾けずに見られるようになっている。

 着席順は特に決まっていない。さっきまでの成婚式の通り、座っているっぽい。

 1番後ろに座ると、第2王子殿下も隣に座った。

「殿下もこちらに?」

「後ろからの方が色々と見やすいからね」

 色々と、ですか。

 エドワード様とミリアディス様に相対して、お義父様が立っている。

「陛下からのお言葉である。エドワード・パトリス・スタヴィリスにピュエンルーデの名を与え、公爵位を授ける」

「拝命いたしました。いち臣下として、これからもスタヴィリス国の為に尽くします」

「正式な交付は、10日後の王城パーティーにて行います」

「承りました」

 拍手が沸き起こった。エドワード様とミリアディス様が目を合わせて微笑まれた後、参列者に向かって礼を取る。今日この日からは、エドワード様は王族じゃないと、態度で示した形だ。

「私が叙爵じょしゃくする時は、いつだろうね」

「殿下?」

「早く叙爵じょしゃくしてサフィアを安心させてやりたい気持ちと、1日でも長く父上に王として君臨していてほしい気持ちと、ごちゃ混ぜでね。今は第2王子として政務に携わっているけれど、時々エドワードが羨ましくなるよ」

「エドワード様にはエドワード様の、殿下には殿下のやるべき事があるのではないですか?それこそが天よりの下された使命Callingなのでしょう」

「フェルナー嬢の光の聖女様のように?」

「そうであると良いのですが。わたくしは肩書きに関係なく、光魔法使いとして苦しむ人々を救いたい。その一心にございます」

「そういう貴女だからこそ、神々は貴女を光の聖女と定めたのだろうね」

「お戯れを」

 まだ任命されていません、と何度か言っているけれど、すでに認定はされてしまっている。正式な任命がまだなだけだ。

 エドワード様の公爵位叙爵じょしゃくは無事に終わった。

「何人か要注意人物が居たね」

「そうですわね。何名か不穏な方が居られましたわね」

 エドワード様が公爵位を叙爵じょしゃくされる事は、水面下では決まっていた事だし、今叙爵じょしゃくされたからって、何が変わる訳じゃないのに。

「何かございますのでしょうか?」

「利権関係かな?それこそ光魔法持ちを自分の所に多く抱え込みたいのは、必ず居るだろうし」

「光魔法使いを政治の道具には、してほしくございませんわね」

「多く抱え込んでいれば、貸し出しが出来るしね。そうすれば貸しが作れる」

「立場的に高くなれるというのは、否定いたしませんわ。それを政治の駆け引きには使ってほしくございません」

「光魔法使いの酷使にも繋がるしね」

「医師の立場の低下にも繋がりますわ」

「残念ながら、光魔法使いが魔法を行使するのに、医師の指示が必要というのは、そこまで知られていないんだよ」

「予想出来てはおりましたが、何故でしょう?」

「光魔法使いには、目印が無いからだね」

「あぁ、そういう……」

 光魔法使いをどれだけ抱え込んで酷使しても保護出来ないのは、光魔法使いであると分かってもそこまでの人数を割けないから。腹に一物抱えた貴族が、保護という名目で抱え込んでしまえば、手を出せない。

「だから登録制にしたいんだけどね」

「平民には祝福の儀式を受けない人も、居ると習いましたが」

「寄付が必要だからね。貴族には高額ではないけど、庶民には高額だと感じる人も多い」

 ララさんも祝福の儀式を受けたのは、10歳を越えてからだと言っていた。奉公に出される寸前にあちらから「魔法属性は?」と聞かれたらしい。同じく奉公に出されていたお兄さんが、それを知って連れ出して、一緒に祝福の儀式を受けたらしい。という事は、お兄さんも受けてなかったのね?

 寺子屋みたいな学問所は、読み書き計算を覚えたら辞めさせられたって言うし、ララさんは毒親だって言っていたけど、本当にそうだと思う。

 そう考えると、私は運が良かったんだろう。たとえ殺されかけても。

 第2王子とエドワード様とミリアディス様の所に伺おうとしたら、エドワード様から第2王子にヘルプが来て、先に行ってしまった。お祝いを言う人を捌ける神官が居なかったらしい。側近の人はミリアディス様の方に行かせたんだって。

「愛妻家だねぇ。でも自分の方を捌けないからと、私に助けを求めるのは、どうかと思うけど」

 第2王子はそう言って笑いながら行ってしまった。

 そうして私に向けられる、様々な視線。第2王子との関係を聞きたい人も居るんだろうな。

「フェルナー様、ごめんなさい、手を貸してください」

 ララさんが駆け込んできた。救民院の制服のままだ。

「どうしました?」

 ララさんがいつもは使わない「フェルナー様」という言葉を使っているという事は、たぶん何も無いんだと思う。誰かに指示されたのかしら?ここから連れ出すには、光魔法使いが必要だと思わせる方が、都合が良いものね。

「私ひとりじゃ手が足りないの」

「分かりました。伺います。症状を教えてください」

 他の人には分からないであろう医療用語っぽい言葉を話ながら、聖堂を出る。十分距離が離れたら、ララさんが立ち止まった。

「ありがとうございました」

「あ、分かっちゃった?」

「ララさんがわたくしを『フェルナー様』と呼ぶ事はございませんもの」

「さすが、キャシーちゃん。ダニエルさんのアイデアよ。キャシーちゃんなら分かるだろうからって」

「そのダニエルさんは?」

「子供達の遊び相手をしてくれてる。マリアさんは勉強を教えたり。あの2人って頭も良いのね」

「護衛ですもの。頭脳無しでは務まりませんわよ」

「そうよね」


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