憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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呪吸の義

深まる謎

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「っ、優夏!!」

 地面に倒れ込む闇命の身体を、瞬時に琴平は受け止める。闇命は半透明の姿を保つことが出来ず、鼠の姿に戻ってしまった。

「闇命様、大丈夫でしょうか?」
『僕は大丈夫、こいつが限界に達しただけ。疲労と睡魔、法力の枯渇と。まぁ、体に限界が来てもおかしくないよね』
「確かにそうですね。少々無理をさせてしまいました」
『体は僕の物だから、特に気にしなくていいよ』
「闇命様の身体だからこそ心配するのです。あまり自身を安く見ないでください。貴方はもう、一人ではなく、俺達が居ます。それに、もう貴方だけの身体ではないでしょう?」

 琴平は腕の中で寝息を立てている優夏を柔和な笑みで見下ろし、優しく頭をなでる。闇命はそんな彼の姿を見て、複雑そうに眉を顰め顔を逸らした。

「今回は同時に二つの事が解決して良かったですね」
『そうだね。あと残されているのは、元氷鬼家の陰陽師と水仙家についてくらいか。これはまた水分にどこまで進んだかを聞いてからじゃないと、二度手間になる可能性がある。無駄な時間は出来る限り避けていこうか』
「はい、了解しました」

 琴平と闇命が話していると、紅音と夏楓が乱れた服を整えながら近づいて来た。何かすっきりしたような表情を浮かべており、琴平はそんな彼女達を苦笑しながら迎えた。

「お疲れ様、怪我はないか?」
「大丈夫だ」
「私も問題ありません、七人ミサキは結構簡単なのですね。私でも戦う事が出来て、色々すっきりしました」

 本当にすっきりしたのか、夏楓は頬を染め楽し気に言い放つ。さすがの紅音もそんな彼女の様子に冷や汗を流し、口元を引きつらせた。

「もうここに用はありませんよね。早く闇命様の身体を休ませてあげなければ、回復するのが遅くなってしまいますよ」
「あ、あぁ。そうだな、今すぐにでも戻ろうか」

 琴平は冷や汗を流しながらも優夏を抱きかかえ立ち上がる。歩き出し、屋敷の中に戻って行った。


 部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、険しい顔を浮かべた水分が前方から姿を現した。
 姿を見た瞬間、紅音と夏楓はバツが悪そうな顔を浮かべ誤魔化そうと顔を逸らす。唯一何も反応を見せなかった琴平は、前から歩いて来ている水分に一礼した。

「ん? こんな所で何をしているんだ、安部家御一行」
「少しばかり用事があってな」
「そうか」
「水分さんは何を?」
「調べ物の目途が付いたからな、さすがに体を動かさないと固まってしまうと思い調書室から出てきたところだ」

 肩をもみながら伸びをして、水分は答える。その様子に、琴平は首を傾げ問いかけた。

「もしかして、今までずっと調べ物を?」
「あぁ、さすがに今回の件は大きく動いているからな。早急に手を打たなければ、被害が大きくなる一方だ」
「確かにそうですが、あまり無理だけは…………」
「無理をしてこその頭だろ。他の奴に負担があまりないようにしなければならん、他の事なら迷惑かけるけどな」
「それはいいのか」
「何も言われていないからいいんじゃないか?」
「そうか…………」

 頼もしいのか、頼もしくないのかわからない返答に、琴平達は苦笑を浮かべる。そんな彼らなど気にせず、水分は通り抜けようと歩き出す。その際、琴平の耳元で囁いた。

「今回の件、大きなモノが動いている可能性がある」

 ☆

「……――と、こんな感じだ」
「なるほど。つまり、今までのは詳しく話してはいないにしろ察してはいるって感じかな」
「そんな感じだ」

 水分さんも頑張っているみたいだな、陰陽頭だからなのかな。安倍家の陰陽頭は全然そんなことないと思うけど。普通に部下に丸投げしていたし。

『今回、羽織の少女だけではないような気はするけど、横の繋がりがわからない。それに、今までは対応するだけで仕掛けられていない』
「あ、今回の件は靖弥が主に動いているみたい。それで、蘆屋道満は表立って動いていないらしいよ。気配を感じないんだって」
『…………は?』
「え?」

 何で闇命君はそんなに驚いているのだろうか。琴平もなんで驚いているの?

「優夏、それは誰から聞いたんだ?」
「…………あ」

 そうだ、今のは夢の中で安倍晴明と話した内容だった。そりゃ、二人は驚くわ。

「えっと、夢を見てさ。安倍晴明が教えてくれたんだよ」
「安倍晴明って、あの?」
「うん。なんか、子孫である闇命君の体の中にずっと潜んでいたんだって。今までの闇命君の直感も安倍晴明が伝えていた事みたい」
『………そういえば、僕の体が乗っ取られた時があったな』
「え、乗っ取られた?」
『こっちの話』
「えぇ………」

 なにか納得している闇命君とは逆に、俺はモヤモヤし始めたんだけど。

「つまり、安倍晴明が今回の一件に優夏の友人であるセイヤという人間が深く関わっていると教えてくれたわけだな」
「うん」
「だが、蘆屋道満は関わっていない」
「完全にかかわっていないわけではないような気はする。指示を出して、自分はまた違う事をしているのかも」
「二人はいつも一緒に行動していたはずなのに、なぜいきなり別行動を始めたんだ?」
「そこは安倍晴明もわからないみたい。蘆屋道満の動きはいつも読めないから、気配を探るしかないんじゃないかな」

 気配ならすぐに分かると言っていたし。
 今回は気配を感じる事が出来ないから、蘆屋道満は表立って動いていないと言い切っていた。

 この謎もあるけど、今は元氷鬼家の陰陽師についてだな。あの羽織の少女が何をしたいのかすごく気になる。

「…………あれ」
「っ、これって…………」

 森の中から小鳥が一匹、俺達の方に向ってきた。しかも、ただの小鳥ではない。

 月の光に反射し、キラキラと輝く体。艶のある皮膚、先を見通す事が出来るほどの透き通り具合。

 向かって来ている小鳥の身体は氷でできていた。確実に普通の小鳥ではない、もしかして誰かの式神か?

「これって…………」
「優夏、むやみやたらに障ろうとするな。こいつは俺が預かる」
「え?」

 俺が手を伸ばすと、琴平が右の手首を掴み止めてしまう。すぐに、小鳥を琴平が掴み肩に乗せた。
 なにか慌てた様子だったんだけど、何かあったのかな?

 この後はすぐに部屋に戻り、布団に横へとなるように言われた。沢山寝たから寝れないと思ったけど、体は疲れていたみたい。すぐに睡魔が襲ってきて、瞼が重くなる。

 琴平は何か苛立たし気に誰かと話しているみたいだけど、瞼が落ちるのを止められない。どんどん意識が遠くなり、琴平の声が小さくなって。

 完全に、聞こえなくなった。
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