真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第一章

復讐及び脱出への策略⑩

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「……ああ、そう言えば…。俺はお前にまだ自己紹介をしていなかったな。」





意志を曲げずに黙り続けていると、ようやくそれがその人の口から語られる事となる。

呼ぶ時に困るよな、と綺麗な顔をくしゃりと歪めながら彼は私に視線を送る。






「…俺は、月城ギン」

「…」

「ギンと気軽に呼んでくれ、すぐに駆けつける。」





月城という名前を耳にした瞬間、戦慄が走った。

私がその名前を聞き間違えるはずがない。

あの惨たらしい資料に書いてあった名前と同じ響きのそれに、無意識に身体が震えた。

じゃあこの綺麗な狼が情報を裏から入手していたという、月城ギンなのか…。






「…坊っちゃま、お飲み物の用意が出来ました」

「ああ、そこに置いてくれ」

「かしこまりました…。」







頭の中で目まぐるしく回る言葉を整理する中、遠くでメイドと彼の会話が聞こえて、激しく混乱を起こした。

この人がルネさん達を利用しなければ、あんなに酷い扱いを受けて死ぬことは無かった。ロウに拷問される事もなかったはずだ。

この人が、ルネさん達を…。





「…ッ、ルビー、どうした」

「…ふぐぅっ、うっ、うっ、」





ぶわっと涙が溢れ出し、怒りを宿した口が彼の肩に牙を向く。

私をあそこへ置いて行った人であり、唯一優しくしてくれたあの人達が死んだ原因でもあるこの人は、絶対に許せない。

返して、彼女達を返してよ…。

憎しみを込めて肩にかぶり付き、獣のように唸り声を上げる。




「ふぅぅっ、うぅっ、」

「…、」




けれど、灰色の毛が赤く染まるまで噛み続けていた私を彼は怒らなかった。

全てを理解したように、私の気持ちを悟ったように。優しく抱き締めて、頭を撫でてきた。

そして最後には必ず、すまなかった、と一言添えて。優しい香りで包み込みながら、私の髪にそっと口付けを落としたのだったーー…。






「…俺の事はお前の気が済むまで…憎んでいい。」

「…うっ、うぅっぇぇっ、」

「俺を憎んで、好きなだけ泣いていい…。」

「…っひぐっ、ぅうっ、」

「すまなかった…本当に…すまなかった……っ、」













運命である獣と少女は本能では惹かれ合いながらも、その理に反する。
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