無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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記憶を刻むもの

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シューッという独特の開放音と共に
電脳兵のセブンが調整ポッドから出てきた。

 「あ、えっと、あたいパイロ!
  元はセブンと同じ電脳兵だったんだ。
  えっと、えっと。」

 「落ち着くのです。急ぐ事はないのです。
  カーラはカーラなのです。
  セブンはカーラも分からなくなったのです?」

 「パイロさんもカーラもいきなり話しかけられても
  セブン様はとまどわれていますよ。
  何も気にする事はございません。
  もうすぐサラ様が戻って来られます。
  それまではゆったりとなさってください。

  ハーブティーがございます。
  気持ちを落ち着かせる効果があるものですので
  香りだけでもお楽しみください。」

 「あ、えっと、ありがとう。
  それとごめんなさい、皆さんの事思い出せなくて。」

手に取ったカイの淹れたハーブティーの入ったカップの中を
俯いて寂しげに見ながらそう話すセブンだった。

その少し影のある横顔にどきっとして、しばらく見つめている
3人の娘達との間に、沈黙の時がゆっくりと流れていた。


その空白の間にトテトテと可愛い歩き方でセブンの下に
歩み寄るのは、ケットシーのクロだった。

 「セブン、魂の記憶の古い部分は戻ったんだね。
  今サラがカミュールさん達をお迎えに行ってるから、
  無くした記憶もきっと戻せるよ。
  だから、大丈夫だよ。」

 「ありがとう・・・か、かわいいな。
  抱っこしていいかな?」

 「あーボクは抱き枕じゃないから抱っこは苦手かな。
  ボクはセブンに命を助けてもらったんだよ。
  先に話しておくと、カミュールさんはこの世界の
  魔族の女王様で、言い方を変えると魔王様なんだよ。
  カミュールさんの力で過去の記憶を視れるんだ。
  それと、一緒にマインさんってメイド長さんの力で
  その記憶を繋ぎ止めれるんだって。」

 「そっか、それも思い出せないや。
  魔王様ってなんか怖そうだな。」


 「誰が怖そうだと?
  まさかわらわのことではあるまいな?
  わらわの事も分からぬか?
  あんなに愛し合ったではないか?
  その体が覚えていよう。
  どうだ少しは思い出せたか?」

吸い込まれそうな綺麗な赤い瞳の美女と
きっちりとメイド服を着こなしたキツそうな
雰囲気の女性とサラが拠点の中に入ってきた。

 「カミュールさん!
  それってどう言う事なのかしら?」

 「ふふふっ、いやに慌てておるなサラ。
  今は気にするな。
  何、墓場まで持っていく秘密の一つに過ぎん。」

 「話されている時点で持っていけてませんわ。
  後でじっくり聞かせていただきますわね?

  それよりもセブンの記憶を戻すことが重要ね。
  カミュールさん、マインさんお願いいたしますわ。」

 「まぁそうだな。
  マインよ、先にわらわの過去視でセブンの過去の記憶を
  全て巻き戻す。並行して繋ぎ止めてしまってくれ。」

 「承知致しました、カミュール様。
  セブン様、意識が昏倒することがございます。
  椅子は手すりの付いたものになさるか、
  奥のソファーに横になられることをお勧め致します。」

 「じゃあ、ソファーに横になります。
  あ、わざわざ俺のためになんかすみません。
  記憶が戻ったら何かお礼させてください。」

 「ふふふっ、お礼か。
  そうだな、わらわはセブンの子を希望しよう。
  こう見えて本気で好意を寄せているつもりだ。
  少しでもその気があったら、どうか頼みたい。

  では、やるぞセブン、マイン。」

 「「はい」」

カミュールの赤い瞳が怪しい光を放つと、
セブンの意識が飛んだようだ。

 「過去視」
 「時間律を司る魔天の神よ、
  この者の視る夢を記憶に刻むことを願う!
  エングレーヴ」

 (何だこれ?時間がものすごい速さで流れていく。
  俺は親がいないのか?親戚をたらい回し?
  最後の行き先が沙良義姉さんと一緒にいた神社?
  あの人だ!く、空爆!?
  そんな俺と沙良義姉さんしか生き残らなかったって・・
  半身不随・・・そっかそれで戦場に、
  そうだな、それしかないな。
  あんな子供が戦場で花を売り歩いてるのか・・・
  ば、爆弾!そっか、それで俺死んだのか?
  
  電脳兵?機械の体になったのか。
  殺しまくったのか、生き残るために。
  作戦指示通りに人を殺しまくったのか。
  その間に沙良義姉さんも電脳化して
  ザックバーン社に勤めることになったのか。
  
  耐久時間きてボディ換装したのか。
  そっか、実験用のボディに、沙良義姉さんが。。
  えっ、失敗って?何だこれ!
  沙良義姉さんの脳と電脳接続って?
  これじゃあ沙良義姉さんは、この時に・・・。

  3Dホログラムになって・・・俺を
  俺を支えてくれていたのか・・・
  俺は一体何のために戦ってきたんだ?
  何のために生きてるんだ?

  特殊ボディで何をしに行くんだ?
  やめろ!嘘だ!俺は・・俺は・・なんて事を・・
  何の武器も戦意もない子供相手にどうして?
  どうしてそんなことが出来るんだ!!
  なんの作戦なんだ!
  この子供達の何処に敵の脅威があるって言うんだ!

  俺は・・・そうか、わかったよ、
  全部しっかりと思い出したよ。
  死に場所を探してたんだ、ずっと。

  電脳兵の制御プログラムが自殺防止制御をしているからか。
  は、はっはっは・・・

  そっか、向こうの世界の最後にクロを助けてここに来たのか。
  ・・・そっかこっち来てからもこんなに色々あったのか。

  そっか、それで冥界に行った時に
  何となく留まりたかったのか。)
  

セブンは目覚めると同時にソファーから立ち上がり、
傍に立つカミュールとマインに礼をした。

 「お陰様で記憶が全部戻ったよ。
  カミュールさん、俺の子供はやめた方がいい。」

 「何だ、起きてすぐにネガティブな反応だな。
  これまでの己の生き方を否定するような事はするな。
  生きるために必要な事だったのだ。
  何も気することなどない。

  わらわが気に入っておるからセブンの子が欲しいのだ。
  好きな男の子を欲するのは普通だろう。」

 「生きるために必要って。」

 「そうだ、何処の世界でもそうだ。
  命は命で繋ぐものだ。前にも話した通りだ。
  相手が何であれ、生きとし生けるものの必然行為だ。
  さて、セブン、手を出してくれ。
  そうだ、それでいい。」

カミュールはセブンが伸ばしてきた手を
大事そうに両手で包み込むようにかかえた。
少し俯き、顔が紅潮しているようだ。

 「ダメ、いけないわ、カミュールさん!
  いや、お願いやめて!」

 「悪いな、サラ。セブンの神気、確かに頂いた。」

サラに向けて謝るカミュールの赤らんだ顔の瞳は
今にもこぼれ落ちそうな涙をかろうじて支えていた。
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