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麗華

「終わりを告げる」

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「他の奴が、預かってる──だと?」
「そうだ。誰かは言わねぇよ。言ったとしてもお前は呪いによって結局取り戻せず死ぬ。お前は自分について何も思い出せずに、呪いによって痛み、苦しみながら死ぬ運命なんだよ!!! ざまぁみろ!!!」

 魔蛭が感情全て吐き出すように叫ぶと、いきなり床が黒くなり始めた。

「な、なんだ!?」
「じゃぁな明人。お前の寿命もあと少しで終わりを告げる。あと、何日持つかなぁ!!!」

 不気味な笑い声を残し、魔蛭は黒く濁った床の中へと姿を消してしまった。
 カクリが出入口に目を向けると、いつの間にかベルゼも姿を消している。

「くそっ!!」

 明人は悔しさと怒りで、眉間に皺を寄せ床を叩きつけた。カクリはその様子を悲しげに見ている。

「明人、ひとまず今は休め。普通の人間がそのような怪我を負い、無事な訳がない」
「それはお前もだろ。つーか、俺より酷いじゃねぇか」

 明人がカクリを見て、沈んだ声で言う。

 明人は呪いのせいで体が鈍くなっており、普段より動きにくいなどはあった。だが、最初にカッターナイフを握ったのと、背中に刺された以外の傷はない。それでも、いまだ血が流れ明人の服を赤く染めていく。急所を外しているとはいえ重症。ほっとけば命が危ない可能性がある。
 カクリ自身も危険な状態なのは変わらない。背中、腰、横腹、足など。至る所から血が出ている。人間だと立っている事も出来ない程の傷だ。

「来い、さすがにその傷はほっとけねぇわ」
「いや構わん。私は妖だ。人間と一緒に──」

 カクリが遠慮するが、最後まで聞かず明人が無理やりカクリを怪我していない方の手で抱え、奥の部屋に歩き出した。

「明人よ、体は大丈夫なのかい?」
「問題ねぇわ。体が重いだけだ。後は背中だな。つーか、重症患者が人の心配してんじゃねぇぞ。呪いの激痛より何倍もマシだわ。止血はしねぇとまずそうだけどな」

 奥の部屋には記憶保管場所とは別に、もう一つ空き部屋があった。
 そこは物置みたいになっており、まだ何も施していない小瓶や、明人が外に行く時用のスーツやビジネスバッグが置いてある。

 明人はその部屋に入りカクリを壁側に座らせ、明人は救急箱を片手に持ち座った。
 まずは簡単に自身の手の止血をし包帯を巻く。その間、約五分程。次に、上の服を脱ぎ、体にも包帯を巻いた。それも約五分。その後、カクリの向かいに座り直した。

「おら、出せや」
「すまぬ……」

 カクリは言われた通り怪我している所を出した。
 ナイフが深く刺さってしまったらしく、今なお血が溢れ出ている。

 その部分の血を拭き取り止血を始めた。その後はガーゼで傷口を塞ぎ、包帯を巻く。他の部分も同じように応急処置をしていった。

「針で縫うほどの傷だな。まぁ、人間じゃねぇし問題ねぇだろ。ほれ完了だ」

 明人は処置が終わり、救急箱をしまう。
 カクリは自分に巻かれた包帯を見て、腕を動かしたり、立ってその場で少し歩いてみたが痛みなどはあまり感じなかった。

「なんでも出来るのも気味が悪いな」
「褒め言葉をどーも。少し休んでから来い」

 明人が言うと、そのまま部屋を出ていった。

「──なぜ、あヤツらは明人を狙うのだ……」

 カクリは疑問を吐き、そのまま黙り込んでしまった。

 ☆

 噂を確認してから数週間が経った頃。麗華が、静空と麗羅を大事な話があると言って、屋上に呼び出した。なので、今は三人で屋上に向かっている。

 三人が一緒にご飯食べるとはいつもの事なため気にしていない様子だが、屋上で食べるのは初めての事。

 周りに聞かれたくない話と言っていたため、二人は素直に後ろを付いて行く。

「なんの話なの麗華」
「屋上で話すよぉ~」

 麗華は静空の質問を軽く流し、階段を登っていく。麗羅は少し怪訝そうな表情を浮かべているが、それでも静かについて行っていた。

「ついたぁー!! やっぱり屋上って気持ちがいいよねぇ~」

 屋上に着いた瞬間、麗華はお弁当を落とさないように伸びをする。

「いや、『気持ちいいよねぇ~』じゃなくて。なんでここまで来る必要があったの? めんどくさいじゃん」
「静空ちゃん。そんな事言わないでよぉ~。私の恋愛話聞いてぇ~??」

 二人の方に顔を向け、サラッとそのような事を口にした。
 その言葉に麗羅と静空は、予想外の話に口を開け唖然とした表情になる。

 今まで色んな男子と遊んでいるし、沢山友達もいる。だが、何故か彼氏を作った事は麗華にはなかった。

「あんた、今まで作った事無かったじゃん。興味もある訳じゃなさそうだし……」
「一体誰??」

 静空は指をさしながら今だなお驚いた表情を浮かべ、麗羅はなんとか平静を取り戻し質問した。

「私、彼氏出来たとは口にしてないんだけどぉ~?」

 二人の反応に麗華は冷静に返した。その言葉で、二人は顔を見合せ頭を抱える。

「なら、一体何の話なの?」

 静空が質問すると、麗華は満面な笑みを浮かべて口を開いた。

「私、二人の男子に告白されちゃった」

 その言葉に今度はなんの反応もできず、二人はその場に固まってしまった。
 風が二人の髪を揺らし、太陽は静かになってしまった三人を明るい日差しで照らし続けた。
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