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赤い目と黒い瞳
第18話 正式に
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「火種、私が……」
やっぱり、私がここに来てしまったから、雅様や鬼神家に迷惑をかけてしまっているんだ。
私がここに来なければ、父が動かなければ……。
いや、そもそも、私が生まれなければ、桔梗家と鬼神家の均衡は崩れることなく、今まで通りの距離感で付き合っていくことが出来ていた。
私が生まれてしまったから……。
「それでだ、美月。もうそろそろ、正式に嫁になってはくれないか?」
「――――え?」
え、嫁に?
「結局、色々忙しかったことで式などが出来ていなかっただろう。噂は出回っているみたいだが、それでも、正式にお披露目は行えていない。この機会にというのも語弊があるかもしれんが、せっかくだ、やらないか?」
で、でも、私が正式にお嫁さんになってしまったら、トラブルの火種である私と今後共に過ごさなければならない。
それでもいいのですか。
それでも、雅様はよろしいでしょうか?
驚いすぎて何も言えないでいると、雅様が首を傾げた。
「何を驚いている? 元々、嫁ぐために貴様は鬼神家に来たのだろう。時期がずれ込んでしまっただけだ。もしかして、数日共に生活して、嫌になってしまったか?」
雅様が不安そうに聞いて来る。
い、嫌なわけがありません!
私はものすごく嬉しいです。
今すぐにでも、雅様のお嫁さんになりたいです。
でも、私が、私に自信を持てないのです。
私が、雅様みたいな素敵な方の隣に立ってよろしいのか。それを考えてしまうのです。
思わず顔を俯かせてしまうと、雅様が口を開いた。
「美月、素直に言ってくれ。嫌なのなら、それ相応の事を考える。桔梗家に戻す事はしない。他の国などに逃がす手立てを整えよう。少しでも、美月の思うように周りを動かすつもりだ。だから、頼む、何も遠慮せず、素直に教えてほしい」
ち、ちがっ、違うんですよ雅様!!
「あ、い、いえ、あの。わ、私で、いいのか、考えてしまって…………」
慌てて言うと、雅様が目を丸くした。
数回瞬きをして、腕を組んだ。
「どういう意味だ?」
「私は今、鬼神家にトラブルを持ってきてしまった火種。私を取り除けば、少しでも鬼神家が狙われることは無くなるかもしれないです。それなのに、雅様に正式に嫁いでしまえば、雅様は私を離せなくなります。そうなれば、必ず雅様に迷惑をかけてしまいます。それを含め、私などでいいのかな、と」
先程まで考えていた事をすべて話すと、雅様は眉間に深い皺を寄せてしまった!?
え、お、怒ってしまった!? 怒った!? 私、何か失礼なことを言ってしまったのでしょうか?!
怖がっていると、雅様は落ち着くために深い息を吐き出した。
「…………確かに、俺様は愛情表現は誰よりも苦手だ。伝わっていないことは承知していたが、こう言葉にされると思う所があるな…………」
「え、え? す、すいません。私、何か不快にさせてしまうことを言ってしまったのでしょうか」
「そういう事ではない。俺様にも改善すべき点がある、そこをしっかりと考えなければならないと思っただけだ」
え? 雅様が改善しなければならないところ? ど、どこですか?
どこを改善しなければならないの? わ、わからない。
困惑していると、雅様はいきなり立ち上がる。
私の隣に移動して座ったかと思うと、私の肩に手を回し、抱き寄せた。
「み、雅様!?」
「俺様は、好いている女を自分の利益のために手放すような、冷酷な男にお前にも映っていたのか?」
横を向くと、漆黒の瞳が私の赤い瞳を映し出す。
でも、いつものように真っすぐ、力強い瞳ではない。不安そうに揺れていた。
────雅様も、噂について不安に感じているんだ。
それでも、ここまで上り詰めてしまったから、今更改善も出来ない。
このまま突き進むしか、なくなっていたんだ。
「――――違います。私の目に映る雅様は優しくて、温かくて。真面目で、努力家で。見えないところで必死になりすぎて、無理してしまう、そんな方です。なので、人を見捨てるような方になど、微塵も思ったことがありません!」
言い切ると、雅様は驚き、フッと笑った。
肩に回していた手を私の頭に回し、優しく撫でる。
「それなら、俺様と正式に婚約を結んでくれるか? 桔梗、美月」
「――はい。私は雅様の正式な妻になります。鬼神美月として、これからもここにいさせてください」
大きな手が私を包み込む。
逞しい腕が、私を温めてくれる。
私の肩に、雅様の顔がある。
安心したように「ありがとう」と言ってくれた。
その言葉は、私の言葉なのですよ、雅様。
私が、言わなければならないのです。
「雅様、私を救って下さり、ありがとうございます。私を、妻として迎えて下さり、ありがとうございます」
少し体を離し、お互い見つめあう。
私は、赤い瞳のせいで人が離れてしまう。
でも、この人は赤い瞳の私に、綺麗だと言ってくれた。庇ってくれた。
唇と唇が重なる。
雅様らしい、優しいキス。
私は正式に、優しく頼もしい雅様の妻になれる。それだけで、どれだけ幸せなのか。
雅様は、わかってくださるでしょうか。ふふっ。
やっぱり、私がここに来てしまったから、雅様や鬼神家に迷惑をかけてしまっているんだ。
私がここに来なければ、父が動かなければ……。
いや、そもそも、私が生まれなければ、桔梗家と鬼神家の均衡は崩れることなく、今まで通りの距離感で付き合っていくことが出来ていた。
私が生まれてしまったから……。
「それでだ、美月。もうそろそろ、正式に嫁になってはくれないか?」
「――――え?」
え、嫁に?
「結局、色々忙しかったことで式などが出来ていなかっただろう。噂は出回っているみたいだが、それでも、正式にお披露目は行えていない。この機会にというのも語弊があるかもしれんが、せっかくだ、やらないか?」
で、でも、私が正式にお嫁さんになってしまったら、トラブルの火種である私と今後共に過ごさなければならない。
それでもいいのですか。
それでも、雅様はよろしいでしょうか?
驚いすぎて何も言えないでいると、雅様が首を傾げた。
「何を驚いている? 元々、嫁ぐために貴様は鬼神家に来たのだろう。時期がずれ込んでしまっただけだ。もしかして、数日共に生活して、嫌になってしまったか?」
雅様が不安そうに聞いて来る。
い、嫌なわけがありません!
私はものすごく嬉しいです。
今すぐにでも、雅様のお嫁さんになりたいです。
でも、私が、私に自信を持てないのです。
私が、雅様みたいな素敵な方の隣に立ってよろしいのか。それを考えてしまうのです。
思わず顔を俯かせてしまうと、雅様が口を開いた。
「美月、素直に言ってくれ。嫌なのなら、それ相応の事を考える。桔梗家に戻す事はしない。他の国などに逃がす手立てを整えよう。少しでも、美月の思うように周りを動かすつもりだ。だから、頼む、何も遠慮せず、素直に教えてほしい」
ち、ちがっ、違うんですよ雅様!!
「あ、い、いえ、あの。わ、私で、いいのか、考えてしまって…………」
慌てて言うと、雅様が目を丸くした。
数回瞬きをして、腕を組んだ。
「どういう意味だ?」
「私は今、鬼神家にトラブルを持ってきてしまった火種。私を取り除けば、少しでも鬼神家が狙われることは無くなるかもしれないです。それなのに、雅様に正式に嫁いでしまえば、雅様は私を離せなくなります。そうなれば、必ず雅様に迷惑をかけてしまいます。それを含め、私などでいいのかな、と」
先程まで考えていた事をすべて話すと、雅様は眉間に深い皺を寄せてしまった!?
え、お、怒ってしまった!? 怒った!? 私、何か失礼なことを言ってしまったのでしょうか?!
怖がっていると、雅様は落ち着くために深い息を吐き出した。
「…………確かに、俺様は愛情表現は誰よりも苦手だ。伝わっていないことは承知していたが、こう言葉にされると思う所があるな…………」
「え、え? す、すいません。私、何か不快にさせてしまうことを言ってしまったのでしょうか」
「そういう事ではない。俺様にも改善すべき点がある、そこをしっかりと考えなければならないと思っただけだ」
え? 雅様が改善しなければならないところ? ど、どこですか?
どこを改善しなければならないの? わ、わからない。
困惑していると、雅様はいきなり立ち上がる。
私の隣に移動して座ったかと思うと、私の肩に手を回し、抱き寄せた。
「み、雅様!?」
「俺様は、好いている女を自分の利益のために手放すような、冷酷な男にお前にも映っていたのか?」
横を向くと、漆黒の瞳が私の赤い瞳を映し出す。
でも、いつものように真っすぐ、力強い瞳ではない。不安そうに揺れていた。
────雅様も、噂について不安に感じているんだ。
それでも、ここまで上り詰めてしまったから、今更改善も出来ない。
このまま突き進むしか、なくなっていたんだ。
「――――違います。私の目に映る雅様は優しくて、温かくて。真面目で、努力家で。見えないところで必死になりすぎて、無理してしまう、そんな方です。なので、人を見捨てるような方になど、微塵も思ったことがありません!」
言い切ると、雅様は驚き、フッと笑った。
肩に回していた手を私の頭に回し、優しく撫でる。
「それなら、俺様と正式に婚約を結んでくれるか? 桔梗、美月」
「――はい。私は雅様の正式な妻になります。鬼神美月として、これからもここにいさせてください」
大きな手が私を包み込む。
逞しい腕が、私を温めてくれる。
私の肩に、雅様の顔がある。
安心したように「ありがとう」と言ってくれた。
その言葉は、私の言葉なのですよ、雅様。
私が、言わなければならないのです。
「雅様、私を救って下さり、ありがとうございます。私を、妻として迎えて下さり、ありがとうございます」
少し体を離し、お互い見つめあう。
私は、赤い瞳のせいで人が離れてしまう。
でも、この人は赤い瞳の私に、綺麗だと言ってくれた。庇ってくれた。
唇と唇が重なる。
雅様らしい、優しいキス。
私は正式に、優しく頼もしい雅様の妻になれる。それだけで、どれだけ幸せなのか。
雅様は、わかってくださるでしょうか。ふふっ。
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