輪廻を周り、恨みを払う刃となれ

桜桃-サクランボ-

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恨力

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 うぅ、痛い。頭と心が物凄く痛いです。
 引っ張られていた髪から手を離してもらい、私はボサボサになってしまった髪を手櫛にはなるけど整える。

 というか、なんか……。
 不穏な空気が流れ込んできている気がするんだけど。気の所為だよねこれ。気のせい気のせい。

 幡羅さんと彰一が睨み合いながらお互い、自身の武器を手にしているなんて光景、見えていない。

「なんでこんな所に居るんだろうな。樹里彰一」
「任務ですよ。たまたま近くを歩いていたので」
「たまたま近くで任務があったところで、こんな所に来る理由はなんだ?」
「こちらから怨配を感じたから来た迄です。誰であろうと怨配の気配を感じたら来るでしょう。貴方は無視するんですか?」
「…………そうかよ。まぁ、それなら来てもおかしくないな。疑って悪かった」

 言うと幡羅さんは刀から手を離し、いつもの「ニシシッ」と言う独特な笑い方をした。その行動に、彰一も安心したのかホルスターから手を離す。

 よ、良かったぁ。
 ここで仲間同士の戦闘とかありえないから。怖い怖い。

 え、でも。彰一、? 幡羅さんですら感じ取りにくいって言っていたのに。


・・・・・・・・・・・・。


 成長したな、彰一よ。私より妖裁級に向いているんじゃないかな。

「そうだ、幡羅さん。このまま彰一も一緒に行動するのはいかがでしょうか。人数は多い方が良いと思います」

 彰一が一緒だと心強いし。ムカつくけど。一言多い時もあるしね。それでも、一緒にいた時間は長いし、正直安心出来る。実力は私より上の上級だしね。

「そうだな。なら、このまま二手に別れるか」
「私は彰一とまわ──」
「俺は樹里と行動する。お前は元の場所に戻れ」

 えっ、彰一と幡羅さん? 戦闘の予感しかしませんが。相性悪くないですか。大丈夫かな……。

「早く行け!!」
「い、痛いです痛いです!! 蹴らないでくださいよ! 私をストレス発散道具にしないでください幡羅さん!!」

 もう!! なんでも暴力で済まそうとするのは絶対によくないと思う!!
 仕方ないから美輝さんの所に戻るかなぁ。

「それじゃ、また後で合流をお願いしますね。失礼します!!!」

 こんな状況だし、さすがに喧嘩とかはしないだろう。幡羅さんは結構歳上だし、頭良いみたいだし。大丈夫大丈夫。

 とりあえず来た道を戻ろう。

 空はもう暗くなっているなぁ、さっきより周りが見にくい。それでも、月明かりが照らしているから真っ暗闇ではない、良かったぁ。

 天井の穴を見上げてみると、満点の星空が広がっている。雲一つなく、そこまで星に興味がなくても魅入ってしまう。

 思わずその場に立ち止まって、そっと胸に手を当ててしまう。なんか、さっきから胸に何かが引っかかっている気がするんだよなぁ。

 あ、首飾りが月明かりに反射してる、綺麗だなぁ。でも、この違和感。首飾りが何かに関係しているような、そんな気がする。まぁ、わかんないんだけどさ。

 そういえば、この首飾りをくれたおばあちゃんは今、どこで何をしているんだろう。

「……──これ、怨配だ。どこだ?!」

 夜になったから怨呪が力を解放したのか? さっきまで全く感じることが出来なかった怨配を感じ取ることが出来た。でも、まだ小さい。これでは直ぐに失ってしまう。相当強いのかな。

 っ?! 地響き?!

「な、なに!?」

 地面が大きく揺れる。転ばないように気をつけるので精一杯だ。
 って、いきなり月明かりが消えた?!

 おそるおそる上を向くと、大きな目と目が合った? 屋根に開いた穴から覗き込んでいるって、鳥の目………?

「め、めんたまぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」

 待って待って!! 怖い怖い怖い!! っ、あ、あれ? 横の壁の穴から見えるのって翼と足?

 いやいや、だって。この建物、三階建てだよ? そして、私は今一階にいる。

 地面に足がつき、天井から覗く瞳。
 この建物より大きいってこと? そんなの、ありえる?
 いや、でも前回彰一と共に戦った怨呪も相当な大きさだった。ありえてしまうのか。

 と、とりあえず拳銃を構えよう。余裕そうに覗いている目を潰してやる!! って、ちょっと!!! 顔をずらすな!!

「っ、逃がさないよ!!!」

 玄関は遠い。その間に逃げられる。壁にある穴、私なら体をねじ込めば行けそう。
 
 「よいしょっと……。あぁ、きっつぅ!!!! いや、でも……い! けた!!」

 ギリギリだったけど何とか通れた!! 幡羅さんだったら余裕だったかな。いや、考えるのはやめよう。
 とりあえず今は怨呪だ。上か?!

「た、鷹? 頭の位置……。鷹だからって高すぎませんか?」

 二十メートルはありそうなほどの大きさなんだけど。え、こわっ。震えが止まらない。いや、だって……。前回はライオンのような感じだったから良かったけど、今回は鳥。ということは、空──飛ぶよね?

 うわっ!! 怨呪は翼をバサッと大きく広げた。まさか怨呪も読心術が使えるの?!
 広げた翼の羽根一つ一つが目のように見えて気持ち悪い。まるで、自分自身の全てを見透かしているような目に膝がガクガクと震える……。

 翼だけじゃなくて、怨呪の瞳も下にいる私を見下ろしている。視線から逃げることが出来ない。

「み、ないで……」

 喉が細くなってしまいか細い声しか出ない。怨呪の鳴き声によりかき消された。

 人一人潰せそうなほど大きな足を、足……を。私に向かって振り上げた?!?!
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