14 / 246
新生活
作戦
しおりを挟む
次の日、作戦を実行するため朝早く起き──いや違う。
朝、青春を謳歌するため、琴平に優しく起こされた。
青春と言っても女性がいる訳ではなく、男ばかりの所で呪文を唱えるだけだけど。
前回、闇命君にやらせないと言われたのに、まだ諦めていなかったのか。しかも、今回は俺がもう知ってしまっているからしっかりと、でも痛みがないように優しく腕を掴んで連れていかれる。
俺も、あんな呪文を覚えろなんて不可能だし、肩に乗っている闇命様からの視線が痛かったから、渾身の一撃「やらないと、だぁめ?」と上目遣いで言ってやった。
すると、琴平は固まって何も言わなくなり、俺の腕を掴んでいる力が緩む。
その隙に逃げて、今は森の中。
まだ辺りは暗く、風が冷たい。
肌寒いな、早く寮に戻らないと風邪をひいてしまう。
「あちゃ。走りすぎて迷った……」
『ばっかじゃないの。琴平を撒いたところまでは良かったのに、なんで逃げた後を考えないかなぁ』
「うるさいな!!! つーか、陰陽師の敷地内だろここ。君は分からないの!?」
『どうして僕がわかるのさ、少しは頭使いなよ。僕は君みたいに行き当たりばったりじゃないからね。こうやって道に迷わないの、迷いそうな場所に行かないわけ。わかる?』
こんのくそ鼠!!!
なんでもかんでも倍で返さないと気が済まないのか!!
「はぁ……」
────カサッ カサッ
「ん? なんか、足音聞こえない?」
『確かに聞こえるね。昨日の依頼人の女性じゃない? ちょうどいいじゃん、行くよ』
「え、いやなんでわかっ──」
肩から降りてしまった鼠の姿の闇命君が、草木の中を駆けていく。小さいから見失いそう。
「…………あ」
闇命君について行くと開けた場所についた。
そこには、女性が俺の顔を見て驚いていた。
いや、その顔をしたいのは俺も一緒なんだけど。こんな早朝にどうしたの?
「こ、ども?」
それに驚いているのか。
確かに子供がこんな所に居たら驚くよな。でも、俺より女性の方が気になるんだけど。
服装はボロく、着物の袖などが破れている。
後ろで一つに結んでいる髪もまとまりがなく、外ハネが酷い。家庭が貧しいのだろうか。頬も痩せこけており、体も心配だ。
「えっと。初めまして……?」
近付き挨拶すると、女性も戸惑いがちに挨拶を返してくれた。
「貴方は、なんでここにいるの?」
「はい。あの、陰陽寮にお願いしたい事がございまして……。もしかして、貴方も陰陽寮の方でしょうか?」
なんでわかったんだろうと思ったのもつかの間、自分の服装を見て納得。
狩衣着て寮の付近をさ迷っていたら、誰でも陰陽師だと思うよね。
「うん、俺は安倍闇命。もしかして貴方、昨日も来てた?」
「あ、はい……。追い返されてしまったんですが……」
この人だったのか、昨日来ていたの。
「昨日はなんの話をして追い返されたの?」
俺が質問すると戸惑った様子を見せてきたけど、俺が陰陽寮の人間だという事を考え、話してくれた。
女性の名前は神楽坂四季さん。親と共に過ごしているらしい。
家族とは仲が良く、そこまで不満はないらしいが、どうもお金が無いらしく、貧しい生活を送っているみたい。
「家で普通に生活をしていると、時々目の端に何かが映る。視線を向けると、そこには何も無く、空の瓶が置いてあるだけ。それと、最近では火事が多く、不安な生活を送っている、と」
目の端に何か映るとかなら気の所為などで済ませられるかもしれないけど、近くで火事が多発しているのなら不安にもなるな。
しかも、理由は全て『家事の後始末が悪い』との事。
近くで火事が多発。一ヶ月の間でもう三回も起こっていると教えてもらった。
それは、偶然という言葉だけで済ませられるものでは無い。
一度火事が起きると、同じ事をしないように気をつけるはずだし。
「ですが、これを話すと『それは我々の出る幕ではありません。お帰りください』と言われ、何を言っても聞く耳を持ってくれませんでした」
四季さんは目を伏せ、悲しげに話を締めくくった。
…………え、は、え? 受付は馬鹿なのか? 普通に陰陽師がやるような仕事に感じるんだけど。
あぁ、もしかして火事の後始末だから警察とかそっち系の仕事と思っているのか?
「それは、確かに不安だね」
「はい。もしかしたら、次は私の家が火事になってしまうかもしれないです。そうなれば、お母さんとお父さんが……」
不安げに目を揺らし、今にも泣きそう。相当不安なんだな。
俺がもし同じ立場ならどうだろうか。
不安な時、頼りにしていた陰陽寮に追い返され、どうする事も出来ず、ただ不安な日々を過ごす。
…………辛すぎるだろ。
『……──』
「ん? 何?」
闇命君が俺の体を上り、耳元でボソボソと何か言ってる。何?
『この女、今日の夜、死ぬよ』
朝、青春を謳歌するため、琴平に優しく起こされた。
青春と言っても女性がいる訳ではなく、男ばかりの所で呪文を唱えるだけだけど。
前回、闇命君にやらせないと言われたのに、まだ諦めていなかったのか。しかも、今回は俺がもう知ってしまっているからしっかりと、でも痛みがないように優しく腕を掴んで連れていかれる。
俺も、あんな呪文を覚えろなんて不可能だし、肩に乗っている闇命様からの視線が痛かったから、渾身の一撃「やらないと、だぁめ?」と上目遣いで言ってやった。
すると、琴平は固まって何も言わなくなり、俺の腕を掴んでいる力が緩む。
その隙に逃げて、今は森の中。
まだ辺りは暗く、風が冷たい。
肌寒いな、早く寮に戻らないと風邪をひいてしまう。
「あちゃ。走りすぎて迷った……」
『ばっかじゃないの。琴平を撒いたところまでは良かったのに、なんで逃げた後を考えないかなぁ』
「うるさいな!!! つーか、陰陽師の敷地内だろここ。君は分からないの!?」
『どうして僕がわかるのさ、少しは頭使いなよ。僕は君みたいに行き当たりばったりじゃないからね。こうやって道に迷わないの、迷いそうな場所に行かないわけ。わかる?』
こんのくそ鼠!!!
なんでもかんでも倍で返さないと気が済まないのか!!
「はぁ……」
────カサッ カサッ
「ん? なんか、足音聞こえない?」
『確かに聞こえるね。昨日の依頼人の女性じゃない? ちょうどいいじゃん、行くよ』
「え、いやなんでわかっ──」
肩から降りてしまった鼠の姿の闇命君が、草木の中を駆けていく。小さいから見失いそう。
「…………あ」
闇命君について行くと開けた場所についた。
そこには、女性が俺の顔を見て驚いていた。
いや、その顔をしたいのは俺も一緒なんだけど。こんな早朝にどうしたの?
「こ、ども?」
それに驚いているのか。
確かに子供がこんな所に居たら驚くよな。でも、俺より女性の方が気になるんだけど。
服装はボロく、着物の袖などが破れている。
後ろで一つに結んでいる髪もまとまりがなく、外ハネが酷い。家庭が貧しいのだろうか。頬も痩せこけており、体も心配だ。
「えっと。初めまして……?」
近付き挨拶すると、女性も戸惑いがちに挨拶を返してくれた。
「貴方は、なんでここにいるの?」
「はい。あの、陰陽寮にお願いしたい事がございまして……。もしかして、貴方も陰陽寮の方でしょうか?」
なんでわかったんだろうと思ったのもつかの間、自分の服装を見て納得。
狩衣着て寮の付近をさ迷っていたら、誰でも陰陽師だと思うよね。
「うん、俺は安倍闇命。もしかして貴方、昨日も来てた?」
「あ、はい……。追い返されてしまったんですが……」
この人だったのか、昨日来ていたの。
「昨日はなんの話をして追い返されたの?」
俺が質問すると戸惑った様子を見せてきたけど、俺が陰陽寮の人間だという事を考え、話してくれた。
女性の名前は神楽坂四季さん。親と共に過ごしているらしい。
家族とは仲が良く、そこまで不満はないらしいが、どうもお金が無いらしく、貧しい生活を送っているみたい。
「家で普通に生活をしていると、時々目の端に何かが映る。視線を向けると、そこには何も無く、空の瓶が置いてあるだけ。それと、最近では火事が多く、不安な生活を送っている、と」
目の端に何か映るとかなら気の所為などで済ませられるかもしれないけど、近くで火事が多発しているのなら不安にもなるな。
しかも、理由は全て『家事の後始末が悪い』との事。
近くで火事が多発。一ヶ月の間でもう三回も起こっていると教えてもらった。
それは、偶然という言葉だけで済ませられるものでは無い。
一度火事が起きると、同じ事をしないように気をつけるはずだし。
「ですが、これを話すと『それは我々の出る幕ではありません。お帰りください』と言われ、何を言っても聞く耳を持ってくれませんでした」
四季さんは目を伏せ、悲しげに話を締めくくった。
…………え、は、え? 受付は馬鹿なのか? 普通に陰陽師がやるような仕事に感じるんだけど。
あぁ、もしかして火事の後始末だから警察とかそっち系の仕事と思っているのか?
「それは、確かに不安だね」
「はい。もしかしたら、次は私の家が火事になってしまうかもしれないです。そうなれば、お母さんとお父さんが……」
不安げに目を揺らし、今にも泣きそう。相当不安なんだな。
俺がもし同じ立場ならどうだろうか。
不安な時、頼りにしていた陰陽寮に追い返され、どうする事も出来ず、ただ不安な日々を過ごす。
…………辛すぎるだろ。
『……──』
「ん? 何?」
闇命君が俺の体を上り、耳元でボソボソと何か言ってる。何?
『この女、今日の夜、死ぬよ』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる