4 / 14
4
しおりを挟む
「性的虐待以外の虐待もあるでしょうしね」
厚生労働大臣の金子が園田の顔色を窺うように発言した。
「そんな事をいちいち取り締まってられるか。ぬいぐるみを投げつけたり壁を蹴ったりするのを目撃して、いちいち目くじら立てるかね?ああ、きっとストレスが溜まってるんだな、で終わりだろう? 」
「ですが人間にそっくりで、柔軟なコミュニケーション能力、本当に痛みを感じているような繊細な表情。完全に感情を切り離して扱うというのは中々──」
尾形は俯きがちに眉を潜めた。
「そこがそもそも可笑しいんだよ。この国はアンドロイドに毒され過ぎではないのかね。私も無論使用人として何体も所有しているが、あくまでも物だよ物。どんなに人間に瓜二つでも。奴等は本当の子供でも恋人でも友達でもない。人間に例えるなら殺人、レイプ、虐待紛いの事があったところで、人間の側を重い罪で裁くなんて馬鹿馬鹿しい」
「では、見てみぬふり、と」
園田の発言を決定事項と心得、村井が記録に残す。
「見てみぬふりとその儘記録するな! 」
「はい!申し訳ありません」
叱責され慌てて村井が削除する。
「ちっ!虐待の範囲を広げていたらキリがないよ。人間の子供でさえ通報があったとしても単なる「しつけ」の場合も多いんだから。ただでさえ聖域である家庭内に踏み込むのは難しいんだよ。もう、面倒だから幼児型の下半身の穴は全部塞いでしまえ。そうすればイタズラ出来ないだろう。お人形遊びは終わりだ。幼児型アンドロイド仕様基準法(仮)とでもしておくか」
「幼児型は仕様変更、と。───仕様基準法」
書記担当の官房長官、村井が決定事項としてインプットした。
「わざわざ新しい法を作らずに児童ポルノ禁止法の条項の中に加えてもいいかもしれんな。幼児型セクサロイドの作成及び所持、それを用いた性的な画像の作成所持閲覧も禁止。家庭用アンドロイドも同じ、でどうかね? 」
「普通のアンドロイドの仕様変更についてですが、禁止法に加えるならば、そこまでする必要があるのでしょうか? 」
尾形が釈然としない面持ちで発言した。
「んん?尾形君、君には可愛いお嬢さん二人いるんだし、しかも一人は────児童ポルノ禁止法に加えたぐらいで歯止めが掛かるとでも?本当に安全や風紀を考えるならアンドロイドそのものを作り替えないと。こうした事を見過ごせば本物《※※》のお嬢さんだって危険に晒されるんだ。本物だろうとニセ物だろうと狙う輩がいるんだからね」
「はあ……ただ排泄する為の……穴まで? 」
「排泄する為の穴だろうが穴なら何でも良い輩がいるんだから仕方がないだろう。ああ……幼女だけでなく少年型も仕様変更だな。どうせ少年型を愛好する輩もいるんだろうからな。引き出しみたいなとこから排出するようにすればいいじゃないか。もっとも、アンドロイドが食事をする風景なんて──やれやれだよ。おままごとをするなとは言わんけどね」
「はあ……」
尾形の顔が引き攣った。
園田の言っている事は一見正しい。
だが、どこか釈然としなかった。
「幼児型には特に性的要素など百害あって一利なしだよ。実際に遠くの暑い国では本物の少女達のアソコを未だに塞ぐという野蛮な風習が続いているじゃないか。極めて残忍だが確かにそうしてしまえばイタズラは出来んからなあ。反発はあるだろうが、下手をすれば本物の子供達の命や未来に関わるんだ。アンドロイドの性器を無くしたところで何か問題あるかね? 」
「いえ……」
自分の娘達の安全と言われてしまえば確かにその通りだと納得する。
「総理、今思い付いたのですが性器がなければ性別すらありません。なので、セクサロイド以外は成人男女型まで全て性器を無くしてしまえば問題は起こり難くなるのではないでしょうか? 」
国家公安委員長の猪倉が提案した。
「問題?」
「ええ、主に女性形のアンドロイドに対するレイプ被害が報告されています。少例ですが男性型でもあります。警察には度々そうした訴えが持ち込まれていますが勿論強制わいせつで起訴されたのは一例もありません」
「そりゃあ、所詮アンドロイドなんだから当然だな。アンドロイドが性的被害にあったぐらいで人間様に罪を課すなんて馬鹿馬鹿し過ぎる。警察に駆け込む方も駆け込む方だよ」
「勿論、強制わいせつ罪を適用するのはどうかと思いますが器物損壊罪では裁けます。他人の所有物に性的な悪さをするのも問題でしょう。故障の原因にもなる。訴えたくなる気持ちも分かります」
「言われてみればそうだな。セクサロイドの方が当然被害は多いのか? 」
「いえ、アンドロイドの方が統計的に見れば圧倒的に多いようです」
中央に立体のグラフが出現した。
「はあ、確かになあ。これには理由はあるのかね? 」
園田が椅子の背もたれに寄り掛り体を反らせると、メタボな腹が余計に目立った。
「性的用途に限定されたセクサロイドとは異なり、アンドロイドはあらゆる業界で人の仕事のサポートをしています。例えば、この官邸では受け付けや清掃員。接客業でも女性型が重宝されています。一般家庭では家族として或いは家政婦、ベビーシッターとして活用されていますので、一人で外を出歩く機会もあります。その隙を狙われるという訳です」
「なるほどねえ──」
「従う相手の範囲を家族のみに設定しても、アンドロイドは標準的に人間に危害を加えられないように設定されていて、所有者にもそれは変えられない。なので強く服従を求められれば従わざるを得ない」
「強く抵抗されず、尚且つ強制わいせつ罪も適用されないからヤリたい放題という訳か」
「所詮アンドロイドですが、所有者が憤慨します。犯行に気付いた所で警察に行っても鼻で笑われるだけなので、益々鬱憤が溜まる訳です」
厚生労働大臣の金子が園田の顔色を窺うように発言した。
「そんな事をいちいち取り締まってられるか。ぬいぐるみを投げつけたり壁を蹴ったりするのを目撃して、いちいち目くじら立てるかね?ああ、きっとストレスが溜まってるんだな、で終わりだろう? 」
「ですが人間にそっくりで、柔軟なコミュニケーション能力、本当に痛みを感じているような繊細な表情。完全に感情を切り離して扱うというのは中々──」
尾形は俯きがちに眉を潜めた。
「そこがそもそも可笑しいんだよ。この国はアンドロイドに毒され過ぎではないのかね。私も無論使用人として何体も所有しているが、あくまでも物だよ物。どんなに人間に瓜二つでも。奴等は本当の子供でも恋人でも友達でもない。人間に例えるなら殺人、レイプ、虐待紛いの事があったところで、人間の側を重い罪で裁くなんて馬鹿馬鹿しい」
「では、見てみぬふり、と」
園田の発言を決定事項と心得、村井が記録に残す。
「見てみぬふりとその儘記録するな! 」
「はい!申し訳ありません」
叱責され慌てて村井が削除する。
「ちっ!虐待の範囲を広げていたらキリがないよ。人間の子供でさえ通報があったとしても単なる「しつけ」の場合も多いんだから。ただでさえ聖域である家庭内に踏み込むのは難しいんだよ。もう、面倒だから幼児型の下半身の穴は全部塞いでしまえ。そうすればイタズラ出来ないだろう。お人形遊びは終わりだ。幼児型アンドロイド仕様基準法(仮)とでもしておくか」
「幼児型は仕様変更、と。───仕様基準法」
書記担当の官房長官、村井が決定事項としてインプットした。
「わざわざ新しい法を作らずに児童ポルノ禁止法の条項の中に加えてもいいかもしれんな。幼児型セクサロイドの作成及び所持、それを用いた性的な画像の作成所持閲覧も禁止。家庭用アンドロイドも同じ、でどうかね? 」
「普通のアンドロイドの仕様変更についてですが、禁止法に加えるならば、そこまでする必要があるのでしょうか? 」
尾形が釈然としない面持ちで発言した。
「んん?尾形君、君には可愛いお嬢さん二人いるんだし、しかも一人は────児童ポルノ禁止法に加えたぐらいで歯止めが掛かるとでも?本当に安全や風紀を考えるならアンドロイドそのものを作り替えないと。こうした事を見過ごせば本物《※※》のお嬢さんだって危険に晒されるんだ。本物だろうとニセ物だろうと狙う輩がいるんだからね」
「はあ……ただ排泄する為の……穴まで? 」
「排泄する為の穴だろうが穴なら何でも良い輩がいるんだから仕方がないだろう。ああ……幼女だけでなく少年型も仕様変更だな。どうせ少年型を愛好する輩もいるんだろうからな。引き出しみたいなとこから排出するようにすればいいじゃないか。もっとも、アンドロイドが食事をする風景なんて──やれやれだよ。おままごとをするなとは言わんけどね」
「はあ……」
尾形の顔が引き攣った。
園田の言っている事は一見正しい。
だが、どこか釈然としなかった。
「幼児型には特に性的要素など百害あって一利なしだよ。実際に遠くの暑い国では本物の少女達のアソコを未だに塞ぐという野蛮な風習が続いているじゃないか。極めて残忍だが確かにそうしてしまえばイタズラは出来んからなあ。反発はあるだろうが、下手をすれば本物の子供達の命や未来に関わるんだ。アンドロイドの性器を無くしたところで何か問題あるかね? 」
「いえ……」
自分の娘達の安全と言われてしまえば確かにその通りだと納得する。
「総理、今思い付いたのですが性器がなければ性別すらありません。なので、セクサロイド以外は成人男女型まで全て性器を無くしてしまえば問題は起こり難くなるのではないでしょうか? 」
国家公安委員長の猪倉が提案した。
「問題?」
「ええ、主に女性形のアンドロイドに対するレイプ被害が報告されています。少例ですが男性型でもあります。警察には度々そうした訴えが持ち込まれていますが勿論強制わいせつで起訴されたのは一例もありません」
「そりゃあ、所詮アンドロイドなんだから当然だな。アンドロイドが性的被害にあったぐらいで人間様に罪を課すなんて馬鹿馬鹿し過ぎる。警察に駆け込む方も駆け込む方だよ」
「勿論、強制わいせつ罪を適用するのはどうかと思いますが器物損壊罪では裁けます。他人の所有物に性的な悪さをするのも問題でしょう。故障の原因にもなる。訴えたくなる気持ちも分かります」
「言われてみればそうだな。セクサロイドの方が当然被害は多いのか? 」
「いえ、アンドロイドの方が統計的に見れば圧倒的に多いようです」
中央に立体のグラフが出現した。
「はあ、確かになあ。これには理由はあるのかね? 」
園田が椅子の背もたれに寄り掛り体を反らせると、メタボな腹が余計に目立った。
「性的用途に限定されたセクサロイドとは異なり、アンドロイドはあらゆる業界で人の仕事のサポートをしています。例えば、この官邸では受け付けや清掃員。接客業でも女性型が重宝されています。一般家庭では家族として或いは家政婦、ベビーシッターとして活用されていますので、一人で外を出歩く機会もあります。その隙を狙われるという訳です」
「なるほどねえ──」
「従う相手の範囲を家族のみに設定しても、アンドロイドは標準的に人間に危害を加えられないように設定されていて、所有者にもそれは変えられない。なので強く服従を求められれば従わざるを得ない」
「強く抵抗されず、尚且つ強制わいせつ罪も適用されないからヤリたい放題という訳か」
「所詮アンドロイドですが、所有者が憤慨します。犯行に気付いた所で警察に行っても鼻で笑われるだけなので、益々鬱憤が溜まる訳です」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる