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冥界でブートキャンプ?
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一瞬くらっと目眩がしたと思ったら
ぼんやりとした光の漂う薄暗い空間に
立っていた。
暗視のスキルでぼんやりと
周りが見え始めてきたら、
すぐ横から声がかかってきた。
「姉上の使徒、カケル殿。
ようこそ冥界へ。
さて、姉上からの依頼では
影の邪神を封じれる程に
鍛えるよう言付かっているが、
相違ないかな?」
「あ、はい、そうです。
あの、討伐ではなく
封じるのでしょうか?」
「うむ。
カケル殿はまだ姉上の使徒見習いと
いうところであろう。
討伐に至るほどの神力は
その身についておらぬのだよ。
今の身では精々封じるまでであろう。
何、それでも数百年は
抑えておけるのだよ。
とはいえ、それも努力なく
身につくものではないのだ。
まずは鍛錬を積み給え。
初めはあの山に登り給え。」
黒衣に身を包んだハーデスの赤い瞳が
横に聳える刺々しい山に向けられていた。
「えっ?
・・・あの、あれって
有名な針の山じゃないですか?
地獄の咎人が登らせられるという。。」
「如何にも。
何、身体制御の鍛錬を積めば
問題にもならんよ。
気楽に登ってきたまえ。
ああ、その前に山の麓にいるものと
戦って勝つ必要があるのだが、
これが今のカケル殿には
厳しい鍛錬であろう。
心して向かわれると良い。」
「えーっと、普通は針の山って
登ったら身体中の血が抜けて
血の池に放りこまれて、
元に戻ったらまた登るっていう
あの地獄ですよね?
どんな身体制御使えばいいんでしょう?
って、その前に山の麓にいるものって、
どんな相手なんですか?
なんだかここに居るだけで不安感で
お腹いっぱいになるんですけど。」
「その疑問はカケル殿自らで
手に入れることも鍛錬となろう。
その不安感はこの世界特有の
精神制御と言える。
気を抜けば、体感する時間も感覚も
狂わせられるのだよ。
常に戦場にいるものと
心を引き締めるのが良いだろう。
先に話しておくが、
ここは外の世界とは時間の流れが
異なる。
もっと言うと、
ここには数千の並行世界からの
死者の魂が流れ込んできている。
カケル殿のいた世界と
少し異なる並行世界の死者も
当然の如く無数に存在する。
(・・・ふむ、
天界からとは・・・、
姉上もきつい事をなされる。)
さて、カケル殿。
進まれよ、貴殿の望む未来を
その手で守りたいのであれば、
その歩みを止めることなく進まれよ。
その歩みを妨げるもの全てに
打ち勝ちながら。」
一瞬陰りのある表情を見せた
ハーデスであったが、キッときつめの目線で
カケルの心の奥底まで射抜くように
見据えつつ、行動を促した。
「そうですね、
俺はこの手で守りたい仲間がいる。
もう一人じゃない。
うん、一人じゃないんだ。
この試練、乗り越えてきます。」
一礼して麓に向かい始めた
カケルの背中を見送りながら、
ハーデスは小さく溜息をついた。
「冥王ともあろうものが
溜息を吐くとはな。」
黒衣のハーデスの背後から
黒い貫頭衣に身を包んだ男らしきものが
揶揄するような声をかけた。
「ふむ、堕天使には思いやる心も
ないと見える。」
「はっ!
そんなもの天界に投げ捨ててきたさ。
それよりも、
あの天界から来た連中は何だ?
あの若者の心を
完膚なきまでに圧し折る余興か?」
「やはり深慮が足りていないのだね。
あの方々は姉上から彼への
試練なのだよ。
彼が今の心のままでは
倒すことができない強敵と
言っておこうか。」
「ほう、試練か。
だが、その試練を乗り越えたとして、
件の影の邪神とやらを
倒せるほどの力を得るとは思えん。
いっそのこと、
私が滅して来てやろうか?」
「それは容認できぬよ。
姉上の望みは
彼の魂の救済もあるのだよ。」
「・・・サバイバーズ ギルトの呪いを
自らに科した魂のか。」
「やはり見透せていたか。
自らを許せないものには
越えられぬ心の壁が
彼の最大の敵であろう。
その罪の意識を具現化した存在を
目にして彼がどう対応するのか。
自らの心を切り裂く思いで挑むのか。
優しさの残る彼の精神では
正気を保てぬであろうな。
だが、姉上は厳しい方だ。
全て承知の上で送ってこられたのだよ。
心折れて
ここに戻るようなことになれば、
私は彼を殴り倒してでも
送り返さねばならん。」
「ほう、いい役回りだな。
その役目、是非とも譲ってもらおうか。
精神をすり減らして弱っているものに
さらに追い討ちをかけるような所業は
実に私らしい。
ここは私に任せて
裁きの間に戻っているといい。」
「堕天使らしくか。。
それで立ち直れるのであれば良いが。
厳しさだけが彼の為になるとも
思えぬのだがな。」
「いいから戻っておけ。
情けなく意気消沈して
ここに戻るようであれば、
魂にこびりついた余分な贅肉を、
いや、骨の一部までも
削り落とすようなハードな
ダイエットメニューで
鍛え直してやるまでだ。
何、天界の弛んだ天使が
消滅してしまいたくなる程度の
軽いメニューだ。」
「あらあら、随分と楽しそうな話ね。
生者の気配がするから
気になって来てみたら
楽しそうなことがあるのね。
堕天使の厳しいだけの鍛錬では
真の魂の救済には至らないのだわ。
自責の念に囚われた生者には、
死者が本当に望む思いが
届かないのだわ。
ここは私が受け持つわ。
力押しだけでは
越えられないこともあるのだわ。」
二人の背後から漆黒のドレスを纏った
冥界の貴婦人、エレシュキガルが
そう声をかけてきた。
彼女のことをよく知る二人は
互いに目線を合わせると、
一旦その場を彼女に任せることにして
すぅーっと静かに気配を消していった。
「親不孝な子ね。
一番いけないことなのだわ。
子の幸せを望む親の心、思いを
その身に染み込ませるように
思い知るのだわ。
いいかしら、
打ち勝つのは貴方の心の中にある
後ろ向きな自己満足のような
自責の念なのだわ。
そんなことを望む親などいないことを
その身で思いしるといいのだわ。」
先程までの柔らかな目つきからは打って
変わって罪人を見るような厳しい目線が、
歩みゆく小さな背中を射抜いていた。
ぼんやりとした光の漂う薄暗い空間に
立っていた。
暗視のスキルでぼんやりと
周りが見え始めてきたら、
すぐ横から声がかかってきた。
「姉上の使徒、カケル殿。
ようこそ冥界へ。
さて、姉上からの依頼では
影の邪神を封じれる程に
鍛えるよう言付かっているが、
相違ないかな?」
「あ、はい、そうです。
あの、討伐ではなく
封じるのでしょうか?」
「うむ。
カケル殿はまだ姉上の使徒見習いと
いうところであろう。
討伐に至るほどの神力は
その身についておらぬのだよ。
今の身では精々封じるまでであろう。
何、それでも数百年は
抑えておけるのだよ。
とはいえ、それも努力なく
身につくものではないのだ。
まずは鍛錬を積み給え。
初めはあの山に登り給え。」
黒衣に身を包んだハーデスの赤い瞳が
横に聳える刺々しい山に向けられていた。
「えっ?
・・・あの、あれって
有名な針の山じゃないですか?
地獄の咎人が登らせられるという。。」
「如何にも。
何、身体制御の鍛錬を積めば
問題にもならんよ。
気楽に登ってきたまえ。
ああ、その前に山の麓にいるものと
戦って勝つ必要があるのだが、
これが今のカケル殿には
厳しい鍛錬であろう。
心して向かわれると良い。」
「えーっと、普通は針の山って
登ったら身体中の血が抜けて
血の池に放りこまれて、
元に戻ったらまた登るっていう
あの地獄ですよね?
どんな身体制御使えばいいんでしょう?
って、その前に山の麓にいるものって、
どんな相手なんですか?
なんだかここに居るだけで不安感で
お腹いっぱいになるんですけど。」
「その疑問はカケル殿自らで
手に入れることも鍛錬となろう。
その不安感はこの世界特有の
精神制御と言える。
気を抜けば、体感する時間も感覚も
狂わせられるのだよ。
常に戦場にいるものと
心を引き締めるのが良いだろう。
先に話しておくが、
ここは外の世界とは時間の流れが
異なる。
もっと言うと、
ここには数千の並行世界からの
死者の魂が流れ込んできている。
カケル殿のいた世界と
少し異なる並行世界の死者も
当然の如く無数に存在する。
(・・・ふむ、
天界からとは・・・、
姉上もきつい事をなされる。)
さて、カケル殿。
進まれよ、貴殿の望む未来を
その手で守りたいのであれば、
その歩みを止めることなく進まれよ。
その歩みを妨げるもの全てに
打ち勝ちながら。」
一瞬陰りのある表情を見せた
ハーデスであったが、キッときつめの目線で
カケルの心の奥底まで射抜くように
見据えつつ、行動を促した。
「そうですね、
俺はこの手で守りたい仲間がいる。
もう一人じゃない。
うん、一人じゃないんだ。
この試練、乗り越えてきます。」
一礼して麓に向かい始めた
カケルの背中を見送りながら、
ハーデスは小さく溜息をついた。
「冥王ともあろうものが
溜息を吐くとはな。」
黒衣のハーデスの背後から
黒い貫頭衣に身を包んだ男らしきものが
揶揄するような声をかけた。
「ふむ、堕天使には思いやる心も
ないと見える。」
「はっ!
そんなもの天界に投げ捨ててきたさ。
それよりも、
あの天界から来た連中は何だ?
あの若者の心を
完膚なきまでに圧し折る余興か?」
「やはり深慮が足りていないのだね。
あの方々は姉上から彼への
試練なのだよ。
彼が今の心のままでは
倒すことができない強敵と
言っておこうか。」
「ほう、試練か。
だが、その試練を乗り越えたとして、
件の影の邪神とやらを
倒せるほどの力を得るとは思えん。
いっそのこと、
私が滅して来てやろうか?」
「それは容認できぬよ。
姉上の望みは
彼の魂の救済もあるのだよ。」
「・・・サバイバーズ ギルトの呪いを
自らに科した魂のか。」
「やはり見透せていたか。
自らを許せないものには
越えられぬ心の壁が
彼の最大の敵であろう。
その罪の意識を具現化した存在を
目にして彼がどう対応するのか。
自らの心を切り裂く思いで挑むのか。
優しさの残る彼の精神では
正気を保てぬであろうな。
だが、姉上は厳しい方だ。
全て承知の上で送ってこられたのだよ。
心折れて
ここに戻るようなことになれば、
私は彼を殴り倒してでも
送り返さねばならん。」
「ほう、いい役回りだな。
その役目、是非とも譲ってもらおうか。
精神をすり減らして弱っているものに
さらに追い討ちをかけるような所業は
実に私らしい。
ここは私に任せて
裁きの間に戻っているといい。」
「堕天使らしくか。。
それで立ち直れるのであれば良いが。
厳しさだけが彼の為になるとも
思えぬのだがな。」
「いいから戻っておけ。
情けなく意気消沈して
ここに戻るようであれば、
魂にこびりついた余分な贅肉を、
いや、骨の一部までも
削り落とすようなハードな
ダイエットメニューで
鍛え直してやるまでだ。
何、天界の弛んだ天使が
消滅してしまいたくなる程度の
軽いメニューだ。」
「あらあら、随分と楽しそうな話ね。
生者の気配がするから
気になって来てみたら
楽しそうなことがあるのね。
堕天使の厳しいだけの鍛錬では
真の魂の救済には至らないのだわ。
自責の念に囚われた生者には、
死者が本当に望む思いが
届かないのだわ。
ここは私が受け持つわ。
力押しだけでは
越えられないこともあるのだわ。」
二人の背後から漆黒のドレスを纏った
冥界の貴婦人、エレシュキガルが
そう声をかけてきた。
彼女のことをよく知る二人は
互いに目線を合わせると、
一旦その場を彼女に任せることにして
すぅーっと静かに気配を消していった。
「親不孝な子ね。
一番いけないことなのだわ。
子の幸せを望む親の心、思いを
その身に染み込ませるように
思い知るのだわ。
いいかしら、
打ち勝つのは貴方の心の中にある
後ろ向きな自己満足のような
自責の念なのだわ。
そんなことを望む親などいないことを
その身で思いしるといいのだわ。」
先程までの柔らかな目つきからは打って
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