無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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王城にて

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人族の王都の東、海に面して聳え立つ王城の広間。

貴族や第二騎士団、魔法団の面々が右往左往しつつ、
届けられる情報にそこここで喧騒が巻き起こっていた。

 「あり得んことだ!楼蘭兄弟だけでなく
  魔法団長のアランの魔法探知能力も一流なのであろう?
  魔法の不意打ちなど成しえるはずがなかろう!
  騎士団が大方謀殺したのであろう!」

 「なんだとっ!!忌々しいアラン団長だけならまだしも
  勇者バスク殿は物理攻撃が効かぬ身体強化魔法の使い手でもあるのだ。
  しかも、あのテュール騎士団長ですら、近づこうにも雷撃で打たれて
  一太刀も浴びせることが叶わず敗北するほどなのだぞ!
  
  魔法団の謀反に決まっている!」

 「何を言うか!
  魔法でアラン団長にかなうものなど
  この国の何処にいるというのだ!?
  無詠唱で魔法行使できるのはアラン団長以外存在せん!
  詠唱を始めるだけで動くわずかな魔力でも探知できる
  アラン団長に魔法を打ち込めるものなど魔法団にはおらん!

  アラン団長に与しない貴族方の暗殺者が、禁書のスクロールを
  使用したのではないのか!?
  ダンジョンから出たスクロールを隠し持っている貴族がいるという
  噂は本当なのではないのか!」

 「無礼なっ!!言うに事を欠いて我らの手の者の・・・」

疑心暗鬼にとらわれ、誰もかれもが自ら属する組織以外を
信用できなくなり、貴族・騎士団・魔法団の関係に大きな軋轢が
急速に広まりつつあった。


広間の奥にある国王の間にもこの喧騒は響き渡っていた。

 「異界召喚魔法で呼び寄せた勇者3名に、
  勝手気ままな行動の目立っていた魔法団長まで
  まとめて暗殺された形となりましたな。
  私見ではございますが、この結末でまだ良かったのではないかと
  愚考致します。」

この人族の国の宰相ルーフェンスが燃えるような赤い髪をかき上げながら
玉座の国王ルードスに小声で私感を述べた。

 「彼らの取り返しの利かん悪行の責は我にある。
  責を果たす時が来たとみえる。
  魔族の国の魔王殿、獣人国の獣王殿に
  遣いを出すぞ、ルーフェンスよ。」

 「お待ちください国王陛下。
  まだ勇者、魔法団長に与した貴族等の処遇も
  一考せねばなりませぬ。
  処断の後でなければ、また勝手に行軍されかねません。
  
  何より、この暗殺を成し遂げたものが早晩姿を現すことが
  想定されます。そのものの出方も見た方がよろしいかと。」

そのタイミングで彼らの頭上から声が舞い降りてきた。

 『今のお話に上りました、 暗殺者 でございます。
  このようなところから声掛けする無礼をお許し頂きたく。』

その声は国王の目の前の床に舞い降りたテントウムシの様な昆虫から
発しているようだった。

 「かような虫の暗殺者と申すのか?」

ルーフェンスがそう言い終える前に、
虫の前方に30cmほどの3Dホログラムが姿を現した。

 「いえ、私はこの世界でいうところのメタルゴーレムの
  セブンと名乗っておりますもので、ここより離れた場所より
  この部屋の状況を見聞きしております。
  勝手な侵入をお許しいただきたい。

  一つ提案をさせて頂きたく侵入させて頂いております。」

 「なに、一体どこから!?」

 「よい、ルーフェンス。
  メタルゴーレムのセブンとやら、まずその提案とやらを
  話して聞かせよ。」

 「しかし陛下、素性もしれぬものの言葉など
  「良いのだ、ルーフェンス。この者の腕であれば、
   その気になれば余も暗殺出来うるであろう。
   その手を使わずにこの遣いを寄こしたのだ。
   害意がないことは知れる。
   まずは聞かせてもらおうではないか。」
  ・・陛下のお心のままに。
  では、セブンとやら提案の方話されよ。」


 「そこまで理解頂いているなら直接話す方が早いですね。」

虫のいたあたりに急に見たことのない出で立ちの男らしきものが
片膝をついて頭を垂れた姿勢で現れた。

 「お初にお目にかかります、国王陛下殿、宰相殿。
  私が、異界より召喚されしメタルゴーレムのセブンです。
  
  早速ですが、この世界はどこもかしこも水不足で苦しまれているご様子。
  私はおそらく水不足解消の手立てとして、女神様がこの世界に
  召喚されたものと愚考致します。

  私には、ここから見える湖に水を湛えられる魔法が使えます。
  無礼を承知で申し上げますが、攻め滅ぼされた獣人族の国と魔族の国の
  復興に全力でご協力頂けるという文言を頂ければ、
  すぐにでも行使させていただく所存。
  如何でございましょうか?」

 「復興とな、そのようなこと
  「ルーフェンス、よい。
   セブン殿、その案受けよう。
   国王として両国の復興に協力を惜しまぬと誓おう。
   もとはといえば、余の愚策によって
   望まぬ結果となってしまっておったのだ。
   問題は攻め滅ぼしておいて、どの口で詫びを入れるか、
   復興という補償をどのような形で行うかは両国王と話さねば
   ならぬのであるが、その段取りもつくかどうかと
   思案しておったのだ。」
  陛下・・・。」

 「そちらも私にお任せいただきたく存じます。
  段取りが整いましたら、また先の虫の伝令を遣わせて頂きます。

  では、早速あの湖に大雨を降らせますが、よろしいでしょうか?」


 「おおっ!そのようなことが出来ると申すのか。
  天候を変えるような大魔法など見聞にないものだ。
  それが女神様のお力か?是非に頼む、
  そこのバルコニーから見せてもらうぞ。」

そう言いながら国王は玉座を立ち、宰相と共にすたすたとバルコニーに足を進めた。
後ろについて出たセブンは、では行使します と声をかけると、

 「天空の瀑布」

とはっきりとした声を発した。
途端に、湖の上から王都全土を一気に覆うように、黒い雲が沸き立ち
大雨が懲罰を与えるが如く激しく王都全土を叩き始めた。

国王と宰相はあまりの激しい雨に言葉をなくして呆然としている。
しばらくすると雨が止み、同時に雲も消え去り、晴れ間が戻ってきた。

 「では、これにて失礼致します。」

という声を聴いて、二人がはっとして後ろを振り返ると
そこには小さなテントウムシが羽を広げて飛び立つ姿があるのみであった。

 「何という大魔法か。アランや勇者を倒す力は本物であると
  推し測れるな。見事だ、セブン殿。段取りの件良しなに。

  ルーフェンス、湖が水を湛えて喜んでおるようではないか。
  さて、為すべきことを成さねばならぬな。」

ルーフェンスは、セブンがもっと早く現れていたら、
異界召喚魔法で呼び出したのがセブンであったならと
深い慚愧の思いで、煌めく湖面を恨めしく見つめるのであった。
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