真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第二章

愛と復讐⑤

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繋がりながら、いつの間にか移動したベッドの上でうつ伏せで寝転がされ、首の後ろに彼の牙が掛かる。

身体中に残された彼のマーキング。様々な部位にあるけれど、一つだけ空いている場所があったのだ。

それが、今彼が顔を近づけている項で。



「…良いか?」



ベッドを軋ませながら甘えるように聞く彼を見て、私はゆっくり頷いた。

ああ、どうやら私は行為を重ねる事でヒートのスイッチが入ってしまったらしい。

まだ来る時期でもないのにしつこく性感帯を刺激されたからなのか。私にはよく分からない。

けれど繋がった時から甘ったるい匂いがお互いを包み込んでいて、それを吸い込むと頭がクラクラするのだ。

この甘い匂いは、ギンさんからする…。

じゃあギンさんも、私から甘い匂いがしているのかな。





「…んっ、い、」

「…」




シーツの上でぼんやりとしていた刹那。

ブツリ、とーー。

首の後ろで牙が皮膚を貫通した音が聞こえ、甘い痛みと共に繋がった場所が痙攣を起こした。

グッ、と入り込んだ牙は深く痕を残し、私に証を刻んでいく。




「…んぅ、痛い…、痛いよぉ…、」

「…グルル、」




誰にも許して来なかった領域に入り込んできたのは、私を置いていってしまった愛しい人。じわりと血が滲む感覚と甘い痛みを味わいながら、シーツを掴む。

そんな人と今身体を重ねていて、項を噛ませる事で番になるのを決意した。

今まで抱いていた感情を思い返し、自然と目から涙が流れていく。



「…愛してる。」

「…、」

「俺を受け入れてくれてありがとう、」



その間も流れ込んでくる相手の愛と優しさに心が揺らぐ。

涙を浮かべながら伝えられた言葉に、私もはち切れそうなくらいに高まる思いを抱いていて。

私も…。

けれど、そう言いかけた口を噤む。

まだあの日記を全て読んでいないから、言えない…。





「ギンさん…」

「…どうした」

「眠くなってきた…」

「そう、か…」






だから今日は行為が続いて眠くなったという事にして、その場を凌いだ。

彼と番にはなったけれど、まだその言葉を口にする事は出来ない。

まだ、知らない事実がある以上その先には進めず…。

三年前の事を全て知る為に、私はあの日記を見返すしかないんだ。




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