39 / 42
大天狗
氷鬼先輩とおじいちゃん……?
しおりを挟む
『ここまでの実力を持っている人の子がいるなど、思ってもみなかった。舐めた発言をしたことはわびよう』
大天狗は、楽しそうに笑った。
しゃくじょうを大きく振りかぶると、今度は突風ではなく、竜巻がまい上がった。
二本の大きな竜巻が大天狗の左右に作り出される。
一瞬、式神たちはうろたえたが、主である凛と司が平静を保っていたため、すぐに気を引き締めた、
『式神に信頼されているらしいな。おもしろい』
しゃくじょうを前に突き出すと、竜巻は大きな音を立て式神たちに迫る。
ヒョウリが冷気を、輪入道が炎を放ち竜巻を消そうとした。だが、すべて押し返されてしまう。
まずい、そう思うと、ユキが風に乗り大天狗のそばまで向かった。
『なにっ――むぐ!?』
ヒョウリ達に気をとられてしまっていたため、体の小さいユキに気づかなかった。
口の中の氷を放り込まれ、大天狗は吐き出すことが出来ず飲み込んだ。
『なにをのませっ――……』
――――ドクン
心臓が大きな音を立て跳ねた。
同時に、血が熱くなり、頭がぼぉっとし始める。
何が起きたのか理解できないでいると、竜巻は再度、輪入道が放った炎で相殺された。
「今だ!!」
「輪入道!! 大天狗を燃やし尽くせ!!」
司の声と、凛の指示で式神たちは、大きく動き始めた。
輪入道は鬼火の力を借り、大天狗を炎で包み込む。だが、大天狗の体に傷一つ付けることが出来ない。
詩織は、戦闘を見ていたが、傷一つ付かない大天狗に焦り始める。
そんな詩織とは裏腹に、司と凛は想定内だった。
司が企んでいたのは、次の動き。
鬼の血で体が熱くなり、酔った状態になっている大天狗は、まだ攻撃を仕掛けてこない。
司は、ヒョウリを見上げ、うなずいた。
ずっと、共に過ごしてきたため、司が何を言いたいのかすぐに理解したヒョウリは、眉をひそめ唇を尖らせたが、渋々うなずいた。
両手を大天狗に向け、息を大きく吸う。
タイミングを合わせるため、司も同じように息を吸い込んだ。
一瞬、時間が止まる。
詩織が緊張に耐えられず、固唾を飲んだ。
瞬間、空気が大きく動き出した。
「炎と共に大天狗を凍らせろ、ヒョウリ!!」
『主の、仰せのままに』
ヒョウリが冷たい息を吐き出す。それだけではなく、周りも吹雪に包まれ、辺り一帯が銀世界へと一瞬のうちに切り替わった。
大天狗と輪入道の炎は、無事にヒョウリの氷により凍らせることが出来た。
大天狗にかたどられた氷像が、今にも動き出しそうで怖い。
下で、まだ大天狗が動き出すんじゃないかと二人は警戒していた。
式神たちも息をのみ、見据える。
数秒、見続けていると、ガタガタと動き出した。
すぐにヒョウリが指を鳴らしこわそうとするが、うまくいかない。
「やっぱり、だめなのかな…………」
凛のなげきを耳にしつつ、司は「もしかして……」と、肩の力を抜いてしまった。
「今回の件、僕の勘違いじゃなければ、ここで戦闘は終わりのはずだよ」
「え、そうなの?」
「うん。そう言えば、思い出したことがあって…………」
司の言葉が理解できず凜が聞き返すのと同時に、氷にひびが入る。
本当に大丈夫なのかと見ていると、ヒビは徐々に大きくなり、そして――……
――――ガッシャーーーン
と、大きな音を鳴らして、こわされてしまった。
大天狗が氷から現れる。
体についた氷の破片をはらい、黒い瞳を式神たちに向けた。
『ここまで押してくるとは思わなかった。今どきの人の子も、面白い』
楽しそうに笑い、司と凛を見た。
その瞳からはもう、さっきまでの鋭い視線は感じない。
「まぁね。でも、大天狗。あんたなら、ここまで普通僕たちの攻撃を食らわないよね? 舐めているとかっていうわけじゃなさそうだし、どうしたの?」
司が狐面を取り、無表情で見上げる。
怪しまれていると思った大天狗は、肩をすくめしゃくじょうを下ろした。
『そこまで警戒しないでおくれ。なにも企んでなどおらん。人の子の実力が気になったまでよ』
「つまり、そもそも僕たちを殺そうとしていないってこと?」
『そもそも、私は最初から殺すと口にしていない』
大天狗の言葉に、司は「あぁ、確かに……」と、覚えた違和感の正体をやっと理解した。
頭を抱えている司を見つつ、興味深げに地面に降り、大天狗は司の前に立った。
『最近の人の子が面白いことと、様々なあやかあしから聞いていてな。相手をしてみたいと思っていたところに退治屋であるお前さんたちが来たのだ』
「…………なるほど。それじゃ、詩織を狙ったというわけではないの?」
『鬼の血には興味ない。私も、そこまで弱くはないからな』
『ホッホッホッ』と、おじいちゃんのように笑う大天狗は、もう気が抜けており、おそってくる気配はない。
「まぁ、普通に考えればそうか。鬼も天狗も、日本三大妖怪だもんね」
元々強いのに、同じ立場に位置する鬼を欲するとは、よく考えればあまり考えられない。
だが、それでも疑問は残る。
「一つ、聞いてもいい?」
『面白い人の子の質問だ、何でも答えよう』
まるで、おじいちゃんと孫の会話を見ているような雰囲気に、詩織たちは立ち上がり司の隣に移動した。
「鬼の血を凍らせた氷を飲み込んだ時、演技ではないような反応があったと思うんだけど、それはどうなの?」
大天狗は、楽しそうに笑った。
しゃくじょうを大きく振りかぶると、今度は突風ではなく、竜巻がまい上がった。
二本の大きな竜巻が大天狗の左右に作り出される。
一瞬、式神たちはうろたえたが、主である凛と司が平静を保っていたため、すぐに気を引き締めた、
『式神に信頼されているらしいな。おもしろい』
しゃくじょうを前に突き出すと、竜巻は大きな音を立て式神たちに迫る。
ヒョウリが冷気を、輪入道が炎を放ち竜巻を消そうとした。だが、すべて押し返されてしまう。
まずい、そう思うと、ユキが風に乗り大天狗のそばまで向かった。
『なにっ――むぐ!?』
ヒョウリ達に気をとられてしまっていたため、体の小さいユキに気づかなかった。
口の中の氷を放り込まれ、大天狗は吐き出すことが出来ず飲み込んだ。
『なにをのませっ――……』
――――ドクン
心臓が大きな音を立て跳ねた。
同時に、血が熱くなり、頭がぼぉっとし始める。
何が起きたのか理解できないでいると、竜巻は再度、輪入道が放った炎で相殺された。
「今だ!!」
「輪入道!! 大天狗を燃やし尽くせ!!」
司の声と、凛の指示で式神たちは、大きく動き始めた。
輪入道は鬼火の力を借り、大天狗を炎で包み込む。だが、大天狗の体に傷一つ付けることが出来ない。
詩織は、戦闘を見ていたが、傷一つ付かない大天狗に焦り始める。
そんな詩織とは裏腹に、司と凛は想定内だった。
司が企んでいたのは、次の動き。
鬼の血で体が熱くなり、酔った状態になっている大天狗は、まだ攻撃を仕掛けてこない。
司は、ヒョウリを見上げ、うなずいた。
ずっと、共に過ごしてきたため、司が何を言いたいのかすぐに理解したヒョウリは、眉をひそめ唇を尖らせたが、渋々うなずいた。
両手を大天狗に向け、息を大きく吸う。
タイミングを合わせるため、司も同じように息を吸い込んだ。
一瞬、時間が止まる。
詩織が緊張に耐えられず、固唾を飲んだ。
瞬間、空気が大きく動き出した。
「炎と共に大天狗を凍らせろ、ヒョウリ!!」
『主の、仰せのままに』
ヒョウリが冷たい息を吐き出す。それだけではなく、周りも吹雪に包まれ、辺り一帯が銀世界へと一瞬のうちに切り替わった。
大天狗と輪入道の炎は、無事にヒョウリの氷により凍らせることが出来た。
大天狗にかたどられた氷像が、今にも動き出しそうで怖い。
下で、まだ大天狗が動き出すんじゃないかと二人は警戒していた。
式神たちも息をのみ、見据える。
数秒、見続けていると、ガタガタと動き出した。
すぐにヒョウリが指を鳴らしこわそうとするが、うまくいかない。
「やっぱり、だめなのかな…………」
凛のなげきを耳にしつつ、司は「もしかして……」と、肩の力を抜いてしまった。
「今回の件、僕の勘違いじゃなければ、ここで戦闘は終わりのはずだよ」
「え、そうなの?」
「うん。そう言えば、思い出したことがあって…………」
司の言葉が理解できず凜が聞き返すのと同時に、氷にひびが入る。
本当に大丈夫なのかと見ていると、ヒビは徐々に大きくなり、そして――……
――――ガッシャーーーン
と、大きな音を鳴らして、こわされてしまった。
大天狗が氷から現れる。
体についた氷の破片をはらい、黒い瞳を式神たちに向けた。
『ここまで押してくるとは思わなかった。今どきの人の子も、面白い』
楽しそうに笑い、司と凛を見た。
その瞳からはもう、さっきまでの鋭い視線は感じない。
「まぁね。でも、大天狗。あんたなら、ここまで普通僕たちの攻撃を食らわないよね? 舐めているとかっていうわけじゃなさそうだし、どうしたの?」
司が狐面を取り、無表情で見上げる。
怪しまれていると思った大天狗は、肩をすくめしゃくじょうを下ろした。
『そこまで警戒しないでおくれ。なにも企んでなどおらん。人の子の実力が気になったまでよ』
「つまり、そもそも僕たちを殺そうとしていないってこと?」
『そもそも、私は最初から殺すと口にしていない』
大天狗の言葉に、司は「あぁ、確かに……」と、覚えた違和感の正体をやっと理解した。
頭を抱えている司を見つつ、興味深げに地面に降り、大天狗は司の前に立った。
『最近の人の子が面白いことと、様々なあやかあしから聞いていてな。相手をしてみたいと思っていたところに退治屋であるお前さんたちが来たのだ』
「…………なるほど。それじゃ、詩織を狙ったというわけではないの?」
『鬼の血には興味ない。私も、そこまで弱くはないからな』
『ホッホッホッ』と、おじいちゃんのように笑う大天狗は、もう気が抜けており、おそってくる気配はない。
「まぁ、普通に考えればそうか。鬼も天狗も、日本三大妖怪だもんね」
元々強いのに、同じ立場に位置する鬼を欲するとは、よく考えればあまり考えられない。
だが、それでも疑問は残る。
「一つ、聞いてもいい?」
『面白い人の子の質問だ、何でも答えよう』
まるで、おじいちゃんと孫の会話を見ているような雰囲気に、詩織たちは立ち上がり司の隣に移動した。
「鬼の血を凍らせた氷を飲み込んだ時、演技ではないような反応があったと思うんだけど、それはどうなの?」
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜
巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。
みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。
ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。
ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。
イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!?
とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。
イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。
凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。
そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。
一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。
*2024.8/30、完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる