プチ自給自足生活始めたら 何故か異世界の町に繋がった?

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我には全てお見通しなのじゃ!

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煌びやかな光の玉があちらこちらと
優雅に飛び交う厳かな空間に
あまり似つかわしくない者達がいた。

スゥーッとその場の空気が集まると
そこには3m近い巨躯の男がいた。

 『お帰りなさいませ』

10人近くがそこに跪いているにも
関わらず、1人しか口を
開いていないかのように
抑揚すらブレることなく重なる
声が発せられた。

 『彼の者は鍛錬が足りておらぬ。
  何れ其の方らに鍛錬を申し出て
  来るであろう。
  だが、まだまだ未熟。

  ふむ、大天狗よ。
  基本から鍛錬するに
  適したものはおらぬか?』

最前列で跪くものが声をあげた。

 『今丁度里より見習いの
  小天狗が一体ほど
  上がって来ております。
  その者であれば、
  一からの鍛錬に
  向いておるかと。』

 『小天狗か、成る程、
  丁度良いな。
  すぐに差し向けよ。』

 『御意』

その声を発したものは立ち上がり、
ふわっと浮きあがると消えていった。
その者達は皆赤ら顔で鼻が高く
背に黒い羽根を持つ翼人で
天狗というより黒い羽根の
天使のように見えた。



瑞々しい木々が生い茂る森の中で、
黒い羽根を広げて宙に浮かび、
大天狗と呼ばれたものは、
傍らで跪く小さな黒い羽根に向けて
大声を張り上げた。

 『小天狗よ!
  これは勅命である!
  あの下界に即座に降り立ち、
  カケル・クラマの鍛錬を命ずる!

  我らと打ち合える程には
  鍛えて参れ!
  
  ゆけ!!』

 『はっ!仰せのままに!』

見ればまだ羽根の方が大きそうな
小柄な小天狗がそこにいた。

ふわりと浮かぶと溶けるように
姿を消していった。



湖のほとりの拠点では、
2階の客間の改装を進める、
ザラ達の姿があった。
女神シロミズチの部屋を
神殿風に模様替えしている。
聖女エレンから指導を受け、
天井から白布を垂らしたり、
窓辺には花の鉢植えを置いたり
見た目と香りも良い空間に
変わりつつあった。

その作業をシロミズチは
手持ち無沙汰で眺めていた。
小さなテーブルには、
カケルが持ち込んでいた
ビスケットが蜂蜜と共に
綺麗な皿に乗せられている。

蜂蜜が気に入ったようで
小さく齧ってはつけて
時間をかけて楽しみながら
食べているようだ。

ふと、背後のダンスホールの
空間に気配を感じ、席を立った。

それまで作業をしていた
ザラとシフォンは慌てて
シロミズチの後を追った。

 「おお、これは珍しい。
  天狗様の気配だな。
  こちらでお会いするのは
  初めてなのだ。

  ザラ、シフォン、
  神の御使様が顕現される。
  驚かぬようにな。」

 「「はい。女神様。」」

スゥーっと空気が冷えるような
そんな感覚の後、黒い羽根を
目一杯に広げた姿で赤ら顔で
綺麗な金色の瞳をした天狗様が
顕現した。

シロミズチにならって
ザラ達も頭を垂れている。

 「おおっ、ここが下界か。
  其方が我の鍛錬を望む
  カケルだな。
  男かと思っておったが
  綺麗な女子であったか。

  んっ?なんじゃ?
  そう驚くことはないのじゃ。
  我は小天狗であるぞ。
  其方の神気もなかなかであるが
  我との鍛錬でもっともっと
  強くなるのじゃ。」

 「いえ、我は・・」

 「あー言わずとも良い。
  我には全てお見通しなのじゃ!
  全て我に委ねれば良いのじゃ!」

そう言って小さな胸をそらして
えっへんと威張るのは、
身長30cm位の可愛い小天狗であった。
後ろに転げそうです。

 「いえ、我はこの湖の女神を
  努めております、
  シロミズチと申します。

  あの、小天狗様、
  恐れながら・・・、
  カケル殿は今向こうの世界に
  戻っておられますが・・・」

 「な、何じゃと!!
  おぬしではなかったのか!

  やってしまった。。。 
  あーまたこのことがばれたら
  減点されてしまうのじゃ。。
  まずいのじゃ。
  どうしたものか。。

  其方達、今のはじゃな、
  ・・・なかったことに
  してくれんか?・・・」

しょんぼりと肩を落として
悲しげな表情をしている小天狗に
3人は顔を合わせて笑顔を返した。

 「では、小天狗様。
  カケル様が戻られるまでこちらで
  ゆっくりとお過ごしくださいませ。」

ザラさん達は小天狗様に紅茶と
ビスケットをお出しした。

 「これは美味じゃ!
  こんな甘いものがあるのか?
  良い、良いぞ!
  これならいくらでも
  頂くのじゃ!」

とってもご機嫌になって美味しそうに
小分けしたビスケットを頬張る
小天狗様の愛らしさには、
シロミズチ様も頬を緩めるのであった。



煌びやかな光の玉がふわふわと漂う空間で
大きな水晶のような物が浮かんでいる。
その前で頭を抱える大天狗達がいたという。

その大天狗達の姿を
見るともなく見ていた、
巨躯の影があった。
その大きな影は肩を震わせて
笑うのを堪えていたという。 

 (小天狗、やりおる。
  成長とは、鍛錬とは、
  教え、教えられるもの、
  鍛え、鍛えられるものだ。
  良い、これで良い。)

見た目程怖い神様ではないようです。



 「よし、これで最後だな。
  完全治療丸薬も完成だ。」

 「・・・ありえないのにゃ。
  カケルは非常識のかたまりなのにゃ。

  その調合でどうやったら、
  この世にない完全治療薬、しかも、
  丸薬なんて出来るのにゃ。

  もう、教えることは何もないのにゃ。」

 「いや、やり始めたばっかで、
  免許皆伝みたいなこと言って
  突き放すのやめてよ、ココ。

  調合に聖水使っただけじゃん。」

 「抽出の時から使ってるの見てたにゃん。
  そんな使い方してるの聖女様達に見られたら
  気絶されるにゃん。
  向こうで絶対やっちゃダメにゃん。」

 「分かったよ、こっちだけでやるように
  気をつけるよ。」

 「そこは断言するとこにゃん。
  はぁ、カケルは監視してないと
  危険すぎるにゃん。」

この丸薬、後に国宝として祀られるものであるが、
気楽に10粒ほど調合して作った本人には、
家庭常備薬くらいにしか思えていないみたいです。



その頃、白い霧が立ち込める中で、
大笑いする美女がいた。

 「やるわね、カケル君。
  ほんとやってくれるわ。
  よくもまあそれだけ
  どっちの世界にもないものを
  作れるわね。

  もう私の力の範疇じゃないわ。
  誰か手を貸している、加えているとしか
  思えないけど、この私に気付かせないとは
  かなりやるわね。

  でもいいわ、見ていて飽きないことだし。」

さっきまで大笑いしていた女神の目が細まった。

 「さぁ、もう一つの世界からのアタックを
  君はどうするのかしら?
  世界のバランスなんてすぐに崩れるのよ。
  君が選別した世界は、場合によっては
  綺麗に滅びさるわ。」

すこい悪い顔をして下を見下ろす女神にも
カケルのやることが読めないみたいです。
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