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「性的虐待以外の虐待もあるでしょうしね」
厚生労働大臣の金子が園田の顔色を窺うように発言した。
「そんな事をいちいち取り締まってられるか。ぬいぐるみを投げつけたり壁を蹴ったりするのを目撃して、いちいち目くじら立てるかね?ああ、きっとストレスが溜まってるんだな、で終わりだろう? 」
「ですが人間にそっくりで、柔軟なコミュニケーション能力、本当に痛みを感じているような繊細な表情。完全に感情を切り離して扱うというのは中々──」
尾形は俯きがちに眉を潜めた。
「そこがそもそも可笑しいんだよ。この国はアンドロイドに毒され過ぎではないのかね。私も無論使用人として何体も所有しているが、あくまでも物だよ物。どんなに人間に瓜二つでも。奴等は本当の子供でも恋人でも友達でもない。人間に例えるなら殺人、レイプ、虐待紛いの事があったところで、人間の側を重い罪で裁くなんて馬鹿馬鹿しい」
「では、見てみぬふり、と」
園田の発言を決定事項と心得、村井が記録に残す。
「見てみぬふりとその儘記録するな! 」
「はい!申し訳ありません」
叱責され慌てて村井が削除する。
「ちっ!虐待の範囲を広げていたらキリがないよ。人間の子供でさえ通報があったとしても単なる「しつけ」の場合も多いんだから。ただでさえ聖域である家庭内に踏み込むのは難しいんだよ。もう、面倒だから幼児型の下半身の穴は全部塞いでしまえ。そうすればイタズラ出来ないだろう。お人形遊びは終わりだ。幼児型アンドロイド仕様基準法(仮)とでもしておくか」
「幼児型は仕様変更、と。───仕様基準法」
書記担当の官房長官、村井が決定事項としてインプットした。
「わざわざ新しい法を作らずに児童ポルノ禁止法の条項の中に加えてもいいかもしれんな。幼児型セクサロイドの作成及び所持、それを用いた性的な画像の作成所持閲覧も禁止。家庭用アンドロイドも同じ、でどうかね? 」
「普通のアンドロイドの仕様変更についてですが、禁止法に加えるならば、そこまでする必要があるのでしょうか? 」
尾形が釈然としない面持ちで発言した。
「んん?尾形君、君には可愛いお嬢さん二人いるんだし、しかも一人は────児童ポルノ禁止法に加えたぐらいで歯止めが掛かるとでも?本当に安全や風紀を考えるならアンドロイドそのものを作り替えないと。こうした事を見過ごせば本物《※※》のお嬢さんだって危険に晒されるんだ。本物だろうとニセ物だろうと狙う輩がいるんだからね」
「はあ……ただ排泄する為の……穴まで? 」
「排泄する為の穴だろうが穴なら何でも良い輩がいるんだから仕方がないだろう。ああ……幼女だけでなく少年型も仕様変更だな。どうせ少年型を愛好する輩もいるんだろうからな。引き出しみたいなとこから排出するようにすればいいじゃないか。もっとも、アンドロイドが食事をする風景なんて──やれやれだよ。おままごとをするなとは言わんけどね」
「はあ……」
尾形の顔が引き攣った。
園田の言っている事は一見正しい。
だが、どこか釈然としなかった。
「幼児型には特に性的要素など百害あって一利なしだよ。実際に遠くの暑い国では本物の少女達のアソコを未だに塞ぐという野蛮な風習が続いているじゃないか。極めて残忍だが確かにそうしてしまえばイタズラは出来んからなあ。反発はあるだろうが、下手をすれば本物の子供達の命や未来に関わるんだ。アンドロイドの性器を無くしたところで何か問題あるかね? 」
「いえ……」
自分の娘達の安全と言われてしまえば確かにその通りだと納得する。
「総理、今思い付いたのですが性器がなければ性別すらありません。なので、セクサロイド以外は成人男女型まで全て性器を無くしてしまえば問題は起こり難くなるのではないでしょうか? 」
国家公安委員長の猪倉が提案した。
「問題?」
「ええ、主に女性形のアンドロイドに対するレイプ被害が報告されています。少例ですが男性型でもあります。警察には度々そうした訴えが持ち込まれていますが勿論強制わいせつで起訴されたのは一例もありません」
「そりゃあ、所詮アンドロイドなんだから当然だな。アンドロイドが性的被害にあったぐらいで人間様に罪を課すなんて馬鹿馬鹿し過ぎる。警察に駆け込む方も駆け込む方だよ」
「勿論、強制わいせつ罪を適用するのはどうかと思いますが器物損壊罪では裁けます。他人の所有物に性的な悪さをするのも問題でしょう。故障の原因にもなる。訴えたくなる気持ちも分かります」
「言われてみればそうだな。セクサロイドの方が当然被害は多いのか? 」
「いえ、アンドロイドの方が統計的に見れば圧倒的に多いようです」
中央に立体のグラフが出現した。
「はあ、確かになあ。これには理由はあるのかね? 」
園田が椅子の背もたれに寄り掛り体を反らせると、メタボな腹が余計に目立った。
「性的用途に限定されたセクサロイドとは異なり、アンドロイドはあらゆる業界で人の仕事のサポートをしています。例えば、この官邸では受け付けや清掃員。接客業でも女性型が重宝されています。一般家庭では家族として或いは家政婦、ベビーシッターとして活用されていますので、一人で外を出歩く機会もあります。その隙を狙われるという訳です」
「なるほどねえ──」
「従う相手の範囲を家族のみに設定しても、アンドロイドは標準的に人間に危害を加えられないように設定されていて、所有者にもそれは変えられない。なので強く服従を求められれば従わざるを得ない」
「強く抵抗されず、尚且つ強制わいせつ罪も適用されないからヤリたい放題という訳か」
「所詮アンドロイドですが、所有者が憤慨します。犯行に気付いた所で警察に行っても鼻で笑われるだけなので、益々鬱憤が溜まる訳です」
厚生労働大臣の金子が園田の顔色を窺うように発言した。
「そんな事をいちいち取り締まってられるか。ぬいぐるみを投げつけたり壁を蹴ったりするのを目撃して、いちいち目くじら立てるかね?ああ、きっとストレスが溜まってるんだな、で終わりだろう? 」
「ですが人間にそっくりで、柔軟なコミュニケーション能力、本当に痛みを感じているような繊細な表情。完全に感情を切り離して扱うというのは中々──」
尾形は俯きがちに眉を潜めた。
「そこがそもそも可笑しいんだよ。この国はアンドロイドに毒され過ぎではないのかね。私も無論使用人として何体も所有しているが、あくまでも物だよ物。どんなに人間に瓜二つでも。奴等は本当の子供でも恋人でも友達でもない。人間に例えるなら殺人、レイプ、虐待紛いの事があったところで、人間の側を重い罪で裁くなんて馬鹿馬鹿しい」
「では、見てみぬふり、と」
園田の発言を決定事項と心得、村井が記録に残す。
「見てみぬふりとその儘記録するな! 」
「はい!申し訳ありません」
叱責され慌てて村井が削除する。
「ちっ!虐待の範囲を広げていたらキリがないよ。人間の子供でさえ通報があったとしても単なる「しつけ」の場合も多いんだから。ただでさえ聖域である家庭内に踏み込むのは難しいんだよ。もう、面倒だから幼児型の下半身の穴は全部塞いでしまえ。そうすればイタズラ出来ないだろう。お人形遊びは終わりだ。幼児型アンドロイド仕様基準法(仮)とでもしておくか」
「幼児型は仕様変更、と。───仕様基準法」
書記担当の官房長官、村井が決定事項としてインプットした。
「わざわざ新しい法を作らずに児童ポルノ禁止法の条項の中に加えてもいいかもしれんな。幼児型セクサロイドの作成及び所持、それを用いた性的な画像の作成所持閲覧も禁止。家庭用アンドロイドも同じ、でどうかね? 」
「普通のアンドロイドの仕様変更についてですが、禁止法に加えるならば、そこまでする必要があるのでしょうか? 」
尾形が釈然としない面持ちで発言した。
「んん?尾形君、君には可愛いお嬢さん二人いるんだし、しかも一人は────児童ポルノ禁止法に加えたぐらいで歯止めが掛かるとでも?本当に安全や風紀を考えるならアンドロイドそのものを作り替えないと。こうした事を見過ごせば本物《※※》のお嬢さんだって危険に晒されるんだ。本物だろうとニセ物だろうと狙う輩がいるんだからね」
「はあ……ただ排泄する為の……穴まで? 」
「排泄する為の穴だろうが穴なら何でも良い輩がいるんだから仕方がないだろう。ああ……幼女だけでなく少年型も仕様変更だな。どうせ少年型を愛好する輩もいるんだろうからな。引き出しみたいなとこから排出するようにすればいいじゃないか。もっとも、アンドロイドが食事をする風景なんて──やれやれだよ。おままごとをするなとは言わんけどね」
「はあ……」
尾形の顔が引き攣った。
園田の言っている事は一見正しい。
だが、どこか釈然としなかった。
「幼児型には特に性的要素など百害あって一利なしだよ。実際に遠くの暑い国では本物の少女達のアソコを未だに塞ぐという野蛮な風習が続いているじゃないか。極めて残忍だが確かにそうしてしまえばイタズラは出来んからなあ。反発はあるだろうが、下手をすれば本物の子供達の命や未来に関わるんだ。アンドロイドの性器を無くしたところで何か問題あるかね? 」
「いえ……」
自分の娘達の安全と言われてしまえば確かにその通りだと納得する。
「総理、今思い付いたのですが性器がなければ性別すらありません。なので、セクサロイド以外は成人男女型まで全て性器を無くしてしまえば問題は起こり難くなるのではないでしょうか? 」
国家公安委員長の猪倉が提案した。
「問題?」
「ええ、主に女性形のアンドロイドに対するレイプ被害が報告されています。少例ですが男性型でもあります。警察には度々そうした訴えが持ち込まれていますが勿論強制わいせつで起訴されたのは一例もありません」
「そりゃあ、所詮アンドロイドなんだから当然だな。アンドロイドが性的被害にあったぐらいで人間様に罪を課すなんて馬鹿馬鹿し過ぎる。警察に駆け込む方も駆け込む方だよ」
「勿論、強制わいせつ罪を適用するのはどうかと思いますが器物損壊罪では裁けます。他人の所有物に性的な悪さをするのも問題でしょう。故障の原因にもなる。訴えたくなる気持ちも分かります」
「言われてみればそうだな。セクサロイドの方が当然被害は多いのか? 」
「いえ、アンドロイドの方が統計的に見れば圧倒的に多いようです」
中央に立体のグラフが出現した。
「はあ、確かになあ。これには理由はあるのかね? 」
園田が椅子の背もたれに寄り掛り体を反らせると、メタボな腹が余計に目立った。
「性的用途に限定されたセクサロイドとは異なり、アンドロイドはあらゆる業界で人の仕事のサポートをしています。例えば、この官邸では受け付けや清掃員。接客業でも女性型が重宝されています。一般家庭では家族として或いは家政婦、ベビーシッターとして活用されていますので、一人で外を出歩く機会もあります。その隙を狙われるという訳です」
「なるほどねえ──」
「従う相手の範囲を家族のみに設定しても、アンドロイドは標準的に人間に危害を加えられないように設定されていて、所有者にもそれは変えられない。なので強く服従を求められれば従わざるを得ない」
「強く抵抗されず、尚且つ強制わいせつ罪も適用されないからヤリたい放題という訳か」
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