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呪吸の義
刀
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「――――百目?」
『ご無事ですか、我が主』
百目が刀を片手に俺の前に立っている。いつの間に来てくれたんだ、気づかなかった。
「っ、今は俺の事より早く夏楓を!!」
『心配ご無用かと』
「なんで!?」
『落ち着きなよ。まさか、君は僕が選んだ従者を疑っているの?』
「え、それって…………」
あ、そういえば、琴平はどこに?
――――――――ギャァァァァァァアアアアアアア
っ、な、なんだこの叫び声!!!!! 上からのしかかるような悲痛の叫び。
え、え? 琴平がいつの間にか夏楓を抱えてる。
あ、そうか、俺に意識が行っていたから、琴平の行動に弥来さんは気づかなかったんだ。
弥来さんは胸を押さえて床に。うつぶせに倒れ込み、動かないように川天狗が両手を頭に添え夢を見せていた。
胸を押さえているという事は、琴平が弥来さんの胸元に拳を振るったのかな。
「夏楓、大丈夫?」
「こほ、す、すいません…………。足を引っ張って…………こほっ、しまって…………」
「そんなのどうでもいいよ。あれは一体何の。どこから現れて…………」
魔魅ちゃんに近づき隣に座ると、目を閉じ気絶していた。涙の痕が頬についている。
「……っ、あ。お、おにいちゃん…………」
「うん、俺だよ」
「お兄ちゃん、おにいちゃん。うわぁぁぁぁああ!!!」
泣いちゃった。俺に抱き着いて、大きな声で泣いてる。相当怖い思いをしたんだ。早速、岱平さんとの約束を破ってしまった。まさか、こんなに早く敵が仕掛けてくるなんて思わなかったよ、なんでこんなことを……。
「…………それにしても、時間がかかっているな川天狗」
もしかして、俺の力が足りないのか? もう少し法力を送ってみようか。
魔魅ちゃんを片手で支えながら、川天狗のお札に法力を送り込む。集中しないとうまくいかないし、焦ると力が分散してしまう。
意識、集中。
『待って』
「え?」
闇命君に止められた?
「様子がおかしいです」
「あぁ、普通では無いように見える」
琴平と夏楓が見ている先には、川天狗によって動きを封じ込められている弥来。時間かかっているみたいだけど、俺がもう少し法力を送り込めば何とか――――あれ。
川天狗の手元、火花? もしかして、力の押し合いになっているのか。
『ガッ、ガァッ』
なんだ、この声。なんか、苦しげで無理やり声を出しているような。しかも、今のは人間の声と言うより、動物か何かに近い。
今の声はもしかして、弥来さんから?
『っ、主!!』
え、百目がいきなり俺の前に立った?
『ガァァァァァァァアアアア!!!!』
なっ、何だこの咆哮。獣が助けを乞うような咆哮だ!!
っ、俺達を取り囲むように無数の触手!! 逃げ道を封じ込まれた。
「っ、川天狗!!!」
一番近くにいた川天狗が突然、飛び出してきた触手に反応できなくて捕まってしまった。
『早く川天狗をしまって!!』
「え、しまうって……」
『早く!!!!!』
闇命君の言う通り。よくわからないけど、急いで川天狗をしまおうとしたが――――
『あ、るじ…………。申し訳、ありません』
俺が川天狗を見た瞬間、目の前で腕や足が、引きちぎられた。最後に川天狗は俺に目を向けて、謝罪。持っていた札が川天狗の死を意味するように燃え、消えてしまった。
闇命君の式神が、こんなに早く二体もやられるなんて…………。俺が、もっとしっかりしないと、もっと早く判断しないと。このままだと、百目までやられる。
今は俺達を守るようにこっちに向かってくる触手を切り続けてくれてけど、切っても切っても意味がない触手、百目の体力がどこまで続くかわからない。早く、早くなにか考えないと、早く……。
――――――――いや、ここは落ち着け。気持ちを落ち着かせろ、慌てると思考が鈍くなる。
今考える事は対処。対処するためには、あの触手の動きを止めなければならない。どこからともなく現れる触手、弥来さんを封じたところで意味はなかった。斬り続けてもこっちが疲弊するだけ。
他に何かないのか、相手の弱点はないのか。
「あれ……?」
弥来さんの首筋、今は動いているから見えにくいけど、何か書いてある。あれって、陰陽師の記号である大極図?
――――――――ガンッ!!!
『っ、百目!!!』
俺の横、すごい勢いで百目が後ろの壁にたたきつけられた。すぐに動けそうにない。まずい、百目が吹っ飛ばされたという事は――………
背後から、気配。床には触手の影。早く結界を張らないと捕まる!!
――――――――バチン!!
「っ、あ、結界」
俺の結界じゃない。琴平が自身の結界を解いて、俺に結界を張ってくれたんだ。
「ありがとう、琴平!」
「油断するな!! 次が来てるぞ!!」
っ、結果で弾いたけど、まだまだ来てる。
「琴平は自分の方に結界を張って!! 俺は大丈夫だから!」
琴平が結界を解くのと同時に、触手が俺めがけて襲ってきた。横に、後ろに、前にも跳び回避。でも、どんなに回避しても触手は俺を襲ってくる。
触手を掻い潜って、どうにか弥来さんに近付けないか。
おそらく、弥来さんは呪いにかけられている。闇命君の直感がそう言っている。これは安倍晴明が教えてくれているのかな。
どっちでもいい、今は呪いの浄化を考えよう。避けているだけじゃ意味はない!
「闇命君! すぐに呪いを浄化できる術とかないの!?」
『ないことはないけど、今すぐにあんたが使えるようになるのは無理でしょ! だから、今は百目に法力を送って! その方が手っ取り速い!」
そうだ、百目がまだ生きてる。今も動こうと、立ち上がろうとしてくれている。
手に握られている札に法力を送り込む。その間も迫ってくる触手、横に跳び、屈み、後ろに跳び。
くそっ、避けるだけでも結構しんどい。でも、避けなければ捕まって何をされるかわからない。
俺がもっと、闇命君の身体を使えるようになっていたら、こんなことにはなっていなかった。もっと、俺が強かったら、こんな苦戦する事はなかった。
――――――――いや、馬鹿か俺は!! 今はそんなこと考えている場合ではない。今は考えても俺が出来る事は変わらない。
今俺が出来る事を精いっぱいやり、この場にいるすべての人を守り通す!!
「『百目 この場の全ての人を守り通せ!! 急急如律令』!!!!」
苦しそうな百目に無理は背たくないんだけど、ごめん、今回だけは力を貸して。
『主の、仰せのままに』
百目に力が集まるのを感じる。
目が、至る所から開かれていく。隠されていた左目も、赤く染まっている瞳が姿を現した。
っ、な、なんだ、雰囲気が今までと違う。今の百目は、違う。
刀を鞘に戻し、姿勢を低く。顔を下げ目を閉じてしまっていた。これじゃ、相手の動きが分からなっ──いや。百目の目は複数ある。身体中が目になっているから、死角なんてものは無い。
触手が一斉に攻撃を仕掛けて来た。
『────っ』
――――フッ
「…………え、なに、これ……」
百目の姿が消えた。と、思えば次から次へと触手が切られていく。
な、なにこれなにこれなにこれ?! 百目なのか、百目が飛び回って触手を切りまくっているのか?! 見えない、俺には百目の姿が見えんぞ?!
さっきとは比べ物にならないくらいのスピードで触手が切れて、どんどん数が減って行く。
これが、百目の実力?
『優夏、今のうちに呪いを解く方法を教える』
「あ、ありがとう」
『礼はいらない。呪いを解く方法は―――避けろ!!!』
っ、え。
百目の動きを掻い潜って、触手が俺に向かって来てる。駄目だ、気づくのが遅れた、間に合わない!!
ザクッ!!!
「どわっ!?」
いてて…………。何かが吹っ飛んできて、俺の服に刺さった。何が飛んできたんだ?
これって、刀? そうか、俺の服に刀を放って、無理やり床に転がしてくれたのか。これが無かったら俺は今、目の前の床に刺さっている触手の餌食になっていたのか。確実に殺す勢いで放たれた触手、危なかった……。
っ、て、待って? 刀が俺に投げられた。刀を扱っているのはこの場で一人だけ。今、前線で戦ってくれている、百目だけ。
『ごほっ、あ、るじ。ご無礼を、お、ゆる、ください』
「ひゃ、くめ?」
前線で戦っていたはずの百目の身体には、何本もの触手が突き刺さっていた。
『ご無事ですか、我が主』
百目が刀を片手に俺の前に立っている。いつの間に来てくれたんだ、気づかなかった。
「っ、今は俺の事より早く夏楓を!!」
『心配ご無用かと』
「なんで!?」
『落ち着きなよ。まさか、君は僕が選んだ従者を疑っているの?』
「え、それって…………」
あ、そういえば、琴平はどこに?
――――――――ギャァァァァァァアアアアアアア
っ、な、なんだこの叫び声!!!!! 上からのしかかるような悲痛の叫び。
え、え? 琴平がいつの間にか夏楓を抱えてる。
あ、そうか、俺に意識が行っていたから、琴平の行動に弥来さんは気づかなかったんだ。
弥来さんは胸を押さえて床に。うつぶせに倒れ込み、動かないように川天狗が両手を頭に添え夢を見せていた。
胸を押さえているという事は、琴平が弥来さんの胸元に拳を振るったのかな。
「夏楓、大丈夫?」
「こほ、す、すいません…………。足を引っ張って…………こほっ、しまって…………」
「そんなのどうでもいいよ。あれは一体何の。どこから現れて…………」
魔魅ちゃんに近づき隣に座ると、目を閉じ気絶していた。涙の痕が頬についている。
「……っ、あ。お、おにいちゃん…………」
「うん、俺だよ」
「お兄ちゃん、おにいちゃん。うわぁぁぁぁああ!!!」
泣いちゃった。俺に抱き着いて、大きな声で泣いてる。相当怖い思いをしたんだ。早速、岱平さんとの約束を破ってしまった。まさか、こんなに早く敵が仕掛けてくるなんて思わなかったよ、なんでこんなことを……。
「…………それにしても、時間がかかっているな川天狗」
もしかして、俺の力が足りないのか? もう少し法力を送ってみようか。
魔魅ちゃんを片手で支えながら、川天狗のお札に法力を送り込む。集中しないとうまくいかないし、焦ると力が分散してしまう。
意識、集中。
『待って』
「え?」
闇命君に止められた?
「様子がおかしいです」
「あぁ、普通では無いように見える」
琴平と夏楓が見ている先には、川天狗によって動きを封じ込められている弥来。時間かかっているみたいだけど、俺がもう少し法力を送り込めば何とか――――あれ。
川天狗の手元、火花? もしかして、力の押し合いになっているのか。
『ガッ、ガァッ』
なんだ、この声。なんか、苦しげで無理やり声を出しているような。しかも、今のは人間の声と言うより、動物か何かに近い。
今の声はもしかして、弥来さんから?
『っ、主!!』
え、百目がいきなり俺の前に立った?
『ガァァァァァァァアアアア!!!!』
なっ、何だこの咆哮。獣が助けを乞うような咆哮だ!!
っ、俺達を取り囲むように無数の触手!! 逃げ道を封じ込まれた。
「っ、川天狗!!!」
一番近くにいた川天狗が突然、飛び出してきた触手に反応できなくて捕まってしまった。
『早く川天狗をしまって!!』
「え、しまうって……」
『早く!!!!!』
闇命君の言う通り。よくわからないけど、急いで川天狗をしまおうとしたが――――
『あ、るじ…………。申し訳、ありません』
俺が川天狗を見た瞬間、目の前で腕や足が、引きちぎられた。最後に川天狗は俺に目を向けて、謝罪。持っていた札が川天狗の死を意味するように燃え、消えてしまった。
闇命君の式神が、こんなに早く二体もやられるなんて…………。俺が、もっとしっかりしないと、もっと早く判断しないと。このままだと、百目までやられる。
今は俺達を守るようにこっちに向かってくる触手を切り続けてくれてけど、切っても切っても意味がない触手、百目の体力がどこまで続くかわからない。早く、早くなにか考えないと、早く……。
――――――――いや、ここは落ち着け。気持ちを落ち着かせろ、慌てると思考が鈍くなる。
今考える事は対処。対処するためには、あの触手の動きを止めなければならない。どこからともなく現れる触手、弥来さんを封じたところで意味はなかった。斬り続けてもこっちが疲弊するだけ。
他に何かないのか、相手の弱点はないのか。
「あれ……?」
弥来さんの首筋、今は動いているから見えにくいけど、何か書いてある。あれって、陰陽師の記号である大極図?
――――――――ガンッ!!!
『っ、百目!!!』
俺の横、すごい勢いで百目が後ろの壁にたたきつけられた。すぐに動けそうにない。まずい、百目が吹っ飛ばされたという事は――………
背後から、気配。床には触手の影。早く結界を張らないと捕まる!!
――――――――バチン!!
「っ、あ、結界」
俺の結界じゃない。琴平が自身の結界を解いて、俺に結界を張ってくれたんだ。
「ありがとう、琴平!」
「油断するな!! 次が来てるぞ!!」
っ、結果で弾いたけど、まだまだ来てる。
「琴平は自分の方に結界を張って!! 俺は大丈夫だから!」
琴平が結界を解くのと同時に、触手が俺めがけて襲ってきた。横に、後ろに、前にも跳び回避。でも、どんなに回避しても触手は俺を襲ってくる。
触手を掻い潜って、どうにか弥来さんに近付けないか。
おそらく、弥来さんは呪いにかけられている。闇命君の直感がそう言っている。これは安倍晴明が教えてくれているのかな。
どっちでもいい、今は呪いの浄化を考えよう。避けているだけじゃ意味はない!
「闇命君! すぐに呪いを浄化できる術とかないの!?」
『ないことはないけど、今すぐにあんたが使えるようになるのは無理でしょ! だから、今は百目に法力を送って! その方が手っ取り速い!」
そうだ、百目がまだ生きてる。今も動こうと、立ち上がろうとしてくれている。
手に握られている札に法力を送り込む。その間も迫ってくる触手、横に跳び、屈み、後ろに跳び。
くそっ、避けるだけでも結構しんどい。でも、避けなければ捕まって何をされるかわからない。
俺がもっと、闇命君の身体を使えるようになっていたら、こんなことにはなっていなかった。もっと、俺が強かったら、こんな苦戦する事はなかった。
――――――――いや、馬鹿か俺は!! 今はそんなこと考えている場合ではない。今は考えても俺が出来る事は変わらない。
今俺が出来る事を精いっぱいやり、この場にいるすべての人を守り通す!!
「『百目 この場の全ての人を守り通せ!! 急急如律令』!!!!」
苦しそうな百目に無理は背たくないんだけど、ごめん、今回だけは力を貸して。
『主の、仰せのままに』
百目に力が集まるのを感じる。
目が、至る所から開かれていく。隠されていた左目も、赤く染まっている瞳が姿を現した。
っ、な、なんだ、雰囲気が今までと違う。今の百目は、違う。
刀を鞘に戻し、姿勢を低く。顔を下げ目を閉じてしまっていた。これじゃ、相手の動きが分からなっ──いや。百目の目は複数ある。身体中が目になっているから、死角なんてものは無い。
触手が一斉に攻撃を仕掛けて来た。
『────っ』
――――フッ
「…………え、なに、これ……」
百目の姿が消えた。と、思えば次から次へと触手が切られていく。
な、なにこれなにこれなにこれ?! 百目なのか、百目が飛び回って触手を切りまくっているのか?! 見えない、俺には百目の姿が見えんぞ?!
さっきとは比べ物にならないくらいのスピードで触手が切れて、どんどん数が減って行く。
これが、百目の実力?
『優夏、今のうちに呪いを解く方法を教える』
「あ、ありがとう」
『礼はいらない。呪いを解く方法は―――避けろ!!!』
っ、え。
百目の動きを掻い潜って、触手が俺に向かって来てる。駄目だ、気づくのが遅れた、間に合わない!!
ザクッ!!!
「どわっ!?」
いてて…………。何かが吹っ飛んできて、俺の服に刺さった。何が飛んできたんだ?
これって、刀? そうか、俺の服に刀を放って、無理やり床に転がしてくれたのか。これが無かったら俺は今、目の前の床に刺さっている触手の餌食になっていたのか。確実に殺す勢いで放たれた触手、危なかった……。
っ、て、待って? 刀が俺に投げられた。刀を扱っているのはこの場で一人だけ。今、前線で戦ってくれている、百目だけ。
『ごほっ、あ、るじ。ご無礼を、お、ゆる、ください』
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