憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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死絡村

達成?

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 嫌がる直丁さんに闇命君が無理やり手紙を届けさせてから四日、経過した。

 心苦しかったけど、闇命君が『直丁には一切責任は行かないから安心しなよ』と言っていたから今は安心している。

 雨燕こじろうさんからの呼び出しが来るまでの間、調書室から数冊、件や村について書かれている本を借りて読んでいた。


「んー。闇命君みたいに、なにか気になる所がないか探してみたけど、やっぱり見つけられなっ――」
「闇命よ!!! これは一体何事だ!!」
「どうわぁぁぁああ!!!」

 ちょっ。一声かけてよ雨燕さん!!! 
 めっちゃ驚いたわ。こんなに肩を震わせた事なんてないぞ。

 はぁ、びっくりした。

「えっと、何が?」
「何がでは無い。この手紙はどういう事だと聞いている。これは、脅迫状か?」

 あ、その話か。驚きと焦りで何もかもが吹っ飛んでいたよ。
 本に集中もしていたから気配すら感じなかったし、まだ心臓が波打ってる。

「おい、早く話さんか!!!」
「あっ、は、はい。話します」

 とりあえず話は聞いてくれるみたいだな。

 しっかりと話を聞いてからキッパリと断るタイプだと、闇命君からは聞いていたし、ある意味助かった。

 話すら聞いてくれないとかだったら手の打ちようがない。

 青筋を立てている雨燕さんに、紫苑さんに頼まれた事だけを伏せて、今回の依頼についてかいつまんで伝えた。

 件についてはもちろん。気になる村や、資料についても。
 雨燕さんは、それを相槌しながら聞く。

「──と、言うわけなんですが……」
「ふむっ。なるほどな……」

 あれ、全部話したら速攻で否定されると思ったんだけど、意外な反応だな。真剣に考えてる。

 話も真面目に聞いてくれていたみたいだし、この人、根っからの悪では無いのかな。

「それで、闇命が外に出るため、ワシに同行をお願いする。それで間違いないか」
「うん。お願いしたい」

 ここで頷いてくれなかったらどうすればいいんだろうか。

 ちらっと肩を見ると、闇命君が気配を消して様子を伺ってる。
 この、雨燕さんの返答によって次の行動が変わっていく。

 どうか、頷いてください。

「────却下だ」

 っ、くそ。まぁ、そう簡単にいくわけないか。なら、次の作戦を考え──…………

「と、言いたいが……。今の話の中に、いくつか気になる点があった。今回はその調査も兼ねて同行しよう」
「え、いいん、ですか?」
「今更なんだ。行かなくてもいいなら行かんぞ」
「い、いえ。ぜひお願いします」
「ふん。最初から素直に言え。そうと決まれば、来週なら時間を作れる。それまでに出来る事をしておけ。ワシに手間をかけさせるなよ」

 雨燕さんはそれだけ残し、俺の返事も聞かずに部屋を出ていってしまった。

 その背中が大きくて、少し頼もしく見えてしまったのは気のせいだ。俺は認めない。

『とりあえず第一関門突破だね。これからの方が大変になるだろうけど、ここまで来たらやるしかない』
「うん。もしかしたら、今回の件で様々な事を知れるかもしれないし、頑張ろう」

 他の紫苑さんから頼まれた仕事は紅音と夏楓にお願いし、琴平には今回について話そう。

 次から次へとお願い事が変わって紅音達には本当に申し訳ないけど、これから俺が自由に動く為にはここまでしないといけない。

 よし、件や隠された村の謎。絶対に突き止めてやる。

 ※

「とりあえず、陰陽助様は協力してくれるという事で間違いはないな」
「うん。雨燕さんは、俺の話の中でいくつか気になる点があったから着いてきてくれるみたい。自分にも利益があるからという理由で今回、俺達に手を貸してくれたんだと思う」
「なるほどな」

 今は、琴平にさっきまでのことを簡単に説明しながら廊下を歩いていた。

 琴平、複雑そうな顔を浮かべているなぁ。
 目の敵にしている人に協力を仰ぎ、手伝ってもらえるようになったんだ。険しい顔になっても仕方がない。

「まぁ、正直頼みたくなかったけど、今回ばかりは背に腹は代えられないと諦め……あ」
「あ、闇命様。その、手紙はしっかりと渡しました、よ……」
「うん。雨燕さんから話は聞いたよ。ありがとう、助かった」

 俺達に協力してくれた直丁さんが、沢山の紙を抱えながら廊下を歩いていた。
 俺の顔を見た瞬間、一瞬で顔を真っ青にしたんだけどこの人。そんなに闇命君に脅されたのが怖かったのか。

 俺の言葉を聞いた直丁さんが安心したように「良かった……」と胸をなで下ろす。
 いきなり巻き込んでごめんね、君にはもう迷惑はかけないから。

「おい貴様、気安く闇命様に近付くな」
「ひっ、す、すいません琴平様……」
「ま、待って待って琴平!! この人、協力してくれた人!!」

 なぜか怒り出した琴平を止め、直丁さんを解放させた。はぁ、良かった。

 なんというか。琴平って闇命君が絡むと過激な番犬化するよね。
 もう少し落ち着いて欲しい。普段の琴平は冷静沈着なのに……。

 そんな事がありながらも、闇命君の部屋に辿り着き中央で向かい合わせに座った。

「ひとまず、協力してくれるのなら良い。こっちも利用しようとしているんだ。お互い利用し合えばいいだろう。闇命様を利用しているのは許せんけどな」
「うん。この陰陽寮は複雑な構成、関係性を築いてしまっている。今は利用し合う方が話を進めやすい」

 本当は、お互いが納得した形で同じゴールを目指したいんだけど、それは無理だしなぁ。

「それで琴平。俺が出来るのってさ、やっぱり件について調書室で調べるくらいしかないのかな」
「そうだな。それか、調べていた村の付近に建てられている陰陽寮について調べるのもいいだろう」

 え、陰陽寮?

「確か、優夏が預かっている資料に書かれていた村は、ここから丸二日はかかる場所にある”死絡村《しがらむら》”だろ。そこの近くには陰陽寮があるはずだ。確か、漆家しつけだったはず」
「えっと。その漆家って何かあるの? わざわざ調べるほどの……」
「漆家は、周りから嫌われているんだ。多用している術に問題があってな」
「それって、何?」
「漆家が一番使用している術は、俺達安倍家では決められた人しか使う事が出来ない程危険で、めんどくさい物。――――”呪い”だ」

 の、呪い……。

「その中でも、蠱毒をよく使用している」

 蠱毒って、前に俺を襲った虫? 
 え、こわっ。その一族。あれを飼っているのか、俺なら嫌だ。

「で、でも、気持ち悪いし使いたいとは思わないけど、蠱毒って、そんなに警戒が必要なのか? 使い方さえ間違わなければ、他の術と変わらないんじゃ……」
「蠱毒は、人を蠱病に陥らせてから殺す呪い。そして、呪いは失敗すれば自身に跳ね返る。何が起きるか分からないんだ。だから、安倍家では誰も使おうとしなければ、使える者すら数少ない。今の段階では陰陽頭だけだ」

 その陰陽頭ですら使おうとしない代物という事か。
 準備とかも大変そうだしなぁ、危険すぎるし。それを漆家では多用しているのか。

「蠱毒以外にも使ってるの?」
「呪いと言われるものをな」
「例えば?」
「例えば──」

 琴平から聞いた呪いの種類。

 一つは、厭魅えんみ
 人型の物に念を込め、憎い相手を呪う方法。
 人形とかでいいらしい。

 二つ目、丑の刻参り。
 これは有名だ。丑三つ時に藁人形と五寸釘、鉄槌を持ち、神社で打つ。
 人に見られれば呪いは自分に跳ね返り死んでしまう。だから、見た人は必ず殺される。そうする事により、という状況を無くす。

「何か、違うの? この二つ」
「大体は一緒だ。ただ、厭魅は陰陽師しか使えない」
「なんで?」
「法力が必要だからな。限定されるから威力や確率は丑の刻参りよりはるかに高い」

 へぇ、そうなんだ。

 蠱毒を含めると三つの呪い方法がある。
 それに、漆家は日本に伝えられた呪い方法だけでなく、他の国で行っている呪術についても取り入れ、それを扱い陰陽寮を代々繋げているらしい。

 呪いをなんで選択したのかわからないけど、それも含め琴平は、調べておいた方がいいと言ったんだろう。

 人を呪わば穴二つ。でも、それは他の人にも伝染するかもしれない。
 正直関わり合いたくないな。何が起きるのか分からない、普通に怖いわ。

 琴平と会話をしている間でも、呪いの話を聞いてから俺の体は微かに震えている。いや、呪いの話を聞いてからではない。漆家について聞いてからだ。

 関わってはいけない、調べる必要は無い。
 そのように訴えてきているような感覚が襲ってくる。

 もしかしたら、これは安倍晴明からの忠告なのかもしれない。
 それなら、従わなければならないだろう。それが一番の正解だ。

 わかっている、はずなのに。

「…………漆家について調べるよ。琴平、調書室に資料、ある?」

 やっぱり、繋がりがあるかもしれないのなら、逃げる訳にはいかない。

 ※

 安倍家から離れた村。長屋は光が消され、静寂が村を包み込んでいる。
 周りは緑で囲まれており、風が吹く度自然の音が鳴り響く。

 星空を厚みのある雲が覆っており、夜空が完全に隠れてしまっていた。だが、それでも蛍の光や薄く漏れ出ている月明かりで、村はほんの少しだけ明るい。

 そんな自然豊かな村に、二つの人影が浮かんでいた。
 周りに気を付けながら走っている。向かっている先にあるのは、村唯一の井戸がある。

「これで、俺達も──」

 二人の男性は井戸の前に立ち止まり、中を覗き込む。
 風が吹き雲が横へ流れたため、月が姿を現し二人を照らしだした。

 二人は異様な笑みを浮かべている。
 手には、陰陽師が使う御札が、力強く握られていた。

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