18 / 42
カラス天狗
氷鬼先輩の本気
しおりを挟む
司が叫ぶと同時に、カラス天狗から黒いもやのようなものが突如、いきおいよく噴射された。
「何!?」
詩織がおどろきの声を上げると、司が口を手で押さえながら詩織と涼香を囲うように結界を張った。
「結!!」
黒いもやは、たちまち司の姿を覆いかくす。
二人は彼の出した結界により守られ無事だが、司の姿が見えなくなり、不安そうに周りを見回す。
「何が起きたの…………」
「わからないわ。でも、さっきの司の表情からして、このもやは普通ではないことは確か。私達を守ることに必死で、自分の守りをおろそかにしていなければいいのだけれど――それは問題なさそうね」
何かを見つけたのか、涼香は安心したように息を吐いた。
「え、問題なさそうって…………」
「見てみなさい」
(見てみなさいと言われても、結界の外は黒いもや。見たくても、先輩の姿を見つけることが出来ない)
目を凝らし、詩織がもやの中を見ていると、かすかに何かが見えた。
それは結界とはまた違う、でも透明な箱。キラキラと輝いている。
ずっと見ていると、それが氷なのだと詩織はわかった。
(こお、り? 中にいるのって、氷鬼先輩!?)
氷を四角く作り出し、中で司がしゃがみこんでいた。
となりには、手で口元を隠しているヒョウリの姿。冷たい青い瞳は、上空にいるカラス天狗を見ていた。
「このもやは、おそらく毒ガスと同じ成分を持つわ。人間である私達が少しでも吸っていたら、死んでいたかもしれないわね」
「え、そんな危険なものを……?」
「相手は、カラス天狗よ。ここまでのことは平然とやるわ。主である大天狗の為なら喜んで命をささげる者達だもの」
もやに囲まれている司は、身動きが取れない。
氷で結界を張っているが、それもいつまで持つかわからない。
『ご主人様、大丈夫ですか?』
「とっさにヒョウリが私に氷の結界を張ってくれたおかげで無傷ですよ」
『それなら良かったです。ですが、あの者を凍らせるのは、少々むずかしくなったかと』
「そうですね。どうするか、考え直さないといけませんね」
司もヒョウリの目線を追うように上を向く。
そこにいるのは、間違いなくカラス天狗。だが、見た目が変わっていた。
今までは人間の姿が残っていたカラス天狗だが、今はもうそんな面影はない。
足は鳥のように細く、三本指になっている。手は翼にくっつき黒く、マスクだったはずの口は本物のくちばしとなっていた。
「あれが、カラス天狗の本来の姿」
『そのようです。体も一回り大きくなっておりますね』
ヒョウリが言うように、体も先ほどより大きい。
人間より大きくなったカラスが、服を着て司達を見下ろしている。
詩織はおどろきのあまり口をあんぐり。涼香は眉間にしわを寄せ、むずかしそうな顔でカラス天狗を見上げた。
『これが本来の我だ。残念だったな、人間よ。我にこの姿を出させたことはほめてやろう。だがな、それだけだ。ぬしは今、ここで死ぬ。我にこの姿を出させてしまったことによってな』
勝ちを確信したような口ぶりに、司は舌打ちをこぼした。
「確かに、もう少し早く倒せばよかったと思っていますよ。ですが、これはこれで情報を手に入れられたとプラスに考えさせていただきます」
『情報? どうせここでぬしは死ぬというのに。情報を抜き取ったところで意味はないだろう』
司とヒョウリはお互い目を合わせ、うなずき合う。
何かを企む二人だが、カラス天狗は気づかない。自分ならこんな人間など簡単に倒せる、そう過信していた。
そこに、隙が生まれる。
今まで、カラス天狗は今の姿になって負けたことがない。いつも一瞬で終わらせていた。
そんな記憶が、今のカラス天狗の判断をにぶらせる。
「あるよ。だって、勝つのは僕だからね」
口調が元に戻る。
強気に笑い、カラス天狗を見上げた。
『なに?』
「ヒョウリを出して、僕は今まで負けたことがない。それだけ、こいつは強い。悪いが、負けるのはお前だ、カラス天狗」
言うと、ヒョウリが上空にいるカラス天狗へと向かって行く。だが、それは好都合だと言うように、カラス天狗はしゃくじょうを振りかぶった。
『おろかな』
ヒョウリが目の前まで来ると、カラス天狗がしゃくじょうをななめに振り下ろす。
その直前、ヒョウリが冷気と共に姿を消した。
次に姿を現したのはカラス天狗の後ろで、振り向くと同時に切りつけた。だが、先程と同じく姿を消し、かわされる。
『幻覚か?』
「氷は相手をゆがんだ姿で映し出す。本物だと思っても、それは偽物。お前に、本物を引き当てることは可能かな?」
ばかにするような司の口調に、カラス天狗の怒りがふつふつとわき上がり、顔を赤くした。
『本物がわからぬのなら、全体へ攻撃すればよい』
カラス天狗が右手を前に出すと、どこから黒いもやを噴射。
今より、辺りの空気が毒におかされる。
「―――なるほどな」
司を守る氷が解け始めた。
簡単には溶かすことが出来ない氷が溶け始めたことで、カラス天狗はほくそ笑む。
「あー、うん。しょうがない。まぁ。毒には耐性がある。僕も加勢しようか」
――――――――パリーン
司を守っていた結界が音を立て崩れた。
同時に、彼の背中には、氷のきれいな翼《つばさ》が作られた。
「何!?」
詩織がおどろきの声を上げると、司が口を手で押さえながら詩織と涼香を囲うように結界を張った。
「結!!」
黒いもやは、たちまち司の姿を覆いかくす。
二人は彼の出した結界により守られ無事だが、司の姿が見えなくなり、不安そうに周りを見回す。
「何が起きたの…………」
「わからないわ。でも、さっきの司の表情からして、このもやは普通ではないことは確か。私達を守ることに必死で、自分の守りをおろそかにしていなければいいのだけれど――それは問題なさそうね」
何かを見つけたのか、涼香は安心したように息を吐いた。
「え、問題なさそうって…………」
「見てみなさい」
(見てみなさいと言われても、結界の外は黒いもや。見たくても、先輩の姿を見つけることが出来ない)
目を凝らし、詩織がもやの中を見ていると、かすかに何かが見えた。
それは結界とはまた違う、でも透明な箱。キラキラと輝いている。
ずっと見ていると、それが氷なのだと詩織はわかった。
(こお、り? 中にいるのって、氷鬼先輩!?)
氷を四角く作り出し、中で司がしゃがみこんでいた。
となりには、手で口元を隠しているヒョウリの姿。冷たい青い瞳は、上空にいるカラス天狗を見ていた。
「このもやは、おそらく毒ガスと同じ成分を持つわ。人間である私達が少しでも吸っていたら、死んでいたかもしれないわね」
「え、そんな危険なものを……?」
「相手は、カラス天狗よ。ここまでのことは平然とやるわ。主である大天狗の為なら喜んで命をささげる者達だもの」
もやに囲まれている司は、身動きが取れない。
氷で結界を張っているが、それもいつまで持つかわからない。
『ご主人様、大丈夫ですか?』
「とっさにヒョウリが私に氷の結界を張ってくれたおかげで無傷ですよ」
『それなら良かったです。ですが、あの者を凍らせるのは、少々むずかしくなったかと』
「そうですね。どうするか、考え直さないといけませんね」
司もヒョウリの目線を追うように上を向く。
そこにいるのは、間違いなくカラス天狗。だが、見た目が変わっていた。
今までは人間の姿が残っていたカラス天狗だが、今はもうそんな面影はない。
足は鳥のように細く、三本指になっている。手は翼にくっつき黒く、マスクだったはずの口は本物のくちばしとなっていた。
「あれが、カラス天狗の本来の姿」
『そのようです。体も一回り大きくなっておりますね』
ヒョウリが言うように、体も先ほどより大きい。
人間より大きくなったカラスが、服を着て司達を見下ろしている。
詩織はおどろきのあまり口をあんぐり。涼香は眉間にしわを寄せ、むずかしそうな顔でカラス天狗を見上げた。
『これが本来の我だ。残念だったな、人間よ。我にこの姿を出させたことはほめてやろう。だがな、それだけだ。ぬしは今、ここで死ぬ。我にこの姿を出させてしまったことによってな』
勝ちを確信したような口ぶりに、司は舌打ちをこぼした。
「確かに、もう少し早く倒せばよかったと思っていますよ。ですが、これはこれで情報を手に入れられたとプラスに考えさせていただきます」
『情報? どうせここでぬしは死ぬというのに。情報を抜き取ったところで意味はないだろう』
司とヒョウリはお互い目を合わせ、うなずき合う。
何かを企む二人だが、カラス天狗は気づかない。自分ならこんな人間など簡単に倒せる、そう過信していた。
そこに、隙が生まれる。
今まで、カラス天狗は今の姿になって負けたことがない。いつも一瞬で終わらせていた。
そんな記憶が、今のカラス天狗の判断をにぶらせる。
「あるよ。だって、勝つのは僕だからね」
口調が元に戻る。
強気に笑い、カラス天狗を見上げた。
『なに?』
「ヒョウリを出して、僕は今まで負けたことがない。それだけ、こいつは強い。悪いが、負けるのはお前だ、カラス天狗」
言うと、ヒョウリが上空にいるカラス天狗へと向かって行く。だが、それは好都合だと言うように、カラス天狗はしゃくじょうを振りかぶった。
『おろかな』
ヒョウリが目の前まで来ると、カラス天狗がしゃくじょうをななめに振り下ろす。
その直前、ヒョウリが冷気と共に姿を消した。
次に姿を現したのはカラス天狗の後ろで、振り向くと同時に切りつけた。だが、先程と同じく姿を消し、かわされる。
『幻覚か?』
「氷は相手をゆがんだ姿で映し出す。本物だと思っても、それは偽物。お前に、本物を引き当てることは可能かな?」
ばかにするような司の口調に、カラス天狗の怒りがふつふつとわき上がり、顔を赤くした。
『本物がわからぬのなら、全体へ攻撃すればよい』
カラス天狗が右手を前に出すと、どこから黒いもやを噴射。
今より、辺りの空気が毒におかされる。
「―――なるほどな」
司を守る氷が解け始めた。
簡単には溶かすことが出来ない氷が溶け始めたことで、カラス天狗はほくそ笑む。
「あー、うん。しょうがない。まぁ。毒には耐性がある。僕も加勢しようか」
――――――――パリーン
司を守っていた結界が音を立て崩れた。
同時に、彼の背中には、氷のきれいな翼《つばさ》が作られた。
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜
巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。
みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。
ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。
ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。
イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!?
とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。
イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。
凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。
そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。
一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。
*2024.8/30、完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる