無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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パティシエの街

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巨大大陸の中央平原から東寄りにその街は栄えている。

メトロ交通網は中央平原を取り囲む様に
環状の軌道も完成していた。

東は人族の王都、西は獣人族の王都を繋ぐ東西線、
北は砂漠のオアシス付近、南は獣人族の港町を繋ぐ
南北線があり、それぞれの途中の駅から
支線を伸ばしている。

北の駅からは西寄りにある魔族の王都と、
西の獣人族の王都を繋ぐ北西線があり、
東の人族の王都からはパティシエの街と、
南の港町を繋ぐ南東線が出来ていた。

そこに魔物、魔獣が多く出没する中央平原を囲む
中央環状線が完成し、冒険者だけでなく、
商人、貴族といった様々な人々が移動する様になっていた。

このところメトロ商会連合は景気が良く、
メトロの乗車賃を値下げする、乗車率が上がる、
本数を増やす、利用者数が増える、値下げする、
さらに乗車率が上がる、軌道線数を増やすといった、
いい傾向が続いており、当初は4線で始めたリニアメトロも
今では20線を超える複雑な交通網になっていた。

リニア軌道は決まった位置を移動するだけなので、
衝突などの事故は起こらないが、地下を移動する
魔物が時々出没するため、軌道管理局という防衛隊が
発足している。

メトロ交通網を最初に作ったセブンは
当然この防衛隊にも籍を置いている。

メトロ商会連合が運営している冒険者ギルドにも
籍を置いており、緊急クエストが発生すれば
バグドローン経由で連絡が入る様になっている。


今日は中央環状線の北東部にある
ガイスラー辺境伯の近くの地下で
サンドワームという硬い甲羅を環状の体に纏い、
その甲羅に高周波数の振動を与えながら、
土の中を潜って進む魔物の討伐に参加していた。


 「いつもながら、こいつ硬いな。
  その上、マイクロウェーブパルサーに近い
  高周波出しやがるから普通の冒険者だと
  うかつに近寄って打撃攻撃加えようとしたら、
  加熱されて死んじゃうことがあるんだよな。

  電磁砲で倒したら破裂して地上にまで被害出るから、
  使えないし、面倒なやつだよ、全く。」


文句を言いながらも、スペースチタンブレードで
甲羅の隙間を切り裂きながら、徐々に弱らせてゆく。

 「どれ、一手打たせていただこうかな。」

そう後ろから声をかけられたセブンが少し下がると同時に、
横あいから大刀を振り抜く人物がいた。

 「おぉっ!」

気迫のこもった一振りで硬いサンドワームが
横に真っ二つに切り裂かれた。
  
 「お見事です。卜伝さん。」

 「いや何の。セブン殿が足止めしてくれたお陰じゃよ。
  出ないと、刃が届かぬのでな。」

謙遜する剣士、卜伝と共にセブンはこの依頼を受けていた。
前に北の砂漠で見た光の刃を目の前で見られて、
セブンはさらに卜伝の凄さを思い知っていた。

魔力を使わずにあの刃を生み出している卜伝に
自分は敵うのだろうか。
いや、実際は超長距離からの射撃くらいしか
出来そうにないが、当たるとは思えない。

見た目は20代後半の若さだが、中身は熟練の
魂のままでこの世界に転移してきた様だ。

運命の女神、ノルン姉妹神に聞くと、
前の世界の毘沙門天がこの剣士をここに遣わしたのだそうだ。

戦神の加護のもとで、ここに転移して来たのなら
この強さもさもありなんと思える。

 「そう言うセブン殿も独特の剣筋じゃな。
  修験者の使う剛剣の様な力強さを感じる。
  打ち合ってみたいと思うほどじゃ。
  流派の名はあるんじゃろうか?」

 「いえ、流派は正確には聞いてないんですよ。
  確かに陰陽師の術と一緒に使う剣なので
  修験僧に近いでしょうね。

  打ち合う前に死にそうなんで勘弁してください。
  
  もうすぐ世界大会があるじゃないですか、
  剣の部で出られんですか?」

 「いや、何でもありの総合の部の方じゃ。
  いろいろな技を使う相手と戦ってみたいのでな。」

そう、巨大大陸では冒険者の腕が上がるにつれて、
誰が一番強いのかと言う話がそこここで上がる様になり、
我こそはというものを集めて
世界大会の競技を行うことになったのだ。

剣、弓、魔法、総合の4部門で開催されるそうだ。
剣は手に持つ打撃系の近距離武器であれば何でも良く、
弓は打つ、投げるといった遠距離系の武器で、
魔法は系統問わず使用可能となっている。
総合は何でもありの無差別級の部門だ。

それぞれがその道に誇りを持つものがエントリーをしており、
中央平原のど真ん中に巨大な会場が現在建造されているところだ。

その大会の話を魔族の国の酒場で聞いた卜伝は
その足でギルドに出場の申し込みを行なったのだ。

たまたまそこに緊急依頼があってやってきていたセブンと合流し、
今ここに至るというところである。

セブンは救護担当として運営に参加することが決まっていた。
万が一、戦闘によって死を遂げていたかもしれない人でも、
大怪我で済んでいたことにして、こっそり蘇生してしまえるので
ギルド商会連合のギルド長の思惑で決定事項になっていた。

同時開催で美女コンテストがあるので、
このところやたらとそこら中の街でエステとか、ジムとかの
店舗が増えている様だ。

そっちには気を向けない様に気を付けているセブンであった。

 「ネルガルさんの名言を守るんだ。

  やばそうな話を振られた時は、貝になった気持ちで、
  決して口を開いてはならない。

  これだ。
  今拠点の周りで、いい笑顔で何を聞かれても
  愛想笑いだけして貝になり切るんだ。」

思い出すだけでも、命の危険を感じる女の戦いの激しさに
決して巻き込まれない様にしようと気を引き締めるセブンであった。

セブン、無駄な抵抗はやめなさい。諦めてください。作者より。
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