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音禰
「親友を助けて!!」
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地面に叩きつけられた事により、魔蛭の眉毛の少し上が切れ血が流れる。それでも気にせず、カクリは魔蛭の頭を持ち上げ覗き込んだ後、再度床へと叩きつけた。
「ぐっ!! てっ、てめぇ──」
「『お主を殺す。死にたくなければ我を殺せば良い。そのような力があるかは知らぬがな』」
魔蛭は胸の痛みもまだあり、体が思うように動かない。額からは大量の血が流れ、カクリを充血している鋭い瞳で睨む。その目からは憎しみ以外の感情が読み取れず黒く、怒りを露にしていた。
「『もっと苦しまないと分からぬか。そのような目は、不快だ』」
「なっ。何をする気だ」
カクリが魔蛭の頭を持ち上げ、目と鼻の先まで引き寄せる。
「『目の一つや二つ。無くなったところで特に困らんだろう。どうせ、死ぬのだから』」
左手を魔蛭の顔面に突きつけ、平坦な口調でいい放つ。カクリの鋭く尖った爪が光を反射し、狙いを彼の瞳に定めた。
「やっ、やめっ──」
怒りが一瞬にして消え、恐怖が魔蛭の頭を埋め尽くす。顔を青くし、カクリの手に目を向け、彼は恐怖で顔を青ざめさせ目を見開いた。
「『安心するが良い。目だけでは人は死なぬ』」
カクリは魔蛭の右目に狙いを定め、鋭い爪を振り下ろす────
☆
薄暗い空間。周りには何も無く、なんの音も聞こえない。まるでここは、明人が依頼人の黒く染った匣を抜き取る際の空間のよう。
「ここは…………。俺は、なんでここにいるんだ」
薄暗い空間の中央に立っているのは、先程病室内で気を失ってしまった明人。周りを見回し、今の状況を理解するため頭を回転させる。
「…………ここは、誰かの想いの空間──か?」
「そうよ。ここは、私の想いで作られた空間」
明人の後ろにいきなり女性が現れ、咄嗟に反応し振り向いた。
そこに立っていたのは、病室に寝ていた女性、神霧音禰《しむんむおとね》。
腰まで長い茶髪に、透明感のある綺麗な肌。そして、今まで閉じられていて分からなかった目は開かれており、黄色く澄んでいるような、綺麗な瞳が姿を現していた。
白いノースリーブのワンピースを着ており、靴は何も履いていなく裸足だった。そして、首には楕円状のロケットペンダントが、輝きながらかけられている。
「お前は病室で寝てた。確か、神霧か」
「苗字ではなく、名前で呼んで欲しいわ。昔のように」
声は少し高めだが、聞き取りやすく優しい。ガラス細工のように美しく儚い声が、暗闇の空間に響き渡る。眉を下げ悲しげな笑みを浮かべながら、音禰は何故か頭を下げ、彼に謝罪を述べる。
「ごめんなさい」
「なぜ謝る。俺はお前とはしょたいめ──」
いつものように冷たく返答しようとしたが、何故か途中で言葉を詰まらせてしまった。
謝罪をするために下げた顔を、音禰はゆっくりと上げる。その時、綺麗な雫が揺れている瞳から流れ、頬を伝い、空中へと落ちた。そんな姿の彼女を目にし、明人は眉を顰め顔を逸らす。
「なぜ泣く。情緒不安定かお前」
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
何度も謝る音禰に、明人は苛立ち始め。顔を歪め、怒りを隠しもせず口を開いた。
「さっきから何に対して謝ってんだよてめぇ。謝罪だけ口にして終わると思ってんのか? それさえすれば許されると。だがな、お前に意味もわからず謝罪されし続けられている俺の気持ちを考えないのか? 許すどころか逆に苛立ち始めている。まずは理由を話すのが普通なんじゃねぇの?」
遠慮なく明人が鋭く言い放つ。その言葉に、音禰は涙を拭く手を止め、彼へと向き直した。
「そうね。今の貴方には記憶が無いもの、仕方がないわ。でも、ごめんなさい。今、細かく説明している時間が無いの」
「はぁ? 謝罪する時間はあって、説明する時間はないと。お前頭沸いてんじゃねぇの?」
「ごめんなさい。でも、本当に時間が無いの。貴方の大事な友達が、大変な事になっているわ」
「友達? ……あぁ。友達じゃねぇが、カクリの事か。なんでわかんだよ」
友達という言葉に最初は眉を顰めるが、直ぐにカクリの事だとわかり。明人は音禰に目線を向け、淡々と会話を続ける。
「私もその病室に寝ているからよ。それで、早く助けなければ、真陽留も危ないの」
「…………俺の知ってる魔蛭は、助ける価値のない人間だけどな」
「…………そんな事……ない。そんな事ない!! 貴方達は幼馴染で、友達で。そして、親友だったもの。何か誤解があるのよ。だからお願い、あの子を助けてあげて欲しい。黒い心を、想いを、白くしてあげて欲しい。本当は優しく、他人を一番に考える人。貴方の、一番の親友を助けて!!」
先程まで冷静に会話をしていた音禰が、徐々に息を荒くし、強い口調になっていく。そんな彼女に、明人は何も返す事が出来ない。
明人が困惑の表情を浮かべていると、いきなり周りが白く輝き出した。そのため、明人は咄嗟に手で目を覆い、閉じてしまう。そこに、優しく暖かい。それでいて悲しく、今にも消えそうな涙声が彼の頭に直接響いた。
『貴方は荒木相思《あらきそうし》。そして、貴方と親友の人生を狂わせた人物は────』
その言葉を最後に、明人は白い輝く空間から姿を消した。
「ぐっ!! てっ、てめぇ──」
「『お主を殺す。死にたくなければ我を殺せば良い。そのような力があるかは知らぬがな』」
魔蛭は胸の痛みもまだあり、体が思うように動かない。額からは大量の血が流れ、カクリを充血している鋭い瞳で睨む。その目からは憎しみ以外の感情が読み取れず黒く、怒りを露にしていた。
「『もっと苦しまないと分からぬか。そのような目は、不快だ』」
「なっ。何をする気だ」
カクリが魔蛭の頭を持ち上げ、目と鼻の先まで引き寄せる。
「『目の一つや二つ。無くなったところで特に困らんだろう。どうせ、死ぬのだから』」
左手を魔蛭の顔面に突きつけ、平坦な口調でいい放つ。カクリの鋭く尖った爪が光を反射し、狙いを彼の瞳に定めた。
「やっ、やめっ──」
怒りが一瞬にして消え、恐怖が魔蛭の頭を埋め尽くす。顔を青くし、カクリの手に目を向け、彼は恐怖で顔を青ざめさせ目を見開いた。
「『安心するが良い。目だけでは人は死なぬ』」
カクリは魔蛭の右目に狙いを定め、鋭い爪を振り下ろす────
☆
薄暗い空間。周りには何も無く、なんの音も聞こえない。まるでここは、明人が依頼人の黒く染った匣を抜き取る際の空間のよう。
「ここは…………。俺は、なんでここにいるんだ」
薄暗い空間の中央に立っているのは、先程病室内で気を失ってしまった明人。周りを見回し、今の状況を理解するため頭を回転させる。
「…………ここは、誰かの想いの空間──か?」
「そうよ。ここは、私の想いで作られた空間」
明人の後ろにいきなり女性が現れ、咄嗟に反応し振り向いた。
そこに立っていたのは、病室に寝ていた女性、神霧音禰《しむんむおとね》。
腰まで長い茶髪に、透明感のある綺麗な肌。そして、今まで閉じられていて分からなかった目は開かれており、黄色く澄んでいるような、綺麗な瞳が姿を現していた。
白いノースリーブのワンピースを着ており、靴は何も履いていなく裸足だった。そして、首には楕円状のロケットペンダントが、輝きながらかけられている。
「お前は病室で寝てた。確か、神霧か」
「苗字ではなく、名前で呼んで欲しいわ。昔のように」
声は少し高めだが、聞き取りやすく優しい。ガラス細工のように美しく儚い声が、暗闇の空間に響き渡る。眉を下げ悲しげな笑みを浮かべながら、音禰は何故か頭を下げ、彼に謝罪を述べる。
「ごめんなさい」
「なぜ謝る。俺はお前とはしょたいめ──」
いつものように冷たく返答しようとしたが、何故か途中で言葉を詰まらせてしまった。
謝罪をするために下げた顔を、音禰はゆっくりと上げる。その時、綺麗な雫が揺れている瞳から流れ、頬を伝い、空中へと落ちた。そんな姿の彼女を目にし、明人は眉を顰め顔を逸らす。
「なぜ泣く。情緒不安定かお前」
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
何度も謝る音禰に、明人は苛立ち始め。顔を歪め、怒りを隠しもせず口を開いた。
「さっきから何に対して謝ってんだよてめぇ。謝罪だけ口にして終わると思ってんのか? それさえすれば許されると。だがな、お前に意味もわからず謝罪されし続けられている俺の気持ちを考えないのか? 許すどころか逆に苛立ち始めている。まずは理由を話すのが普通なんじゃねぇの?」
遠慮なく明人が鋭く言い放つ。その言葉に、音禰は涙を拭く手を止め、彼へと向き直した。
「そうね。今の貴方には記憶が無いもの、仕方がないわ。でも、ごめんなさい。今、細かく説明している時間が無いの」
「はぁ? 謝罪する時間はあって、説明する時間はないと。お前頭沸いてんじゃねぇの?」
「ごめんなさい。でも、本当に時間が無いの。貴方の大事な友達が、大変な事になっているわ」
「友達? ……あぁ。友達じゃねぇが、カクリの事か。なんでわかんだよ」
友達という言葉に最初は眉を顰めるが、直ぐにカクリの事だとわかり。明人は音禰に目線を向け、淡々と会話を続ける。
「私もその病室に寝ているからよ。それで、早く助けなければ、真陽留も危ないの」
「…………俺の知ってる魔蛭は、助ける価値のない人間だけどな」
「…………そんな事……ない。そんな事ない!! 貴方達は幼馴染で、友達で。そして、親友だったもの。何か誤解があるのよ。だからお願い、あの子を助けてあげて欲しい。黒い心を、想いを、白くしてあげて欲しい。本当は優しく、他人を一番に考える人。貴方の、一番の親友を助けて!!」
先程まで冷静に会話をしていた音禰が、徐々に息を荒くし、強い口調になっていく。そんな彼女に、明人は何も返す事が出来ない。
明人が困惑の表情を浮かべていると、いきなり周りが白く輝き出した。そのため、明人は咄嗟に手で目を覆い、閉じてしまう。そこに、優しく暖かい。それでいて悲しく、今にも消えそうな涙声が彼の頭に直接響いた。
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その言葉を最後に、明人は白い輝く空間から姿を消した。
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