無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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傭兵の仕事

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ネコ獣人族の村の水不足解消に一役買った、
電脳兵のセブンは、水の恵みを喜び合う村人の輪から
とぼとぼと離れていく、ネコ獣人族の戦士、ファーラの後を追った。


 「ファーラさん、どうしたのかな?
  他に心配事でもあるのかな?」


セブンがそう話しかけると、ネコミミが垂れた状態のファーラが
伏し目がちに話し始めた。

 「ああ、心配事、心配事もあるのだが、
  村に人族の騎士団が押し寄せた時に可愛がっていたホーンホースが
  激しく暴れてしまってな。

  騎士団から攻撃を受けて瀕死の怪我を負ったのだが、
  つい先日手当の甲斐なく亡くなってしまったのだ。

  荷馬車も嫌がらずに引いてくれる気のいい仲間だったのだ。」

はっとなる勢いで顔を上げると、
セブンに縋る様なうるんだ瞳を向けてきた。

 「厚かましい願いだとは思うが聞いて貰えるだろうか。
  ホーンホースを、ブルーを、蘇生魔法で生き返らせて
  頂けないだろうか。

  私の村は食べるだけで精一杯な寒村で、
  セブン殿に支払えるものは私の魔力くらいしかないのだ。

  どうか考えて頂けないだろうか。
  この通りだ。」

膝をつき、頭を垂れて懇願するネコミミさんの
お願いを聞かずにおれようか。

 「お安い御用だ。
  頭を上げてくれ、俺なんてしょせんゴーレムみたいなものだから。

  代わりにこちらの頼みを聞いてくれると有難いんだけど。

  実はまだ2人?という表現があっているか怪しいんだが、
  仲間がいるんだ。

  家代わりの大きなメタルの箱もあって、村のはずれの湖の畔にでも
  設置して住まわせて貰いたいんだけど、どうかな?」

 「それこそお安い御用だ、
  護衛を頼んでいるのはこちらなのだ。

  本来ならば、住むところも用意すべきなのだが、
  何分資材もない村ゆえ申し訳ない。

  それでは割に合わないのではないだろうか?
  何か私にできることはないだろうか?」

 「あ、だったらこの世界のことを教えて貰えないだろうか。
  後で拠点っていうメタルの箱を持ってきて、仲間を紹介するので、
  その仲間にも一緒に教えてもらえると
  有難いんだけど。」

 「私の知ることで良ければ、すべてお教えしよう。」

 「じゃあ、そのブルーってお馬さんの遺体のある所まで
  連れてってくれるかな?」

こっちだ、と少し元気よく歩き始めた、ファーラの後に続いて行った。

屋根と桶だけがある馬小屋の干し草の上で
硬直している薄青い色の馬の遺体があった。

セブンは馬の遺体に近づき、範囲を狭めて蘇生魔法をかけた。

 「完全蘇生!」

馬小屋の周りに急に虹色の波がゆらゆらと漂い、
すぅーっと晴れるように消えていった。

 「ブルルン!」

嘶きながら額に小さなとんがり角のある馬が立ち上がると、
干し草を振り払うように体を揺さぶっていた。

 「ブルー!!」

ファーラが駆け寄ると、鼻先をこすりつけて
挨拶をしている様だった。
瞳もスカイブルーの奇麗な馬だ。

 「やぁ、ブルー、初めましてだな。
  俺はセブン、魔法が使えるメタルゴーレムだ。
  よろしくな。」

俺にも挨拶してくれた。気のいいお馬さんだ。

 「ありがとうセブン殿、何から何まで感謝のしようがない。
  貴殿に会えたことが奇跡の始まりだったとしか思えない。
  本当にありがとう。」

うっすらと涙を浮かべたファーラはブルーの首に抱き着いたままで
感謝してくれた。

人に喜んでもらえるのは、傭兵としてはいい仕事だよな。

 「それはそうと、ブルーは何で暴れたんだ?
  どう見ても温厚な感じしかしないんだけど?」

疑問を口にすると、またファーラの瞳に影が差してしまった。

 「私の父が騎士団に連行されるときだった。
  父は村でただ一人水魔法が使えたのだ。

  騎士団は水魔法の使い手も集めていて、魔法の適性を 
  鑑定する魔道具で村人全員を調べて見分けていたのだ。

  父はこの村の長の立場でもあったから、村に危害を加えないことを
  頼んで、素直に人族の王都まで連行されていくときだった。

  いつも父を背に乗せて湖の周りを走り回っていた、物静かなブルーが
  騎士団を蹴り飛ばして暴れ出したのだ。
  すぐに騎士団に突き刺され、ブルーは虫の息になってしまったのだ。」

セブンの中でカチリと何かの歯車が動いた気がした。
これは傭兵の血が騒ぎだしたのかな、血なんて流れてないけど。

 「・・・あー、仕事思い出したよ。
  俺この村の護衛兵だよな、村の長を守れなかったのは俺の責任だな。
  その村長が連行された人族の王都の方角って分かるかな?
  ちょっと行ってくるわ。」

 「そんな事はない、貴殿に責などない。
  貴殿に行かれてしまうと村の守りは私だけになってしまう。
  少し落ち着いて欲しい。」

 『そうね、まったくその通りだわ。
  一旦拠点まで戻って設置を優先することをお勧めするわ。
  情報をもっと整理してしっかりとした救出計画の立案が重要よ。』

サポートアンドロイドのサラからAIリンクを通して声がかかった。
うん、そうだな、ちょっと落ち着くか。

 「そうだな、まず拠点の方を移すとするよ。
  大きさなんだが、さっきのワイバーン2頭分くらいあるんだけど、
  設置していい場所を教えてもらえるかな?」

 「ならば、さっき入ってきた村の入り口のすぐ横でどうだろうか。」
 
 「あ、あそこか。了解。
  では、ちょっと飛んで行ってすぐに戻ってくるよ。

  そうだ、この虫、小さなゴーレムみたいなものなんで、
  これに話しかけてくれると会話ができるんだ。
  服にでもつけておいてくれるといいんだけど。」

バグドローンの中でも大きめの通信機能がある
テントウムシ型ドローンを手渡した。

 「かわいい形のゴーレムだな。
  うむ、襟のところに着けておくとしよう。
  着く頃に連絡が欲しい。場所の安全確保をしておく。」

セブンは 了解 っと返事をすると、上空で警戒飛行をしている
フライングユニットのカーラに声をかけた。

 「カーラ、ジョイントシークエンス始めてくれ。
  拠点に戻る。」

 『了解なのです。
  久しぶりに高速移動からジャンピングジョイントをするのです。
  タイムシグナル同調開始なのです。
  ジョイント指定座標まで移動開始なのです。』

足部の反重力ユニットのパワーを上げて、
加速用スラスターを吹かせつつ、
村を飛び出していくセブンであった。
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