17 / 42
カラス天狗
氷鬼先輩と雪女
しおりを挟む
『これから何をしようと考えているかわからぬが、我の視界を晴れさせたのはそちらの落ち度だったな。視野が広くなり、我も動きやすくなった』
「そのようなこと、今の私には関係ありませんよ。こちらは、私が出せる全力で、あなたを倒させていただきます」
カラス天狗は、両手でしゃくじょうを構え、司はお札に力を込め始める。
「今からここは氷点下、せいぜい凍らないように気を付けてくださいね。あなたのような、見た目だけはいい男は、この子の大好物ですよ―――来なさい、ヒョウリ」
お札から冷気があふれ、一つに集まる。
風でなびく髪を抑えながら、司は涼香にアイコンタクト。すぐに何を言いたいのか察した涼香は、すぐに詩織の前に立った。
「あ、あの。氷鬼先輩は大丈夫なの?」
「大丈夫よ、安心して。今の彼を止められるものなど、この場にいないわ。それがたとえ、カラス天狗だろうとね」
勝ち誇ったように言い切った涼香に、詩織は眉を下げながら司を見る。
(…………何だろう。不安がまったくないわけじゃないけど、今の氷鬼先輩なら、本当に大丈夫な気がする)
詩織が祈るように胸元で手を組む。
(どうか、神様。氷鬼先輩を、守ってください)
心中で祈っている中、司は準備が整い、口元に笑みを浮かべていた。
「準備は整いました。さぁ、ショータイムの開始です」
冷気は司の言葉と同時に弾け、中からは一人の美しい女性が姿を現した。
腰まで長い水色の髪に、白い着物に水色の帯。つり目の青い瞳は、目の前にいるカラス天狗を見据えていた。
『まさか、氷のあやかしの中でも上級者しか扱えない式神、雪女を所持していたとはな』
「私は、これでも小さい頃から天才と呼ばれて慕われていたので。力も抑えられないくらい強かったし、これくらいは簡単ですよ」
お札を握っていた司の手は水色に変色している。
雪女を出した反動で、司の身体も冷たくなっていた。
『そう口では言っているが、長くはもたなそうだぞ。大丈夫か?』
「そんなことはありませんよ、余裕です」
口では余裕と言い切っているが、体は冷たく、カタカタとかすかにふるえている。
カラス天狗の言う通り、時間はなさそう。
「それでは、そちらさんが来ないのであれば、こちらから行かせていただきます。ヒョウリ、私達をおそい、命を狙ったカラス天狗を凍らせなさい」
お札を持っている水色に染った手をカラス天狗に向け、ヒョウリに言い放った。
『了解いたしました、我が主。見た目は悪くありません、私のコレクションに加えさせていただくのも良いでしょう』
フフッとヒョウリが笑うと、冷気が辺りに広がり、司の後ろにいる涼香と詩織の身体をふるわせた。
『こしゃくな。我を甘く見るでないぞ、こあっぱが』
――――シャラン
カラス天狗が大きくしゃくじょうを振ると、ひときわ大きな音が鳴りひびいた。
瞬間、この場にいる全員が体にしびれるような感覚が走り、力が抜ける。
「な、何が!?」
「やってくれたわね……。私がせっかく解いたのに、また、自分有利な結界を張ったのね」
(え、結界? 結界って、私達を閉じ込めるだけの物じゃないの? それを今張ったところで、誰も逃げる訳ない。結界を張ったところで意味ないんじゃないの?)
力が抜け、その場に座り込んでしまった詩織は、地面に手を尽きながら考えた。
そんな彼女の肩を支え、険しい顔を浮かべる涼香。
二人の緊張など気にせず、司とヒョウリは何故か周りを警戒し始めた。
『主、周りをすべて凍らせ、おびき出しますか?』
「............いえ。ヒョウリなら相手が動き出してからでも対処可能でしょう。こちらが手の内をさらし過ぎるのは避けたいです」
『信じていただけて光栄です。了解いたしました』
二人の会話など聞こえていないカラス天狗は、しゃくじょうを再度振る。
――――シャラン
きれいな音がひびくと、カラス天狗の影が司へと伸び始めた。
そこから、カラス天狗と同じ形をしている影が数体、現れた。
「なるほど、影を操る空間を作り出したという訳ですね。確かにこれは、自分で結界を作り、太陽の光を無効にしなければなりません」
影が、黒いしゃくじょうのような形のものを持ち、一斉に司とヒョウリにおそい掛かった。
「ヒョウリ、凍らせなさい」
『了解いたしました、ご主人様』
ヒョウリが司の言葉に答えるように、口元を抑えていた手をはなし、青い唇を開いた。
「ふぅぅぅう」
ヒョウリは、白い息を口から吹く。
息は、すべての影で作られたカラス天狗を包み込んだ。
『なっ、まさか……』
白い息に包まれた影達は、何もできないまま凍らされ、動かなくなった。
動こうともがいているのか、氷がピキピキと音を鳴らすだけ。
「雪女の氷は、普通の火でも溶かすことが出来ず、どんなに力がある者でも簡単にはこわせない。そんなかたい氷を、あなたはこわせますか?」
勝ち誇ったように問いかける司に怒りが芽生え、しゃくじょうを握るカラス天狗の手に力が込められる。
『我をぐろうするか。よかろう、今すぐ、ここで、葬ってやるわい!!』
叫ぶと、氷に動きを封じ込められていた影達が、氷もろとも弾けこなごなとなった。
次に何が来るのか警戒していると、カラス天狗自らが上空に移動し、上から下にいる者達を見下ろした。
『これだけはどうしても出したくなかったが、仕方がない。背に腹は代えられん』
カラス天狗は自身の右目を覆い隠す。
何が始まるのかと見ていた司だったが、いち早くカラス天狗の異変に気付き、詩織達に叫んだ。
「今すぐ、出来るだけ遠くに逃げろぉぉおお!!」
「そのようなこと、今の私には関係ありませんよ。こちらは、私が出せる全力で、あなたを倒させていただきます」
カラス天狗は、両手でしゃくじょうを構え、司はお札に力を込め始める。
「今からここは氷点下、せいぜい凍らないように気を付けてくださいね。あなたのような、見た目だけはいい男は、この子の大好物ですよ―――来なさい、ヒョウリ」
お札から冷気があふれ、一つに集まる。
風でなびく髪を抑えながら、司は涼香にアイコンタクト。すぐに何を言いたいのか察した涼香は、すぐに詩織の前に立った。
「あ、あの。氷鬼先輩は大丈夫なの?」
「大丈夫よ、安心して。今の彼を止められるものなど、この場にいないわ。それがたとえ、カラス天狗だろうとね」
勝ち誇ったように言い切った涼香に、詩織は眉を下げながら司を見る。
(…………何だろう。不安がまったくないわけじゃないけど、今の氷鬼先輩なら、本当に大丈夫な気がする)
詩織が祈るように胸元で手を組む。
(どうか、神様。氷鬼先輩を、守ってください)
心中で祈っている中、司は準備が整い、口元に笑みを浮かべていた。
「準備は整いました。さぁ、ショータイムの開始です」
冷気は司の言葉と同時に弾け、中からは一人の美しい女性が姿を現した。
腰まで長い水色の髪に、白い着物に水色の帯。つり目の青い瞳は、目の前にいるカラス天狗を見据えていた。
『まさか、氷のあやかしの中でも上級者しか扱えない式神、雪女を所持していたとはな』
「私は、これでも小さい頃から天才と呼ばれて慕われていたので。力も抑えられないくらい強かったし、これくらいは簡単ですよ」
お札を握っていた司の手は水色に変色している。
雪女を出した反動で、司の身体も冷たくなっていた。
『そう口では言っているが、長くはもたなそうだぞ。大丈夫か?』
「そんなことはありませんよ、余裕です」
口では余裕と言い切っているが、体は冷たく、カタカタとかすかにふるえている。
カラス天狗の言う通り、時間はなさそう。
「それでは、そちらさんが来ないのであれば、こちらから行かせていただきます。ヒョウリ、私達をおそい、命を狙ったカラス天狗を凍らせなさい」
お札を持っている水色に染った手をカラス天狗に向け、ヒョウリに言い放った。
『了解いたしました、我が主。見た目は悪くありません、私のコレクションに加えさせていただくのも良いでしょう』
フフッとヒョウリが笑うと、冷気が辺りに広がり、司の後ろにいる涼香と詩織の身体をふるわせた。
『こしゃくな。我を甘く見るでないぞ、こあっぱが』
――――シャラン
カラス天狗が大きくしゃくじょうを振ると、ひときわ大きな音が鳴りひびいた。
瞬間、この場にいる全員が体にしびれるような感覚が走り、力が抜ける。
「な、何が!?」
「やってくれたわね……。私がせっかく解いたのに、また、自分有利な結界を張ったのね」
(え、結界? 結界って、私達を閉じ込めるだけの物じゃないの? それを今張ったところで、誰も逃げる訳ない。結界を張ったところで意味ないんじゃないの?)
力が抜け、その場に座り込んでしまった詩織は、地面に手を尽きながら考えた。
そんな彼女の肩を支え、険しい顔を浮かべる涼香。
二人の緊張など気にせず、司とヒョウリは何故か周りを警戒し始めた。
『主、周りをすべて凍らせ、おびき出しますか?』
「............いえ。ヒョウリなら相手が動き出してからでも対処可能でしょう。こちらが手の内をさらし過ぎるのは避けたいです」
『信じていただけて光栄です。了解いたしました』
二人の会話など聞こえていないカラス天狗は、しゃくじょうを再度振る。
――――シャラン
きれいな音がひびくと、カラス天狗の影が司へと伸び始めた。
そこから、カラス天狗と同じ形をしている影が数体、現れた。
「なるほど、影を操る空間を作り出したという訳ですね。確かにこれは、自分で結界を作り、太陽の光を無効にしなければなりません」
影が、黒いしゃくじょうのような形のものを持ち、一斉に司とヒョウリにおそい掛かった。
「ヒョウリ、凍らせなさい」
『了解いたしました、ご主人様』
ヒョウリが司の言葉に答えるように、口元を抑えていた手をはなし、青い唇を開いた。
「ふぅぅぅう」
ヒョウリは、白い息を口から吹く。
息は、すべての影で作られたカラス天狗を包み込んだ。
『なっ、まさか……』
白い息に包まれた影達は、何もできないまま凍らされ、動かなくなった。
動こうともがいているのか、氷がピキピキと音を鳴らすだけ。
「雪女の氷は、普通の火でも溶かすことが出来ず、どんなに力がある者でも簡単にはこわせない。そんなかたい氷を、あなたはこわせますか?」
勝ち誇ったように問いかける司に怒りが芽生え、しゃくじょうを握るカラス天狗の手に力が込められる。
『我をぐろうするか。よかろう、今すぐ、ここで、葬ってやるわい!!』
叫ぶと、氷に動きを封じ込められていた影達が、氷もろとも弾けこなごなとなった。
次に何が来るのか警戒していると、カラス天狗自らが上空に移動し、上から下にいる者達を見下ろした。
『これだけはどうしても出したくなかったが、仕方がない。背に腹は代えられん』
カラス天狗は自身の右目を覆い隠す。
何が始まるのかと見ていた司だったが、いち早くカラス天狗の異変に気付き、詩織達に叫んだ。
「今すぐ、出来るだけ遠くに逃げろぉぉおお!!」
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜
巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。
みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。
ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。
ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。
イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!?
とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。
イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。
凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。
そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。
一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。
*2024.8/30、完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる