59 / 130
麗華
「これで終わりだ」
しおりを挟む
「噂は本当だったけどぉ、思ってたのと違ったねぇ~」
学校の教室で、ポッキーを口に咥えながら携帯をいじっている麗華が、他の二人に問いかけた。
今は放課後。三人以外の生徒は下校しており、いつものメンバーである。麗華、麗羅、静空が教室に残っていた。
「でも、辿り着けない人もいるって言ってた中あった訳だし。もしかして、私達結構すごい事しちゃったのかな!?」
興奮気味に静空は、身を乗り出し。目を輝かせ身を乗り出した。
「だからって、また行こうなんて言わないでよ? 私はごめんだからね」
麗羅は引き気味に言って、ポッキーを掴み彼女を指す。
「人にポッキーを指してはいけません」
「あ、私のポッキー取られた」
指された静空は、麗羅からポッキーを奪い取り自分で食べた。そんな二人を横目に、麗華が携帯の画面を二人に向け困惑気味に言う。
「私、昨日内緒であの人をカメラに納めたのに、なぜか写ってないんだけどぉ……」
麗華の言葉に、二人は最初疑いの目で画面を覗き込んだ。だが、みるみるうちに顔を青くし、顔を上げ画面を指さした。
「なんで、小屋の壁しか──写ってないの?」
静空が震え声で質問し、麗羅も口を抑え震える。
「ま、まさか…………。あの人ってゆ、幽霊?」
麗羅の声に三人はこれ以上口を開かず、今日は解散になった。
☆
小屋の中、明人はソファーの上で横になっていた。息が荒く汗が止まらない。辛そうに顔を歪ませている。
「まさか。こんなに呪いが進行していたとは……」
カクリは白いタオルで汗を拭いてあげ、近くに置いてある桶で濡らし明人の目元に置いた。不安げに眉を下げ、彼の看病している。
「にしても、昨日から目を覚まさぬ。このまま目を開けない事は無いだろうな……」
息の荒い明人に手を伸ばし、呪いが広がっている肩辺りに触れた。
今の明人は体の半分以上が呪いで侵されており、少し動くだけでも体に激痛が走る。体への負担は相当のはずだが、倒れてしまうまでカクリ自身明人の変化に気づく事が出来なかった。明人が気づかれないように生活を送っていたと知った今、カクリの心中には後悔が芽生え、それは徐々に広がり思わず顔を俯かせる。
そんな最悪なタイミングで、突如としてドアが開かれた。
「お~お~。辛そうだなぁ~、相思」
ドアを開けたのは、明人に強い恨みを持っている人。悪陣魔蛭《おじんまひる》だった。
カクリは魔蛭の姿を確認すると、咄嗟に明人を守るように前に立ち、尻尾と耳を出す。
「何故ここに。お主、何しに来た」
カクリは殺気を放ちながら、喉の奥を鳴らし唸りながら魔蛭に問いかけた。
「相──いや、明人がどんな様子かなぁ~っと思ってな。いい具合に弱ってるみたいじゃねぇか。今のままだと辛いだろ。直ぐ楽にしてやるよ」
ソファーに横になっている明人をあざ笑うように見下ろし、ポケットからカッターナイフを取り出した。カチカチと刃を出し、ゆっくりと明人に近付いて行く。だが、それをカクリが許す訳もなく、魔蛭の前に立った。
「おい、そこを退け」
「断る。今すぐここから去れ」
「それこそ無理だな。断る」
カクリは眉間に皺を寄せ歯を食いしばり、魔蛭は余裕そうな笑みを浮かべ、お互い睨み合う。その数秒後、魔蛭は口だけではカクリが引かないのを悟り息を吐いた。
「はぁー。おら、そこを退け。ガキはさっさと家に帰りな!!」
「ぐっ!! ゴホッゲホッ……」
我慢できなくなった魔蛭は、目の前で邪魔してくるカクリのお腹を思いっきり蹴りあげた。
カクリは体術などを習得している訳では無いためもろに食らいお腹を抱え、その場にうずくまってしまった。
「さて、邪魔者は消えたし。これでっ──おい」
魔蛭が明人にカッターナイフを向けたが、それをカクリは足を引っ張り制した。
「早く、帰るのだ……」
「俺には時間が無い。邪魔だ」
再度、カクリを蹴り飛ばし。今度こそ明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。だが、横から何かが投げられ、魔蛭は小さく舌打ちを零し上半身を後ろへと傾け回避。物が飛んできた方向を見ると、壁側に置かれていた本棚まで飛ばされたカクリが、本を片手に魔蛭を睨み上げていた。
「うぜぇな。まずはお前から始末してもいいが、今の俺には本当に時間がない。邪魔をするな」
「時間が無いのであれば、今すぐ帰ればいいのではないかい?」
「今がこいつを殺すための最大のチャンスなんだよ。見過ごすわけにはいかねぇな」
カッターナイフを持ち直し、彼は再度明人へと目線を向けた。すぐさま、カクリも持っていた本を投げようと振り上げるが、突如腕に痛みが走りそれは叶わなかった。
持っていた本が赤い液体と共に床へと落ちる。
「なっ──」
腕には見覚えのある黒いナイフが刺さり、血がポタポタと流れ出ている。
「勝手に居なくなるなと言っているのに。我に手間を取らせるな」
そんな、気だるげな口調が小屋の出入口から聞こえた。カクリがそちらに目を向けると、自身の周りに黒いナイフを浮かせいつでも投げれるようにしている悪魔。魔蛭の相棒的存在のベルゼが不機嫌そうな表情を浮かべ立っていた。
ベルゼはカクリに殺気を放ち、ナイフの刃を向ける。その隙に魔蛭は、明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。
「これで終わりだ相思──筺鍵明人!!!」
カクリはなんとか邪魔しようと近くにある物を掴もうとするも、それを全てベルゼのナイフにより防がれた。それだけではなく、動けないように足や横腹にもナイフが深々と刺さり、床へと倒れ込む。
どんどん床が赤く染まり、カクリの服や手などを汚す。それでもカクリは明人を守ろうと手を伸ばし続け、床を這いつくばりながら魔蛭へと近づく。
「――っ!! 起き、るのだ、明人……。起きるのだ!!!」
吐血しながらも声を張り上げるカクリ。魔蛭は邪魔がなくなった事に安堵し、笑みを浮かべながら、カッターナイフをそのまま振り下ろした。
「明人ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
カクリの、喉が張り裂けんばかりな声が、小屋内に響き渡った────
学校の教室で、ポッキーを口に咥えながら携帯をいじっている麗華が、他の二人に問いかけた。
今は放課後。三人以外の生徒は下校しており、いつものメンバーである。麗華、麗羅、静空が教室に残っていた。
「でも、辿り着けない人もいるって言ってた中あった訳だし。もしかして、私達結構すごい事しちゃったのかな!?」
興奮気味に静空は、身を乗り出し。目を輝かせ身を乗り出した。
「だからって、また行こうなんて言わないでよ? 私はごめんだからね」
麗羅は引き気味に言って、ポッキーを掴み彼女を指す。
「人にポッキーを指してはいけません」
「あ、私のポッキー取られた」
指された静空は、麗羅からポッキーを奪い取り自分で食べた。そんな二人を横目に、麗華が携帯の画面を二人に向け困惑気味に言う。
「私、昨日内緒であの人をカメラに納めたのに、なぜか写ってないんだけどぉ……」
麗華の言葉に、二人は最初疑いの目で画面を覗き込んだ。だが、みるみるうちに顔を青くし、顔を上げ画面を指さした。
「なんで、小屋の壁しか──写ってないの?」
静空が震え声で質問し、麗羅も口を抑え震える。
「ま、まさか…………。あの人ってゆ、幽霊?」
麗羅の声に三人はこれ以上口を開かず、今日は解散になった。
☆
小屋の中、明人はソファーの上で横になっていた。息が荒く汗が止まらない。辛そうに顔を歪ませている。
「まさか。こんなに呪いが進行していたとは……」
カクリは白いタオルで汗を拭いてあげ、近くに置いてある桶で濡らし明人の目元に置いた。不安げに眉を下げ、彼の看病している。
「にしても、昨日から目を覚まさぬ。このまま目を開けない事は無いだろうな……」
息の荒い明人に手を伸ばし、呪いが広がっている肩辺りに触れた。
今の明人は体の半分以上が呪いで侵されており、少し動くだけでも体に激痛が走る。体への負担は相当のはずだが、倒れてしまうまでカクリ自身明人の変化に気づく事が出来なかった。明人が気づかれないように生活を送っていたと知った今、カクリの心中には後悔が芽生え、それは徐々に広がり思わず顔を俯かせる。
そんな最悪なタイミングで、突如としてドアが開かれた。
「お~お~。辛そうだなぁ~、相思」
ドアを開けたのは、明人に強い恨みを持っている人。悪陣魔蛭《おじんまひる》だった。
カクリは魔蛭の姿を確認すると、咄嗟に明人を守るように前に立ち、尻尾と耳を出す。
「何故ここに。お主、何しに来た」
カクリは殺気を放ちながら、喉の奥を鳴らし唸りながら魔蛭に問いかけた。
「相──いや、明人がどんな様子かなぁ~っと思ってな。いい具合に弱ってるみたいじゃねぇか。今のままだと辛いだろ。直ぐ楽にしてやるよ」
ソファーに横になっている明人をあざ笑うように見下ろし、ポケットからカッターナイフを取り出した。カチカチと刃を出し、ゆっくりと明人に近付いて行く。だが、それをカクリが許す訳もなく、魔蛭の前に立った。
「おい、そこを退け」
「断る。今すぐここから去れ」
「それこそ無理だな。断る」
カクリは眉間に皺を寄せ歯を食いしばり、魔蛭は余裕そうな笑みを浮かべ、お互い睨み合う。その数秒後、魔蛭は口だけではカクリが引かないのを悟り息を吐いた。
「はぁー。おら、そこを退け。ガキはさっさと家に帰りな!!」
「ぐっ!! ゴホッゲホッ……」
我慢できなくなった魔蛭は、目の前で邪魔してくるカクリのお腹を思いっきり蹴りあげた。
カクリは体術などを習得している訳では無いためもろに食らいお腹を抱え、その場にうずくまってしまった。
「さて、邪魔者は消えたし。これでっ──おい」
魔蛭が明人にカッターナイフを向けたが、それをカクリは足を引っ張り制した。
「早く、帰るのだ……」
「俺には時間が無い。邪魔だ」
再度、カクリを蹴り飛ばし。今度こそ明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。だが、横から何かが投げられ、魔蛭は小さく舌打ちを零し上半身を後ろへと傾け回避。物が飛んできた方向を見ると、壁側に置かれていた本棚まで飛ばされたカクリが、本を片手に魔蛭を睨み上げていた。
「うぜぇな。まずはお前から始末してもいいが、今の俺には本当に時間がない。邪魔をするな」
「時間が無いのであれば、今すぐ帰ればいいのではないかい?」
「今がこいつを殺すための最大のチャンスなんだよ。見過ごすわけにはいかねぇな」
カッターナイフを持ち直し、彼は再度明人へと目線を向けた。すぐさま、カクリも持っていた本を投げようと振り上げるが、突如腕に痛みが走りそれは叶わなかった。
持っていた本が赤い液体と共に床へと落ちる。
「なっ──」
腕には見覚えのある黒いナイフが刺さり、血がポタポタと流れ出ている。
「勝手に居なくなるなと言っているのに。我に手間を取らせるな」
そんな、気だるげな口調が小屋の出入口から聞こえた。カクリがそちらに目を向けると、自身の周りに黒いナイフを浮かせいつでも投げれるようにしている悪魔。魔蛭の相棒的存在のベルゼが不機嫌そうな表情を浮かべ立っていた。
ベルゼはカクリに殺気を放ち、ナイフの刃を向ける。その隙に魔蛭は、明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。
「これで終わりだ相思──筺鍵明人!!!」
カクリはなんとか邪魔しようと近くにある物を掴もうとするも、それを全てベルゼのナイフにより防がれた。それだけではなく、動けないように足や横腹にもナイフが深々と刺さり、床へと倒れ込む。
どんどん床が赤く染まり、カクリの服や手などを汚す。それでもカクリは明人を守ろうと手を伸ばし続け、床を這いつくばりながら魔蛭へと近づく。
「――っ!! 起き、るのだ、明人……。起きるのだ!!!」
吐血しながらも声を張り上げるカクリ。魔蛭は邪魔がなくなった事に安堵し、笑みを浮かべながら、カッターナイフをそのまま振り下ろした。
「明人ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
カクリの、喉が張り裂けんばかりな声が、小屋内に響き渡った────
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~
秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。
五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。
都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。
見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――!
久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――?
謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。
※カクヨムにも先行で投稿しています
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる