無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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異邦人

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全身機械化された電脳兵のセブンが転移してきた時、
幻惑魔法で不可視化され、侵入防止結界に守られている
世界樹の森の護り手であるエルフには結界内への不可思議な
侵入の異変が伝えられた。

エルフの族長である、グランは、世界樹の精霊から異変の伝達と共に、
見てきてほしいという要望を感じ取った。
精霊は言葉ではなく、頭の中に直接イメージを伝えてくる。


何でもこの世界樹の森の王者である魔獣、ヒクイドリの縄張りのど真ん中に
異邦人が妖精種と舞い降りたので、見てきて欲しいそうだ。
森人の彼らをもってしても5日はかかる位置にある。
しかも、ヒクイドリはこの森最強の魔獣の一角だ。
不意に遭遇すれば、認識不能の無殺気の獄炎を初手で放ってくる。
下手をするといきなり即死する可能性がある厄介な相手だ。


 「異邦人ですか?世界樹には近づけたくないですね、族長。
  見に行くというより、この神聖な森から追い出しますか?」


身長180cm 体重100kgとがっしりしたパワーファイター体格のグランより
背が20cm高いが体重は70kgもない、ひょろりとしたスピードファイター体型の
副族長、ジランが当然のように提案をしてくる。

 「まぁ、基本はそうだが、妖精種も連れているようだし様子を見て決めよう。
  ヒクイドリと遭遇するかもしれないから、攻撃隊の3名と一緒に向かおう。
  あれが接近してくるような事態になれば、確認如何に関わらず、即座に撤退する。
  悪いが遠征の準備と攻撃隊の選任を頼む。
  明日までは精霊の祈り日だから明後日の出立としよう。」


この世界では、1年は350日で年に2回、2日間だけ2つの太陽がつながる日がある。
その2日間は精霊の動きが活発になることもあって、この集落では精霊に祈りをささげる
神聖な儀式を執り行うため、集落の結界からは出ないのがしきたりとなっていた。

グラン一行に集落の魔法士が幻影魔法をかけ終えて、出立しようとした正にその時、
集落の結界を突破して侵入してきたものがいた。


  『カレダ!』

グランの脳裏に世界樹の精霊のイメージが飛び込んできた。

  「あの者だ! まずは結界外へ追いやるぞ!」


グランの掛け声を聞くまでもなく攻撃隊の面々は攻撃位置に移動した。


  「よくあの危険地帯を抜けてきたものだ。しかも、まだ2日しか経っていないというのに
   なんという移動速度だ。
   ど素人ではあるまい。」


グランは念話で攻撃隊に伝達を行う。

  『いつも通りの対応だ!侵入者排除を行う。攻撃開始!』


問答無用の攻撃が侵入者に向けて放たれた。


  「何っ!!」


回避した侵入者は突如として、姿を消してしまった。

  『気配探知魔法で追うぞ!』

声なき号令で攻撃隊は不可視のままで木々を移動し、気配探知網を広げていく。
移動する気配は、ヒクイドリの縄張りに向かっているようだ。


  「まだ追いつかんとは余程の手練れのものだな。
   これは迂闊に戦わない方が無難かもしれんな。」


そうグランが思っていると、少し先の森で
ヒクイドリの無殺気の獄炎が放たれた。


  「これはかなりの大物のヒクイドリだな。
   さすがに異邦人といえど無傷ではすまんだろう。
   落ちてきて早々にこれでは些か不憫だな。」


と思った瞬間、見たことのない光の揺らめきと熱波を感じた。
と同時に、急降下攻撃を仕掛けていたヒクイドリが破裂して力なく墜落する姿が見えた。


  「何だ! 何が起こった!?」

  『攻撃は中止! 侵入者には危害を加えない。確認に向かう。』


攻撃隊は武器を肩にかけて移動を開始した。



  若い男だな。さっきの攻撃はどうやったのだ。
  ヒクイドリをきれいに解体しているところを見ると、彼も狩人か。
  ヒクイドリの肉など、前はいつ口にしたのか記憶が薄いが、
  疲労回復効果も滋養高い超高級食材だ。
  うらやましい限りだが、それなりの強者だ。
  ここはひとつ詫びから入るか。


その甲斐あってか、そのものセブンとの話もすんなり終えるどころか、
ヒクイドリの肉も手に入れられて、すごく気分が高揚していたグランであった。

攻撃隊員達も非常ににこやかな笑顔のままで、セブンを集落の手前まで誘導して、
彼らがいつも平原に抜ける獣道を教え、セブンの後姿を見送ったのだった。


  『希少種の妖精種だね。きっと彼には加護があるよ。またおいで。』

誰にも聴き取れぬ声が天を衝く巨木から風のささやきと共に流れていった。
   
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