マイナス100Lvの最強国王

青浜ぷりん

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一章 最強国王の悲劇

七話 マイナス100Lv

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「戻ってきた……」

 村から王国まで元来た道を馬で駆けていると、バン王国へと着いた。
 相変わらず街並みは立派で、レザンス村を見た後だと一層それが感じられる。
 ――でも、俺にはバン王国の街並み全てが色褪せて見えた。
 俺がここでやるべきことは、ディエゴと部下にレザンス村のことについて抗議することだ。

「トウゴ国王が帰って来たぞ!」

 街にいた一人が叫ぶと、たちまち部下達が俺を出迎えにゾロゾロと出てきた。

「トウゴ様、無事で何よりです。あの村の者共に何もされませんでしたか?」

 ソワンが俺を見るなりそう言う。

「ソワン、お前は何か勘違いしているみたいだけどレザンス村の皆は良い人ばかりだ。そんな言い方止めろ」

「ッ……分かりました」

「そうだ、俺はそのことについて皆に話があるんだ。王室にディエゴと皆を集めてくれ」

「話……部下を皆集めるほど重要なことなんですか?」

「あぁ、大事なことなんだ。頼む」

「分かりました。それでは直ちに王室に皆を集めましょう」

 俺は王室に部下全員を集めてもらうことにした。
 部下全員に問いたいからだ。
 お前らはレザンス村について何も思わないのかと。

 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~

 俺が王室に入ると、既にディエゴと部下全員が揃っているようだった。
 やはり人数が多いな。改めて自分の存在の大きさを認識させられる。

「久しぶりだ、皆。今日は皆に大事な話があってここに集まってもらったんだ」

「トウゴよ。大事な話とはなんだ?」

 王を引退した筈のディエゴが王の椅子に座ったまま言った。

「レザンス村のことについてだ。あの村はここ、バン王国にリーフェン鉱石を献上することで食糧を得ていると聞いた。お前達、レザンス村を支配してるんだろ」

「あぁそうだ。あの村はバン王国が半壊し弱っている時に反乱を起こした。それなのに私達は食糧を与えてやっているんだ」

「……与えてやってる、だと? ディエゴ、随分上から目線じゃないか。そもそも反乱が起こったのはお前達が原因じゃあないのか?」

「トウゴよ、お前は少し優しすぎるな。王たるもの、厳しさも必要だ。バン王国にとってあの村はリーフェン鉱石しか価値がない。本当なら今すぐ関係を切ってもいい国だが、仕方なく取引してやってるんだ」

「そういうことですよ、トウゴ様」

「ベラ、お前まで……この国は相当金を持ってるよな。レザンス村くらいの規模なら支援したところで国の財力に影響はない筈だ。なのに子供も女もお構いなしに働かせて、嗜好品も少ししか与えない。お前達はこんなことをしても何も感じないのか」

「トウゴ様、バン王国は五年前ドゥルガー・フェイスのドミニオンという狂人により半壊しました。私達は私達のことで手一杯なんです」

「……それでも、あの村の人達に対する態度を改めるなり出来なかったのか」

「あぁ大変! 可哀想に、トウゴ様! あなたはレザンス村の者共に洗脳されてしまっているんですわ! 奴ら魔法を使ったんだわ!」

 突然ベラが大声で白々しく叫ぶ。
 途端に、部下達がザワザワし始める。

「嘘……トウゴ様! 気をしっかり! あぁ、やはりこの私イーナが同行しておけば……」
「トウゴ様、あいつらに洗脳されてはいけません。王は冷酷で強くあるべきです」
「い、今すぐ治癒魔法を!」

「おい……いい加減にしろよお前ら。俺は洗脳なんかされてない。おかしいのはお前らの方だろ」

「トウゴよ、もう大丈夫だ。あの村のことは忘れてバン王国の国王としての生活を再開するのだ」

「俺はお前らに言うべきことがある。俺はレザンス村の王になる。レザンス村を正式な国として認めさせて、俺が王になるんだ」

「……トウゴよ、どうしたんだ? 本当に洗脳魔法をかけられて――」

「黙れッ!!!」

 俺がそう叫ぶと、ザワザワしていた王室が途端に静寂に包まれた。

「俺は正直、弱者を虐げても平気な顔していられるお前らと国を守っていく自信がない。――もしお前らが態度を改めないなら、俺は――この国の国王を辞める」

「……トウゴ様、今何て?」

「お前らが態度を改めないなら、俺はこの国の国王を辞めるって言ったんだ、ベラ」

「トウゴよ、お前は本気で言っているのか」

「本気だよディエゴ。そもそも俺はいきなりここに呼ばれたんだ。今思えば王になるもならないも俺の自由だったんだ。お前から継承した能力でレザンス村の王に――」

「ふざけるなぁぁぁッッッ!!!!」

 ビリビリビリと大気が揺れる。まるで神々の怒りが地に伝わってくるような怒涛の気迫。
 ディエゴが俺に怒鳴ったのだ。

「やはり、やはりだ! 異世界から人を呼んで国王にするなど馬鹿げた話だったんだ! あんな村に同情してしまう馬鹿を王にするなんて……これならドミニオンの方がまだ幾らか利口だ。イーナ! お前の案は大失敗だ!」

「も、申し訳ございません……最近の世界情勢を鑑みると一刻も早く継承者を探さねばと思いまして……」

 馬鹿、だと?ディエゴこいつ、一方的に俺のことをここに呼んでおいて……

「ハハッ。俺を王にしたことを後悔してももう遅いんだよ。俺は国王を辞める。カンスト100Lvのこの力があれば、他の国に協力を頼んでレザンス村を国として承認してもらえるだろうしな」

「ロッシュ、ベラ、タナー! こいつから魔法能力を奪え! 私からこいつに魔法能力を継承したように、こいつから私に再び魔法能力を継承するのだ!」

「な……継承大魔法は莫大な魔法エネルギーを消費します! 私達の身が持つかどうか……それに、能力を完全に奪うことは出来ません! 最上位魔法は僅かながらトウゴ様の中に残り続けます!」

「構わん! 魔法が残ったとて搾りカスだ! こいつ一人では最上位魔法を鍛えることなど出来ん! やれ、今すぐやれーッ!!」

 ――嘘だろ?マズい、俺から魔法能力を奪う気か?
 もし本当にそんなことされたら何もかも失う。
 レザンス村の皆と約束したんだ。この力で支配を止めさせるって。
 マノンと約束したんだ。この力でいっぱい肉を食わしてやるって。
 何とかこいつらから逃げないと、取り返しのつかないことになってしまう。

「アクオ――」

「「「――継承大魔法、ハイ・レゴーア!」」」

「――ぐああああああッ――!!!!」

 アクオーラを使う前に、身体にビリビリと凄まじい電流が流れだした。
 この電流はマズい。ディエゴから魔法を継承した時と同じ電流だ。
 何とかしなければいけないが、身体が痺れて動けない。
 ――暫くして、電流が収まってくる。

「ガハッ……」

 前を見ると、ロッシュ、タナーが倒れていた。
 辛うじてベラは意識があったが息がかなり荒い。

「ヒーラ……えッ?」

 俺が魔法を使うと、金色の魔法陣が掌に描かれる。
 頼りない火がボッと一瞬出て、すぐにフッと消えた。

「嘘だろ……アクオーラ!」

 王室の赤いカーペットにピチャリと水の雫が零れる。

「ヴェーラ!」

 静電気のような弱弱しい電気がパチパチ手から放たれる。

「エーラ!」

 手持ち扇風機みたいな弱い風がそよそよと吹く。

「な……おい、嘘だろ……魔法が奪われた……のか……?」

 ――ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 突然雷鳴が鳴り、ディエゴの体にバリバリバリと閃光が走る。

「ロッシュ、タナー、ベラ。よくやった。おそらくこの馬鹿から能力を取り返すことが出来た」

「てめぇ……ふざけるな。勝手に異世界に呼んでおいて馬鹿呼ばわりか。さっさと元の世界に返せ」

「それは無理な願いだな。転移魔法や継承魔法は魔法エネルギーを莫大に消費する。何故お前みたいな馬鹿の為にエネルギーを消費しなければならん?」

「チッ……おい、イーナ!! 俺を元の世界に戻せ!! 王の命令だ!!」

「……まだ王気取りですの? あなたのおかげでまた話がややこしくなりますわ。何でこんな人を呼んだのか……悔やんでも悔やみきれませんわ」

「んだとババア……勝手に俺のことを呼んでおいてその物言いかよ……」

「ゴホッゲホッ……はぁ……王気取りのあんたを思い出すだけで滑稽ね。全く……あんたの存在価値は力だけなのよ? 五年前のあの日、ドミニオンがディエゴ様の殺害を宣言して私達の生活は脅かされた。辛うじてディエゴ様は勝利されたけど、一刻も早く継承者を探して私達の生活を守る人間を見つけなければならなかった」

 ベラがゼェゼェ言いながら話し始める。

「たまたまあんたが継承者か何だかでこの世界に呼んであげたのに……イケメンでもない、身体能力は低い、そんなあんたのご機嫌取りしてたのが馬鹿みたい。さっさと消えて頂戴」


 ――あぁ、そういうことかよ。
 つまりドミニオンがバン王国を荒らして、それにこいつらは恐れおののいた。
 自分たちの保身の為に、適合者で若い俺を呼んだわけか。
 年老いたジジイよりは幾らかマシと思ったんだろう。

「言われなくても消えてやるよ。お前らは結局俺じゃなくて俺の力を見てたってことだろ。ここで第二の人生を歩んでいくとか覚悟してた自分が恥ずかしいよ。俺はこれからレザンス村で王として生きていく。じゃあな」

 スタスタと赤いカーペットを歩いてドアに向かうと、さっきまで傍観者だった元俺の部下達がクスクスと俺を笑っている。

「あいつ何なんだよ。あんな雑魚が王の座を譲ってもらえるチャンスなんてもう無いのに、ほんと馬鹿だよな、レザンス村を国として国王になるなんて。あんな弱い国王なんて嫌だな」

「ホントにねぇ。でも私は良かったと思うわ。あんな奴よりディエゴ様の方が十分強いもの。継承者はもっと利口な人間を探せば良いのよ」

「あいつ、人からもらった能力のことをカンスト100Lvとかほざいてたよな。魔法を奪われて、100Lvからマイナス100Lv引かれた気分はどんな感じなんだろうな。笑えるぜ」

 ソワンがそう言った。
 俺は振り返らない。ここにもう俺の居場所はない。
 俺はガシャン、と乱暴に王室のドアを閉めて城を後にした。
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