無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

文字の大きさ
80 / 164

破壊と再生

しおりを挟む
静謐な空間にぼんやりと柔らかな光が灯っている。

御座で瞑想をしていたシヴァは、
躊躇うようにゆっくりと三つの目を開き、
静かに立ち上がると外へ繋がる通路へ
滑るように移動していった。

 (はて、奇妙な神気の揺れがあるな。
  北の結界の外にあるのか?
  
  私が気になるとはな。何者であろうか。

  接触してきた者であれば、
  何れかの神の神徒やもしれぬ。

  この世界に来てからは
  穏やかに瞑想に耽ておったが、叶うなら
  ここの神の事も聞いてみたいものじゃな。)


シヴァは念話を使い、この巨大移民船の艦長ガーラに
北側の海上に通じるゲートの結界を
一時的に解くよう言い渡した。

シヴァがゲートから結界を出て、
海上で少しその身を浮かせていると、
結界に沿って海の上を走って来る者が目に留まった。

 (浮遊の神力を使っているのではないな。
  アトランティスが好んで使う魔法の道具かえ?
  目障りなものよ。出ねばよかったな。)

興醒めし、踵を返そうとするシヴァに
海の上を走ってきたものが声をかけてきた。

 「お待ちください。シヴァ神様。
  私はロキというこの世界の下級神の1柱。
  お話を聞いていただきたい。」


その言葉、特にこの世界の神の話に興味が湧き、
微かに笑みを浮かべて振り返り、
その者の到着を待つ事にした。

その者は海の上を走ることが出来る靴で
自由に移動しているのだという。

さらに困ったことがあり助けて欲しいという。

 「実はあなた方と縁深きアトランティスの民が
  この世界の神である私を頼ってきたのですが、
  彼らはこの世界に転移してくる時に
  武装を奪われ、言わば丸腰の状態で
  投げ出されたのです。

  ご存知のように武力として魔法が
  使える民ですが、この世界の民から見れば
  魔力は劣るようで、迫害を受けておるのです。


  この世界では静かに暮らしたいと海の底に
  国土を移した程でしたが、交易をしないと
  食べるものには限りがございましょう。

  そこで交易用に小さな島を浮かべて、
  迫害を受けながらも生きる為に仕方なく
  細々と交易をしておりましたが、
  あまりに無体な交易条件をつけて来るものが
  現れてからはそれはそれは酷いものでした。

  ついこの前のことですが、
  あまりの無体さに我慢できなくなった商人が
  交易をお断りすると激昂されてしまい、
  島ごと破壊されてしまったのです。

  このままでは交易もできずどうしたものかと
  案じておりましたところ、こちらの方から
  薄らとシヴァ神様の神気を感じ取った神が
  おりまして、是非お力添えをお願い致したく
  こうして参上した次第でございます。

  私は下級神ですので、戦う力も神器も
  このように持ち合わせておりません。
  シヴァ神様のような上級神様方のお言葉を
  神託として伝えることができる程度で
  ございます。

  過去のことで色々と思うことは
  おありかと思いますが、
  どうか同じ世界からきた同胞と見て頂き、
  お力添え頂きたくお願いを申し上げます。」

真摯に頼み込んでくる姿に、
確かに同じ世界から来た同胞への協力
ということであれば、いいのではないかと
思い始めたシヴァであったが、懸念もあった。


 「理解したぞえ。
  その無体な者共に試練を与えよ
  ということであろう。
  力を貸すことは構わぬが、良いのか?
  この世界の破壊と再生は
  別の神が司っておるではないか?
  私が余計なことをして不興を買わぬか?」

 「そこは問題ございません。
  既にこの世界の上級神からは好きにせよと
  お言葉をいただいておりますので。

  どうかお力をお貸し頂きたく
  重ねてお願いを申し上げます。」


ならば良し、
その者共がいるというあたりを破壊し、
別のものが再生を果たせば、この世界のものの進化を
促した格好になるといえよう。
久方ぶりに私らしい働きができるなと思うと
シヴァの口元には抑えきれず笑みが溢れてしまった。

その笑みをいい笑顔で見返すロキの目には
怪しい光が灯っているのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...