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呪吸の義
兄から弟に
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村の外、森の中に一人の青年が歩いていた。
水色の髪を翻し、肩には氷の小鳥。眉間に皺を寄せ、険しい顔を浮かべている。足取りは重く、周りを警戒していた。
カサカサと草木が揺れ、風が優しく青年を包み込む。その青年の名前は、月花琴平。一人で行動を禁止されているが、今だけは許してほしいと胸中で呟き歩いていた。
その時、木の影からもう一人、青年が姿を表し琴平へと声をかけた。
「琴平、久しぶりだな。俺の事忘れていないみたいで良かったわ」
「……………………それじゃ、俺はこれで」
「まぁ待て、ここまで来たのは俺に会う為だろ? 俺の式神をしっかりと肩に乗せてきてくれて、お兄ちゃんは嬉しいよ」
琴平と背格好が似ている青年が、煙管を片手に現れた。
髪色は琴平と同じく水色で、顎辺りまでの長さ。髪が吹く度、後ろに広がる。両目とも藍色の瞳、横に伸びる口元からは白い息が吐き出される。
黒い袖なしインナーに、藍色の着物を羽織っていた。灰色のズボンに指先が出る、くるぶし辺りまでの革のブーツ。
琴平が青年を見つけた瞬間、彼は逃げるように方向転換したが、すぐに肩を掴まれ立ち止まる。
顔を青くし、後ろに立っている青年を横目で見た。
「なんの用なんだ、琴葉兄さん」
「そこは昔のように『おにぃちゃぁん』と呼んでくれてもいいんだぞ? 我が弟よ」
「そんな気持ちの悪い呼び方したを記憶ないけどな。それで、早く本題と、何故ここに居るかを教えてくれると助かる」
肩に置かれていた手を払い、腕を組み問いかけた。すると、琴葉は煙管を口に咥え直し、一拍置く。
白い息が吐かれ、彼はゆっくりと口を開いた。
「お前――――紅音とはどこまで進んだ?」
「……………………」
「待て、その式神を出してお前は俺をどうするつもりだ」
琴葉の言葉に、琴平は懐に入れていた自身の式神を出そうとお札を取り出した。その行動にすぐさま止めに入った琴葉に、琴平はため息を吐きながらもお札を懐に戻す。
「早く答えろ」
「まぁ、落ち着け。焦る気持ちもわかるが、気ばかり焦ったところで意味はない。逆に、大事なものを見落とす可能性があるぞ」
笑みを浮かべている琴葉の言葉に、琴平は言葉を詰まらせた。納得する部分もあるため、気まずそうに顔を逸らす。
そんな彼を見て、琴葉は喉を鳴らし右手を前に出す。琴平の肩に乗っている小鳥を受け取った。
「今、俺がここに居る理由から話してやるよ」
小鳥の嘴の下を指で撫でながら、琴葉は優し気に目を細め口を開く。
「水仙家からの要請があったから、俺が直々に出向いたんだ」
「水仙家からだと?」
「さすがに事情を聞いたらほっとくのも可哀想だと思ってな、水神様を守らなければならんのもあるし」
「今、琴葉兄さんが所属している陰陽寮って、もしかして呪いを扱っている…………」
「お、よく知っているな。そうだ、俺が今所属しているのは、呪いを主に扱っている漆家だ。そこで陰陽助をやらせてもらっている」
今の言葉に琴平は頭を抱え、小さな声で「漆家の巫女よ、済まない」と謝罪を零していた。
「それで、琴平は何でこんな所にいるんだ? 安倍家にも要請が行ったのか?」
「そこは聞いていないんだな。俺はもう安倍家を抜けている。今は俺含め五人で旅をしている途中だ」
「ほう、楽しそうだな。俺も混ぜっ――」
「断る」
考える事なく、琴平は即答で断った。さすがにここまで早く琴平が断るとは思っていなかった琴葉は、言った体勢のまま固まっている。
「え」と、疑問の声が口から零れ落ちるが、琴平は腕を組み続け、否定の言葉を訂正しようとしない。
「…………反抗期だ」
「落ち込むのは自由だが、さっさと俺をここに呼んだ理由を言え」
「なんでこんなにも俺に厳しいんだ琴平、もっとお兄ちゃんにも優しくしてくれ…………」
「断る、本題だけ話して早く消えてくれ」
「断る!!! って、待って待って!! 悪かったから戻ろうとしないで!! お兄ちゃん悲しいよ!!!!!!」
歩き去ろうとした琴平の腰にしがみつき、兄の威厳など捨てたように半泣きで引き留めていた。何とか引き剥がそうとするも、琴葉の力は強く、離してくれない。
諦めたように琴平は、しがみついている兄の頭に手を置き、優しく撫で始めた。
「まったく、しっかりと聞くから話してくれ。俺は早く戻らなければならないんだ」
「…………それはいいんだが。なぜ俺は頭を撫でられているんだ?」
「……………………なんでだろうな、なんか癖だ」
「そんな癖なかっただろ? まさか、紅音の頭を今では撫でてあげる仲になったという事か!?」
「今すぐに帰らせろ」
「しっかりと話を聞いてくれるんだろぉぉおおおおお?!?!?!」
根負けした琴平が、最終的に兄の頭をげんこつして腰から離し、無理やり本題に入らせた。
たんこぶが出来ている頭をなでながら話し出した兄の言葉に、琴平は驚愕の表情を浮かべる羽目となる。
「琴平、お前は一体しか式神を持っていないだろ。俺の式神を一体譲ってやるよ、それで主を守れ、命に代えてもな」
水色の髪を翻し、肩には氷の小鳥。眉間に皺を寄せ、険しい顔を浮かべている。足取りは重く、周りを警戒していた。
カサカサと草木が揺れ、風が優しく青年を包み込む。その青年の名前は、月花琴平。一人で行動を禁止されているが、今だけは許してほしいと胸中で呟き歩いていた。
その時、木の影からもう一人、青年が姿を表し琴平へと声をかけた。
「琴平、久しぶりだな。俺の事忘れていないみたいで良かったわ」
「……………………それじゃ、俺はこれで」
「まぁ待て、ここまで来たのは俺に会う為だろ? 俺の式神をしっかりと肩に乗せてきてくれて、お兄ちゃんは嬉しいよ」
琴平と背格好が似ている青年が、煙管を片手に現れた。
髪色は琴平と同じく水色で、顎辺りまでの長さ。髪が吹く度、後ろに広がる。両目とも藍色の瞳、横に伸びる口元からは白い息が吐き出される。
黒い袖なしインナーに、藍色の着物を羽織っていた。灰色のズボンに指先が出る、くるぶし辺りまでの革のブーツ。
琴平が青年を見つけた瞬間、彼は逃げるように方向転換したが、すぐに肩を掴まれ立ち止まる。
顔を青くし、後ろに立っている青年を横目で見た。
「なんの用なんだ、琴葉兄さん」
「そこは昔のように『おにぃちゃぁん』と呼んでくれてもいいんだぞ? 我が弟よ」
「そんな気持ちの悪い呼び方したを記憶ないけどな。それで、早く本題と、何故ここに居るかを教えてくれると助かる」
肩に置かれていた手を払い、腕を組み問いかけた。すると、琴葉は煙管を口に咥え直し、一拍置く。
白い息が吐かれ、彼はゆっくりと口を開いた。
「お前――――紅音とはどこまで進んだ?」
「……………………」
「待て、その式神を出してお前は俺をどうするつもりだ」
琴葉の言葉に、琴平は懐に入れていた自身の式神を出そうとお札を取り出した。その行動にすぐさま止めに入った琴葉に、琴平はため息を吐きながらもお札を懐に戻す。
「早く答えろ」
「まぁ、落ち着け。焦る気持ちもわかるが、気ばかり焦ったところで意味はない。逆に、大事なものを見落とす可能性があるぞ」
笑みを浮かべている琴葉の言葉に、琴平は言葉を詰まらせた。納得する部分もあるため、気まずそうに顔を逸らす。
そんな彼を見て、琴葉は喉を鳴らし右手を前に出す。琴平の肩に乗っている小鳥を受け取った。
「今、俺がここに居る理由から話してやるよ」
小鳥の嘴の下を指で撫でながら、琴葉は優し気に目を細め口を開く。
「水仙家からの要請があったから、俺が直々に出向いたんだ」
「水仙家からだと?」
「さすがに事情を聞いたらほっとくのも可哀想だと思ってな、水神様を守らなければならんのもあるし」
「今、琴葉兄さんが所属している陰陽寮って、もしかして呪いを扱っている…………」
「お、よく知っているな。そうだ、俺が今所属しているのは、呪いを主に扱っている漆家だ。そこで陰陽助をやらせてもらっている」
今の言葉に琴平は頭を抱え、小さな声で「漆家の巫女よ、済まない」と謝罪を零していた。
「それで、琴平は何でこんな所にいるんだ? 安倍家にも要請が行ったのか?」
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「…………反抗期だ」
「落ち込むのは自由だが、さっさと俺をここに呼んだ理由を言え」
「なんでこんなにも俺に厳しいんだ琴平、もっとお兄ちゃんにも優しくしてくれ…………」
「断る、本題だけ話して早く消えてくれ」
「断る!!! って、待って待って!! 悪かったから戻ろうとしないで!! お兄ちゃん悲しいよ!!!!!!」
歩き去ろうとした琴平の腰にしがみつき、兄の威厳など捨てたように半泣きで引き留めていた。何とか引き剥がそうとするも、琴葉の力は強く、離してくれない。
諦めたように琴平は、しがみついている兄の頭に手を置き、優しく撫で始めた。
「まったく、しっかりと聞くから話してくれ。俺は早く戻らなければならないんだ」
「…………それはいいんだが。なぜ俺は頭を撫でられているんだ?」
「……………………なんでだろうな、なんか癖だ」
「そんな癖なかっただろ? まさか、紅音の頭を今では撫でてあげる仲になったという事か!?」
「今すぐに帰らせろ」
「しっかりと話を聞いてくれるんだろぉぉおおおおお?!?!?!」
根負けした琴平が、最終的に兄の頭をげんこつして腰から離し、無理やり本題に入らせた。
たんこぶが出来ている頭をなでながら話し出した兄の言葉に、琴平は驚愕の表情を浮かべる羽目となる。
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