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記憶の欠片
「記憶が失ってもそう思える相手なんですから」
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「こんにちわ。いらっしゃ──あ、真美ちゃん、こんにちわ。今日はショートケーキあるよ」
「本当に!? わぁい!! お母さん、私苺がいい!」
「わかったわよ。そんなに慌てなくてもケーキは逃げないから大丈夫」
外観はレンガで出来ており、レトロな雰囲気のケーキ屋に少女を連れた女性が手を繋ぎながら入る。
そのケーキ屋は【パステール】という名前だ。有名なケーキ屋で、チェーン店なため数多く様々な場所にある。その一つ一つの店は小さく、レトロな雰囲気で統一していた。
値段もお手ごろで、毎日ガラスケースの中にあるケーキは変わる。日替わりランチみたいなものだ。
真陽留はそこで働いており、ケーキなどは作れないためレジや接客メインでお店に立っていた。
記憶力も人並み以上なため、数回来たお客様を覚える事も可能。そのため、このように名前を呼んだりして、楽しく会話をしながら接客をしていた。
ショートケーキを頼み、大事そうに両手で少女はケーキを抱え帰っていく。
「ありがとう、お兄ちゃん!!!」
「どういたしまして」
手を振り二人を見送ったあと、真陽留は今日一日の仕事を終わらせたためお店を閉めようとした時、音禰がギリギリのタイミングでハイヒールの音を鳴らしながら走ってきた。
「はぁ、間に合った──かな?」
「ギリギリアウト──と、言いたいけど。残念ながらセーフだよ」
「なら良かったわ。なんでアウトと言いたいのかは分からないけれどね!!!」
音禰は頬を膨らませ怒り、彼を睨む。
「ははっ。とりあえずいつもの場所に座ってて。何が食べたいの?」
「今日のオススメ!!」
「なら、抹茶ロールケーキとかどうだ?」
「採用!!」
「はいはい」
返事すると、真陽留はそのまま店の奥に姿を消した。
音禰は、さっき真陽留に言われた言葉など一瞬のうちに忘れ、ウキウキとしながらお店に置いてあるソファーに座り、彼が来るのを待ちながら店の中を見回す。
パステールの中も、外の雰囲気を壊さないようにレトロを意識されている。
家具などは木製で統一しており、壁にはアリスの模様が入っている時計や、ハンガー掛け。少し小さめなテレビも置いてある。ここでお茶が出来るようになっており、カフェとも呼べる内装になっていた。
そんな暖かくほっとする空間に、音禰は仕事の疲れを癒しによく通っていた。
「お待たせ」
家具や壁紙などを楽しんでいると、真陽留が片手にお盆を持ち、営業スマイルを浮かべながら彼女の元へと向かい、テーブルにケーキなどを置いた。
お皿の上には、綺麗に飾られている抹茶ロールケーキが鮮やかに置かれ、その隣には湯気の立つ香り高い飲み物、珈琲も一緒に置かれた。
「珈琲も良いの?」
「僕の奢りだよ。後でしっかりと請求するから」
「それ、奢りじゃなくて立て替えって言うんだよ。なら、今普通に払うよ」
「冗談だよ。しっかりと奢るから安心して食べて」
テーブルに置き、真陽留も腰エプロンを取る。腰掛に置くと、向かいにある一人用の椅子に腰を下ろした。
「いただきます」
「召し上がれ」
二人は静かな時間を過ごしていた。そんな中、お店の奥から一人の女性が姿を現し、二人に近づいて行く。
「こんにちは、音禰ちゃん。今日も来てくれて嬉しいわ」
「あ、沙恵さん。こんにちは、今日もすごく美味しいです!」
「ありがとう」
沙恵と呼ばれた女性は、このお店の社長令嬢だ。だが、高飛車な性格ではなく、どちらかと言うとおっとりマイペースな人で、誰とでも仲良くできる性格。だが、少々天然なところもあり、時々話を聞いているとついていけない時もあった。
「ところで音禰ちゃん。最近彼氏とかそういう話は無いのかしら?」
「ぶっ!!! ゴホゲホ!!」
いきなりの質問に、彼女は飲んでいた珈琲を吹き出すところだった。真陽留は慌てて紙ナプキンを渡して背中を摩ってあげる。
「あらあら~。ごめんなさい。聞くタイミングが悪かったわね。次は気をつけるわ!」
気合いを入れ直す沙恵に、音禰と真陽留は何も言えなかった。そして、なんとか息を整えた彼女は、口に紙ナプキンを添えながら話し出す。
「えっと、こほ。なんでしたっけ……」
「彼氏さんよ。見たところ、真陽留君は違うように見えるし、他に好きな人でもいるのかしらと思ってね」
沙恵は時々ものすごく勘が鋭い時がある。
以前、一人の男性社員がお店のお金を横領しようとしていた時があり、それを偶然見合わせた沙恵が未然に防いだ事があった。その時の言葉が「何となくお店に行かないといけない気がしたのよねぇ」だったのだ。
「他にって──まぁ、真陽留とはそういう関係ではありませんが……」
「ただの幼馴染ですよ」
「それも少し違う気がするけれど……。でも、そこを今聞きたい訳では無いの。音禰ちゃん、最近気になる人でも出来てないかしら?」
彼女は目を輝かせて音禰に顔を近付ける。その迫力に圧倒され、少し気後れしている彼女だが、思い当たる人物が思い浮かばず首を横に振る。
「あの、申し訳ありませんが、そのような人は──」
否定しようとした時、何かを思い出し途中で言葉を切り、目を見張る。不思議に思った真陽留は、固まってしまった音禰に問いかけた。
「どうしたんだ、音禰」
「音禰ちゃん、やっぱり誰かいるのね?! 一体誰なの!?」
不思議に思っている真陽留とは対照的に、沙恵は先程より遥かに目を輝かせ彼女に迫る。
「いえ。なんか、少し引っかかる感じがして……。でも、思い出せないんです。なんか、すごく大事な人を忘れている気がするのですが……」
音禰は呟き、思い出そうと頭を抱えるがどうしても思い出せず項垂れてしまう。
「大事な人を忘れてしまっているという事かしら。でも、それって本当は大事な人では──」
「ちっ、違います!!!」
沙恵は冷静に言葉を口にしようとしたが、それを音禰が全力で遮り否定した。その事に驚き、沙恵と真陽留は肩を震わせる。
思ったより大きな声を出してしまった事に彼女自身も驚き、体を小さくしてしまった。
「すいません……。でも、大事な人なのは確かなんです。絶対忘れない、忘れてはいけない。そんな人が居たはずなんです」
音禰は頭を支え、何とか思い出そうとした。その行動と必死さに、沙恵は優しい笑みを向ける。
「なら、きっと思い出す事が出来るわ。記憶が失ってもそう思える相手なんですから」
沙恵の優しい笑みに、音禰はほっと息をつき「ありがとうございます」と笑みを零した。
「うんうん。まだまだ私達は若いのだから、人生はこれからよ!! 一緒にがんばりましょう!!」
沙恵は「おー」と手を伸ばし、音禰も一緒に手を突き上げた。そんな二人を真陽留は、温かく優しい瞳で見つめる。
その時、女子が一人、男子が二人の三人組がお店の中へと入ってきた。高校の制服を身にまとっているため、学生だとわかる。
今は十時近いため閉店なのだが、音禰が来た時に閉店の看板をつけるのを忘れてしまっていた。
お店側のミスなため、閉店時間だからと帰らせるわけにはいかず、真陽留と沙恵は音禰に一礼してレジの方へと向かった。
三人は注文したあと、お持ち帰りにするらしく、その場で話しながら待っていた。
音禰が抹茶ロールケーキを口に含みながら真陽留達を待っていると、三人の会話が耳に入り動きを止めた。
「本当に!? わぁい!! お母さん、私苺がいい!」
「わかったわよ。そんなに慌てなくてもケーキは逃げないから大丈夫」
外観はレンガで出来ており、レトロな雰囲気のケーキ屋に少女を連れた女性が手を繋ぎながら入る。
そのケーキ屋は【パステール】という名前だ。有名なケーキ屋で、チェーン店なため数多く様々な場所にある。その一つ一つの店は小さく、レトロな雰囲気で統一していた。
値段もお手ごろで、毎日ガラスケースの中にあるケーキは変わる。日替わりランチみたいなものだ。
真陽留はそこで働いており、ケーキなどは作れないためレジや接客メインでお店に立っていた。
記憶力も人並み以上なため、数回来たお客様を覚える事も可能。そのため、このように名前を呼んだりして、楽しく会話をしながら接客をしていた。
ショートケーキを頼み、大事そうに両手で少女はケーキを抱え帰っていく。
「ありがとう、お兄ちゃん!!!」
「どういたしまして」
手を振り二人を見送ったあと、真陽留は今日一日の仕事を終わらせたためお店を閉めようとした時、音禰がギリギリのタイミングでハイヒールの音を鳴らしながら走ってきた。
「はぁ、間に合った──かな?」
「ギリギリアウト──と、言いたいけど。残念ながらセーフだよ」
「なら良かったわ。なんでアウトと言いたいのかは分からないけれどね!!!」
音禰は頬を膨らませ怒り、彼を睨む。
「ははっ。とりあえずいつもの場所に座ってて。何が食べたいの?」
「今日のオススメ!!」
「なら、抹茶ロールケーキとかどうだ?」
「採用!!」
「はいはい」
返事すると、真陽留はそのまま店の奥に姿を消した。
音禰は、さっき真陽留に言われた言葉など一瞬のうちに忘れ、ウキウキとしながらお店に置いてあるソファーに座り、彼が来るのを待ちながら店の中を見回す。
パステールの中も、外の雰囲気を壊さないようにレトロを意識されている。
家具などは木製で統一しており、壁にはアリスの模様が入っている時計や、ハンガー掛け。少し小さめなテレビも置いてある。ここでお茶が出来るようになっており、カフェとも呼べる内装になっていた。
そんな暖かくほっとする空間に、音禰は仕事の疲れを癒しによく通っていた。
「お待たせ」
家具や壁紙などを楽しんでいると、真陽留が片手にお盆を持ち、営業スマイルを浮かべながら彼女の元へと向かい、テーブルにケーキなどを置いた。
お皿の上には、綺麗に飾られている抹茶ロールケーキが鮮やかに置かれ、その隣には湯気の立つ香り高い飲み物、珈琲も一緒に置かれた。
「珈琲も良いの?」
「僕の奢りだよ。後でしっかりと請求するから」
「それ、奢りじゃなくて立て替えって言うんだよ。なら、今普通に払うよ」
「冗談だよ。しっかりと奢るから安心して食べて」
テーブルに置き、真陽留も腰エプロンを取る。腰掛に置くと、向かいにある一人用の椅子に腰を下ろした。
「いただきます」
「召し上がれ」
二人は静かな時間を過ごしていた。そんな中、お店の奥から一人の女性が姿を現し、二人に近づいて行く。
「こんにちは、音禰ちゃん。今日も来てくれて嬉しいわ」
「あ、沙恵さん。こんにちは、今日もすごく美味しいです!」
「ありがとう」
沙恵と呼ばれた女性は、このお店の社長令嬢だ。だが、高飛車な性格ではなく、どちらかと言うとおっとりマイペースな人で、誰とでも仲良くできる性格。だが、少々天然なところもあり、時々話を聞いているとついていけない時もあった。
「ところで音禰ちゃん。最近彼氏とかそういう話は無いのかしら?」
「ぶっ!!! ゴホゲホ!!」
いきなりの質問に、彼女は飲んでいた珈琲を吹き出すところだった。真陽留は慌てて紙ナプキンを渡して背中を摩ってあげる。
「あらあら~。ごめんなさい。聞くタイミングが悪かったわね。次は気をつけるわ!」
気合いを入れ直す沙恵に、音禰と真陽留は何も言えなかった。そして、なんとか息を整えた彼女は、口に紙ナプキンを添えながら話し出す。
「えっと、こほ。なんでしたっけ……」
「彼氏さんよ。見たところ、真陽留君は違うように見えるし、他に好きな人でもいるのかしらと思ってね」
沙恵は時々ものすごく勘が鋭い時がある。
以前、一人の男性社員がお店のお金を横領しようとしていた時があり、それを偶然見合わせた沙恵が未然に防いだ事があった。その時の言葉が「何となくお店に行かないといけない気がしたのよねぇ」だったのだ。
「他にって──まぁ、真陽留とはそういう関係ではありませんが……」
「ただの幼馴染ですよ」
「それも少し違う気がするけれど……。でも、そこを今聞きたい訳では無いの。音禰ちゃん、最近気になる人でも出来てないかしら?」
彼女は目を輝かせて音禰に顔を近付ける。その迫力に圧倒され、少し気後れしている彼女だが、思い当たる人物が思い浮かばず首を横に振る。
「あの、申し訳ありませんが、そのような人は──」
否定しようとした時、何かを思い出し途中で言葉を切り、目を見張る。不思議に思った真陽留は、固まってしまった音禰に問いかけた。
「どうしたんだ、音禰」
「音禰ちゃん、やっぱり誰かいるのね?! 一体誰なの!?」
不思議に思っている真陽留とは対照的に、沙恵は先程より遥かに目を輝かせ彼女に迫る。
「いえ。なんか、少し引っかかる感じがして……。でも、思い出せないんです。なんか、すごく大事な人を忘れている気がするのですが……」
音禰は呟き、思い出そうと頭を抱えるがどうしても思い出せず項垂れてしまう。
「大事な人を忘れてしまっているという事かしら。でも、それって本当は大事な人では──」
「ちっ、違います!!!」
沙恵は冷静に言葉を口にしようとしたが、それを音禰が全力で遮り否定した。その事に驚き、沙恵と真陽留は肩を震わせる。
思ったより大きな声を出してしまった事に彼女自身も驚き、体を小さくしてしまった。
「すいません……。でも、大事な人なのは確かなんです。絶対忘れない、忘れてはいけない。そんな人が居たはずなんです」
音禰は頭を支え、何とか思い出そうとした。その行動と必死さに、沙恵は優しい笑みを向ける。
「なら、きっと思い出す事が出来るわ。記憶が失ってもそう思える相手なんですから」
沙恵の優しい笑みに、音禰はほっと息をつき「ありがとうございます」と笑みを零した。
「うんうん。まだまだ私達は若いのだから、人生はこれからよ!! 一緒にがんばりましょう!!」
沙恵は「おー」と手を伸ばし、音禰も一緒に手を突き上げた。そんな二人を真陽留は、温かく優しい瞳で見つめる。
その時、女子が一人、男子が二人の三人組がお店の中へと入ってきた。高校の制服を身にまとっているため、学生だとわかる。
今は十時近いため閉店なのだが、音禰が来た時に閉店の看板をつけるのを忘れてしまっていた。
お店側のミスなため、閉店時間だからと帰らせるわけにはいかず、真陽留と沙恵は音禰に一礼してレジの方へと向かった。
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