憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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安倍晴明

山本五郎左衛門

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 ひとまず俺達は、体の疲労が酷いのと、紅音や琴平の傷の心配もあり、宿屋に戻ることとなった。

 話の続きはそこでしようという話になったのだけれど、雨燕さんからの視線がものすごく痛い。

 今は前を歩いているんだけど、背中に突き刺さるよ、視線が。
 冷や汗が止まらん……。ちょっと、後ろに行こうかなぁ。

「あれ?」

 普段より紅音の歩みが少し遅い?
 いつもは隣をピッタリと歩いているのに、今は琴平と共に雨燕さんの後ろを歩いている。

「紅音、大丈夫?」
「問題は無い」
「でも、足引きずってない? まだ治しきれていないなら、治してから戻ろうか」
「問題ない」
「いや、でも……」
「……これ以上は治せん」

 え、治せない? 
 それほどまでに酷いって事? それやばいじゃん。

『紅音の治癒能力も無限じゃない。必ず体力は無くなり、疲労が体を襲う。何をするにも代償は必ずいるんだよ』
「あぁ、確かにそうか。なら、紅音は誰かがおんぶしようか」

 俺がしてあげたいけど、身長差的に無理だし、琴平は怪我をしているし、この場だったら──

「絶対に嫌」
「何も言ってないけど」

 まぁ、視線が自然と雨燕さんを向いていたから、察したよね。

「なら、俺が──」
「歩ける」
「歩けているが、だいぶ遅いぞ。俺は大丈夫だから、背中に乗れ」

 琴平の男前発揮。紅音の前にしゃがみ、背中を向けている。でも、琴平も肩でしょ。無理しない方が……。

 ん? 雨燕さんが紅音の方へと歩きだした?

「いや、問題なっ──­­─わっ?!」
「これなら問題ないだろう。行くぞ」

 …………わぁお。なんか、お父さん。

 雨燕さんが俺達の会話を見て、我慢の限界に達したらしい。

 紅音を無理やり持ち、歩き始めた。 
 しかも、すごい鍛えているのか、片腕だけで持っている。お父さんがよく子供を持つ時の体勢だ。

 紅音は不満そうだけど……。
 まぁ、自分が歩くの遅いとは思っていたみたいだし、頬を膨らませながらも大人しく抱っこされてる。

「いやぁ。これで少しは安心だね琴平……琴平?」
「…………あ、あぁ。そうだな」

 あれ、どうしたんだろう。
 紅音と雨燕さんをじっと見ていたように思ったけど。

 …………まぁ、いいや。とりあえず、宿屋に向かって体を休めたい。
 お風呂に入りたい、布団と友達になりたい。寝たい、眠い。瞼が重い……。

「早く、宿屋に行こうか」

 ※

 宿屋に着き、部屋で一息。
 琴平と紅音は、宿屋の人に傷の手当をしてもらっているから、部屋には俺と闇命君、雨燕さんの三人。

 めっちゃ気まずい、空気が重い。

「…………眠い……」
『だいぶ力を使ったからね。少し寝た方がいいんじゃない?』
「少し休め。話は次起きた時にでも聞こう」

 んー……。それも、そうだな。
 安心したら急に強い眠気が襲ってきた。

 睡魔が俺を襲うぅぅぅ──……。

 ※

 ……寝たね、畳の上で。相当眠たかったみたい。

 でもさぁ、畳の上で寝るってなんなの。
 体痛くなるじゃんやめてよ。苦しむの君だってわかんないわけ?

「はぁ」

 倒れ込むように眠った優夏を雨燕はじっと見て、鼻を鳴らし立ち上がった。

 なんだ? ──え、かけ布団をかけた? きもっ!?

『ナニシテンノ』
「風邪をひかれたら困る。それだけだ」
『ソウデスカ』

 いや、気持ち悪いって。なんなの。

 雨燕が再度座り直し、真剣な眼差しで見てきた。

 あぁ、ここから質問攻めになるのか。
 めんどくさいな。琴平、早く戻ってきてよ。

「とりあえず、いつからお前はその姿になっていた」
山本五郎左衛門さんもとごろうざえもんに出会った日だね』

 あれは、忘れたくても忘れられない記憶だ。

『山本五郎左衛門は妖怪最強と記載があり、妖怪の眷属達を引き連れる頭領。魔王に属するモノとされるんだったよね、たしか。そいつと出会い、僕達が全滅させられる手前、こいつをこの世界に呼び込んだ』

 見た目はただの烏天狗だったのに、一瞬にしてやられた。

 いや、あの妖力を感じ取ってしまった他の連中は、足が竦んだり、腰が抜けたりして、戦闘どころではなくなった。

 僕も、最初は足が震えて何も出来なかった。
 でも、負けたくなかったんだ。

 負けたくなくて、周りの人が出来なかった事が出来たら、と思ったんだ。

 今更、考えても無駄だけどね。
 結局は負けたんだ。僕は、負けたんだから。

「なるほどな。やっと腑に落ちた」
『腑に落ちた?』

 何が気がかりだったんだ?
 こんな話、もう知っていたんじゃないの?

「貴様があれだけの傷を負っていた理由だ」
『報告書は届いてなかったわけ?』
「届いていた。だが、詳細は書かれておらず、相手の名前すら記載がなかったのだ。直接聞こうにも、生きているものが少なく、今だ目を覚ましていない者もおる」
『ふーん』

 んで、僕に聞くのは無駄に備わっている自尊心が許さなかったと。くだらないな。

「では、今も尚、山本五郎左衛門は現世をさ迷っていると。そういう事だな」
『他の陰陽寮からの報告がないのならそうなんじゃない? あんな大物、倒したり封印したら報告が来るはずだよ。まぁ、倒すなんて絶対に無理だろうけどね』

 山本五郎左衛門の記載は少なく、どのような力を持っているのか、どんな存在なのかがまだ分かっていない未知な存在。

 ただ、"妖怪最強"という言葉が歩いているだけの、存在。

『そんで、話は戻るけど。それから僕は、なぜか幽体離脱してしまいこの状態になったの。戻ろうにも、なんかの力によって弾き出される。だから、違う人格を呼び寄せ僕の体を預けているの』
「それが、この、牧野優夏という小僧か」

 目線を寝ている優夏に向けている。
 今の話で予想はできるか、普通。

『そういうこと。とりあえず、こいつは僕より年上らしいよ。頭脳や精神年齢、体力などは僕の方が何倍も優っているけどね』
「相変わらずだな。なら、今までの貴様らしくない言葉は、全て優夏とやらが発していたということか」
『当たり前だろ。僕が言う訳が無い言葉が沢山あったはずだ。そこで気づかないなんて、よく陰陽助が務まるものだな』

 まったく、あれだけの違い、すぐその場で気づいてもいいと思うけど。
 いや、気づかれたら困るんだけどさ……。
 なんか、複雑なんだけど。

「貴様の今までの行いが周りをそうさせていると考えはしないのか。少しは改めろ」
『改めさせたいなら、まずあんた達が改めなよ。そしたら、参考にはしてあげる』
「ふんっ。そんな事する訳が無いだろう。我々は間違えていない。改めるところなどない」
『なら、僕も改めるところなんてないよ。僕は僕が正しいと思った行動をしているだけだからね』

 このままじゃ堂々巡りになりそうだな。
 さて、どうやって話しを切り出すか。

 こいつは、この村で今まで何をしていたのか。今度はこっちが質問攻めしてやるよ。
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