真実の愛なんてクソ喰らえ

第一章

突き付けられた運命②

この生活で与えられているであろうストレスで白になりかけている亜麻色を撫でながら、心の中で呟く。

ルビー。

少し目を逸らされながら言われた名前。

ルビーという名が本当の名前でない事は、出会った時から分かっていた。

幼い子供の嘘を見抜けない男がこんな社会に立てば、すぐにでもこの館は崩れ去るだろう。





「…グルルルル…、」





獣人の匂いがベッタリと付いたルビーの身体を自分の匂いで上書きした結果がこれだ。

あの日、全て分かってしまった。

有名な財閥の子息であるあの狼とルビーは恐らく、運命の番である事を。

そしていつかはこの館からルビーを買い取ろうとしている奴の目論見を。

ルビーを手渡されたあの瞬間、奴の鋭い目と視線が絡み、思い知らされた。

少し触れた指先に、爪痕をしっかり残されたのだ。

“コイツは俺のものだ”という、奴の執着と共に。







「…、」







静寂に包まれた部屋の中で、ふと考える。

奴の名前は、確か…。

月城つきしろギン。

獣人の濃い血が先祖代々受け継がれている月城家の跡取りだ。

奴はまだ18にも満たない男だったはずだ。なのに何故この館に入る事が出来た…？

誰か、内通者が居るとでもいうのか…？