氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-

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大天狗

氷鬼先輩とおじいちゃん……?

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『ここまでの実力を持っている人の子がいるなど、思ってもみなかった。舐めた発言をしたことはわびよう』

 大天狗は、楽しそうに笑った。
 しゃくじょうを大きく振りかぶると、今度は突風ではなく、竜巻がまい上がった。

 二本の大きな竜巻が大天狗の左右に作り出される。
 一瞬、式神たちはうろたえたが、主である凛と司が平静を保っていたため、すぐに気を引き締めた、

『式神に信頼されているらしいな。おもしろい』

 しゃくじょうを前に突き出すと、竜巻は大きな音を立て式神たちに迫る。
 ヒョウリが冷気を、輪入道わにゅうどうが炎を放ち竜巻を消そうとした。だが、すべて押し返されてしまう。

 まずい、そう思うと、ユキが風に乗り大天狗のそばまで向かった。

『なにっ――むぐ!?』

 ヒョウリ達に気をとられてしまっていたため、体の小さいユキに気づかなかった。
 口の中の氷を放り込まれ、大天狗は吐き出すことが出来ず飲み込んだ。

『なにをのませっ――……』

 ――――ドクン

 心臓が大きな音を立て跳ねた。
 同時に、血が熱くなり、頭がぼぉっとし始める。

 何が起きたのか理解できないでいると、竜巻は再度、輪入道わにゅうどうが放った炎で相殺された。

「今だ!!」

輪入道わにゅうどう!! 大天狗を燃やし尽くせ!!」

 司の声と、凛の指示で式神たちは、大きく動き始めた。

 輪入道わにゅうどう鬼火おにびの力を借り、大天狗を炎で包み込む。だが、大天狗の体に傷一つ付けることが出来ない。

 詩織は、戦闘を見ていたが、傷一つ付かない大天狗に焦り始める。
 そんな詩織とは裏腹に、司と凛は想定内だった。

 司が企んでいたのは、次の動き。

 鬼の血で体が熱くなり、酔った状態になっている大天狗は、まだ攻撃を仕掛けてこない。
 司は、ヒョウリを見上げ、うなずいた。

 ずっと、共に過ごしてきたため、司が何を言いたいのかすぐに理解したヒョウリは、眉をひそめ唇を尖らせたが、渋々うなずいた。

 両手を大天狗に向け、息を大きく吸う。
 タイミングを合わせるため、司も同じように息を吸い込んだ。

 一瞬、時間が止まる。
 詩織が緊張に耐えられず、固唾かたずを飲んだ。

 瞬間、空気が大きく動き出した。

「炎と共に大天狗を凍らせろ、ヒョウリ!!」

『主の、仰せのままに』

 ヒョウリが冷たい息を吐き出す。それだけではなく、周りも吹雪に包まれ、辺り一帯が銀世界へと一瞬のうちに切り替わった。

 大天狗と輪入道わにゅうどうの炎は、無事にヒョウリの氷により凍らせることが出来た。

 大天狗にかたどられた氷像が、今にも動き出しそうで怖い。
 下で、まだ大天狗が動き出すんじゃないかと二人は警戒していた。

 式神たちも息をのみ、見据える。

 数秒、見続けていると、ガタガタと動き出した。
 すぐにヒョウリが指を鳴らしこわそうとするが、うまくいかない。

「やっぱり、だめなのかな…………」

 凛のなげきを耳にしつつ、司は「もしかして……」と、肩の力を抜いてしまった。

「今回の件、僕の勘違いじゃなければ、ここで戦闘は終わりのはずだよ」

「え、そうなの?」

「うん。そう言えば、思い出したことがあって…………」

 司の言葉が理解できず凜が聞き返すのと同時に、氷にひびが入る。
 本当に大丈夫なのかと見ていると、ヒビは徐々に大きくなり、そして――……

 ――――ガッシャーーーン

 と、大きな音を鳴らして、こわされてしまった。

 大天狗が氷から現れる。
 体についた氷の破片はへんをはらい、黒いひとみを式神たちに向けた。

『ここまで押してくるとは思わなかった。今どきの人の子も、面白い』

 楽しそうに笑い、司と凛を見た。
 そのひとみからはもう、さっきまでの鋭い視線は感じない。

「まぁね。でも、大天狗。あんたなら、ここまで普通僕たちの攻撃を食らわないよね? 舐めているとかっていうわけじゃなさそうだし、どうしたの?」

 司が狐面を取り、無表情で見上げる。
 怪しまれていると思った大天狗は、肩をすくめしゃくじょうを下ろした。

『そこまで警戒けいかいしないでおくれ。なにも企んでなどおらん。人の子の実力が気になったまでよ』

「つまり、そもそも僕たちを殺そうとしていないってこと?」

『そもそも、私は最初から殺すと口にしていない』

 大天狗の言葉に、司は「あぁ、確かに……」と、覚えた違和感の正体をやっと理解した。
 頭を抱えている司を見つつ、興味深げに地面に降り、大天狗は司の前に立った。

『最近の人の子が面白いことと、様々なあやかあしから聞いていてな。相手をしてみたいと思っていたところに退治屋であるお前さんたちが来たのだ』

「…………なるほど。それじゃ、詩織を狙ったというわけではないの?」

『鬼の血には興味ない。私も、そこまで弱くはないからな』

『ホッホッホッ』と、おじいちゃんのように笑う大天狗は、もう気が抜けており、おそってくる気配はない。

「まぁ、普通に考えればそうか。鬼も天狗も、日本三大妖怪だもんね」

 元々強いのに、同じ立場に位置する鬼を欲するとは、よく考えればあまり考えられない。
 だが、それでも疑問は残る。

「一つ、聞いてもいい?」

『面白い人の子の質問だ、何でも答えよう』

 まるで、おじいちゃんと孫の会話を見ているような雰囲気に、詩織たちは立ち上がり司のとなりに移動した。

「鬼の血を凍らせた氷を飲み込んだ時、演技ではないような反応があったと思うんだけど、それはどうなの?」
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