憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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呪吸の義

羽織の少女

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 氷鬼家から逃げだした陰陽師、その人は何が狙いで弥来さんにあんな酷い事をしたのだろうか。というか、あれは何て言う術なんだ。
 村の人が屍人になって水分さんを襲った時みたいな感じなのだろうか。同じ術? でも、そうだとしたら、弥来さんは死んでしまっていることになる。

 今は地下牢に閉じ込めてしまっているから詳しく確認は出来ていない。でも、生きているはず。生きていないわけがない。今も暴れているから地下牢に閉じ込めてしまっているわけだし。

 絶対に、生きてる。

『自分に言い聞かせるのはいいけど、次の行動をしっかりと考えなよ』
「あ、う、うん」

 弥来さんを閉じ込めたのは昨日の話。今は琴平と紅音、楓夏と俺。魔魅ちゃんで部屋の中で休憩していた。

「楓夏と魔魅ちゃんは体、大丈夫? 無理しないで寝ていても大丈夫だよ」
「ありがとうございます。ですが、私は大丈夫ですよ」
「私も、大丈夫……。怖かった、だけ」

 俺の裾を掴んでいる魔魅ちゃんの手が微かに震えてる。今だあの時の光景が頭の中に染みついてしまっているんだろう。
 頭を撫でてあげると、自身を安心させるように俺の手を掴みすり寄ってきた。

「これからどうするつもりだ、優夏」
「これからは単独行動は避け、何か気になる事があれば必ず俺か紅音が同行する形を取ろうか。俺自身はあまり役に立たないけど、闇命君がいるから大丈夫だと思う。紅音は単純に戦闘能力が高いから何かあっても対応できると思う」

 あ、紅音が拳を握ってる。嬉しかったんだな、頼られて。

「わかった。それじゃ、優夏、付き合ってほしい所があるんだがいいか? 闇命様も、もしよければ……」
「俺は大丈夫だよ」
『わかった』

 っ、あ。立ち上がろうとしたら、魔魅ちゃんに手を引っ張られてしまった。今にも泣き出しそうな顔を向けられてる、心が抉られるよぉ。

「魔魅ちゃん、今回は紅音もいるし、楓夏も優しいから大丈夫だよ。すぐに戻ってくるし、少しの間、待っていてくれるかな?」
「…………本当に、すぐ、戻ってくる?」
「うん、大丈夫だよ。安心して、ね?」

 渋々と言った感じだったけど、手を離してくれた。結局連れてきても、魔魅ちゃんには辛い思いをさせてしまっている。もしかしたら、漆家に残った方が良かったんじゃないか。

『早く行くよ』
「…………うん」

 後ろ髪惹かれる想いで部屋を出て、琴平について行く。
 これからどこに行くんだろうか、気になる事でも?

 ☆

 琴平は無言のまま歩いているから、俺達も何聞かずについて行く。すると、陰陽寮の外に出てしまった。

「…………琴平、どこに向かってるの?」
「ちょっとな。森の中に」
「森? なんで?」
「来た時、森に張られているはずの結界がなくなっていただろう。つまり、結界を破った人物がいるはずなんだ。その痕跡が残っていないか気になってな」
「それは、氷鬼家から姿を消した陰陽師なんじゃ?」
「結界を破り、村人を襲い、水分さんも追い込めた。これを一人でやる藻は不可能だろう。他にも協力者がいるはずなんだ。それの痕跡を探してみようと思っている」

 まさか、そこまで思い返して森の中を見てみようと思ったなんて。琴平は自分が一番危険な立ち位置にいるのに、ここまで冷静なんて。俺も、琴平のような人になりたいな。

『――――――――っ、後!!』
「え?」

 闇命君の焦った声、後ろを振り向くと、目の前にはオ、 ノ――?


 ――――――――――ゴスッ!!!


「っ、え!? 琴平!?」
「大丈夫か優夏!!」

 俺めがけて振り下ろされた斧を、琴平が横から叩き落した。流れるように足を引っかけ転ばせ、腕を背中に付け床に転がす。上に覆いかぶさり、完全に動きを封じた。

「こ、琴平、大丈夫? 起き上がってこない? 逆にひねりあげられたりしない!?」
「さすがに、一般女性に負けたら悲しいんだが…………」

 あ、琴平がなんとなく落ち込んでしまった。ごめんて、基準が紅音になていたよ。
 そりゃ、そうだよね。普通は女性が男性に力で勝てる訳ないか。琴平に固定されている女性は、苦し気に唸ってはいるけど、起き上がれる気配はない。

「離して!!!!!」
「離してほしければ、なぜ今闇命様の身体に斧を振り下ろそうとしたか言ってもらおうか」

 確かに、なんで俺に斧を振りかぶったんだ。俺、この人のこと知らないぞ? 一体誰だ?

「うるさい、うるさい!! あなたを殺さないと、私は、私はっ――………」

 感情が高ぶり過ぎた女性は言葉が最後まで繋がらず、涙を流し抵抗を止めた。

「…………あの、何があったんですか?」

 近付いても抵抗しようとしない女性。琴平に離すように目線を送るけど、まだ警戒を解いてはいけないみたいで首を横に振られてしまった。

『ねぇ、泣いてないでなんで僕の身体を狙ったのか聞かせてよ。まさか、無意味に襲ったわけ? そうだとしたら本当に幻滅物なんだけど』
「ちょ、闇命君。少し待ってあげてよ、今話せる状況じゃないでしょ?」
『優夏は黙ってて。今僕はこの女に話しかけているの、邪魔をしないで』

 あぁ、こうなると闇命君は人の話なんて聞かない。女性は闇命君の言葉で顔面蒼白、口を震わせ目を開く。相当怖いらしいな。まぁ、今の闇命君は怖い。半透明の姿で腕を組み、女性を無表情で見下ろしているんだもん、怖いわ。でも、ここまで怖がるくらいなら、なぜ俺を襲ったのか。

『答えられないの? もしかして、君の意志でやったわけではないとか?」

 ――――――――びくっ

 あ、体を震わせた。闇命君の言葉は正しいのか? なら、誰がこの人にお願いをしたんだ。いや、お願いなんて生易しいものではないだろう。

『君、もしかしてこの森に張られていた結界を解いた? そして、水歌村の村人』

 え、村人? なんで、村人が自分の、裏が危険に陥る状況に自らしてしまうのか。さすがに説明がつかないのではないか?

「…………わ、私は…………」

 声が震えてる、言わないのではなく、言えないのではないだろう。目が異常にさ迷い、歯はガチガチと音を鳴らしている。

『君をそそのかしたのは誰? 君をここまで怯えさせているのは? この村を襲ったのは誰なの? 早く答えてよ。君の今までの行動をそのまま話すだけでいいんだよ? 問題をしているんじゃない、過去を話せと言っているだけ答えはもう知っている、早く答えてよ』
「ま、待ってよ闇命君、今は話せないんじゃないの? ほら、恐怖のあまりとか」
『話さないのならいい。けど、君は良くないでしょ? なんか、君から妖しい気配を感じる。もしかしてだけどさ、呪い、かけられてない?』
「え、呪い!?」

 女性が涙で濡れた顔を上げて闇命君を見上げている。唇は震え声は出ていないけど、肯定するように小さく頷いた。まるで、救いを求めるように。

『ここで答えたら、君にかけられている呪いを弾き出してあげる』
「っ、ほ、本当、ですか?」
『君が僕の質問に正確に答えたらね。ほしい答えが来なかったらしない。すべては君の行動次第だよ。そう? 話す気になった?』

 これじゃ、脅し……。今の女性は今にも心が壊れてしまいそうなのだから、優しく扱ってほしいというか。

『僕は短気なんだ、早く答えてくれる?』
「………羽織を着た、少女……。名前までは、わかりません」

 羽織を肩にかけた、少女…………。この村を襲っていた少女の事か! あの、屍人使い!

『村を襲った理由とか。結界を外させる理由とかは聞いた?』
「聞いたら、”主も、我の人形になりたいか?”と。背後にいる、誰かもわからない死体を見せつけられてしまい、頷くしかありませんでした…………。なので、理由はわからないです…………」

 なるほど、脅されたのか。しかも、人形にするなんて、酷い。人を何だと思っているのか、死体を使う事すらありえないんだけど、それを脅しに使うなんて。

 女性は明らかな被害者だ。こんなに怯え、脅され。何のためにここまでしたんだよ、羽織の少女。絶対に見つけてやる、問いただしてやる。

「許せない」
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