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気配を消してんじゃねぇよ、このやろう
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「どうした、グレール」
「今の話を聞いていて、正直時間の無駄だなと思いまして」
「おい」
「早くロゼ姫の所に戻してほしいというのが本音なのですが」
やっぱり、連れてくるんじゃなかった。
グレールを早くこの場からいなくならせよう。
「ですが、一つ気になったことがあります。イルドリ王は、カケル=ルーナと会ったことがあるのですね。今、カケル=ルーナがどのような状態になっているのかってご存じですか?」
「いや、知らないな!!」
あ、それはやっぱり知らないのか。
「今、カケル=ルーナは、クロヌのせいで動けない状態となっています。そのため、チサト様がここにいるのですよ。それはご存知ではなかったのでしょうか」
そういや、そんな設定だったなぁ。
いや、俺のことなんだから、そんな他人事では済ませられないんだけどさ。
『さすが兄さん!! 取り乱していてもしっかりと話を聞いていた!』
(「頼む、お前は黙っていてくれ、グラース」)
イルドリ王は、俺を見て微かに目を開く。
その反応、知らなかったらしい。
俺も、話すのがめんどくさくなったから話していないし、仕方がないわな。
「それは、誠か?」
「まぁな。今は管理者に腹立って、カケルの件は二の次になっているが」
…………いや、管理者のことがなくても、カケルを重要視はしていなかった気がするなぁ。
金を稼いで、ついでにカケル奪還をしようとか思っていた気がする。
今は、金すらまともに手に入れられない状況だけれど。
「そうか。それは、酷な話をしたな」
「いや、まったく」
「無理をするな! カケル=ルーナは、私にとっても恩人。主にとっても大事な友人なのだろう!!」
「それは全くありませんねぇーーー!!」
それに関してはマジで否定させてくれ!!
俺は!! カケルを!! 大事な友人と思ったことはない!!
めんどくさいことに巻き込みやがってと思っている!!
「そう気を遣わなくてもよい!! だが、すまない!! やはり、クロヌを殺したくは無い!!」
「あー、まぁ、そこは追々で」
今すぐに決めなければならないわけじゃないし、今後の動きは他の奴らが回復してから決めよう。
ここからは、細かな情報交換をした。
アンヘル族についてや、地上で行われていた管理者の所業。
その他、俺がこの世界に来た経緯なども話さなければならなくなり、ものすごくめんどくさかった。
…………寝ているなんて羨ましいなアクアよ、アマリアに頭を撫でられ嬉しそうにしやがって。
※
夜、皆が就寝した時、俺は城の屋上にまた来ていた。
新acquaを出して、壁を歩き上る。
歪む満天の星がオスクリタ海底の空を覆う。
星が見えるほど澄んだ海……いや、今日が満月だからか?
月光が海を照らし、俺のいる所まで光が届いているって感じかねぇ~。
せっかく、月光がオスクリタ海底を照らしてくれているのに、今の光景はとても綺麗とは言えないな。
アクアの魔法により、沈んでしまったオスクリタ海底。
建物も半壊し、人もたくさん死んだ。
今回の戦闘は、さすがに被害が大きくなりすぎたな。
まさか、オスクリタ海底とフォーマメント。どっちでも戦闘が行われるとは思っていなかった。
しかも、魔力がない時に限ってって……。
いや、そこを狙った──というか、俺の魔力を奪ったのは、今回の戦闘を引き起こすため。
「……はぁ……やばいな」
俺、なんとなくだが、弱っているな。
もし、俺がここにとどまっていなければ、オスクリタ海底が巻き込まれることはなかったとか、考えちまう。
俺らしくねぇ……。
俺は、自己犠牲の塊主人公じゃないんだよ。
誰が犠牲になろうと、俺が無事ならそれでいい。
お金さえ手に入れば、他はどうなってもいい。
その考えの方が楽だった。
のに、なんでこんな思考になる。
なぜ、壊されたオスクリタ海底を見て、こんな胸糞悪い気持ちになるんだよ。
アルカとリヒトに絆された自覚はあったが、まさかここまでとは……。
「苦しいなぁ…………」
胸が痛い。心臓が誰かによって握り潰されそうな感覚だ。
体が痺れる、頭が痛い、息がしにくい。
目をそらしたくても、場所が悪かった。
なんで俺は、こんな、オスクリタ海底が見回せる所に来てしまったのか。
マジで選択ミスをした、くそ。
「はぁぁぁぁぁ…………」
「苦しそうだね、大丈夫?」
『本当に辛そうだねぇ~』
「まぁ、問題ないとは言い切れっ――……」
え、誰からの声? 問いかけ? 二人??
隣を向くと、なぜか大人姿のアマリアが「やぁ」と言いたげに手を上げ、挨拶してきた。
ちなみに、アマリアはもう俺に接続を戻している。
だからなのか、魔力を使い放題。それに関しては別にいいんだが……。
んで、反対側には、ニコニコ顔のグラース……か。
「いつからいた?」
「『やばいな』の、少し前くらいかなぁ」
『僕も同じくらいだよ~』
聞かれたくないところをちゃっかり聞かれていて死にたくなりました。
「今の話を聞いていて、正直時間の無駄だなと思いまして」
「おい」
「早くロゼ姫の所に戻してほしいというのが本音なのですが」
やっぱり、連れてくるんじゃなかった。
グレールを早くこの場からいなくならせよう。
「ですが、一つ気になったことがあります。イルドリ王は、カケル=ルーナと会ったことがあるのですね。今、カケル=ルーナがどのような状態になっているのかってご存じですか?」
「いや、知らないな!!」
あ、それはやっぱり知らないのか。
「今、カケル=ルーナは、クロヌのせいで動けない状態となっています。そのため、チサト様がここにいるのですよ。それはご存知ではなかったのでしょうか」
そういや、そんな設定だったなぁ。
いや、俺のことなんだから、そんな他人事では済ませられないんだけどさ。
『さすが兄さん!! 取り乱していてもしっかりと話を聞いていた!』
(「頼む、お前は黙っていてくれ、グラース」)
イルドリ王は、俺を見て微かに目を開く。
その反応、知らなかったらしい。
俺も、話すのがめんどくさくなったから話していないし、仕方がないわな。
「それは、誠か?」
「まぁな。今は管理者に腹立って、カケルの件は二の次になっているが」
…………いや、管理者のことがなくても、カケルを重要視はしていなかった気がするなぁ。
金を稼いで、ついでにカケル奪還をしようとか思っていた気がする。
今は、金すらまともに手に入れられない状況だけれど。
「そうか。それは、酷な話をしたな」
「いや、まったく」
「無理をするな! カケル=ルーナは、私にとっても恩人。主にとっても大事な友人なのだろう!!」
「それは全くありませんねぇーーー!!」
それに関してはマジで否定させてくれ!!
俺は!! カケルを!! 大事な友人と思ったことはない!!
めんどくさいことに巻き込みやがってと思っている!!
「そう気を遣わなくてもよい!! だが、すまない!! やはり、クロヌを殺したくは無い!!」
「あー、まぁ、そこは追々で」
今すぐに決めなければならないわけじゃないし、今後の動きは他の奴らが回復してから決めよう。
ここからは、細かな情報交換をした。
アンヘル族についてや、地上で行われていた管理者の所業。
その他、俺がこの世界に来た経緯なども話さなければならなくなり、ものすごくめんどくさかった。
…………寝ているなんて羨ましいなアクアよ、アマリアに頭を撫でられ嬉しそうにしやがって。
※
夜、皆が就寝した時、俺は城の屋上にまた来ていた。
新acquaを出して、壁を歩き上る。
歪む満天の星がオスクリタ海底の空を覆う。
星が見えるほど澄んだ海……いや、今日が満月だからか?
月光が海を照らし、俺のいる所まで光が届いているって感じかねぇ~。
せっかく、月光がオスクリタ海底を照らしてくれているのに、今の光景はとても綺麗とは言えないな。
アクアの魔法により、沈んでしまったオスクリタ海底。
建物も半壊し、人もたくさん死んだ。
今回の戦闘は、さすがに被害が大きくなりすぎたな。
まさか、オスクリタ海底とフォーマメント。どっちでも戦闘が行われるとは思っていなかった。
しかも、魔力がない時に限ってって……。
いや、そこを狙った──というか、俺の魔力を奪ったのは、今回の戦闘を引き起こすため。
「……はぁ……やばいな」
俺、なんとなくだが、弱っているな。
もし、俺がここにとどまっていなければ、オスクリタ海底が巻き込まれることはなかったとか、考えちまう。
俺らしくねぇ……。
俺は、自己犠牲の塊主人公じゃないんだよ。
誰が犠牲になろうと、俺が無事ならそれでいい。
お金さえ手に入れば、他はどうなってもいい。
その考えの方が楽だった。
のに、なんでこんな思考になる。
なぜ、壊されたオスクリタ海底を見て、こんな胸糞悪い気持ちになるんだよ。
アルカとリヒトに絆された自覚はあったが、まさかここまでとは……。
「苦しいなぁ…………」
胸が痛い。心臓が誰かによって握り潰されそうな感覚だ。
体が痺れる、頭が痛い、息がしにくい。
目をそらしたくても、場所が悪かった。
なんで俺は、こんな、オスクリタ海底が見回せる所に来てしまったのか。
マジで選択ミスをした、くそ。
「はぁぁぁぁぁ…………」
「苦しそうだね、大丈夫?」
『本当に辛そうだねぇ~』
「まぁ、問題ないとは言い切れっ――……」
え、誰からの声? 問いかけ? 二人??
隣を向くと、なぜか大人姿のアマリアが「やぁ」と言いたげに手を上げ、挨拶してきた。
ちなみに、アマリアはもう俺に接続を戻している。
だからなのか、魔力を使い放題。それに関しては別にいいんだが……。
んで、反対側には、ニコニコ顔のグラース……か。
「いつからいた?」
「『やばいな』の、少し前くらいかなぁ」
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聞かれたくないところをちゃっかり聞かれていて死にたくなりました。
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