赤い瞳を持つ私は不吉と言われ、姉の代わりに冷酷無情な若当主へ嫁ぐことになりました

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
33 / 41
十六夜家

第33話 十六夜家の当主

しおりを挟む
 雅様が出張に行ってから三日が経ちました。
 もうそろそろ……。もう、そろそろ……。

「美月ちゃん。入るわっ――限界近いわねぇ~」
「ひ、ひびき……さん…………」

 今日の勉学と鍛錬が終わり、休むために自室に戻った瞬間に、畳に倒れ込んでしまった。

 理由は一つ、雅様不足。

 それがわかっていたらしく、響さんは冷静に私の頭を撫でてくださいます。
 あぁ、温もり。響さんの温もりを感じます。

「大丈夫?」
「うぅ……。響さん……、寂しいですぅぅうう……」
「可愛いわねぇ、美月ちゃんは」

 響さんの笑みの背後に、雅様の笑みが浮かびます。
 あぁ、会いたい。会いたいですよ、三日で限界です。

「今、美月ちゃんと共に安心して暮らせる国にするため、雅も頑張っているから、美月ちゃんも頑張って耐えましょう? おそらく、雅の方が寂しすぎて泣いているでしょうから」

 …………そうですよね。
 私なんかより、雅様の方が何倍も大変なんです。

 話し合いの日時がいつなのかわかりませんが、今も色々考えているかもしれない。

 私がしっかりしなくてどうするのですか、鬼神美月。
 私は、もう鬼神と名乗れる、雅様の妻ですよ。

 ここで、負けるわけにはいきません!!

「ありがとうございます、響さん。私、頑張ります!」
「その息よ、頑張って耐えましょう!」
「はい!」

 響さんのおかげで立ち直れました。
 よし!! これから今日学んだことの復習と、自己鍛錬をしていきます!!

 ※

 美月が自室で倒れていた時、雅も同じく壁に頭を押し付け悲観に暮れていた。

 もう、三ツ境国にはたどり着いており、便りを送った屋敷へと招かれていた。

 日にちがかかる事を想定し、雅用の部屋も用意されていたらしい。

 今はそこで一人、壁に向かって何十回目かのため息を吐いている。

「美月よ……、会いたいぞ」

 涙を浮かべながら呟くのと同時に、襖の奥から男性の声が聞こえた。
 雅は顔を上げ、振り向く。その時には、いつもの凛々しい表情に戻っていた。

「どうぞ」

 雅が返事をすると、襖が開かれた。
 立っていたのは、袴を着こなし、腰に刀を差している男性。

「十六夜家の当主か」
「やはり、私のことはわかっていたのだな」
「まぁな。悪いと思ってはいるが、勝手に調べさせてもらった」

 部屋に入ってきた男性は、三ツ境国にある家、十六夜家の当主、十六夜朝陽いざよいあさひ

 雅以上に真面目で、頭が固い。
 融通が利かないという欠点があるが、戦闘能力は高く、負けたことは一度もない。

 元々、三ツ境国にいる家系は活気盛んで、戦争を好む家柄が多い。
 その中でも、十六夜家は断トツ。

 戦闘を好むという点で、平和主義である鬼神家とは合わない。
 それもあり、今まで敬遠されていた。

 それを雅は理解しており、今回の話し合いの申し出には少々頭を抱えていた。

 関係性をすぐに変えられない。
 それも理解しているが、今のままでは鬼神家に危険が及ぶ。

 美月の夢が予知夢だったとしたらと考えると、十六夜家の協力は不可欠。
 緊張を滲ませ、雅は朝陽を見た。

「調べられるのは構わん。それより、我々より上位に位置する鬼神家がなぜ、今更交流をしたいと申し出てきた。何か企んでおるのか?」
「確かに企んではいる。だが、お互いにとって悪く無い話を持ってきたつもりだ。なので、話だけでも聞いてはくれないか?」

 雅の噂は、朝陽の耳にも届いていた。
 自分の得だけを考えているのではなく、交流をするにあたって、絶対にどちらも平等になるように意見を持っていく。

 今となっては雅の誠実さは、どこの国にも通じる武器となっていた。

「話か……。今は忙しい。明日あすに回させてもらおう」
「わかった。それまで、俺様はどこにいればいい? この部屋で待機していた方がいいか?」
「好きにして構わない。鬼神家の話は耳に入っている、悪いことはしないだろう」

 腕を組み、それだけ言うと部屋を出て行く。
 その際、最後に雅へと言葉を投げた。

「だが、もし何か問題を起こせば、どうなるかはわかっておるな?」

 声には殺気が込められており、雅の身体を突き刺す。だが、負けることはなく、動揺見せずに頷いた。

「ならよい」

 それだけ残し、今度こそ朝陽は部屋から出て襖を閉じた。
 気配が消えるのを待ち、雅は深いため息を吐いた。

「さすが、十六夜家の当主、十六夜朝陽。殺気が鋭いな。少しでも油断していれば立つことさえままならなかっただろう」

 目の前で改めて十六夜家の強さを感じた雅は、汗を拭きとりその場に座り込んだ。

「だが、一つ引っかかるな。なぜ、ここまで強い十六夜家が、桔梗家の傘下に成り下がっているのか」

 桔梗家には、他にはない力が宿っている。
 それは、確かに目を引く代物で、どこの国も喉から手が出るほど欲しい。

 下についてでも桔梗家に守られたい、そう思ってもおかしくはない。

 だが、十六夜家の場合は、桔梗家よりはるかに強く、自分達で家を守れる実力を持っている。

 力が欲しいと言っても、傘下に成り下がるほど落ちぶれなくてもいいはず。

「――――少し、話し合いで探ってみるか」

 桔梗家と十六夜家の関係を明日の話し合いで聞こうと雅は決め、今日は休むことにした。

「あー……。美月ぃぃぃいい……」

 また、美月の名前を嘆き、雅は項垂れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

処理中です...