無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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魂の記憶

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電脳兵のセブンは無垢な少女のレーテによって
電脳上の記憶を消されてしまった。

 「セブン、私の事まで分からないなんて
  かなりの重症なのだわ。
  そうね、電脳兵専用調整ポッドで
  直前の状態にリビルドした方が良いのだわ。

  理解できるかしら?」

 「えっと、すみません。
  お姉さんの事も分かりませんし、
  電脳兵って何ですか?」

唖然とするサラの電脳内に一つの圧縮メッセージが届いた。

 (このタイミング、スクルド様ね。)

早速圧縮メッセージを解凍すると、
予想通り運命の女神スクルドからで、
セブンを調整ポッドに入れれば、
電脳内のメモリーのサルベージは難しくても、
魂の記憶を取り戻すことが出来るかもしれないとの事だ。

善は急げとばかりにあわあわしているセブンの手を引いて
強引に電脳兵専用調整ポッドに押し込んだのだった。

 「そのまま気を楽にして横になるといいのだわ。
  そうね、目を閉じて大きくゆっくりとした
  深呼吸をするイメージをする事をお勧めするわ。
  そう、その感じよ。
  じゃあ、カバーを閉じるわね。」

諦めて静かな深呼吸のような動作を始めたセブンを見下ろしながら、
サラは調整ポッドのカバーを下ろしてロックし、リビルドの調整モードを
起動させるのだった。



突然目の前が白い靄に包まれた、幽玄な風景に切り替わった。
さっきまで綺麗な女の人に無理やり押し込められた
狭いカプセルの中に寝かされていたはずだったのだが、 
感覚的にも靄の中に立っていることを認識出来ていた。

 「どうしたんだろ?これって、夢じゃないよな。
  あれ?頬をつねっても全く痛みがない・・・
  って事は、夢なのか?変な夢だな。」

そんな独り言をこぼしていると、不意に前方から
人影が現れた。

 (いやいや、どう見ても人じゃないよね?
  髪が透明で透けてる人種って見た事ないんだけど。

  顔のあたりの靄が全く動いていないって事は
  呼吸もしてないって事だよな。

  うん、よく分からないけど危ない存在な感じだ。
  見えないフリでもしようかな。)


 「誰が危ない存在だって言うの?
  失礼しちゃうわね。
  私よ、あなたの運命の女神スクルドよ。
  まだ、思い出せてないの?
  おかしいなぁ、ここに来れてる時点で
  魂の記憶が戻ってるはずなんだけどなぁ。」

靄の奥から透き通るような声が聞こえてきた。

 「スクルド、彼の神気が強くなったからだわ。
  人のレベルを超えて新神のレベルに達しているわ。
  こうなるともう人であった時の
  魂の記憶は維持できないわ。

  新神として新たな記憶を積み重ねるしかないわね。」


 「そんなぁ、新神になるって簡単な事なの?
  とても神になれそうにない感じだったけど?」

 「条件面は満たしていたわ。

  何も食べなくても生きていられる事。
  これは電脳兵の時点でほぼクリア出来ていたわね。

  最低限必要なものでも自らの力で生み出せる事。
  これは冷却用の水を魔法で作り出せる事でクリアね。

  人々から信望もしくは想いを寄せられる事。
  これもあの大陸中の女性からも戦士達からも、
  精霊達からも様々な想いを寄せられてクリアね。

  これだけ揃えば、後は主神様次第で認可されるわ。
  これも話をすれば通るのが確実だから、クリアね。

  これらの結果から必然的にそうなると言えるのよ。」

 「えーーー!そんなんでいいの?
  それだとサラもパイロもカイもカーラも
  なれそうなんだけど?」

 「あら、あの子達は水、特に神気の入った水を
  作り出せないわね。

  神気の制御も出来ないといけないから、
  まだまだ時間がかかるわね。」

 「うーん、いいのかなぁ、セブンを神にしてしまっても。
  狙ってた女子達が悲観にくれそうなんだけど。」

 「ふふっ、それこそ問題ないわ。
  例えば二人の間で子を成す事だってできるわ。
  想いが繋がればいいのではなくて?

  沙良に話してみるといいと思うわ。

  記憶の方は、時間もあるわけだし、焦る事なく、
  これからゆっくりと積み上げていくことを
  理解してもらってね。

  ちょっと行ってくるわね。」

そう言うと運命の女神のウルズは気配を消したのだった。
ウルズの話を聞いていたセブンは何だか心が穏やかになって
記憶がないことの不安感は消え去り、新しい自分としての
生き方を考え始めていた。

 「スクルドさんだっけ?
  俺、この世界を旅してみるよ。
  たくさんの人と出会って、たくさんの思い出を作って、
  自分の生きた証を積み上げていきたいと思うんだ。

  どうかな?」

 「ふぅー。そうね、それもいいかもね。
  と、その前に目の中にステータスを確認できる
  アイコンがあるのだけど、わかる?

  その中に浮かんでいる文字をじっと見つめると
  説明が浮かび上がるわ。
  魔法の方も同じように使い方を一からじっくりと良く読んで
  理解してから使ってね。
  使い方間違えたら、周りにすごい被害出て、
  死ななくてもいい人や物まで死んじゃうかもしれないから、
  気をつけてね。」

そう言って、スクルドがセブンをポッドに戻そうとした時だった。
靄の中から母娘が駆け出してきた。

 「お待ちになって。
  遅くなりましたが、人であった時の古い記憶が
  取り出せましたわ。
  少なくて申し訳ありませんが、お返しさせていただきますね。

  レーテ、先程の要領で使って見せなさい。
  自分を信じて、自信を持って使うのですよ、いいですね。」

 「はい、お母様。
  セブンさん、ごめんさない。
  少ないけれど昔の記憶をお返しします。

   えいっ!」

可愛らしい掛け声と共にセブンの体の中に暖かなものが
溢れる感じがした。
同時に、幼いセブンが今は亡き養父から陰陽術を教え込まれた記憶が
昨日のことのように思い起こせるようになったのだった。

 「ありがとう!
  これで少し気が楽になったよ。」

 「成功ね、レーテ。
  じゃあセブン、戻すわね。
  あなたの口からサラに伝えられるかな?
  そうね、できるのならそのほうがいいと思うわ。
  行ってらっしゃい、セブン。」

お辞儀する母娘の姿を目に留めながら、
セブンの意識はスゥッと薄まり静かな眠りに戻るのであった。
  
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