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最終決戦
臨戦態勢
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「紅音、殺すのは前提として、どのようにしますか。私達は式神などは持っておりません。相手が陰陽師なのでしたら物理にも限界があります、いかがいたしますか」
「…………殴る」
「私の話を聞いていましたか? 物理には限界があると言ったのですが」
「殴る以外に出来ることは、ワタシにはない」
紅音の返答に、夏楓は思わず彼女を凝視。大きく息を吐き、頭を抱えた。
二人がそのような話をしている時でも、静稀は自身の美しさに酔いしれており、動きを見せない。
「ひとまず、あのお方がどのような式神を持っており、どのように戦闘をするのかを知りたいですね」
「それなら、攻撃を仕掛けなければあいつだと、多分動かんぞ」
「そうですよねぇ。紅音、武器を作ることが出来ませんが、できそうですか?」
「問題ない」
「わかりました。私もできる範囲でお手伝いをします。無理だけはしないでください」
「わかっている」
二人は目を合わせ、頷きあう。一歩、紅音は前に右足を出し、拳をボキボキと鳴らし準備を整えた。
紅音の様子に、静稀はやっと目を向けた。首を傾げ、顎に手を添えた。
「もしかしてなんだけど、俺とやり合う気なのかな? それはあまりお勧めはしたくないなぁ。俺は女性を攻撃したくないし、殺したくない。できれば話し合いがしたいなぁ」
「話し合いとは、いったい何を話す気だ。ワタシ達は話すことなど何もない」
「それはもちろん決まっているじゃないか。君達の趣味や好きな食べ物、苦手なものなども把握しなければならないねぇ。これから共に過ごすのだから、これはしっかりとお互いのためにも話しあっ――……」
――――――――シュッ
静稀の言葉を最後まで聞かず、我慢の限界に達した紅音が距離を詰め、彼の顔に拳をふるった。
だが、静稀はすぐに反応、上半身を横にそらし、拳を回避。眉を下げ、やれやれと呆れたように息を吐いた。
避けた彼に、続けて紅音は足を蹴り上げる。それすらすぐに反応、静稀は腕で受け止め無傷。逆に足首を掴まれてしまい、紅音は動けなくなった。
「っ!」
「まったく、足癖の悪い女性も嫌いではないからいいのだけれどね。まだ、俺のことを詳しく知らないというのに、ここまで本気の蹴りを繰り出すなんて。まったく、君と共に過ごした方は、荒くれものだったみたいだねぇ。悲しいよぉ」
何とか離れようとするが、紅音の足首を掴む力が強く、離れることができない。夏楓が助けに入ろうと駆け出すが、それすら叶わなくなった。
顔を俯かせ、本で顔を隠していた静稀が一瞬、顔を上げ駆け出した夏楓を見る。
その眼で見られた夏楓は、体が拘束されたように動かなくなってしまった。
「まったく、俺は穏便に終わらせようと言っているのに、なぜ話を聞いてくれないのだろうか。悲しいなぁ、悲しいなぁ」
彼の眼は闇が広がり、何も映していない。見ていると吸い込まれ、閉じ込められる。そのような思考が勝手に頭を巡り、迂闊に体を動かすことが出来なくなった。
「本当に、悲しいよ、安倍家の者よ」
――――――ギリッ
「っ!」
紅音の足を掴んでいる静稀の手に力が籠められる。ぎりっと爪が食い込み、血が流れてしまった。
紅音は顔を歪めだが、痛みにより逆に体が動くようになった。
「っ、放せ!!!」
「おっと、危ない危ない」
左足を軸にし、掴まれている足を振り払う。やっと拘束から解放された紅音は後ろに下がり、夏楓の隣に立った。
「大丈夫ですか、紅音」
「問題ない。骨も折れていない、まだ、戦える」
夏楓が紅音の掴まれていた足を見ると、爪が食い込んでしまっていたため、今も少し血が流れている状態だった。
一瞬眉を下げたが、すぐに気を取り直し悲しんでいる静稀を見る。
「…………やはり、私達を狙ったのは、蘆屋道満の差し金ですよね? 最初に言っていた”偶然罠に引っかかった”は嘘なのでしょう?」
「へぇ、聞いているけど、もう確信しているような口振りだね。最初から警戒されているみたいだし、もう仕方がないかなぁ」
眉を下げ、困ったような笑みを浮かべる静稀は、手を下げ二人を黒い瞳で見た。
「俺は君達の長である安倍闇命を引っ掛けたかったのだけれど、さすがに気配だけではどうしてもうまくできなかったみたいでねぇ。というか、気配が少々感じにくかったのだけれど、本当に君達が今まで行動していたのは、闇命と呼ばれている者なのかな。本当に天才と呼ばれている、安倍晴明の子孫なの? 気配が弱いような気がするのだけれど?」
「っ、ふざけるな! 今、闇命様を侮辱しっ――……」
「待ってください、落ち着いてください紅音」
夏楓が怒りを噴出した紅音を諫め、冷静に静稀の言葉に耳を傾けた。
「なるほど、気配だけで人を見分け、罠にかからせていたのですね。それだと、確かに今の闇命様をとらえるのは難しいでしょう」
「それはなんでかな?」
「今の闇命様は、闇命様ではないからですよ」
ニコッと笑みを浮かべ、夏楓は余裕そうに言い切った。
静稀は彼女の言葉の意味が分からず首を傾げているが、紅音はわかったらしく口を開く。だが、夏楓が紅音の口を冷静に塞いだ。
余計な情報を出させないため、紅音には黒い笑みを向け『黙っていてください』と無言の圧を与える。
夏楓の圧に負け、紅音は冷や汗を流し何度も頷いた。
「んー、よくわからないけれど、なにか種があるということだね。詳しく引継ぎをされていなかったけれど、そこに穴があったか。仕方がないね。今は君の主より、君達をどうにかする方が先かな」
言うと、今まで閉じていた本を開き構える。
相手が臨戦態勢に入ったことを察すると、二人もすぐに動かせるように構えをとった。
「話し合いが出来ないのなら仕方がない、やろうか」
「…………殴る」
「私の話を聞いていましたか? 物理には限界があると言ったのですが」
「殴る以外に出来ることは、ワタシにはない」
紅音の返答に、夏楓は思わず彼女を凝視。大きく息を吐き、頭を抱えた。
二人がそのような話をしている時でも、静稀は自身の美しさに酔いしれており、動きを見せない。
「ひとまず、あのお方がどのような式神を持っており、どのように戦闘をするのかを知りたいですね」
「それなら、攻撃を仕掛けなければあいつだと、多分動かんぞ」
「そうですよねぇ。紅音、武器を作ることが出来ませんが、できそうですか?」
「問題ない」
「わかりました。私もできる範囲でお手伝いをします。無理だけはしないでください」
「わかっている」
二人は目を合わせ、頷きあう。一歩、紅音は前に右足を出し、拳をボキボキと鳴らし準備を整えた。
紅音の様子に、静稀はやっと目を向けた。首を傾げ、顎に手を添えた。
「もしかしてなんだけど、俺とやり合う気なのかな? それはあまりお勧めはしたくないなぁ。俺は女性を攻撃したくないし、殺したくない。できれば話し合いがしたいなぁ」
「話し合いとは、いったい何を話す気だ。ワタシ達は話すことなど何もない」
「それはもちろん決まっているじゃないか。君達の趣味や好きな食べ物、苦手なものなども把握しなければならないねぇ。これから共に過ごすのだから、これはしっかりとお互いのためにも話しあっ――……」
――――――――シュッ
静稀の言葉を最後まで聞かず、我慢の限界に達した紅音が距離を詰め、彼の顔に拳をふるった。
だが、静稀はすぐに反応、上半身を横にそらし、拳を回避。眉を下げ、やれやれと呆れたように息を吐いた。
避けた彼に、続けて紅音は足を蹴り上げる。それすらすぐに反応、静稀は腕で受け止め無傷。逆に足首を掴まれてしまい、紅音は動けなくなった。
「っ!」
「まったく、足癖の悪い女性も嫌いではないからいいのだけれどね。まだ、俺のことを詳しく知らないというのに、ここまで本気の蹴りを繰り出すなんて。まったく、君と共に過ごした方は、荒くれものだったみたいだねぇ。悲しいよぉ」
何とか離れようとするが、紅音の足首を掴む力が強く、離れることができない。夏楓が助けに入ろうと駆け出すが、それすら叶わなくなった。
顔を俯かせ、本で顔を隠していた静稀が一瞬、顔を上げ駆け出した夏楓を見る。
その眼で見られた夏楓は、体が拘束されたように動かなくなってしまった。
「まったく、俺は穏便に終わらせようと言っているのに、なぜ話を聞いてくれないのだろうか。悲しいなぁ、悲しいなぁ」
彼の眼は闇が広がり、何も映していない。見ていると吸い込まれ、閉じ込められる。そのような思考が勝手に頭を巡り、迂闊に体を動かすことが出来なくなった。
「本当に、悲しいよ、安倍家の者よ」
――――――ギリッ
「っ!」
紅音の足を掴んでいる静稀の手に力が籠められる。ぎりっと爪が食い込み、血が流れてしまった。
紅音は顔を歪めだが、痛みにより逆に体が動くようになった。
「っ、放せ!!!」
「おっと、危ない危ない」
左足を軸にし、掴まれている足を振り払う。やっと拘束から解放された紅音は後ろに下がり、夏楓の隣に立った。
「大丈夫ですか、紅音」
「問題ない。骨も折れていない、まだ、戦える」
夏楓が紅音の掴まれていた足を見ると、爪が食い込んでしまっていたため、今も少し血が流れている状態だった。
一瞬眉を下げたが、すぐに気を取り直し悲しんでいる静稀を見る。
「…………やはり、私達を狙ったのは、蘆屋道満の差し金ですよね? 最初に言っていた”偶然罠に引っかかった”は嘘なのでしょう?」
「へぇ、聞いているけど、もう確信しているような口振りだね。最初から警戒されているみたいだし、もう仕方がないかなぁ」
眉を下げ、困ったような笑みを浮かべる静稀は、手を下げ二人を黒い瞳で見た。
「俺は君達の長である安倍闇命を引っ掛けたかったのだけれど、さすがに気配だけではどうしてもうまくできなかったみたいでねぇ。というか、気配が少々感じにくかったのだけれど、本当に君達が今まで行動していたのは、闇命と呼ばれている者なのかな。本当に天才と呼ばれている、安倍晴明の子孫なの? 気配が弱いような気がするのだけれど?」
「っ、ふざけるな! 今、闇命様を侮辱しっ――……」
「待ってください、落ち着いてください紅音」
夏楓が怒りを噴出した紅音を諫め、冷静に静稀の言葉に耳を傾けた。
「なるほど、気配だけで人を見分け、罠にかからせていたのですね。それだと、確かに今の闇命様をとらえるのは難しいでしょう」
「それはなんでかな?」
「今の闇命様は、闇命様ではないからですよ」
ニコッと笑みを浮かべ、夏楓は余裕そうに言い切った。
静稀は彼女の言葉の意味が分からず首を傾げているが、紅音はわかったらしく口を開く。だが、夏楓が紅音の口を冷静に塞いだ。
余計な情報を出させないため、紅音には黒い笑みを向け『黙っていてください』と無言の圧を与える。
夏楓の圧に負け、紅音は冷や汗を流し何度も頷いた。
「んー、よくわからないけれど、なにか種があるということだね。詳しく引継ぎをされていなかったけれど、そこに穴があったか。仕方がないね。今は君の主より、君達をどうにかする方が先かな」
言うと、今まで閉じていた本を開き構える。
相手が臨戦態勢に入ったことを察すると、二人もすぐに動かせるように構えをとった。
「話し合いが出来ないのなら仕方がない、やろうか」
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