3歳で捨てられた件

玲羅

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学院高等部 青学年生

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「それと、彼は?ずいぶん大きいけど」

わたくしの護衛ですわ。友人でもございますのよ」

「護衛が友達?」

「元は友人でしたの。訓練を受けて護衛になってくださいました」

「えっ?」

 レオナルドさんがマシュー様に黙って頭を下げる。マシュー様がつられたように頭を下げた。

「大きいなぁ」

「お強くてお優しいのですわよ?お口ぶりは少し乱暴ですが」

 レオナルドさんが戦っている所を、直接見た事は無いけれど。サミュエル先生が私の護衛にと言ってくるのだから、たぶん強いのよね?

「彼は強いの?」

「えぇ」

「見てみたい」

「えっ?」

「おじいさまに頼もう、キャスリーン」

「あの、マシュー様?」

「ねぇ、おじいさま、僕、彼が戦うところが見たいです」

「ふむ、彼のか」

 じゃれあいをやめてこちらを見ていたファレンノーザ公爵に、マシュー様がおねだりする。

「レオナルドさん、申し訳ございません」

「あれって国軍の総大将だろ?相当強いのが出てくんじゃね?」

「かもしれませんわね」

「ま、キャスリーンの婚約者がOKしたら、だけどな」

「私は賛成だよ。キャシーちゃんもカイルの強さを、知っておきたいでしょ?」

わたくしは積極的に知りたいとは申せませんわ。お怪我も心配ですし」

「怪我したら治してくれんだろ?」

「治療はいたしますが」

「「決まりだね(な)」」

 どうしてこうも好戦的なのでしょう。公爵閣下もマシュー様もノリノリで、今から国軍の訓練場に行って試合をとか言い出すし。頼みの綱のマリアさんは微笑んでいるだけだし。

「セシルさんとリーサさんを放っては行けませんわ」

 ちょっと抵抗してみた。

「行き先は言っていくよ」

 通じなかった。結局今から行くのでしょうか?

 マリアさんが伝令に走ってくれて、セシルさんとリーサさんとララさんも一緒に行きたいと付いてきた。

「調合室は良かったのですか?」

「あれから手伝いが来てくれたわ。気にしなくて良いって言ってくれて、実際に手空きになったから来たのよ」

「レオナルドさんの試合かぁ。どうなのかしらね?」

「猟師だったっていうし、ある程度は器用にこなしそう」

 ワイワイとみんなで移動する。私の魔術車とサミュエル先生が乗ってきた馬車と、ファレンノーザ家の馬車の3台で移動している。マシュー様に一緒に乗っていかないか?とお誘いを受けたけれど、護衛の都合もあるからと遠慮させてもらった。

「良かったの?キャスリーンちゃん」

「公爵家の馬車なんて、レアじゃない?」

「そうお思いなら、ララさんがお乗りになったらいかがでしょう?」

「無理よ。私はただの庶民。平民よ。公爵家の馬車なんてぜぇったいに無理」

わたくし達と一緒に居たいからという理由ではございませんのね」

「あっ、ちょっと待って。みんなと一緒に居たいのはもちろんよ。キャシーちゃん、拗ねないで?」

「拗ねておりませんでしてよ?」

「えっ?あー、騙されたぁ」

 車内が明るい笑い声で満たされる。ちなみに乗っているのは私とレオナルドさん、ララさん、セシルさん、マリアさんだ。リーサさんはサミュエル先生の馬車に乗った。話があるんだって。運転はレオナルドさんがしてくれている。元エンジニアだったから、運転は好きだったんだって。国際ライセンスを持っていたらしい。

「国際Cライセンスを持ってたんだぜ」

「いまいち分かんないわ。それってスゴいの?」

「Cライセンスはサーキットカー、トラック選手権、オートクロス、ラリークロスなんかに出場する為に必要なライセンスだ」

「何らかの競技に出られたって事?」

「そういう事。俺はラリークロスの方だな。路面が部分的に舗装された永久的なサーキットでおこなう競技なんだが……。分かんねぇか?」

 分かりません。

「F1とか?」

「F1は国際自動車連盟FIAが主催する、自動車レースの最高峰だ」

「私達の知識なんてその程度よ?」

「なるほど」

 なんだかスゴい資格っぽいのは分かったけれど、たぶん分かってない私達とレオナルドさんの温度差が。特にマリアさんはちんぷんかんぷんだと思う。

「安心してお任せできますわね」

「任しとけ。安全運転で行くから」

 馬車とは速度が違うから私達の方が早く着いたけれど、私の姿を認めた将校さんが素早く見学エリアに案内してくれた。その時にファレンノーザ公爵の用件を伝えたら、レオナルドさんを頭から足の先まで見て、何かを考えていた。

「どうなさったのですか?」

「彼に合う剣が無いのではと思いまして」

「剣ならとりあえず何でも良いぞ?短剣でも戦えるし」

「選んでいただきましょうか。こちらです」

「公爵閣下がお出でになられてからの方がよろしいのでは?」

 マリアさんの言葉に、将校さんとレオナルドさんの足が止まった。

「待ちましょうか」

「そうだな。見学はしても?」

「もちろんです」

 5人で見学していると、公爵閣下達が到着した。

「さすがに魔術車は早いな。軍でも購入を検討しよう」

 レオナルドさんによると、あれでも時速30㎞位だったんだって。馬車は急がせれば時速20km位は出るらしいけれど、街中だから走らせたとしても時速10㎞~15㎞位らしい。

「その場合は魔力タンク魔力供給役が必要かと」

「そうであったな。その辺りも含めて検討してみよう」

「セシルさん、魔力タンク魔力供給役って要るんですか?」

 公爵達の話を聞いて、疑問に思った事を聞いてみた。

「要らないわよ?魔石に貯めておけるし。どこの魔術車でも魔力貯留機関が付いているから。あぁ、でも、旧車タイプだと要るのかしら?」

 その辺は分かりません。

 公爵が訓練場に足を踏み入れる。訓練場に居た全員が集合して並んだ。

「皆の者、ご苦労。少し諸君らの力量を試したい」

 レオナルドさんの力量じゃなくて?チラリとこちらを見た公爵の目線を受けて、レオナルドさんが訓練場に降りていった。

「キャスリーンは彼の戦い方を見た事があるのか?」

「ございませんわ」

「護衛なんだよね?おじいさまは護衛は自分の目で選ぶものだって言ってるけど」

わたくしはサミュエル先生に、全てお任せしております」

「ブランジット先生が婚約者だって事は知ってたけどさ、学院ではそういった気配は微塵も感じなかったし、ただの噂なんじゃないかって思っているのも多いよ」

「そうなのですか?」

「うん。キャスリーンには他に好きな人がいるっていう噂もあった。男性寮だと直接聞けないから、好き勝手言ってる。その度に剣術倶楽部とか体術倶楽部の人とかに怒られるけど」

「叱責されますの?」

「僕は無いけどね。なんだったかな?『光の聖女様たるフェルナー嬢に下世話な妄想をするな』だったかな?」

「そのようなお話がありますの?」

「キャスリーンだけじゃないけどね」

 下世話な妄想って、そういう事よね?知りたくなかったな。

 思春期の男性なんだから、おかしくはない。むしろ健全というか仕方がないというか。女性もあからさまではないけれど、そういった事を妄想する人だって居るし。

「誰か彼に挑もうとする者はおらんのか」

 公爵の少し苛立った声が聞こえた。

「セシルさん、リーサさん、ララさん。どうなっていますの?」

「レオナルドさんの経歴というか、どういった立場かっていう説明が終わって、レオナルドさんの対戦相手を募集中。でも、レオナルドさんってあの体格じゃない?誰も名乗り出ないのよね」

「ではダグラス。貴様からだ」

 指名されたのは案内してくれた将校さん。何かを諦めたような顔で前に出てきた。

 レオナルドさんは渡された木剣を両手で持って何度か振って、少し考えて左手に持ち直した。




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