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あらしのひるに
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「あれ?何か曇ってきた。雨降りそう」
バスに乗り込む前は水色だった筈なのに不吉な黒雲がどんどん湧いて空を埋め尽くしていた。
「やだ、真っ黒~~傘持ってきてなーい」
呑気な塔子の返しにイラっとする。
「金時山は当時は猪鼻(いのはな)山と呼ばれ、江戸時代以降は金太郎さんで有名な坂田金時の逸話が定着したことにより金時山と呼ばれるようになりました」
ツアコンの声が車内に虚しく流れる。
もし、山に入れ無かったら。
窓に両手と右頬をベッタリ貼り付け空を睨む。
今時ホラー映画でもわざとらしい程の暗鬱な情景演出。
バンパイアかゾンビが墓から甦りそうだ。
BGMがあれば尚完璧。
来る。
きっと来る。
「冗談じゃないわよ! 」
好実は叫び思わず立ち上がった。
「お客様、危険ですのでお座り下さ──きゃあ! 」
外がピカっと発光し、続けて凄まじい雷音が轟き、ツアコンの弱々しい警告が突如悲鳴に変わる。
「きゃあ! 」
見た目を裏切る可愛い悲鳴は塔子だ。
それでも好実は唇を噛み締め仁王立ちして踏ん張った。
何と戦っているのか分からないが負けたくない。
雨が弾丸のように降り注ぎバスの天井を叩いた。
ひっきりなしの稲光に続く轟音。
ビリビリと窓ガラスが震える。
震えているのは窓ガラスだけではない。
後部座席では元気なだけが取り柄の男子学生達も無言で抱き合っていた。
「ギャ!」
バスが大きく揺れ、車に轢かれた蛙のような声を上げ、窓にブチュっと口付ける。
暴風雨で方角も定まらない雨がバスのフロントガラスを襲い、運転手もハンドルを取られて蛇行する。
グラっ
好実の視界が左右にブレ、次に上下が反転した。
まるでフライパンで引っくり返されるホットケーキ。
この後に及んでも、例えは食べ物しか思い浮かばなかった。
「いたったあ……」
好実は腰を擦り呻いた。
取り敢えずバスの座席にはいたが目線に対して周りの景色の角度が直角だった。
「皆さん……無事ですか?バスが雨でスリップして横転してしまったようです。怪我されてないですか? 」
ツアコンの声。
「茸狩りはどうなるんですか? 」
「おい!おばさん、今はそれどころじゃねーだろ!」
好実の後頭部に文句をぶつけるのは男子学生Aだ。
一部を添削してやりたい。
「ともかく、皆さん落ち着いてくださ~い」
混乱を沈めるには力不足な瀕死の蜻蛉のようなツアコンの声。
「そういえば外は?」
右の窓からはグレーのアスファルトしか見えない。
幸い窓は割れていなかった。
左側の窓を見ると、陽光が早くも雲の切れ間から溢れ始めていた。
バスに乗り込む前は水色だった筈なのに不吉な黒雲がどんどん湧いて空を埋め尽くしていた。
「やだ、真っ黒~~傘持ってきてなーい」
呑気な塔子の返しにイラっとする。
「金時山は当時は猪鼻(いのはな)山と呼ばれ、江戸時代以降は金太郎さんで有名な坂田金時の逸話が定着したことにより金時山と呼ばれるようになりました」
ツアコンの声が車内に虚しく流れる。
もし、山に入れ無かったら。
窓に両手と右頬をベッタリ貼り付け空を睨む。
今時ホラー映画でもわざとらしい程の暗鬱な情景演出。
バンパイアかゾンビが墓から甦りそうだ。
BGMがあれば尚完璧。
来る。
きっと来る。
「冗談じゃないわよ! 」
好実は叫び思わず立ち上がった。
「お客様、危険ですのでお座り下さ──きゃあ! 」
外がピカっと発光し、続けて凄まじい雷音が轟き、ツアコンの弱々しい警告が突如悲鳴に変わる。
「きゃあ! 」
見た目を裏切る可愛い悲鳴は塔子だ。
それでも好実は唇を噛み締め仁王立ちして踏ん張った。
何と戦っているのか分からないが負けたくない。
雨が弾丸のように降り注ぎバスの天井を叩いた。
ひっきりなしの稲光に続く轟音。
ビリビリと窓ガラスが震える。
震えているのは窓ガラスだけではない。
後部座席では元気なだけが取り柄の男子学生達も無言で抱き合っていた。
「ギャ!」
バスが大きく揺れ、車に轢かれた蛙のような声を上げ、窓にブチュっと口付ける。
暴風雨で方角も定まらない雨がバスのフロントガラスを襲い、運転手もハンドルを取られて蛇行する。
グラっ
好実の視界が左右にブレ、次に上下が反転した。
まるでフライパンで引っくり返されるホットケーキ。
この後に及んでも、例えは食べ物しか思い浮かばなかった。
「いたったあ……」
好実は腰を擦り呻いた。
取り敢えずバスの座席にはいたが目線に対して周りの景色の角度が直角だった。
「皆さん……無事ですか?バスが雨でスリップして横転してしまったようです。怪我されてないですか? 」
ツアコンの声。
「茸狩りはどうなるんですか? 」
「おい!おばさん、今はそれどころじゃねーだろ!」
好実の後頭部に文句をぶつけるのは男子学生Aだ。
一部を添削してやりたい。
「ともかく、皆さん落ち着いてくださ~い」
混乱を沈めるには力不足な瀕死の蜻蛉のようなツアコンの声。
「そういえば外は?」
右の窓からはグレーのアスファルトしか見えない。
幸い窓は割れていなかった。
左側の窓を見ると、陽光が早くも雲の切れ間から溢れ始めていた。
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