輪廻を周り、恨みを払う刃となれ

桜桃-サクランボ-

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恨力

鎖鎌

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 えっ、やべぇじゃん。京夜が空に舞っちまった。え、大丈夫なのかアレ。

 いや、大丈夫そうだな。普通に空中を自在に飛び回って──って、ワイヤー銃使ってないよな? なのに、なんで自由に空中を動き回れるんだ?

 怨呪の周りを飛び回り、刀を構え何時でも切りつけられる体勢を作ってやがる。
 あの小さな背中に、翼がついているみたいだ。

「っ?! また、突風?!」

 なんでこんなに突風が吹き荒れんだよ! 
 …………まさか、京夜、お前。体がちいせぇから突風に負けて舞い上がったのか? どんだけ軽いんだよ……。

 ────って、んなわけねぇか。なにか種があるはずだ、必ず。じゃなかったらいくらチビでも空を自由に動き回るなんて不可能。

「ニシシッ。俺を敵に回したことを後悔するんだな」

 ────ゾクッ

 風で、普段前髪で隠れている瞳が見えた。あれは、一発で仕留める気の目だ。殺気が俺にも届くくらい鋭い。だが、京夜の身長は百四十ぐらいのはず。筋力も他の奴と比べると弱いだろ。こんなどでかいヤツを一発でなんて不可能なはず。

 一体、どうするつもっ──

「まっ、じかよ……」

 両手で構えていた刀を高く振り上げたかと思ったら、なにかのトリックで吹いていた風が止んだ。
 そのまま上空から重力に従い下へと落ちる際に、まず片方の翼をぶったぎりやがった。次に、またしてもタイミング良く突風が吹きそれにより上空へと上がる。その時にはもう、片方の翼を切り落とされていた。

 甲高い鳴き声とともに鮮血が飛び散る。耳が痛くなるくらい鳴いているがお構い無し。
 京夜の怒涛の攻撃は止まらない。

 上空に君臨する王様のように京夜は、したり顔で「終わりだ」というように、刀で怨呪の首を吹き飛ばした。

「怨みは浄化し、恨みは制圧せよ。我々妖殺隊により、安らかに眠るがいい」

 地面におりながら唱え、京夜はそのまま両足を地面に付ける。その後ろで、ゴトンと怨呪の首が大きな音を立て落ちてきた。

 土埃が酷い。音もでけぇし、めっちゃ頭に色んなものが詰まってたんかよ。

 まさか、あんな小さな体でこんなでかいもんを一瞬で片付けるなんて……。

「あ、癒白玉ゆはくだま──」

 ────っと。抜かりなしかよ。上から降ってきたわ、光っている何かが。上にいた時にもう投げていたのかよ。

 光に包まれた怨呪はどんどん小さくなっていき、地面に残されたのは小さな雀だけになった。

 つーか。いや、つーかまじ。

 今回は俺、全く何もしてねぇーんだけど。なにこれ。入れ替わっておいて、かっこよく台詞まで口にしてなんもしませんでしたってか。
 恥ずかしすぎて顔から煙出そうなんだが。いや、実際は出ないけどよ。
 
 もう、妖裁級の奴らと一緒に行動したくねぇ。

「おい、なに考えてやがる」
「お前の小さな体でどうやってあれを斬ったのか気になっ──あの、俺、今回怪我しなくて万歳してたのにこれはないだろ」

 京夜が俺の腹部を思いっきり刀で刺しやがった。しかも、貫通してるんだが。

 ツッコミが殺意MAXすぎるだろうが!!!

「ニシシッ。人を馬鹿にするとこうなんだよ。肝に銘じておけお転婆小僧」
「俺は小僧じゃねぇ、小娘でもねぇけど。ところで、さっきの突風ってなんだよ。まるで、てめぇが操作しているみたいな感じだったぞ」

 つーか、早く刀抜けよ。痛感が壊れているとしてもなんか嫌なんだよこれ。負けてる感じで腹が立つ。

「まだ、樹里は姿を現さねぇのか?」
「そういや、結局彰一はどこ行ったんだ? 俺は知らねぇー」

 いつの間にか居なくなってたしな。

 周りを見ていると、京夜が勢いよく刀を抜き鞘へと戻した。いや、勢いよく抜く必要はあるのか? ないよな、流した血を返せ。

「はぁ、俺はサンドバックじゃねぇよ」
「ニシシッ。人を馬鹿にするからだろうが。自業自得だ」

 いやいや。ちいせぇのが悪いんだろうが。つーか、それを戦闘では活かしてんだからいいだろ。

 お腹の傷を治すという手間をかけさせやがって、くそっ。

 あーあ、今回は暴れられなかったなぁ。暴れてぇ。強い相手じゃなくて、自分より下の奴と殺り合いたい。俺より強い奴だと押されるからムカつくんだよ。

 はぁ……。まぁ、今回はこれで終わりみたいだしな。俺は傷を治したらもどっ──

「っ! 危ねぇ!!!!」
「っ、いだ!!!」

 ちょっ、なんで押すんだよ?! なにか言ってからおせっ──

「…………きょ、うや?」

 な、んで。目の前に、鮮血??

「っえ、な、なん──」

 あれは、鎖鎌? なんで、赤い物が付着してやがる。

 鎖鎌って確か彰一が使ってたよな。でも、なんでそれが今赤く染っているんだ。怨呪の血か? だが、今回は京夜が一瞬にして倒してしまったから使う機会はなかったはず。それに、彰一は途中から姿を眩ませた。怨呪と戦う時間はなかったはずだ。

「っ、つぅ……」
「っ、きょっ──うや?」

 な、んで。なんでおまっ……。

 右肩から腰にかけて出来ている傷。めちゃくそ深い。赤黒い血が大量に流れ出ている。

 これは、何が起きたんだよ……。
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