赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
22 / 41
桔梗家と鬼神家

第22話 血筋

しおりを挟む
『なんだって!?』

 ――――っ、い、今の声って、雅様!?
 雅様の焦ったような声が、一人で素振りをしていた私にまで聞こえた。

「何かあったのかな……」

 雅様があそこまで焦った声を出すのなんて、初めて……。
 部屋まで、少し様子を見に行きましょうか。

 雅様の部屋に行き、中に声をかけてみると焦ったような声が返ってきた。
 一応、開けてもいいみたい。

「失礼します……」

 中に入ると、雅様はもちろん。あとは響さんと――……

「父様?」
「美月……。すまない、勝手に来てしまって……」

 雅様と響さん、それとなぜか、父様が正座をしていた。
 私を見た父様は気まずそうに視線を下げる。

 私も、気まずい。
 え、どんな顔をすればいいの? どんな顔を浮かべて、父様と会えばいいの?

「久しぶりの親子の再開なのに、なぜお互い気まずそうにしている」
「そりゃ気まずいでしょう、雅。経緯が経緯です。そこはしっかりと考えましょう」
「そういうものか?」
「そういうものです」

 雅様と響さんが話しているけれど、その内容は耳に入るだけで脳で処理が出来ない。
 それより、この空気をどうにかしたい。

「え、えぇっと。と、父様。お、お久しぶりです。お元気でしたか?」
「あ、あぁ。元気だ。美月も、元気そうでよかった」

 私が元気と言うと、本当に安心したように息を吐いた。
 さっきまで不安そうにしていたのに。

「本当に、良かった……。ありがとうございます、雅様。本当に、ありがとうございます」

 父様が頭を下げ、雅様に何度も何度もお礼を言っている。
 雅様は――――困ってる。

 いや、何も言っていない。手でも何も合図していない。
 ただただ、表情で困ってる。

 その顔、なんていう顔でしょうか。
 なんか、眉間に皺が寄っているという表現も違いますし、かといって怒っている訳でもありません。

 困惑している、困っている。
 そのようにしか表現が出来ない顔を雅様が浮かべております。

「…………頭を上げよ、久光。そのように言われると普通に困る。それに――……」

 雅様が、私の方を向く。
 手招きされたため、隣に座った。
 すると、何故か肩を抱き寄せられた!?

「み、みみ、雅様!? な、なななな、なにを!?」
「俺様も、美月と出会えてよかったと思っている」

 ――っ、雅様?

「俺様を怖がらず、共に笑ってくれる。それだけで、俺様にとっては何よりも喜ばしいことだ。かけがえのない、宝物だ」

 っ!! そ、そんなこと、言わないでくださいよ、雅様。
 今度は私が、雅様と同じように困った顔を浮かべてしまいます。

「――――ありがとうございます。雅様、本当に」
「もう、礼はいらん。本題に戻りたい」

 あ、そうだ。
 雅様が大きな声を出していた理由、それは一体なんなんだろうか。

 雅様が言うと、父様が視線を下げつつ姿勢を整えた。

「美月に、聞かせてもよろしいのですか」
「それは俺様が決めることではない。血の繋がりがある、親子で決める話だ」

 私を横目で見て、雅様が言い切った。

 な、なに? そんな言い方をされるとものすごく怖いのですが……。

「あ、の、いったい…………」
「…………桔梗家についてだ。話していたことは」

 え、桔梗家に、ついて?

「それを改めて雅様にお話しされていたのですか?」
「そうだ。改めて話さなければならない事が、あるんだ。桔梗家には……」

 父様の目が、不安そうに揺れている。
 いつも自信が無くて、母と姉に言われるがまま。頼りなかった父様が、不安そうにしているとはいえ、私と目を合わせて話してくださる。

 父様と目を合わせたのって、いつぶりだっただろう。

「――――聞かせてください。桔梗家は私が生まれた家です。知る権利があります」
「少々、残酷かもしれないが、それでもいいか?」
「はい」

 どんな話でも受け入れる。
 受け入れないと、いけない。

 だって、私は、紛いなりにも桔梗家の次女なんだから。

「そうか。それなら、話そう。まず、最初はお手柔らかのところから」

 ゴクリ

「まず、姉の美晴についてだ。あいつには、桔梗家の血が入っていない」
「お手柔らかとは!?!?」

 えっ、どういうこと?
 血が入っていない? え? な、どういうこと?

「美晴は、美郷と一人の武士の中に生まれた子供なのだ」
「美晴、姉様が?」

 た、たしかに、今まで違和感はあった。
 だって、私は父様に似ている。でも、美晴姉様は、似てない。

 目元も、髪質も、何もかもが違う。
 美晴姉様は母に似ているけれど、父には似ていない。

 納得、出来る……。

「それは、久光は知っていたのか?」
「知っていた。だが、何も出来なかった。私は、何も言えず、受け入れるしかなかったのだ」

 苦し気に胸を押さえ、父様が項垂れる。

 桔梗家は、父の血が無ければ力を授からない。
 父も、そのようにして力を受け継いだ。その力は、相手の心を読むことができる力。

 いつでも読める訳ではなく、意識的に発動できるみたい。
 そして、父と婚約を結んだ者も、力を授かる。式をする時に、受け継ぐらしい。

 それなら、母が力を受け継ぎ治癒の力を扱えるのには納得は出来る。
 けれど、それならなぜ、美晴姉様は力を受け継げたの?

 血も流れていない、婚約なんてできる訳もない。
 それなのにどうやって、母と同じ治癒を受け継ぐことが出来たの?

「美月。美晴はね、私と美郷が婚約した後に、力を受け継いだ後に生まれた子なんだよ」
「――――つまり?」
「美郷の血には、桔梗家の力が込められている。同じ血が流れている美晴にも、薄いとはいえ力が受け継がれたんだ。ただ、これには欠点があるんだ」
「欠点、ですか?」

 それは一体、なんだろう。

「力は、美郷の力しか受け継ぐことが出来ないんだ」
「っ。だから、美晴姉様は、母様と同じ治癒の力が宿ったという事でしょうか」
「そういうことだ」

 そ、そうだったんだ。
 考えもしなかった現実に、頭がクラクラしてきたな……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

処理中です...