憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
166 / 246
修行

諦めない

しおりを挟む
 水分さんの隣に移動すると、さっそく説明をしてくれた。

「いいか、まずお前は莫大な法力を制御するところから始めるしかない。制御できなければ新しい技もくそもねぇからな」
「よ、よろしくお願いします」

 ペコリとお辞儀をして、顔を上げた。
 見ると、水神様が水分さんの顔横にすり寄っている姿が目に入る。凄く仲がいいな、まるで相棒同士。神様と相棒って、すごすぎる。

「まず、この湖の水を全て掬い出せ」
「…………????」
「湖の中の水を全て掬いだせ」
「聞こえていますので大丈夫です。意味が理解出来ていないだけです」
「どこをかみ砕けばいい」
「掬いあげるの所ですね」
「法力を制御し、湖全てに張り巡らせ、それを浮かび上がらせるんだ。わかったか」
「あぁ、なるほど。やることはわかりました無理です」
「無理を可能にするのが修行だ」

 いや、無理無理無理無理!!!!!!!! こんなの本当に無理だって!! 無理だって!!! 
 どうやってだよ、何をイメージすればいいの!? 絶対に静かな水をイメージだけじゃ無理だよね!?  

 いや、その前に。式神すら出せないのにこれをコントロールするの!? 確実に無理なんだよ、誰か助けて…………。

『やるしかないでしょ。馬鹿言ってないで、早く動いて』
「はい…………」

 闇命君は空気を読んでか、肩から降りて半透明に。離れて紅音の隣に移動した。
 これだけでなんとなく不安になるんだけど、闇命君という絶対的安心感が今ここで現れたよ。

「俺がひとまず手本を見せる。同じようにやれ」
「マジかよぉ…………」

 いや、まず見よう。俺がこれからやらなければならない事をしっかりと目に映し、イメ―ジを固めよう。

 水分さんは湖に目を移し、右手の平を上に向け前に出す。誘うような手の動きを見せ、動かなくなってしまった。

 集中しているのはわかる、気配も変わった。なんか、気持ちが跳ね上がるのを感じる。これから目の前で起こる何かを、俺は楽しみにしているんだ。
 紅音の方にいる闇命君も、目を輝かしているようにも見えるし、この跳ねあがるような気持ちはもしかしたら闇命君のものかもしれない。

 水分さんが動かなくなってから数分後、湖に変化が…………。

 この場にいる人たちは全員、湖に注目し始める。

 透き通るような湖の水の中心が、ブクブクと泡が浮かび上がり、波紋が広がる。もしかして、本当に湖の水全て浮かび上がらせるつもりか!?

「―――――っ、はっ!!」

 水分さんが気合の声を漏らすのと同時に、湖の水が大きな音と水しぶきを上げ動き出す。
 水の竜巻のようにいくつもの水の柱がすくいあげられ、空中に一つの水の塊を作りだした。

「な、何、あれ…………」

 湖は、もう湖と呼べる状態ではない。水が、一滴もなくなっている。水分さんがすべての水を空中に浮かび上がらせやがった。

 水分さんの方を見ると、今ではもう冷静に上を見上げていた。

「水分さん」
「見てわかったと思うが、これをやってもらう」
「無理です」
「今はな。だが、お前の本体が持っている法力なら、これくらいは簡単だ。俺もそこまで少ない方ではないが、多いわけでもない。そんな俺がここまでできているんだからな」

 そんなことを言われても困るのですが。

「法力が多ければ有利に戦えるとは一概には言えない。今のお前がいい例だな」
「ぐはっ」

 心に、大きな傷を入れられました。

「莫大な法力を持っている人の最大の弱点は、制御できないことだ。だが、逆に言えば、制御さえできれば、無敵という事になるだろう」
「え、そういう考えになるの?」
「そういう考えの方が楽しいだろ。辛く苦しいものが修行という奴らはおかしい、俺は無理だな。やることが鬼畜なのなら、少しでも他の所で楽しみが欲しい」
「子供ですか」
「少年の心は大事にする主義だ」
「際ですか…………」

 でも、さっきの水分さんの言葉、一理あるな。
 莫大だからこそ、法力を扱うことは難しい。それでつぶれてしまう人が多い。これはゲームで例えると、高難易度のステージをクリアしたことにより、素敵なアイテムを手に入れる事が出来る。みたいな感じかな。

 莫大な魔力を完璧に制御出来たら、最強。最強、か…………。

「どうする」
「やります」
「百八十度意見が変わったな」
「最強に俺はなります」
「少年の心は大事だよな」
「遠回しに俺が子供と言いたいらしいですね」
「んじゃ始めるぞ」
「はい」

 やるしかない。ここまで来たら、やるぞ、俺はやるぞ絶対に。

「すぅ~はぁ~」

 湖の淵にいる水分さんの隣に移動して息を整える。両手を前に出し、法力を手のひらに意識。

 体の底から湧き上がる感覚。このまま上手く、湖の水を掬い上がらせて――……


 ――――――――――バチバチ


 ん? 火花??


 ――――――――――バチッ!!!!!!!


「どわっ!!!!」

 大きな火花が俺の手から音を立て弾かれる。咄嗟に力を込める事が出来ず、後ろに飛ばされてしまった。
 お尻から地面に落ちて、思いっきりぶつけた……痛いよ。

「今、何故火花が起こったかわかるか?」
「法力を爆発的に手から放出させてしまったからじゃないの?」
「半分以上はそれであっている。あともうひと声だ」

 もうひと声か、なんだろう。

「放出する時、ただ出せばいいというものではない」
「出すだけではない?」
「そうだ。ただ出すだけなのなら、莫大な法力を持っていなければ誰にでも出来る。だが、そこに制御も加えさせなければ話にならない。四方に飛び散っている法力を一か所に集中するんだ。そうすれば、制御可能」

 なるほど。今はただ放出しているだけだから四方に跳び散って、それが火花という形で現れているという事か。なら、まとまっているようなものをイメージすればいいのかな。

 立ち上がり、服についた土を払って再度湖の淵に。

 さっきと同じく、両手を前に出し法力を手のひらに集中。火花の音が聞こえる、このままではさっきと同じだ。

 まとめろ、一か所に、集中。


 ―――――バチバチ


 駄目だ、火花が出ている。湖の水を動かすんだ、集中。一か所に、集中しろ。


 ――――――――――バチッ!!!!


「うわっ!!! いって!!!」

 またしても飛ばされ、しりもち。
 もう!!! もうもうもう!!!!! 腹が立つ!!!!!

「そう簡単に出来るものではない。おめぇだけじゃねぇから安心しろ」
「ぐぬぬ…………」

 絶対に、制御できるようにする。もう、誰も死なせるわけにはいかないんだ、式神を殺させないようにするんだ。
 一人でも、戦えるようにしないといけないんだ、俺は諦めてなるものか。

「もう一回!!!!」

 同じく集中、でも火花が弾かれる。それの繰り返しだ。
 何度も何度も弾かれ進歩がない。何がダメなのか、意識だけではだめという事なのか。

『優夏』
「なに?」
『無意味に繰り返しても意味はないよ。何がダメなのかを明確にしてからやるんだ』
「何がダメなのか…………」

 でも、イメージはしている。一箇所に集中するようにもしてる。

 出来ない。これは、感覚を掴まなければいけないのではないか。でも、そもそも出来ていないから感覚を手に入れるも何もないのか。

 どうすればいいんだ???

 んーーーーーーーーーーーーーわかんない。

『馬鹿なの?』
「…………すいません」
『まぁ、初めてだから仕方がないよ。でも、さすがにこれは教える訳にはいかない。自分で頑張って』
「え」

 ここは教えてくれるフラグだったじゃん、なんで教えてくれへんの? うそん。

『何でもかんでも教えたらダメだって、父さんが言ってた。だから、ここからは一人で頑張って。辛くなったら諦めてもいいよ。僕の法力の制御は、普通の感覚では出来ないからね』

 少し、諦めている闇命君。もしかして、闇命君自身も今の力を制御するのに結構大変だったのかな。
 いや、確実に辛かっただろう。だから、無理強いはしないということか。でも、辛いからってやめるわけにはいかないんだよ俺。今回も本当は諦める訳にはいかない。

「諦めない」
『…………』
「闇命君、俺を信じて。絶対に諦めないし、強くなる。絶対に!!!」

 諦めてなるものかーーーーーー!!!!!!!!! うおおおぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!

『うるさい』
「声に出していないんだけどね」
『うるさい』
「ごめんなさい」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...