憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
130 / 246
暴走と涙

中途半端

しおりを挟む
 後から、何かが割れる音。振り向くと、俺が張った結界が割られていた。靖弥の手には、銀色に輝く刀。

 刀で、結界を壊したのか? そんな事出来る訳がない。確かに、俺は結界を張るのに慣れているかと問いかけられればそうでもないが、そうだとしてもただの刀で割るなど。どんな力をしているんだ。

「ダズゲデェェェエエアアアアアアアア」

 振り向いた時には、もう遅かった。

 苦悶の表情を浮かべていた少女は、自身の身体をかきむしりボロボロに。肉が見え始めている肌からは、赤黒い血がしたたり落ちていた。手の爪も、真っ赤に染まっている。

 今から呪いを解いても遅い。時間もかかるし、今から最初から呪吸の儀を行うのは、無理だ。

「イヤダァァァァァァァァアァァアアアア!!!!!」

 悲痛の叫び、脳を震え気持ちが悪い。耳を塞いでも意味はなく、嫌な汗が滲み出てくる。体から力も抜けて、眩暈もひどくなってきた。

 気持が悪い、なんで叫び声だけでこんな周りに負荷がかかるんだ。最後の抗い? だとしてもそれは獣とかだろ、人間にこんな事出来る訳がない。今平然としているのは靖弥と半透明の闇命君だけ。琴平も紅音も俺と同じく耳を塞ぎ耐えていた。

「もう、手遅れだ」

 靖弥の言葉と同じタイミングで、叫び声が消えた。

 耳から手を離し、少女を見る。そこには、一人の死体が地面に転がっていた。最後の最後まで抗っていたのか、俺達に手を伸ばした状態で絶命している。
 琴平の式神が氷柱を消したため、ただ一人、死体が転がっているのみ。

 呪いは死体になど興味が無いかのように、肌は黒から白くなっていく。いや、白ではない。肉がはみ出してしまっているところから、赤黒い血が流れ落ち赤く染めていく。

 近付くと、血の匂いが鼻を掠め吐き気が込み上げてきた。

「…………自業自得の結果…………か」

 その場にしゃがみ、頭に手を乗せる。まだ温かい、死んでから時間が経っていないから当たり前だ。でも、ずっと触っていると、どんどん冷たくなっていく。
 風が吹く度、少女の髪を揺らしていた。


 ―――――ザッ ザッ


 後から足音、誰かが近づいて来ている。

「…………」
「待て、それ以上近づかせるわけにはいかない」
「…………」

 琴平と紅音が俺を守るように立ち塞がる。

「目的を教えてもらおうか。あと、あの少女の事もな」
「…………時間がない。目的を果たしたら俺は去る。そこをどけ」
「まずは俺達の話を聞いてもらおうか」
「時間が無いと言っているんだが」
「なら、早く話した方がいいと思うが?」

 琴平と靖弥が平坦な口調で話している。そんな時でも、少女の身体はどんどん冷たくなっていく。

 これは、本当に自業自得の結果なのだろうか。
 この少女には呪いがかけられていた。それはなぜ? なんでこの少女に呪いがかけられていた。誰にかけられた。

 いや、誰かにかけられたとしてもだ。

「今回のはやり過ぎたな」
『っ、優夏?』

 隣に立つ闇命君が俺の名前を呼ぶ。その声には”困惑”が含まれている。

 闇命君の言葉に返す余裕がない。立ち上がり、琴平と紅音の間を通り抜け靖弥の前に。後ろから制止の声が聞こえるが、闇命君が止めてくれたみたい。

 手を伸ばせば届く距離まで移動。靖弥は俺を見下ろし、刀を握り直した。でも、すぐに斬りつけようとしない。

「そこをどいてもらえるか、安倍晴明の子孫よ」
「そんな呼び方をするなんてね、普通に名前で呼んでもいいんだよ? 元の世界に居たみたいにさ、ねぇ? 靖弥」

 何とか口元にだけ笑みを浮かべ、靖弥を見上げる。

「靖弥、何が目的はわからないけど、今回はやり過ぎたね」
「…………」
「今回は靖弥が主に動いていたみたいだけど、蘆屋道満からの命令なの? それともお前の意思で動いていたの?」
「お前には関係ない」
「関係ないわけがないよね。だって、靖弥、記憶あるもんね? 何がしたいのか、目的は何なのか。なぜ、今は蘆屋道満と別行動なのか。じっくり教えてもらいたいな」

 蘆屋道満の名前を出すと、冷静だった靖弥の肩が微かに動いた。

「ねぇ、教えてほしんだけど。今は一体、何を目的として動いているの? 靖弥」
「…………」
「ねぇ、靖弥。俺は、怒っているわけではない、悲しいんだよ。だって、靖弥は本当はこんなことやりたくないんでしょ? これは決めつけとか、俺の理想を押し付けているわけではない。今まで一緒にいたからわかるんだ。だから、教えてほしい。靖弥のやりたい事、お願い」
「…………俺のやりたい事は、蘆屋道満様と同じ」
「嘘だよね。そんなことないはず」
「なぜ、言い切れる」
「まず、お前の行動は全てが中途半端だ。俺を殺せる時はあった。蘆屋道満のやりたい事は俺の体を殺す事。今まで、何回もチャンスはあっただろ。俺も、中途半端な気持ちで戦闘に出向いていたから分かるんだよ」

 最初のヒザマの時とかは、俺も初めての戦場だったとはいえ、覚悟が出来ていなかった。だからこそ、闇命君の身体を危険な目に合わせてしまった。それだけではなく、百目や雷火などの式神も、何回も札を燃やしてしまった。
 覚悟が足りなかった、考えが甘かった。だから、こんな中途半端になってしまった。

「中途半端だから、後悔するんだ。中途半端だから、失敗する。靖弥、お前が俺を本気で殺したいと思っているのなら、人を殺したいと思っているのなら。俺も本気でお前を止める。でも、そうでないなら、俺はお前を助けるために全力でやりたい。お前がやりたいことがわかれば、俺も本気で手を貸す。だから、教えてくれ。靖弥、お前は、何がやりたい、何を考えているんだ!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...