赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました

桜桃-サクランボ-

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桔梗家と鬼神家

第20話 市場

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 お披露目式を行い、夜。
 静かになった部屋、いつものように布団の上で寝ていた。

「っ、~~! んっ!! い、いやっ!!」

 ――――バッ!!

「はぁ、はぁ……」

 な、なに、今の。な、なん、なの。

 息が苦しい、汗が酷い。
 
「あんな夢……どういうこと……?」

 こんなに怖い夢をたのは初めて。
 いやだ、怖い……。

「まさか、雅様が、私の目の前で、血飛沫を上げて――――死んでしまうなんて」

 ※

 ただの悪夢、ただの夢。
 もう忘れないと。鍛錬と勉学に集中、しないと……。
 
 今は、勉強の時間。深水は前回学んだため、今回は違う国、三ツ境みつきょう国について学びました。

 三ツ境国は、鬼神家とはまだ繋がりのない、敵対国と呼ばれている国みたい。

 雅様は平和主義。
 出来れば敵対国とは仲良くなり、せめて戦争だけはしないようにしていきたいと考えているみたいです。

 それに、三ツ境国は深水では仕入れが難しいと言われている山菜などを強みとしているらしい。

 だから、雅様も仲良くまではいかないにしても、という考えの元、交流を考えていると学んだ。

「どうして、敵対国と呼ばれるようになってしまったのだろう」

 そこが授業で質問しても、詳しくはわからなかった。

 昔は戦争が絶えなかったみたいだけれど、深水と三ツ境国はそこまで交流もなければ、戦争も起こしていなかったみたい。
 それくらい疎遠で、関わりはなかった。

 他の国が深水と三ツ境国の関係を悪用しているのかもしれないと、雅様も考えているみたいで、少しづつではあるが情報を集めているとも言っていた。

「ふぅ……。複雑だなぁ~」

 普通に手を取り合い、仲良く暮らせればいいのに。
 なぜ人間という生き物は、戦争を起こすのだろう。

 いや、戦争みたいな大きな戦いだけでなく、小さな喧嘩もそうだ。

 相手を罵り、虐げ、自分を優位に見せる。
 私の家族だった、母と姉みたいに。

 本でも、よく喧嘩とか戦争は書かれていた。

「…………」

 復習していると、目が痛くなる。
 でも、もう少ししたい。

 私はゼロからの始まりだから、自分で少しでも復習や予習をして、雅様のお手伝いをできるようにしないと。

『美月、今いいか』

 っ、この声、雅様!

「はい!」

 緩む頬を引き締め返事をすると、襖が開いた。

 着物姿の雅様が中に入ってきた。
 いつもと同じ姿なのに、袴姿を見た後だからなのか、ものすごくキラキラ輝いているように見える。

「どうした?」

 思わず顔を手で隠してしまった私を見て、雅様は困惑の声を出した。

 困惑しますよね。
 だって、いきなり顔を隠しているんだもん。

「いえ、雅様が眩しくてつい…………」
「日差しか? だが、そこまで入ってきていないぞ」

 そうではありません、雅様が眩しすぎるのです。

「あ、あの、いかがいたしましたか?」
「あぁ。少し時間が取れたんだ、これから出かけないか?」
「行きます!」

 雅様とお出かけ! 
 あ、で、でも……。

「ちょっと待ってください。勢いで行きたいと言ってしまったのですが、この後お稽古があったの忘れていました…………」
「稽古? あぁ、剣術を学んでいるんだったな」
「はい。でも、雅様と買い物……。行きたい、行きたいです。でも…………」

 先約が、うぅ。

「それなら、俺様から師範に行っておく。美月は出かける準備をしておけ」
「あ、はい」

 足早に行ってしまった。
 ふふっ、楽しみ。

「雅様の隣に立っても恥ずかしくないような、そんな女性になれるように自分でもおめかししましょう」

 お化粧とかを勉強――……

「今の話、聞かせてもらったわよ! 私がおめかししてあげるわ!」

 ────ビクッ?!
 え、ひ、響さん?!

「こ、こここ、こんにちは、響さん。び、ビックリしました……」
「こんにちは。では、今日は外注したお洋服にしましょう! さぁさぁ!」

 結局、今日も響さんにお願いする形となってしまいました。
 響さんも楽しそうなので、私も嬉しいです。

 ※

「わぁ、今日は市場なのですね」
「あぁ。魚介類がちょうどほしくてな」
「そうだったのですね!」

 市場にも私は、来たことがありません。

 海の匂い、カモメの鳴き声。
 青色に囲まれた世界が広がっている。
 風も爽やかで、気持ちがいいです。

 雅様のお屋敷は、緑に囲まれた自然豊かな場所。こんなに違うのに、どっちも心地よくて好き。

 天気と良いので、青色の景色が輝いております。

「行くぞ」
「はい!」

 雅様に手を引かれ、歩き始めた。

 着物姿の人が逆に少なく、ここではつなぎを着ている人が多い。
 日差しが強いからなのか、帽子をかぶっている人もたくさん。

 本の世界が飛び出したような光景が、今目の前にある。
 手を伸ばせば、触れる。匂いを感じられる、音が聞こえる。

「────綺麗」
「ここは、深水の中でも大きな市場だ。外からもこの市場が目的で来る者が沢山いるらしい」
「そうなんですね!」

 そのような所に連れてきてくれるなんて、嬉しいです!
 
 ここで魚介類を買うと先ほど言っていましたよね。

 見て回りながら、雅様のお買い物を済ませましょう!
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