婚約破棄がトレンドですが、堅物すぎる婚約者さまはわたしを絶対手放さない

美尾

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悪魔の証明

「こんな格好を衆目に晒すからだろう!」
「こんな格好とはなんですか! 流行りのデザインなんです! 三年ぶりなのに抱き寄せてもくれなかったくせに!」
「いつもは君から飛び込んできていたはずだが⁈」

 お望み通りに飛び込むと、ジュードはみじろぎもせずにミアを受け止めた。
 背中がきしむくらい強く抱きしめられて、痛いはずなのに心地良い。ぴたりとくっつく頬が熱もち、このまま溶けあってしまいそうだった。
 口から心臓が飛びでそう。
 だけど今日一番の気持ちをこめて、ミアはジュードの意思の強そうな唇にくちづけた。ついばむように口を寄せ、至近距離で視線を絡める。

「誤解だって、わかってくれました?」
「……六割、程度」
「ええ?」
「大嫌いなのが、俺じゃない証拠がない」
「だからそれはオリビアに会って、今から」
「今誰にも邪魔をされたくない。まさか君は違うのか?」
「あ、悪魔の証明すぎる……」

 ここまでして、六割なら、あとはもうこれしかない。
 真実愛しているのなら、はしたないと思わないで。

「えっとじゃぁ、ジュードさま、わたしもう、十九で」
「ああ、そうだな」
「ああじゃなくて! ほら、見ちがえるほど……大人っぽくなったとか美しく……とか、なんかないですか?」
「俺は君を見まちがえはしない」
「~~っ、……落第させますよ」
「なぜ」

 本気でわかっていなさそうで途方にくれそうになる。でもさっき、胸をしっかり撫で回したのを知ってるんだから。
 
「わたし、服と一緒に、し、下着も、新調したんです。刺激的で魅力的な感じの……、いつ、ジュードさまに見てもらってもいいようにって」

 彼の首におでこをぐりぐり押しつけながらつぶやくと、たくましい首筋がこわばった。
 ワンピースの背中のボタンがゆっくりとくつろげられていく。元々胸は開いたデザインだし、脱がせるのはたやすいはず。けれどジュードはかたい声で「脱がせても、良いのだろうか」と問いかけた。
 
 表情を窺えば、なんだかアイデンティティが崩壊しかかってるような複雑そうな顔をしている。
 むきだしになった肩を撫でる手は動きを止める気配はないから、存外、喜んでるんじゃないかと思うんだけど。
 悩みごとの多そうな堅物の婚約者さまはなかなか思い切れないみたいだから、ミアが代わりに思い切り、子供みたいにワンピースを脱ぎ捨てた。

 あっけにとられたジュードの視線が鎖骨を通り、コルセットに締め上げられて強調された胸を撫で、その下へと向かって動きを止める。

 どうなんだろう、可愛いと思うんだけど。

 肌よりちょっと紅色がかったレースとリボンが理想の曲線美を作るコルセットに、揃いのショーツ、ガーターベルトとストッキング。
 勢いで脱いでみたけど、ジュードは何も言ってはくれなくて、視線だけが熱を増していくのに耐えきれず、その顔に抱きついた。

「み、ミア……!」
「わ、ぁ、あ、息が……くすぐったい」

 ジュードのまっすぐな鼻梁が胸の谷間をなぞって、こぼれた吐息が肌を灼く。くすぐったくてほんのちょっと身体を離し、いつもより赤くなってるお堅い顔を覗きこんだ。

「どうですか……」
「……綺麗だよ」

 その声が艶めいている気がして、ぶわ、と汗がにじむ。

「ほんと……? 意識してくれますか?」
「ああ……君の思惑通りで美しすぎて目の毒だ。他の、誰にも見せていないな?」

 ジュードは尋ねながらお尻を持ち上げるように大きな手をすべらせる。こすれたところから甘い痺れが走り、上手く返事が出来ない。

「ミア、俺以外に見せないでくれ」
「誰にも見せません……ジュードさまだけ」
「信じたいが、周りの男が君を放っておくとも思えない」
「じゃあ、じゃあ、早くジュードさまのものにして」
「君はまだ学生だ。それに、婚約者なんだから、そんなことしなくても俺は君のものだし、君は俺のものだ」
「そうだけど、でも。婚約と愛は別だから……身体に聞いたら、わたしがジュードさまのこと、愛してるって、わかると思うの。わたし、好きだからさわってほしい。ジュードさまはわたしのこと……愛してるのにさわりたくないの?」
「……っミア……」

 ジュードの唇が、コルセットと肌の境目に、ちゅ、と押しつけられ、離れて、また押しつけられて。

「っ……んあ、っん」

 腹の奥がきゅんとわななく。太ももから腰、脇へと熱い手のひらの感触が抜けていったと思ったら、胸のふくらみをそっと包まれた。指の腹がやさしくふくらみの輪郭をなぞり、コルセットのふちに引っかかる。
 胸の先のあたりをすりすりと刺激されて、淡い快楽がひっぱりだされる感覚に思わず腰が引けそうになると、そのままベッドに倒れこんだ。鎖骨に、首に、ジュードの唇が押しつけられる。カリッ、とあたった爪の感触にぞわりとした瞬間、胸の先がレースからまろび出た。
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